ジ・アクト・オブ・キリング
こんな映画があっていいのかっ!!っていうくらいの衝撃。まだ見たわけじゃないけれど、その前情報だけで慄然とする。60年代のインドネシア。日本ではコワモテで知られるデヴィ夫人の旦那スカルノ氏が軍部のクーデターにより失脚したあと、赤狩りの名のもとに凄惨な虐殺が繰り広げられる。その犠牲者は100万人にも及ぶと言われている。この映画の制作者はその事件を取材しドキュメンタリーを作ろうとしたのだが、虐殺された側の人々は出演したがらない。なぜなら虐殺を実行した人たちは今も政府の中枢を占め英雄として君臨しているからだ。そこで彼は考える。虐殺された側は出たがらないかもしれないが、虐殺した側はどうだろう?彼は虐殺した側にインタビューを試みる。するとどうだろう。千人殺した男は英雄としてもてはやされ、テレビに出演し、豪華な邸宅で宝飾品に囲まれて暮らしている。にこやかに出迎えた彼は、褒められこそすれ批判されることなど微塵も考えていない。特にアメリカから来た客人ならなおさらだ。当時アメリカはこの虐殺を支持していたからだ。大喜びで自分の虐殺体験をみぶりてぶりを交えて説明しはじめる彼。それはもう武勇伝なのだ。それを批判することなくただ聞いている製作者。そしてある恐るべき提案をする。「あなたの体験したことを映画にしませんか?」そう。つまりこの映画は虐殺をした本人が虐殺の再現フィルムを制作し、出演するという世にも奇妙なドキュメンタリーなのだ。彼はこの映画をつくることで自分たちの行った功績を世界に知らしめるチャンスだと考え、嬉々として映画を撮りはじめる。延々とつづく虐殺、拷問、レイプ、そして枕元に現れる幽霊たち…そうしたシーンを演じていくうち、次第に彼の精神は変調をきたしはじめる。お祭り気分で撮りはじめられたこの映画がいったいどうなるのか…驚くべき結末が待っているらしいのだが、それは見てのお楽しみということらしい。なんにせよ、こんな映画は後にも先にもこれ一本しかありえないのではないか。おそろしいけれど、見に行くつもりだ。http://www.aok-movie.com/