激情と官能の嵐に飲み込まれた一途な愛・・・「夏の嵐」
イタリアの巨匠、ルキノ・ヴィスコンティが、「第三の男」のアリダ・ヴァリらをキャストに迎えて贈るロマンス大作。1866年、オーストリア軍占領下のヴェネツィアを舞台に、そこに住むとある夫人と、オーストリア将校との禁断の恋の行方を描いた作品である。その1: 狂おしいほど官能的な不倫 その始まりは・・・1866年5月のある夜、水の都ヴェニスのフェニーチェ劇場ではオペラ「吟遊詩人」が上演されていた。その時、一階席でオーストリヤ占領軍の若い将校フランツ・マラー(ファリー・グレンジャー)中尉と反占領軍運動の指導者の一人、ロベルト・ウッソーニ侯爵の間に口論が起こる。挙句ロベルトはフランツに決闘を挑む。丁度、夫とともに観劇中であったリヴィア・セルピエーリ(アリダ・ヴァリ)伯爵夫人は従兄ロベルトを助けようとしてフランツに近づく。しかし、その夜、ロベルトはオーストリヤ軍に逮捕され、一年の流刑に処せられてしまう。リヴィアが再びフランツに会った時には、彼女はこの青年将校の魅力の虜になってしまっていた。その2: 官能の渦の中で敵国の将校を愛してしまう伯爵夫人の心はリヴィアは五十男のセルピエーリ伯爵と愛情もなく結婚したが、それ迄は貞淑な妻だった。だがフランツを知ってからは盲目的な激しい情熱にとらわれ遂に彼に身も心も捧げてしまったのである。一方オーストリヤとの間には再び戦争が起き、セルピエーリ伯はヴェニスを離れてアルデーノの別荘に移ることになる。リヴィアは越境してヴェニスの同志に軍資金を渡しに来たロベルトに会う。ロベルトは彼女に金を渡しアルデーノの別荘で同志に渡してくれと頼んだ。ある夜別荘の彼女のもとにフランツが現われた。「もう終わったことなのよ。お願い、帰って」というリヴィアだったが、「いのちがけで逢いに来た。もう4日も寝ていない。逢いたかった」こう畳みかけるフランツを拒めるわけはなかった。彼女は再び彼の前に身を投げ出した。フランツは軍籍を抜けるのに大金がいることを話し戦争によって彼を失うことを怖れた彼女は預った金を彼に渡してしまうのだ。祖国まで裏切ったのである。その3: 女のあくなき恋心は自分をも破滅させるものなのか???やがて伊軍は敗れロベルトも重傷を負った。敗戦を聞いたリヴィアは敵軍占領下のヴェロナにフランツからの手紙を握り締めて馬車を走らせる。だが新しい愛人とリヴィアを迎えたフランツは冷たく言うのだ。「俺は金が欲しかっただけだ」と。そして、一時の浮気心で彼女を相手にしたにすぎないとも。その揚句ロベルトを軍に逮捕させたのは自分だと叫ぶ。絶望したリヴィアは占領軍司令部に行くとフランツが自分から取り上げた金で軍医を買収し、病気と偽り除隊に成功したことを書いた手紙を司令官に差し出す。フランツは即刻逮捕され、銃殺されたのである。卑劣な”密告”、それは彼女の愛への訣別だった。 夏の嵐とはかくも非情で破壊的なものであろうか。 1954年 イタリア・カラー 監督 ルキノ・ヴィスコンティ 出演 アリダ・ヴァリ ファーリー・グレンジャー マッシモ・ジロッティ ハインツ・モーグ リナ・モレリ A HREF="http://blog.with2.net/link.php?338357">人気blogランキングへ