笑顔
娘を駅まで送った帰り道、空を見上げたら秋の臭いがたっぷりの入ってきた。 群れからはずれた途切れ途切れの雲がぷわぷわと漂って、陽射しは、もう夏は終わったのを実感させるかのようになま温かい。 春には隆盛を誇る桜の木も、今は秋の風情で他の庭木に混じって静かにたたずんでいた。季節は知らず知らずのうちに移り変わっていくのだと感じる。一軒おいて隣の○○ちゃんが可愛い盛りのボクちゃんと玄関先で遊んでる。私が通りかかって笑顔で挨拶してくれると、その脇のボクちゃんも同じように笑顔で挨拶してくれる。 ○○ちゃんは小学校の頃にうちの娘とよく喧嘩していた子。娘もたいがいに気が強くて、お互いに譲らず。ただ、親の欲目で○○ちゃんは気の強さだけが印象に残るような愛想のない子に見えていた。その彼女も3児の母となり、自然にこぼれる爽やかな笑顔で挨拶してくれる。「いいママしてるじゃないー」と思わず声をかけたあとで、通り過ぎる風を見送りながら思っていたのは、たかだか10歳そこらで受けた印象を今の今まで引きずっているわたしの感覚が可笑しいわって。考えてみれば、喧嘩した相手の母親に愛想良くなんてしないわな。その人がそうしているにはそうしている理由があるってことを再度思い出すことになった。勝手な思い込みは自分を狭くする。そのようにしか見えないから。 秋風が心地よいのも、私の心次第かもしれない。