スケート地方、スキー地方
子供の頃北海道の十勝地方に住んでいた。このあたりでは、冬のスポーツは、スケートと決まっていた。スキーはスポーツではなく、交通手段だった。小学校の時通学は、夏は自転車、冬はスキーなのだった。冬道で自転車は使えないし、歩くよりスキーがずっと早いからだ。校庭の自転車置き場は、冬はスキー置き場と化し、授業中はスキーがずらりと並んでいた。一方スケートのほうは本格的にスポーツだった。どんなに小さな学校でも校庭には400mのスピードリンクを備えていた。これは生徒と、PTAの共同作業による。雪が降ると、生徒はみんなでトラックを踏み固める。晴れて冷え込む夜、PTAのお父さんたちが交替で水撒きをする。水撒きを4,5日続けるとだんだん氷が厚くなってくる。そうするといよいよスケートシーズンが始まるのだ。体育の授業はもちろん、放課後の遊びも冬はみんなスケートばかりだった。5時になるとすべりは終わりで、皆で掃除とメンテナンスをする。一日滑ると氷はきずだらけで細かい屑が、雪のように表面を覆っている。それを竹箒で掃き、大きな傷には水で濡らした雪を埋め込む。すぐに凍るので、盛り上がった分を平らに削り取る。ここまでが生徒の仕事。後は、夜またお父さんたちの水撒き。これが毎日繰り返されるのだ。