理由
エッセイ集には書いたことだが,携帯電話でメールを打つことには,非常に苦手意識があるので,緊急に必要があるときにしか打たないことにしている。なぜこれほどまでに苦手なのか,自分で考えてみたのだが,その結果,原因として,文字入力の煩雑さに思い到った。いわゆるテンキーをア行,カ行と割り付けることは,仕事で同じような作業をしていた経験があるので,私にとってもさほど難しいことではない。しかし,一つのキーに割り当てられている文字が多すぎ,打ちたい文字を呼び出すのに何度もキーを押さなくてはならない点は何とも煩わしい。例えば,「者」という文字を打つのに,「ま」,「み」,「む」,「め」という四文字を見送って「も」を出し,「の」を出すために同じ作業をもう一度繰り返して,さらに漢字変換までとなると何度キーを押さなくてはならないのか,ほとんど耐え難いものがある。これにカタカナや数字を混ぜようとすると,さらに入力モードの切り替えまで入り,もう訳がわからなくなる。しかもそれを右手の親指一本かせいぜい二本の指で操作しなければならないのがまた苦痛である。そして,このように入力に時間がかかり過ぎると,思考停止の状態になってしまい,思い浮かんでいたはずの文章を見失ってしまうのだ。この点,パソコンのJIS規格キーボードなら,私の場合はローマ字入力をしているので一文字を出すのに二文字ほど打たなければならないが,両手の指を使って立て続けにキーを連打すれば,おそらく手書きするより早いくらい瞬時に入力が終わり,文章が頭に浮かぶスピードとのズレを感じる間もなく文字にすることが可能なので,全く入力のストレスを感じず,文章を練ることに集中できる。慣れと言ってしまえばそれまでのことかもしれないが,私の場合,習熟するまで携帯電話でメールを打ち続ける気力は既に失われている。