#711 九段坂を登って
神保町のアカシヤ書店に入ると、先ごろ解散した山海堂書籍の半額セールをやっていた。出ていたのは同社の古典詰碁の5タイトルで、数年前に出た簡易装丁版の新本が3、4冊ずつ並んでいた。私は20年以上前、碁を始めたころに、『碁経衆妙』などを購入していたが、当時はクロス装丁の箱入りだった。 出雲屋さんの詰碁ベストテンにも挙げられていた『死活妙機』が目に留まり、超難解とは聞いていたものの、つい手にとってしまった。この本は、かなり後になってからシリーズに加わったので、私は買いそびれていたのだ。先日書いたとおり、難しすぎて、今の私には猫に小判なのだが、今後手に入りにくくなる本だ。168題載っていて、1題10円以下だし、4年後の自分のために、という言い訳をして(笑)... それから少し歩き、九段坂にさしかかると、卒業式を終えたばかりと思われる学生が武道館から溢れてきた。千鳥ヶ淵の桜の蕾はまだ硬そうで、白いものも見えていなかった。坂を上り、棋院に着くと、ロビーには棋聖戦最終局の盤面が映されていた。白の山下棋聖が中央から大きくかぶせた場面、 黒石を数えると12個、まだ24手しか進んでいない。腰掛けてしばらく見ていると、黒がかぶせてきた白石にツケを放った。白の応手を待ちながら、先ほどの『死活妙機』を開いた。第1問はノータイムで解けた。実は今朝、「方円の迷宮」で解いたばかりの問題だったのだ。