子規、果物四句 其ノ壱「葡萄」
小説を読む窓さきや葡萄棚 正岡子規似句あり。小説を 好むあるじや 葡萄棚散歩コースに葡萄棚を持つお宅があるのだが、脇を通ると甘酸っぱい匂いが鼻腔から五臓六腑に沁みこむのだ。馥郁たる葡萄の香で、なんとも食指を動かされる。ふと伸びる手を小さな理性で押し戻すのが精一杯だ。そこで思った。葡萄棚は「獺祭書屋(根岸の自宅)」ではない。おそらく隣家ではないか。秋の風に乗り、葡萄の馥郁たる香が届く。苦吟する子規は、もう居ても立っても居られない。隣家に忍び込んで一房失敬するのである。ときに隣家は代々の素封家で、主はつまらない小説を書いている。筆を手に子規は一句。「小説を 好むあるじや 葡萄棚」葡萄の礼は一句したためた短冊。子規も粋ではないか・・・きっとそうに違いない!収穫の秋、こうご期待♪