転載孫崎メール
「 熊本地震は18日現在で死者42名、避難者11万人の甚大な被害を出した。 ほぼすべての国民は、生存者の救出と、避難者の少しでも生活苦の解放と、早期の平常の生活を願っている。もし、この国民感情を自分達の政治目的に利用とするなら、それは悪辣な政権としか呼びようがない。しかし、それをやっているのが安倍政権だ。 4月16日、日経新聞は「緊急事態条項“極めて重い課題”熊本地震で官房長官」の標題の下、「菅官房長官は記者会見で、熊本地震に関連し、大災害時などの対応を定める緊急事態条項を憲法改正で新設することについて“極めて重く大切な課題だ”と述べた。 長谷部早稲田大学教授は「災害対策基本法や有事法制などが既にある。もし新たな制度も必要だと言うのなら、国会で法律を作ればよいだけの話」とし、「改憲の必要はない」と述べている。自民党は、緊急事態は災害対策のように述べているがそんなものではない。 自民党は改憲草案で、緊急事態を?緊急事態時、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる ?何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない、? 緊急事態時、衆議院は解散されないものとするとしている。石川健治東京大学教授は、「緊急事態条項の新設は、戒厳(令)の問題にもつながり、戒厳は独裁への大きな一歩になりうる」と警鐘を鳴らしている。 次に米軍普天間基地のオスプレイだ。多くの国民は避難民の救出や物資の配送を迅速に行うべきと思っている。だから、「米軍がオスプレイを提供するなら、それも利用すべきだ」と思う。でも一寸考えてみて欲しい。 陸上自衛隊は回転翼 379機を保有している。UH-1H/J 多用途 131機、CH-47J/JA 輸送 55機、UH-60JA 多用途 36機である。 海上自衛隊は回転翼 97機を保有している。MH-53E 掃海・輸送 5機、MCH-101 掃海・輸送 6機である。 航空自衛隊は回転翼 15機を保有している。C-1 輸送 24機、C-130H 輸送 15機である。 合計491機である。うち輸送用は270機である。 孤立する集落等に物資を届けるに必要なのは小回りの効くヘリコプターだ。オスプレーよりも自衛隊所有のヘリコプターの方がはるかに利用価値がある。 米軍星条旗新聞は「匿名条件の米国官僚によれば、日本政府が国務省に支援要請した」と報じた。 防衛長官は約500機(うち輸送用は270機)のヘリを持つ日本が何故米軍の支援を要請しなければならないか説明願いたい。 現在270機の輸送用ヘリの何機が熊本地震に使用されているのか。 自衛隊のヘリが十分あり、使用目的からしてオスプレイよりも効果が高いにもかかわらず米軍に協力要請したとすれば、その目的は極めてよこしまなものだ。 ほぼすべての国民は、生存者の救出と、避難者の少しでも生活苦の解放と、早期の平常の生活を願っている。もし、この国民感情を自分達の政治目的に利用とするなら、それは悪辣な政権としか呼びようがない。少しでもオスプレイを認知させ、米軍の効用を訴えようとする姿は悪質だ。 参考: 孫崎―長島昭久議員(東京21区立川市、昭島市、日野市衆議院議員。元防衛副大臣)。―孫崎―返事なしのツイッター上やり取り 孫崎:「オスプレイ、オスプレイの決断の前に自衛隊はヘリコプターを何機保有しているのか、稼働状況はどうなっているか、どうして米軍機の必要があるか、ちゃんと説明してください。」 長島昭久議員:オスプレイに思わず反発する気持ちは理解できなくもないですが、自衛隊のヘリは熊本地震だけに集中することはできず、他の災害や不測の事態にも備えねばなりません。いつの場合も「過不足なし」ということはあり得ず、外部からの協力は常にプラス。 孫崎:私の質問は極めて簡単です。自衛隊はヘリを(機種別に)何機保有しているか。それを現在どう展開しているか。自助努力でどこまで貫徹できるかです。長島様でしたら防衛省のも顔が広いようですから、抽象論でなく、実態をお教えください。 長島:反応なし。」