丘菜摘のその日暮らし

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• 連休初日

  五連休の初日、ゴールデンウィーク初日だ！と浮かれた気分でいたら、テレビのニュースでは盛んにＧＷ後半だと言っていて、軽くショックを受ける。ともかく、素晴らしい晴天なので気を取り直して大いに洗濯などし、観葉植物にも水を与えじっくり日光に当てる。午後は友人に呼ばれて谷中の辺りまで出掛け、緑の中を散歩する。デジカメを持っていかなかったので携帯での撮影に初挑戦。真っ直ぐに上を目指す銀杏の大木に少なからず感動したのだが、何とか雰囲気は切り取れたと思う。これくらい撮影できるならば、途中で見かけた古い民家や面白い洋館も撮影しておけばよかったかなと残念にも思うが、次回のお楽しみということにしたい。鶯谷方面からの谷中霊園の入り口に、ふと場違いな印象を受ける若い女性中心の行列に驚く。見ればフランス菓子の看板、パティシェの名前にも聞き覚えがあったが、こんな所にお店があったとは…。どうしてこの場所を選んだのか、訊いてみたい気分になる。連れは、行列の最後尾にいた女性に「美味しいの？」などと愚問を発していたが、さすがに列に並ぶようなことはなかった。夕刻に帰宅。夜は音楽を聴きながら軽い本を読む。「杉浦日向子の江戸塾」という文庫は、対談を収録したもので笑いながらあっさりと読めてしまうのだが、ご隠居杉浦日向子の江戸にまつわる知識の広さにはいつもどおり驚かされる。江戸時代を生きてきた人のように断言するのが小気味良い。さて、一日遊んで休養したので、明日は本気で片付けモードにはいらなければ…。

  2006年05月03日

• 昨日に続いて

  この季節は、知らず知らず鼻歌を歌っていたりするのは私だけだろうか。緑が、自分にとってのラッキーカラーだということもあって、「緑のそよ風」を聴いていたら、そういえば♪鮮やかな緑よ　明るい緑よ…♪という歌もあったと思い出す。調べると「若葉」という曲であった。国民学校の教材だったというけれど、世代は違うけど、学校で歌ったことがあると思う。イタズラな男の子たちが♪藁家を隠し♪の部分を♪我が家を隠し♪などとふざけて歌っていた記憶がある。そういえば母校の校歌も♪草の緑に風薫る～♪である。

  2006年04月26日

• い～い日だね♪

  お昼どきにデスクに戻ったら、外が真っ暗に感じられるほど雲に覆われていてびっくり。まもなく雷鳴も聞こえてきた。午後の仕事を終えてデスクに戻ると今度はすっかり晴れていた。すると緑が美しい。テレビから懐かしい歌が聞こえることが多くなったのは、それだけこちらが年を取ったということの証かもしれないけれど、歌謡曲とかポップスよりも、童謡ならば一層心が和む。最近ＣＭで聞こえるものでひときわ懐かしく感じられるのが、「緑のそよ風」である。みどりの日も近いことで時節に合うし、まさしく児童合唱団というスタイルで歌っているのがまたよい。ＣＭで流れるのは１番の半分ほどだけれど、ついつられて歌い出し、ワンコーラスしっかり歌ってしまう。しかし、２番となると途端に記憶があやふやになってしまう。どうにも気になって仕方がないので調べてみたら、この歌にはなんと５番まであった。中には野球をしている３番のように全く記憶のない歌詞もあった。それでもやっぱり、私は１番が好きだな。

  2006年04月25日

• 花筏

  写真は、昨夜の夜桜見物の折に撮影したもの。告白すると、正確には「花筏」という風流さはなく、ボート乗り場の側の、「淀みに浮かぶ泡沫」のようなものであった。しかし、吹く風が水面に描く模様が美しかったのでカメラに収めてみた。昨日の夕刊に、京都の「桜守」が桜の怖さを語った記事が出ていたが、満開の桜を見上げていると、たしかに人を狂わせる妖気のようなものを感じるときがあって、昨夜も突如眩暈に似た感覚に襲われて、魂を吸い取られるような不安を感じた。今日も日中になってもあまり気温が上がらなかったが、そういう気候のせいか、今年は花が長持ちしているように思われる。しかし、東京、横浜辺りでは、かなり葉が出てきていて、そろそろ終わりかなという印象である。桜の季節が過ぎると、次の愉しみはゴールデンウィークというところだろうか。

  2006年04月07日

• 夜桜を

  どうしても桜の下を歩きたくて、何とか仕事に区切りをつけて、アフター５に一人で千鳥ヶ淵に向かう。今年は何故か例年以上に桜が気になって仕方がないのは何故だろう。ライトアップがされていて、ある意味では「如何なものか」と思わないわけでもないが、盛りは過ぎているもののまだまだ花は愉しめるし、却って人通りが少なくてのんびりと歩いたり、思うままに写真を撮ったりできてよい。こんなに上を向いて歩くのは久しぶりだなと思う。桜の枝の間からおぼろげな月が見えたのでシャッターを切った。桜ばかり注目されるが、山吹もなども咲き始めていた。明かりに惹かれて靖国神社にも足を伸ばす。桜はあまり見られないのに長い参道の両側には露店がいっぱいに立ち並んでいて、見るべきものはないし、かなり冷え込んできたのにシートの上に車座になって宴に酔っている人も多い。あの靖国神社のこの光景を、中国の人達などが見たらどう思うだろうか。

  2006年04月06日

• 口に入りたる蕗の薹

  明日からまた一段と忙しくなる気配が出てきた。もう覚悟するしかないので、今日は早めにすべて打ち切って用事を済ませることにする。昨年一緒に仕事をしていた職場の後輩の女性と２人で夕食を共にする約束があったが、待ち合わせの時間までに余裕があったので、「ドクターマロ」のところへ行って花粉症対策を継続する。そして、ちょっとした買い物も済ませることができた。後輩との食事会は、ほぼ１年前に約束をしていた天麩羅。その店で有名なサツマイモの季節にも間に合うので、やっと約束を果たすことにした。美味しい美味しいと喜んで食べてくれるのでこちらもうれしい。アスパラガス、コゴミ、フキノトウなどに強く季節が感じられた。特にフキノトウの香りは今もお腹の中に残っているようだ。今日は仕事の話ではなく、専ら読書や「物書き」の話をしていたのだが、小説を書いているという彼女の発想や表現に度々意表を衝かれる。その分自分の物の見方が極めて概念的であることを思い知らされる。

  2006年03月28日

• 建仁寺で締め括り

  京都３日めの午後、遅めの昼食を終えると帰りの新幹線までは３時間ほど、もう１、２箇所は巡れそうだと思いながらもとりあえず駅に近い方へ下りようと考え、具体的な目的を決めないままに歩いてみる。しばらく行くと大きな瓦屋根が見えたので、行ってみると建仁寺だった。ここも特別公開があったと思い出し、今回の旅行の締め括りの場所と決める。ふと看板が目に入った摩利支天をまず目指す。何しろ亥年生まれの守り本尊だというのだからこれは素通りするわけにはいかない。すると狛犬ならぬ狛亥が迎えてくれた。開運、勝利のご利益があるというので開運を祈念し、紫色のイノシシがかわいい亥年のお守りと土鈴型の「福亥」をいただいて建仁寺に戻る。開山堂で加藤文麗の龍虎図、原在中の孔雀図・松鶴波図、両足院で長谷川等伯の松に童子図、伊藤若冲の雪中雄鶏図の特別公開などを目にする。いずれもシルバーガイド丁寧な説明つきでじっくり間近で拝見できた。最後に本堂を歩き双龍図などをめぐる。一方でトイレに「ウォシュレット」がついていたり、電動ロックの柵が設置されていることに驚き、少なからず違和感を持つ。予想以上に拝観に時間がかかり、新幹線にはギリギリの時間になったが、今回の京都も存分に愉しんだ。さて、これでゴールデンウィークまでは、日常に戻ることになるかな。

  2006年03月15日

• 京野菜でイタリアン

  八坂神社の方向へ坂を下る途中に著名な料亭などに紛れるようにして、外観からは想像できないリストランテを発見、これも何かの縁と思って昼食をとることにする。表に看板が出ているのだからと思うが、扉を一つ開けても飾り気さえなく視線の先にはまた扉、遅かったかしらと躊躇しながらも、思い切ってもう一歩踏み込むと右手にシェフの姿が見えたので、声を掛けて招き入れてもらう。一番軽いランチのセットの、アンティパストの盛り合わせは６品。そのうちの１品のスープは何と聖護院大根である。手作りというパンにも素朴なようで個性があって３種ともなかなか味わい深い。パスタは朝採り野菜のトマトソースを頼んだところ、２つ割りの小タマネギや大ぶりな乱切りの京ニンジン、ゴボウ（堀川ではなかった）、カブなどがコロコロと入っていて、しかし食してみると全く違和感がなかった。これにエスプレッソ（または紅茶）とデザートはさっぱりめのバニラアイスと対照的にとても濃厚なカスタードプリン（ちょっと名前は忘れてしまった）、香り高いガトーショコラの３点が少しずつ。お客を喜ばせようというサービス精神、地元の素材を活かそうという工夫等が抑え切れずにあふれているようなメニューだった。接客は女性が一人で切り盛りし、厨房には３人が働いていたが、いずれも若い。開店してまもなく２年という。ちょっと得した気分の出会いであった。

  2006年03月13日

• 風花舞う青蓮院、雪降る知恩院

  実は今日も一日を京都で過ごした。日が射したかと思っても風花が舞ったり、あっという間に空が黒い雲に覆われて本格的に雪が降り始めたり、時折風が強く吹いたりして寒い一日だった。今日の日記は３部作とする。第一部は午前の部。有給休暇を使っての最後の一日は、一人なので気ままに過ごすことにし、一昨日に訪ねた高台寺に心残りがあったので、洛東を巡ろうと決め、とりあえず地下鉄を乗り継いで寺町へ出る。「京の冬の旅」の特別拝観の情報を得て、まずは青蓮院を目指す。建物や庭園だけでなく一文字手水鉢、大楠木等、門跡としての解説のとおりの格の高さが其処此処に表れている。宸殿の前庭の杉苔に時折降る雪が雫となって散りばめられていたのがとても綺麗だった。次に知恩院は方丈庭園、山亭庭園を拝観。石段を登った分、京都市内を一望できたことも面白かった。さらには高台寺、圓徳院、掌美術館。圓徳院に歌仙の間があるなどとはうかつなことに知らなかった。飾られている歌仙絵がどういうものかはちょっとわからないが…。門前に歌仙大黒なるものが祀られていたので、週末エッセイストとしては素通りすることはできず、線香を備えて撫でさせてもらった。

  2006年03月13日

• 北野に来たの

  「そうだ」と思ったわけではないが、京都に来ている。知人と一緒なので、今日はその案内に従い、手桶弁当でお昼を済ませ、同じ系列のお店で何年も前から気になっていたバニラスフレを頂く（コレステロールには目をつむって…、こうしてまた例外を作ってしまう）。食事を済ませた店の前で、足がもつれて転んでしまい左膝を激しくぶつけてしまったけれど、これで厄落としが出来たようだ。穏やかな陽射しがあり、行楽には絶好の暖かな一日である。午後は北野天満宮へ梅を見に行く。梅は例年よりもかなり遅れているということで、まだまだこれからという枝も多い。人出も多かったけれど、混雑の前に無事通過という感じで濃い香りの中でさまざまな色合いの梅を愉しむ。撫で丑の膝と頭もしっかりと撫でる。夕刻は四条通りの店など見て歩き、組紐の室内飾りや匂い袋など購う。祇園まで歩いて夕食をとり、花灯路と夜間拝観の初日というので、予定外だったが円山公園から高台寺を目指す。枝垂れ桜はまだ開いていないが、ライトに浮かび上がったその姿は霊力とでもいうしかないような威厳を持っていて大いに圧倒されてしまう。「ねねの道」などという所へ出ると何とも激しい混雑にいささかならず気持ちが萎えてしまうが、せっかく来たのだからと行列に並ぶ。池に映る風景が美しく、また青々とした竹林を歩くのも心地よく、立ち寄ってよかったと思い直す。クラシックの歌曲が流れるアンティークな喫茶店で一休みして京都駅ビルの宿に入る。さて明日は知人にも今回の京都旅行の中の、私のメインイベントにつきあってもらうことにする。

  2006年03月11日

• お宝かも？

  久しぶりに一日良く晴れた。陽射しに春の気配を感じる。梅の開花は遅かったのに、桜の開花予想は例年より早目という。３月は急激に暖かくなりそうだ。恒例の用事の帰りに立ち寄ったデパートでは、雛人形に替わり五月人形や鎧冑飾りが並んでいた。書店ではいくつか雑誌を購入する。世界的に有名になった「カリスマ主婦」栗原はるみの「すてきレシピ」の最終号もその中の１冊だ。日常の生活を愉しむさりげない工夫が気に入って、９６年の１号（実は１号だけはタイトルが「暮らしのレシピ」になっている）から毎号購入し続けていたので、これで「すてきレシピ」全３９巻のすべてが揃ったことになる。そんな意識はなかったけれど、１０年越しのコレクション、ご本人がこれだけ有名になると、ちょっと自慢できるお宝かもしれない。

  2006年03月04日

• 寒い夜は

  気温の変化が激しい。今夜はかなり冷え込んできた。先日、気まぐれで買った蜂蜜に興味を惹かれている。ずいぶんいろいろな種類があることを知らないわけではなかったが、予想外の花のものが結構あるものだ。今回買ったのはユーカリとマカ。喉の保護と、疲労回復・リラックス効果を狙った選択である。マカは、癖が強いが体力の回復には良いように感じられる。しかし、マカの蜂蜜と言ってもさまざまな種類があって、薄い色のものからかなり黒っぽいものまで揃っている。その蜂蜜をどう使っているかというと、風邪や花粉症対策としてレモネードにして飲むのが、ここのところの楽しみである。

  2006年02月24日

• 歌仙絵の世界

  予想外に仕事はあって気疲れするが、６時前には切り上げる。金曜日は７時まで鑑賞できるので、まず一度見ておこうと出光美術館へ、「歌仙の饗宴」を見に行く。佐竹本が特集されていると聞いていたので、もちろんそれを期待していたのだけれど、それ以外にも、少し前から興味を持ち始めた岩佐又兵衛の作品も多く、人麻呂像の比較なども面白かった。一部の例外を除いて背景等が一切描かれない歌仙絵の中に描かれた硯箱の存在など、指摘されて初めて気づいたけれど、興味を惹く解説もあって、ちょっと調べたいものが増えてきた。展示替えがあるので、時間が取れればもう一度見に行きたいと思う。そんなことを思っていたら、今テレビで、百人一首のアミューズメントスポットが京都にできたことが伝えられていた。定家の「時雨亭」をあきらかに意識した「時雨館」というので期待したが、テレビでみる限り、ゲームセンターのような印象を受け、ちょっとがっかりする。

  2006年01月27日

• 論語を手にする

  アフター５、丸の内の大型書店のギャラリーにフラリと立ち寄り、「第19回慶應義塾図書館貴重書展示会『論語の世界』～現代に生きる論語～」を見る。論語そのものよりも、訓点とか書き入れだといった、研究者や学習者の姿勢が見えるものが面白い。また、かつての所蔵者に「古代国語の音韻について」等を著された橋本進吉先生の名前を見つけて、何だか感動してしまう。会場の一角に、実際に書籍を手にとって見ることができるコーナーがあった。虫食いの痕も痛々しいものもあったが、その中に本文の一丁めの紙の間に銀杏の葉が貼りついているのを発見した。しおりのように紙の表に挟まっているのではなく、二つ折りで綴られているその内側にしっかりと貼りついているのだから偶然に入ったものとは見えない。もしやと思って２巻めを確認すると、やはり一丁めに同じように銀杏の葉が貼りついている。しかも、同じような場所に、１巻にはきれいな扇形の１枚が、２巻には真ん中にくびれの入ったＶ字型の１枚がである。風流というか粋というか、何とも気持ちよく「ヤラレタ…」という感じがした。

  2006年01月26日

• 書斎を飾る

  先日購入した同郷の「風の画家」中島潔のリトグラフが昨夜届いた。包みの大きさにたじろぎ、雨に気持ちが萎えていたので、昨日は開梱を諦めた。一転、予報どおり晴天となった日曜日、早速荷解きをした。厳重に梱包された和額装のリトグラフのタイトルは『ほたるこい』。手元に来たのは３００枚中の２０３枚め。和装なので漢字の署名に落款が入っている。蛍の飛び交う宵、危うい橋の上に子供たちと子犬（うめ吉）の愛らしい姿が描かれている。失われてしまった懐かしいものがそこにあるのはもちろんで、それに対する郷愁がこの絵を求めた大きな動機だろうと思う。赤ん坊を背負っている子、お尻を出しておしっこをしている子も描かれているが、皆あどけない表情につい頬が緩んでしまう。一方で、橋の下に描かれている竹は墨絵を思わせるし、淡いグラデーションで描かれた山の色の重なりは王朝継紙を連想させ、ちりばめられた星と蛍は箔でも散らしたようでもある。ああ、いいなあ、好きだなあといくらながめても飽きない。しかし、飾る場所がないなあとさんざん悩んだ挙句、散らばっていた小物を作業台へ移して、とりあえず机の上を明け渡す。複合機と妙なバランスを机の上で保っている。売り場の人も目の高さに飾って欲しいと言っていたし、安定化の努力は必要だけど、当面はこれでよしとする。ああそれにしても、見ているだけでなんだか和むなあ。

  2006年01月15日

• カラオケ三昧

  ひょんなことから妙な集まりがあって、アフター５に、腹ごしらえをしてから少人数で３時間歌いまくる。まあ憂さ晴らしというところになるのだけれど。レパートリーもなくなって、十数年ぶりなどという歌も歌ったりする。思った以上に自分の声が変わっていることを知る。どんな楽器を演奏するよりも歌う方が体力を使うというが、声も嗄れてくるし…、首の凝りは気になってくるしで歌い疲れた感じもするが、「いや～、疲れがふき飛ぶねえ」という声を聞くと、確かにそんな気もする。それにしても、なんとも不思議な時間を過ごした。今夜はグッスリ眠れそうだ。

  2006年01月13日

• 甘味めぐり

  今年最初のクリニックの日。予約の時間までかなり余裕があったが、仕事に区切りがついたので、少し買い物でもするつもりで早めに職場を出る。と、地下鉄の駅でかつての同僚とばったりと出会う。かねてから甘味めぐりをしようと言いながら実行していなかったのだが、途中下車をしてたい焼きを食べようというので誘いに乗る。四谷から四谷三丁目まで歩きながらたい焼きをご馳走になり、甘納豆を買い、洋菓子店を覘く。３０分ほどの寄り道だったが、お腹も充たされ、軽い運動にもなり、クリニックにもちょうどよい時間となった。思いがけない寄り道もたまには楽しいものだ。

  2006年01月11日

• ３コインショップで

  寒さが日毎に厳しくなる。東京では昨日初雪が降ったというが、我が家でもエアコンからの排水がコンクリートの上で凍っていた。マスクをしていても鼻の奥が冷たくなって、軽く眩暈を感じる。ちょっとアブナイ。畳の部屋でもやはりこれだけ冷えるとやはり裸足では冷たい。靴下ではキッチンのフローリングで滑る。どうしたものかと思っていたところ、東京駅近くの３コインショップでフリース地に滑り止めのついたルームソックスを発見、ためしに購入したところ非常に具合がよい。肌触りがよいし、暖かいし、一番気に入ったのは滑り止めの効果。足裏全体に施された滑り止めは予想以上の効果で、始めはブレーキが利きすぎて、思わずつんのめるくらいになった。この寒さは２週間くらいは続きそうという。ルームソックスはしばらく手放せそうにない。

  2005年12月12日

• 冬が来る前に

  明日から冬の空気に入れ替わるという予報だし、今日は陽射しがいっぱいなので、秋の名残を探しに、わずかな時間だけれどお昼休みの日比谷公園散歩に出掛けた。鮮やかさは今ひとつだと思うものの、さまざまな彩りは、思ったよりも豊富で愉しめる。特にデジタルカメラなどに収めてしまうと、それなりに美しく写ってくれる。紅葉の写真は、後日メインサイトにアップしようと思っているので、今日のところは、紅葉以外でちょっと面白いと思ってカメラに収めたものの中からひとつ取り上げたい。何だか一本だけ蔓がスルスルと上を目指しているのが目立っていたので、ついカメラを向けた。

  2005年11月29日

• 連日の名筆鑑賞

  時間がないので諦めかけていた五島美術館の「やまとうた一千年」展を、思い切って見に行った。今年は、古今和歌集成立から千百年、新古今和歌集成立から八百年に当たるということで、八代集の写本が中心に展示されるということで、ぜひ行きたいと思いながら、風邪でダウンしたりしていたせいで今日まで見にいけなかったのだ。五島美術館の展示はいつも、料紙や装丁、本の由来などまで細かく解説されているので、初心者には有り難い。貫之、俊成、定家、寂蓮、公任、西行、光悦…、間近に味わう。それぞれの良さがあるのがよくわかる。砂子や切箔、墨流しなどの工夫の美しい料紙を見ていて、「やっぱり和紙の工夫はすばらしいなあ」と感心していたら、隣で「下絵拾遺抄切」を見ていた年配の女性の二人連れが、「こういうデザインを見ていると私はイタリアを思い出すのよね」と言っているのが聞こえてきてびっくり、人によってそんなに違う感想を持つのかと不思議に思う。今回は予想外に紫式部の書（久海切）を目にすることができた。かなり薄く細い筆でかなり見え辛いものではあったけれど、個人的にはとても興奮してしまった。もう一つのお気に入りは光悦の版下書きによる木版の巻子本、「新古今集抄月詠歌巻」。胡粉を引いた厚様に雲母で美しく大胆に描かれた模様は月光を思わせ、和歌の散らし書きも木版とはとても思えなかった。う～ん、眼福、眼福。

  2005年11月19日

• 書きすさぶ

  アフター５も金曜日は遅くまで開館している美術館が結構あるものだ。職場に近い出光美術館も金曜日は７時まで見ることができる。仕事を終えてからでも小一時間はあるので、今日も「平安の仮名　鎌倉の仮名」展を見に出掛ける。和歌を記す文字という役割を持つ仮名が、時代の移り変わりに伴う和歌の用いられ方の変化に伴い、その表現方法も変化した…という視点でかな書を時代別に見られるものと聞いて、面白そうだと思った。実際に「手鑑」も展示されていたけれど、展示全体が「手鑑」になっている感じで、知識がない私などにも流れがわかるような説明書きがあって、個人的な興味はかなり満足できるものだった。その解説の中で、平安時代の和歌の役割の多くが思いを伝えるための贈答歌であり、その書き方は整然としたものではなく、「乱れ書く」あるいは「書きすさぶ」ものこそがふさわしいといった記載があった。思いの激しさ、情熱といったものが感じられて、「書きすさぶ」ということばに、ちょっと打ちのめされたような気分である。

  2005年11月18日

• リレーの思い出

  運動会ももうほぼ終わったのだろうけど、昨日の続きで陸上の話をひとつ。もう３０年くらい前のことになるが、高校では春ころに県の陸上競技施設（オールウェザー対応の４００メートルトラックがある！）など使って、全学年３６クラスのクラス対抗の陸上競技大会を行っていた。コルクの小さな粒のような素材が敷き詰められたトラックは極端にブレーキが利くので、慣れない私たちが走ると、ゴール地点で急にスピードを緩めると大きくつんのめって前に倒れてしまうし、転ぼうものなら皮膚が火傷のようになったものだ。高校に入っても身長１５０センチに満たない私は、しかし足が速かったので、３年連続で２００メートル走と男女混合リレーのクラス代表だった。２００メートル走では、バレーボール部を引退した後の３年のときでも陸上部の２年生と大接戦を演じたことは、クラスメートらの物凄い声援などもひっくるめてとてもよい思い出になっている。しかし、本当に懐かしく思い出すのは男女混合リレーである。１００メートルずつを確か１０人くらいでリレーしたのだと記憶している。バトンゾーンを利用して男子が走る距離を長く、女子の距離を短くする作戦を立てたりしたものだ。クラス対抗なので、それはもう結構真剣に話し合い、練習をしたものだ。それでもこの競技の見所は、実は別のところにあった。最後に５０メートルだけクラス担任が走るのである。高校なので、スポーツには無縁の年配の教師も多い。どんなに生徒がリードをしても、担任がご老体で大逆転されてしまうなどということがままあった。しかし、担任もクラス対抗なので、皆真剣に走っていた。普段見られない教師たちの姿に思わぬ親しみを感じたこともある。２年のときの担任は３０代の数学の教師だったが、張り切りすぎてゴール地点で転倒し、肉離れを起こしたくらいだった。勝ったのか負けたのか全く記憶をしていないのは、ちょっと不思議な気もするが、きっと勝ち負けなど問題ではなかったのだろうと思う。

  2005年10月28日

• 為末大のハードリングの秘密

  もう二週間ほど前のことになるが、タイマーセットのためにたまたまつけたテレビの深夜番組に４００メートルハードルの世界陸上銅メダリスト為末大が出ているのを見つけた。しかも、極めて技術的な話をしているのだった。実は私は小学校の３年生のときから突然足が速くなり、特にハードルは得意だったので、つい見入ってしまう。ハードルは跳ぶのでも越えるのでもなく滑るイメージ、腕の抱え込み方（肘の高さ）で腕の振り幅、スピードを変えることで、４段階のギアチェンジを細かく行うこと、風速１メートルの違いが一歩の幅を１０センチも変えてしまうのであって、ハードルを越えた瞬間に次のハードルまでの距離を計算して歩幅をかえること、感情のコントロールができないと４００メートルなどという競技では勝てないのであって、激情むき出しの１００メートル走の選手とは草食獣と肉食獣くらいの差があることなどを、わかりやすく、何の衒いもなく淡々と語っていたので、面白く、翌週の続きまで見てしまった。さすがに一流選手というものは違うと素直に降参してしまう。為末大は、完璧なまでにプログラミングされた４段変速の草食獣だったのだ。

  2005年10月27日

• 「運の石」　出張旅行記

  日曜日に続いて今夜も地震があった。地下鉄に乗っていたのでかんじなかったのだが、途中駅のエレベーターが止まっているという放送があった。ようやく天気が回復してきたがその分寒くなったように思える。久しぶりに月が見えた。満月を少し過ぎたものの、十三夜の裏返しというようなところでなかなか美しい。火星も横に並んでよく見えた。出張時、散歩の際にデジカメスケッチをしてきた。そのうちメインサイトにでも整理したいと思うが、ここでひとつ紹介したい。海野町という所の昔ながらの商店街の一隅で見つけた「運の石」である。「海野」と書いて「うんの」と読むところに、この石の由縁があるらしい。上田城と海野町を作った真田真幸、幸村父子の霊のこもった石を九度山から運んだのだといい、「右から左へなでると悪運をはらい、左から右になでれば良い運が開け、輝かしい未来が約束される」というご利益があると書かれていた。今のところ特別はらわなければならない悪運もないように思えたので、左から右へ撫でてみた。さて、いつどのような輝かしい未来が訪れるのだろう。

  2005年10月19日

• 日比谷夜能

  アフター５、同僚と日比谷シティーで行われる能を見に行く。狂言は「仏師」、能は「小鍛冶　黒頭別習」とちょっと珍しい演出の曲だった。仏像造りの狂言と刀造りの能の組み合わせなので、テーマは「ものづくり」かなどと勝手に思う。いずれもテンポの速い曲でわかりやすく、狂言ではしっかり笑えた。ときどきヘリコプターに邪魔されたりしながらも、脇正面も橋掛かりの傍、揚幕の脇という席は、演者が歩くときに舞台の軋む音まで聞こえて案外に楽しめた。職場の近くで仕事帰りに気軽に雰囲気を楽しめて現実をふっと離れることができるという意味では、フルタイムで働いている人間としてはありがたい。開演前や休憩時間にプログラムやコーヒーの売り子がずいぶん行き来するのにはちょっと驚いた。終演後は、特典の食事券を使って「夜能御膳」をいただきながら、余韻を堪能した。お天気もよく、風は少し強かったけれどそれほど冷え込むこともなかったのはこの時期としてはラッキーだったのかも知れない。

  2005年10月13日

• 「良い『気』を感じたんですけど…」

  用事があって出掛けたついでに思いついて両国の「江戸東京博物館」へ出掛けたら、「都民の日」ということで、都民ではないのに常設展は無料でみることができた。面白いものがたくさん見られたが、特別展「美しき日本－大正昭和の旅」展で、川瀬巴水の作品を見られたことが予想外のことだったので、個人的には非常にうれしかった。このところ、何かとラッキーな出来事が続いているので、ふと目についた売り切れ間近というジャンボ宝くじを買って、帰りに立ち寄ったターミナル駅の地下街で、「ちょっといいですか？」とワイシャツ姿の３０歳前後の男性に呼び止められた。こちらは、買い込んだ本など重い荷物を持って、歩き疲れてぼうっとしていたせいもあって、道でも聞かれるのだろうと、「はい？」とつい足を止めた。すると彼は突然「とっても良い『気』を出しておられるんですけれど…」などと言う。新興宗教か何かの勧誘だろうと気づいたので、その後の彼の台詞には耳を貸さず、「いえ、いえ」などと笑顔で拒絶しながら、すぐに振り切るように歩き始めたのだけど、しばらく「そうですか？とっても良い『気』を感じたんですけれど…」と未練がましかった。「いい気」になってはいけないけれど、本当に何かオーラのような良い『気』を発しているのだったらいいなあ。

  2005年10月01日

• 面掛行列・鎌倉　御霊神社例祭

  日曜日に重なったので、人出は気になったものの、午後から鎌倉へ出掛ける。まずは、「紫式部」が見頃というので「おんめさま」こと大巧寺に立ち寄る。鎌倉駅に近いが意外に穴場の花の名所である。いきなり見事な紫式部に迎えられる。水引、酔芙蓉、秋明菊等々いずれも十分楽しめる。そして、今日の目的の面掛行列を見るために長谷へ移動する。権五郎景正の命日、９月１８日は御霊神社の祭礼日と定められており、県の民族無形文化財に指定されている面掛行列が行われるのだ。江ノ電の長谷駅から線路を挟んで一旦大仏とは反対側へ出て、線路沿いを西へ向かう。坂ノ下の地区は注連縄が張られていて、すぐに太鼓の音が軽やかに聞こえてくる。祭囃子というものは、何だか身体に染み込んでいるらしく、気分が自然に浮き立ってくる。たまたまであった役員らしき人から神輿には２５１年の歴史があること、行列のおかめには触ってよいこと、お榊をわけていただけることなどを伺う。一旦御霊神社に入って、すでに始まっている神楽を見物するが、狭い所に人が集まっていてほとんど近寄れない。もう一度戻って行列の出発を待つ。子孫繁栄、幸せを招くというその行列は、中でも伎楽面のような面をつけた十人の存在が特徴的である。爺、鬼、異形、鼻長、烏天狗、翁、火吹男、福禄寿が揃いの装束で通った後に、お腹の大きい阿亀（おかめ）、女（取り上げつまり産婆）が続く。阿亀は頼朝の子を身籠った村娘というが、その名前が菜摘御前と伝えられるという。日曜日に重なった今年、エッセイスト丘菜摘としては見ない手はない。そして、しっかり見、ちゃんとお腹に触らせてもらった。写真は阿亀と女。その後長谷観音に立ち寄り、萩を楽しみ、海を望む。良い写真がたくさんとれたので、メインページに近くアップしたい。夜はお月見、綺麗に晴れてこちらも十分に楽しめて満足、満足。

  2005年09月18日

• 「一人を慎みなさい」

  クリニックや美容院では普段は読まない女性週刊誌を読むことがある。先日のクリニックで読んでいた週刊誌で、瀬戸内寂聴が出家をする際に今東光に相談にのってもらったときのやりとりについて書かれていた。それを読んで、今東光を見直してしまった。いや、作品やゴシップから勝手にもっと「生臭さ」を残した人だと思い込んでいたのだけれど、今回の寂聴の話によれば、少なくとも彼女を見事に救った出家者であることに間違いはない。出家の願いを誰に相談してもなかなか本気と思ってもらえず、思い余って、アポイントもなく今東光を訪ねた寂聴の話を、香で清めた仕事場で聴き、「急ぐんですね」とそれだけ確かめたという。今日のタイトルは、その今東光が、得度剃髪して挨拶に訪れ、帰ろうとする寂聴を呼び止めてかけたことばである。人のいるところで身を慎むのはあたりまえのこと、誰も見ていない、一人のときこそ慎みなさいという言葉である。う～ん、自分を省みると、完全にノックアウトされる想いである。

  2005年09月05日

• フラフラ寄り道

  仕事が終わったのが中途半端な時間になった。まっすぐに帰ろうと考えていたはずなのに、東京駅で地下鉄を降りると、直進してＪＲに乗り換えるべきところ、無意識に左折してしまった。そこで、ああ、書店に寄って行こうとふと思いつく。そして、書店の前で、「奈良絵本展」の会期中であるのを突然思い出す。あぶなく見逃すところだったのを、こんな形で思い出したのは、きっと見るべきものだからなのだろうと感じる。奈良絵本は、いわゆる御伽草子の類だが、展示会があまり知られていないのか、人が少ないのでゆっくり楽しむことができた。それぞれ特徴的なものだった中で、文字も絵も気に入ったのは『蓬莱山』の絵巻だった。展示を楽しんだ後、普通の売り場をのぞいて、ちょっと変わった画が目にとまった。こちらは、京都染織図案家「吉田龍史　匠の技展」、帯の図案を描く人の手描きの画の展示即売をしているのだった。帯の図案を思わせるものも確かにあるけれど、本人に話しかけてもらって、技法や絵の具などについても少しお話を聞くことができた。大きさも値段も手ごろだったので友人へのプレゼントも含め数点を購入。図案家の手書きの絵葉書もおまけしてもらった。寄り道としてはとても楽しかった。

  2005年08月30日

• うれし、はずかし、誕生祝い

  アフター5に久々に職場の友人たちと食事に出掛ける。銀座のデパートの中のフレンチレストラン、クーポンなどを出しているせいか、若い女性客が目立つ。ああ、年配の私たちの存在の方が目立っていたかもしれない。ポラロイド写真撮影と陶器のプレゼントというバースデー企画のある店を選んだという友人の話で、三大珍味が味わえるコースを食す。もうひとりの友人はキッチンの中の人が皆外国人であることを不思議に思ったらしい。フレンチのお店ならシェフが日本人でなくてもおかしくない、むしろ接客が日本人でないと難しいのでフロアの方は日本人にしたのでは…と私は思う。見かけよりもボリュームが感じられた食事が済み、デザートへと移るとき、突然キッチンから「HAPPY　BIRTHDAY　TO　YOU」の歌が聞こえてきて驚く。シェフたちが歌ってくれているのだ。その歌を伴奏にしてケーキがテーブルに運ばれてくる。満席のお客さんの注目を浴びてしまう。この歌をこんなに長く感じたのはたぶん初めてだ。「TO　AIKAさん」などと言われて思い切り照れてしまう。３人で写ったポラロイド写真は可愛らしいものだったけれど、その分粗が目立たず、とびきりの笑顔で写っていたので却ってよかったのかも知れない。きっと大切な記念の一枚になると思う。

  2005年08月18日

• 炎天下の散策　夏休み８日

  夏休み唯一というべきイベントの日常からの脱出は、都内の公園めぐりにした。昨日は小石川後楽園、今日は向島百花園を歩くことを今回の主題にした。ずいぶん蝉の声を聞いた。百花園ではそこら中に蝉の抜け殻が見られた。ザリガニだのメダカだのも久しぶりに間近でたくさん見た。トンボは産卵の様子さえ見せた。しかし、本当に暑すぎる。特に今日は熱中症も心配なくらいグッタリしてしまった。明日一日、ゆっくり休養して長い休暇を終えることにする。

  2005年08月06日

• 夏休み第２日

  決まった時間にきちんと起きて、大倉集古館へ、本日最終日の与謝野晶子展を見に行く。基本的には「書」にウエイトがある展示会だったのだろうけれど、なじみ深い歌の色紙や短冊をじっくりと見ていたらずいぶん時間を費やしていた。最大の目的だった歌百首屏風は、期待どおりのものだったけれど、それ以上に興味深かったのは歌稿ノート。物凄い推敲の跡が、晶子の短歌が生み出されるまでの格闘とも言える過程をそのまま見せる。限られた文字数の中で、より適切な表現を求めて徹底的に行われる言葉の抜き差し…、やはりもっと言葉に敏感にならなければ…。

  2005年07月31日

• 同世代の訃報

  しばらく姿を見かけなくなったと思っていたら、昨夜、駅の売店に並んだ夕刊紙の見出しで「杉浦日向子急死」の文字を見てどきりとした。私より１歳だけ年上の、まさに同世代のあまりに早すぎる死である。同世代ながら、肩の力の抜けたしなやかな「隠居」生活ぶりを、ちょっと真似てみたい気がしていた。本業だった漫画での活躍はほとんど知らなかったが、彼女が語る江戸のこと、蕎麦のことは、聴いているこちらもつい微笑んでしまうほど愉しげで、時間が合えばテレビ出演を見たし、何冊か著書も読んだ。今も東京ではなく江戸で生きている人なのだろうと思ったものだ。もっと歳を重ねて、本当に一般的な「隠居」の年齢になってから書いたものも読んでみたいと思っていたのだけれども、それが叶わなくなったのは残念である。ほんの１週間ほど前、たまたま目についたので買ったばかりの『百物語』の文庫本がまだ手付かずのままである。何か因縁めいた気がしてしまって、読むのが怖いような気がする。

  2005年07月26日

• 高校生の気分に戻って

  日記を書こうとして、妙なボタンが登場しているのに気づく。フォントなどの飾りつけが簡単になったようだけど、今日は使わない。ちょっと見ておきたい古本があって、アフター５に神保町の古書店に駆け込む。９時１０時閉店が当たり前になっている新刊書の書店と違い、この時期でも神保町の古本屋の大半は６時半には閉まってしまう。仕事を終えてからではなかなか見に行くことができないが。欲しいものがあるときは目標を絞って駆けつける。閉店まで粘って、しかし今日は結局目指すものは手にせず、その後に立ち寄った新刊書店で数冊買い込む。バーゲン本の中に初版復刻本のシリーズがあり、島崎藤村の『若菜集』、『落梅集』、『破壊』の復刻本セット定価１８８００円だったものが４７００円になっていたので思わず買ってしまう。藤村の詩には高校時代にすっかりのめり込んだことがあって、当時いつの間にか暗誦してしまった詩は、今でも完璧に身体に染み込んでいる。その初版本の雰囲気を味わえるとなると後先考えることもなく買ってしまい、嵩張る重い荷物を持ち帰り、今また置き場に悩んでいる。

  2005年07月13日

• 千夜から四十八夜

  自分のブラウザーの「お気に入り」に登録して読み続けている松岡正剛の千夜千冊は、千夜達成から一年、胃がんの手術を乗り越えてその後再開され、昨夜は千夜を超えてから四十八夜めが加わった。ここは、取り上げられる本も非常に多種多様であるし、その膨大な記事は読むだけでも私としてはかなりのエネルギーを要する。今回は『北原白秋集』が取り上げられている。松岡氏の「白秋遍歴」が少々感情的なくらいに熱く語られていて、今日はつい一気に読んでしまった。「週末エッセイスト」として、ときどき立ち戻る白秋の詩の世界だけれど、しばらく「ご無沙汰」していたことを思い出し、久しぶりに今夜はベッドに持ち込もうと思う。偶然に開いたページでどの詩と出会うか、何だかドキドキしてしまう。

  2005年07月08日

• 巨大な七夕飾り

  昨日予告したとおり、近所に突如出現した七夕飾りを紹介する。トラックや建物からこの笹飾りの大きさがお解かりいただけるだろうと思う。この家は毎年七夕飾りとクリスマス飾りなどもして楽しませてくれているのだが、今年の飾りつけが、七夕飾りとしてはちょっと、？という感じではなかろうか。水遊びに使うものと思しきビーチボール、飛行機、イルカ…、紙細工にも宇宙人だかクラゲのつもりなのだかわからないものが見える。この発想はどこから来たのだろう。ちなみに、これを飾っているのは農家とは言え、普通の民家である。この飾り付けが長く楽しめるように、七夕までは雨が降らない方がいいなと思いながら…。

  2005年06月25日

• 東京は真夏日

  忙しい１週間の最終日、予想以上の大忙しとなったが、何とか乗り切る。ほっとしたくて、まだ明るさが残る中、日比谷公園を歩いてみる。先日鎌倉で撮影できなかったのが心残りだったカエデの種をデジカメに収める。プロペラ状のものが御覧いただけるだろうか。その他にも、ウメやカリンなど、いろいろな木が実を結んでいる。色が変わっていて一番目立つのがウメではないだろうか。他の実はまだまだ葉の色に隠れている。他にも面白いものが撮影できたと思うので、徐々にサイト上にアップしたい。その後、銀座まで足を伸ばして、久しぶりに日本茶のお店で一服する。日本茶、甘味つながりで鎌倉のお店を紹介してもらった。近いうちに訪ねてみたい。自宅近くに、突如七夕飾りが登場した。今日飾りつけたものだろう。それがまた面白いのだけれど…。明日明るいうちにまたデジカメに収めたいと思う。

  2005年06月24日

• 梅雨の晴れ間に空を見上げて

  予想以上によく晴れて暑くなった。この季節に人目を惹くのはアジサイだけれど、晴れた空を見上げていて、気がつくとスギの仲間が緑色で球形の小さな松ぼっくりのような雌花？をつけている。枇杷も実をつけている。イロハカエデ（たぶん）は薄く透けた二枚羽のプロペラのような種を枝の先端につけている。カエデの撮影には失敗したので、今日はスギの雌花の写真をアップしておく。誰にも気づかれなくても、時を違えずに生命の営みは繰り返されているのだなあと妙にしみじみと感じてしまう。

  2005年06月18日

• ベンジャミンとサンタンカ

  観葉植物が欲しいと以前から考えていたが、急に二つの鉢植えを頂いた。エッセイ集の出版祝いである。一つは腰の高さまであるような三つ編み仕立てのベンジャミン。びっしりと茂った葉が丸く整えられたところから、少し黄色がかった若葉が上へ何枚か伸びてきている。菜摘の名前に、緑がよく茂ったこの木は相応しかろうと…、そして書斎には安らぎを得るための緑は絶対に必要だと選んでくれたものである。もう一つは机の上に置くのにちょうどよいくらいのサンタンカ。アカネの類ということで紅い小さな花が球状に広がる有様は、花火をそのまま花にしたようだ。エッセイストととして根付き、花開くようにと鉢植えにしたと聞かされた。いずれも心のこもったプレゼントでうれしい。そして水と日当たりを十分に与えれば育て易い種類を選んでくれたのもありがたい。こんなプレゼントをしてくれる友達に恵まれていることを感謝したい。私もこんなふうに心遣いをしたいと思う。

  2005年05月14日

• 丸顔の三頭身の…

  帰りに日本橋のデパートに寄り道して、中島潔の絵を見てきた。かつてここの日記にも書いたと思うが、同郷の中島潔の童画が好きである。彼は還暦を機に画家としての原点であるパリに一年暮らしたということで、パリでの作品と日本での作品がそれぞれまとめられていた。私が大好きな日本の童画に登場する、中島潔の母親の化身であるうめ吉という犬も、パリの絵に登場するのはもはやうめ吉とは無縁の、明らかに洋種の犬になっていた。それでも彼自身は、パリの人を描いていても自分の絵には日本がある。見たものをそのまま描けてはいないと深刻に悩んだという。クロッキーなどもずいぶん重ねたようだ。しかし、そういった悪戦苦闘を経て、最終的にはまた日本を描こうと、早く日本に戻って自分の思っているものをちゃんと描きたいと思ったそうである。日本の四季の微妙な移ろいを知らない外国人にも、その中ではぐくまれた日本の心は通じるものがあるだろうと思ったという。人生輪廻はしない、四季は巡るのではない、今年の春は去年の春と同じではない、同じ時間は二度とない、だから美しいのだという彼の言葉に、今後の作品への期待が高まる。それでも私が一番好きなのは、丸顔に団子鼻の三頭身の幼子達、野球帽のつばを後ろに回して被り、膝に接ぎの当たっただぶっとしたズボンを穿いた男の子や、布製のお人形を引きずって、内股で草履をつっかけてお花畑に立ち尽くしたり妙に生命力を感じさせるお地蔵様に手を合わせている女の子、女の子の風になびく着物の裾を咥えていたり、男の子と一緒に風の中にボールのように飛んでいるうめ吉であることに変わりはないのだけれど。

  2005年05月13日

• 風に舞う…

  お昼休みは、デジタルカメラは持たずに日比谷公園を少し散歩した。陽射しはかなり強くなっている。年に一度の１０円カレーで有名な店でテイクアウトのオムライス（商品名はオムレツライス）を買って、噴水の脇に腰掛けてお日様を背にしてランチを摂る。ポカポカを通り越してちょっと汗ばんでくる。日焼けも気にしなければならない。若葉が急に目立つようになってきた。淡い緑がとても美しい。それでもこの時期に葉を落とす木もあって、信号待ちをしている間に、かすかな風に紅く色づいた固い葉っぱがハラハラ、ヒラヒラと次々に舞い降りて、きれいだった。

  2005年04月15日

• 一期一会

  行く度に思いがけない出会いがあったり、面白い話が聞ける場所がある。銀座のマツ○カヤデパートの裏にあるビルの地下の日本茶を飲ませてくれる小さな店である。脱サラのご亭主の話が面白く、そこに集まる客は一人で来る人が多いがこれがまた個性的な人が多い。そこで普段は知ることのない世界を垣間見ることができる。今日もデパートでお茶を売っているお茶のアドバイザー、６人の日本チャンピョンを育てたカリスマ理容師、女性客でも行ける生演奏が聴けるラウンジのママと言った人たちと出会い、亭主の取り持ちでそれぞれの世界の興味深い話を聞くことができた。いろいろな意味で多くの刺激を受けた。初対面の人たちだけれどもそれぞれの頑張りが伝わって来る。私もエッセイ集を披露し、亭主には１０冊も買っていただいた。思わぬ人に支えられるものである。

  2005年03月24日

• ランチ難民になってしまう…

  先週都合で行けなかったいつものイタリアンレストランに今日行ってみたら、何と先月いっぱいで閉店になっていた。あまりに突然のことにびっくり、先週いつもどおりに訪れなかったことを少々後悔した。すっかり顔なじみになったマスターがいつも明るく声をかけてくれていた。先々週のランチの際、注文の品を待って文庫本に目を落としていたら、マスターが顔を覗き込むようにして「卵だめですか？」と尋ねてきた。「いえ、そんなことはありませんけれど…」と困惑しながら答えると、ハッと気づいたマスターに「ごめんなさい。席、間違えました」と肩に手をかけられた。そのときのマスターの目は充血していて、ずいぶん疲れているのではないかと気にかかったが、忙しそうな彼に特に声をかけることもなく、「ごちそうさま」と立ち上がり、見送ってもらったのが最後になってしまった。実はこの店で見た出来事を元に書いた作品が出版予定のエッセイ集に入っている。出版されたらマスターにプレゼントしようと考えていたのだが…。う～ん、何とも心残りである。

  2005年03月05日

• 同い年だモン

  日中出かけていたときに小学校時代の友人から電話をもらったというのでこちらからかけ直す。私の小学校時代は転校ばかりで、六年間を五つの学校で過ごしたのであって、彼女と一緒に過ごしたのは五年生の二学期からの一年間だけである。その後は文通を続けていたものの、何年も前からはほとんど年賀状だけのお付き合いになっていた。今年の年賀状でエッセイ集出版を伝えたところ、非常に喜んでくれて、先月の末に届いたはがきに電話番号など書き込んであったので、近いうちに一度電話をしてみようと思っていたものの、こちらは平日は帰宅が午後十時前後、まだ小さい子供のいる家への電話ははばかられてついときを過ごしてしまった。お互いの近況報告という感じではあるものの、すぐに打ち解けて話すことができたのは自分でも不思議なくらいだった。全く違う人生を歩んでいるのだけど、同じような迷いや悩みが生じている様子、そう同い年、友達だものね。

  2005年02月26日

• 地震で早起きした一日

  午前五時前にかなり大きな地震があった。しっかりと目が覚めてしまい、普段から六時起床の生活なので、結局早めに起きてしまう。ゆっくりと新聞を読んでいつもより早く家を出る。それが功を奏した形で、電車が遅れたのに遅刻せずに済む。昨日まで殺到していた仕事も今日は一息、若い人たちも手伝ってくれたので、心置きなくクリニックへ向かう。その帰り、今日は薬局へ行く必要がないので、その分ちょっとだけショッピングをする。古書店とパン屋さん。こういうところを少しでもうろうろすると、何だかにっこりしてしまう。ちょっと気にかかっていた古い時代小説の文庫と、明日のランチのためのレーズンバターパンなどを購う。駅前の大きなショッピングセンターの隅にはフラワーショップがあって、スイートピーやポピーが並んでいるのに気づく。こういう花を見かけるようになると、春は近いなあと、ほうっと安心するような心地になる。とはいえ、今夜はずいぶん冷え込んでいる。帰りの電車の中、たまたま通路を通った人の手にしていた新聞でリンボウ先生の「オー人事録。」が早くも掲載されているのを発見、買い逃さずに済んでラッキーだった。

  2005年02月16日

• 満足、満足

  目いっぱい好きなことをする休日にしようと考えていたのだが、乾燥で調子の悪かったコンタクトレンズがやはり破損してしまい、これがないと仕事にならないので急遽横浜のレンズ店併設の眼科へ向かう。検査の結果さらに視力が落ちていたので、結局もう一方も買い換えることになった。入荷はやはり来週半ばになるという。う～ん不自由だ。昼食を済ませて、予定の行動に移る。まずは有楽町の出光美術館で源氏絵展を鑑賞する。屏風絵が多かったが、やはり源氏の名場面は楽しめる。俵屋宗達も好きなのだけれど、今回最も気に入ったのは岩佐又兵衛の野々宮だった。風に吹かれるようにして立つ姿といい、少し上に向かう視線で遠い目をした表情といい、源氏の様子がとてもよく出ていると思った。お茶とケーキで一息ついて、夜は野方の区民ホールで行われたリンボウ先生のコンサートへ駆けつける。先生作詞の歌曲の数々を堪能した。『美しい星に』はピアノ伴奏版は「世界初の演奏」だったし、『夢の国へ -六つの子守歌-』は「野方も小さく見えた」り、「リンボウ先生が手を振って」くれていたりして楽しかったけれど、今回の私の目当ては『ゆけ、わが想い』を布施雅也のテノールで聴くことであった。そして、その演奏は期待以上のもので、音程の確かさといい、声量の豊かさといい、声の艶とハリといいすばらしかった。ちょっとゾクゾクしてしまった。

  2005年02月11日

• 少し遅めの初詣

  お昼休みに虎ノ門まで足を伸ばして、ビルの谷間にある金毘羅神社に初詣をした。場所柄、ビジネスマンやＯＬの初詣が多い。今年は良い年にしたいと、「苦しいときの神頼み」で、十日までの期間限定のお守りを受ける。「今年の恵方は西です。ですから東に祀ってください。」と言われる。「えっ、東に祀るんですか？」「そうです。西の方へ向けて、東側に祀ってください」と教えられてようやく納得する。やはり人気の御神籤も引いてみる。「八」番を引いて「末広がり」と喜んだら、そのとおり「大吉」であった。「こいつぁ春から縁起がいいわいなあ」

  2005年01月05日

• 百人一首

  駅伝のお陰で早起きしてしまう。初夢も特に覚えていない。今年は「寝正月」などということなく過ごした。何だか慌ただしいといえなくもないけれど。正月休み最後の一日を百人一首を眺めて過ごす。私の「お宝」というべきものが、十年ほど前に購入した「光琳かるた」の複製版である。最近も売られていたようだけれども、それとは製作会社などが異なる。社会人となってまもなく近所の書店で見て欲しいと思ったものの、あまりの高値に買わずにいたものを、十年ぶりくらいに「再会」したのを機にローンで購入してしまったものである。裏面は金箔が貼られていて、今日などでも手にすると体温で結露が生じる。もちろん取って遊んだりはせず、毎年お正月に毛氈または袱紗の上に広げて何枚か手に取って眺めて、ひとりでニヤニヤしているのである。くずし字も少しは読めるようになっていて（歌を覚えているから見当がつきやすいこともあった）、さらにニヤついてしまう。明日は御用始め、否応なく現実に引き戻される。その前に今夜はもう少し書物の世界に遊ぼうかと思う。

  2005年01月03日

• 買っちゃった複合機

  予定をこなした後、意を決して混雑が予想される横浜へ出る。念願の複合機購入のため、家電量販店に入る。予想どおりの混雑ではあったが、すぐにメーカーの女性販売員に声を掛けてもらえて、自分の需要と機種のスペックとのすり合わせを納得行くまでチェックして選ぶことが出来た。まあ、そんなにこちらが詳しいわけではないけど、使用目的ははっきりしているので、文字のスキャン機能、厚さのあるもののコピー機能、給紙の便宜、インクのコストなどをしっかりチェックした。結構大きな型になったので持ち帰りは大変だと思っていたら、二日後には無料で配送されるというので、購入を決した。値段は三万六千五百円、ポイントカードで十五パーセントのキャッシュバックがある。月曜日に配送されるので、二十三日の休日には設定をして、デジタルデータベース生活に入るぞと、手ぐすねを引いて楽しみに待つことにする。

  2004年12月18日

• 有給休暇の一日

  予定通り一日休暇。それでも、通常より一時間遅れで東京へ行き、所用を済ませた。休暇となると、気持ちが緩むせいか、電車の中ですっかり疲れを感じてしまう。まずアレルギーの医院に行き、「マロ」に「年末脂チェック！」と称して血を抜かれ、一層グッタリする。気を取り直して出光美術館へ、「『書の名筆―＜三色紙＞とちらし書き』展」を見に行く。紀貫之、小野道風、藤原行成、一休禅師、俵屋宗達、西行などの優雅な筆遣いを目にする。墨と筆の文字は、やはり活字とは違って、墨の濃淡、文字のかすれなどに書き手の息遣いのようなものが感じられる。いいなあと満喫した。この美術館からは実は職場のビルもよく見える。皇居のお堀にたくさんの水鳥が遊んでいるのも見えて、気分が違うと同じ景色もこんなにゆったりと見えるものかと改めて驚かされる。その後、ようやく今年最後のヘアカットを済ませる。いつもの美容師はおらず、別の人にカットしてもらうが、またもや「本当にまっすぐな髪ですね」と感心されてちょっと得意になる。昼間の時間帯だがやはり普段よりは客が多いようで、シャンプーをしてくれた若い人の手荒れを頭皮に感じて少し気の毒な気がする。その後少しショッピングで銀ブラをする。靴を買おうと思ったのだが、店員の手が空かず十分以上待っても全く対応してもらえる状態ではなく、諦める。そして最後には書店へ。ゆっくりできたのは久しぶりなのでまた文庫や新書を中心に数冊の本を購入する。まだまだしたいことはあったけれど、休養も大切なので今日はここまで、存分に愉しんだ一日に満足、満足。

  2004年12月17日

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