バイオエタノールは利点少ない?
7/16(日)の読売新聞にバイオエタノール、利点少ないという記事が出ていた。とうもろこしから作るバイオエタノールより、大豆から作るディーゼルの方がエネルギー効率も良く、温室効果ガスの削減量も大きく、肥料も少なくてすむので、こちらの方がいいということらしい。だったら、「大豆ディーゼルがバイオ燃料として有望」という見出しにすればよいのに、どうして、否定形にするんだろう。同じ内容の記事が、ヤフーにも載っていた。こちらは、とうもろこしや大豆を燃料とするのは非現実的--全米科学アカデミー会報で発表にこちらは、バイオエタノールも大豆ディーゼルもダメだと書いている。さらに否定的である。一体、この記事の本当のところは、何なんだと思って、米科学アカデミー紀要電子版というのをネットで探してみた。↓これEnvironmental, economic, and energetic costs and benefits of biodiesel and ethanol biofuels 要約するとバイオ燃料が化石燃料の代替となるためには1)正味の得られるエネルギー量2)環境負荷が少ないこと3)コスト的に見合うこと4)食料生産を減らさずに十分なエネルギーが得られることが大事である。これらについて、バイオエタノールと大豆ディーゼルの比較を行った。結果を表にまとめると1)得られるエネルギー量は大豆ディーゼルが多く2)温室効果ガスの排出も大豆ディーゼルが少なく、環境にやさしい。3)コスト的にも大豆ディーゼルが有利。4)食料生産を減らさずに十分なエネルギーが得られるかという点はどちらもダメ。よって、食用の植物ではなく、高セルロース性植物などの効率よく育つ植物をバイオ燃料として使えば、肥料も必要でなく、より多くの燃料を作ることができる。ということだった。読売新聞の記事は1)~3)の結果を強調して、大豆ディーゼルが良いとしヤフーの記事は4)の結果から、両方ダメとしているが、どちらも、最後のパラグラフの食物以外のものをバイオ燃料とする方が効率的だという点についてはほとんど強調されていない(ヤフーの記事の本文では、少し触れているが)。論文の内容を完全に伝えていないな。下記にそれぞれの記事を全文引用するが、赤字で示した第一パラグラフに筆者の主観が入りすぎている。ニュース記事というのは、そういうものだろうけれど、それを鵜呑みすると間違うかも。読売新聞の記事の引用 「バイオエタノール、利点少ない」米大学が分析 【ワシントン=増満浩志】ガソリンの代替燃料として米政府が利用拡大を目指すバイオエタノールは、大豆から作るディーゼル油に比べてエネルギー効率が悪く、環境への負担も大きいことが、米ミネソタ大チームの分析でわかった。代替するのがガソリンと軽油という違いはあるものの、研究チームは「トウモロコシから作る現在のエタノールには、利点は少ない」と指摘している。分析結果は米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。 研究チームは、トウモロコシからエタノールを作る場合と、大豆ディーゼル油を作る場合について、栽培から加工までに必要なエネルギー量を計算。できた燃料を使って発生するエネルギー量と比較した。 その結果、エタノールを燃やして発生するエネルギーは、使ったエネルギーの1・25倍だったのに対し、ディーゼル油は1・93倍と効率が良かった。温室効果ガスの放出量は、ガソリンの代わりにバイオエタノールを使っても12%しか減らないが、軽油の代わりに大豆ディーゼル油を使うと41%も減るという。 エネルギー量の等しい燃料を作る場合、大豆の栽培に要する肥料(窒素、リン)は、トウモロコシの1割未満で済み、地下水の汚染が少なくなる。 (2006年7月15日23時14分 読売新聞)ヤフーの記事の引用 とうもろこしや大豆を燃料とするのは非現実的--全米科学アカデミー会報で発表に 全米科学アカデミー会報(Proceedings of the National Academy of Sciences:PNAS)が作成した新たな報告書によると、とうもろこしや大豆から作られたエタノールだけではエネルギー危機を解決することはできないという。 2005年に米国で生産されたとうもろこし全てがエタノール産出のために費やされたとしても、同国で必要とされるガソリン量のうち12%しか供給できないと、同報告書には書かれている。もし大豆作物が燃料として消費されても、米国のディーゼル需要の9%を供給するに過ぎない。またこれらの作物を燃料として使用する量が目に見えて増えるということは、米国における食料供給が減少することも意味する。 しかし同報告書では、生物燃料の可能性についてはさほど難しく考えていないようだ。例えばスイッチグラスのような高セルロース性植物を使用してより多くの燃料を産出する考え方が支持されている。これは他の科学者らが提唱するアプローチである。 スイッチグラスや同様の植物は、食物用に育てられたとうもろこしなどの作物と同等の量を利用しても、より多くのエネルギーを産出できる可能性を有する。さらに高セルロース性植物は、肥料を必要としないうえ、そもそも食料として利用するには適していないために、燃料として使っても食料供給に影響を及ぼすことがない。 これらの燃料用植物はまた、あまり多くの水を与えなくても育つため、作物を育てるには乾燥し過ぎている土壌でも育成できると考えられている。またこれらの植物から作られた燃料は、とうもろこしエタノールや大豆ディーゼルと同様に、標準的な自動車の燃料と比べると、排気ガスの排出量が少ない。 また今回の報告書では、最近出されている他の報告書に反し、とうもろこしエタノールと大豆バイオディーゼルの両者とも、それを生産するために消費されるエネルギー量を上回るエネルギー量を供給できるとしている。作物を収穫し、処理するために必要なエネルギー量と比べると、とうもろこしエタノールの場合は25%、大豆ディーゼルの場合は93%多くエネルギー量を提供できるという。 英文のアブストラクトの引用Environmental, economic, and energetic costs and benefits of biodiesel and ethanol biofuels Contributed by David Tilman, June 2, 2006Negative environmental consequences of fossil fuels and concerns about petroleum supplies have spurred the search for renewable transportation biofuels. To be a viable alternative, a biofuel should provide a net energy gain, have environmental benefits, be economically competitive, and be producible in large quantities without reducing food supplies. We use these criteria to evaluate, through life-cycle accounting, ethanol from corn grain and biodiesel from soybeans. Ethanol yields 25% more energy than the energy invested in its production, whereas biodiesel yields 93% more. Compared with ethanol, biodiesel releases just 1.0%, 8.3%, and 13% of the agricultural nitrogen, phosphorus, and pesticide pollutants, respectively, per net energy gain. Relative to the fossil fuels they displace, greenhouse gas emissions are reduced 12% by the production and combustion of ethanol and 41% by biodiesel. Biodiesel also releases less air pollutants per net energy gain than ethanol. These advantages of biodiesel over ethanol come from lower agricultural inputs and more efficient conversion of feedstocks to fuel. Neither biofuel can replace much petroleum without impacting food supplies. Even dedicating all U.S. corn and soybean production to biofuels would meet only 12% of gasoline demand and 6% of diesel demand. Until recent increases in petroleum prices, high production costs made biofuels unprofitable without subsidies. Biodiesel provides sufficient environmental advantages to merit subsidy. Transportation biofuels such as synfuel hydrocarbons or cellulosic ethanol, if produced from low-input biomass grown on agriculturally marginal land or from waste biomass, could provide much greater supplies and environmental benefits than food-based biofuels.-----ヤフーの記事には、大豆ディーゼルは米国のディーゼル需要の9%を供給するに過ぎないと書かれているが、これは6%の誤りである。原文を読んだら、見つけちゃった。些細な間違いですが.....---ニュース記事は時間が経つと消えてしまうので、全文引用させて頂きました。-----