アイラの事情
アイラは話を続けた「私はどうしても、他人に自分の本音を話せない」「それで、その精神科の先生が言うには、本音なんて出さなくていいのですよ。カリメロって知ってますか?」「ああ。殻をかぶったヒヨコのアニメね。昔やってたね。」「うん。カリメロになりなさいって言うのよ」「どうゆうこと?」「だから、人前ではずっと殻をかぶって生きなさいって言うんだよね。それで、家に帰ったら、その殻をとってもいいって。」「殻ね。自分を偽って生きろって事?」「うん。だけどアイラはまだ、殻をかぶるのが苦手でね。それを一番理解してくれたのが今の彼でね…。会った時は本当に好きになれそうだったな~」アイラは少し涙ぐんだ。いつもは面倒なアイラの長話も今はとても安らぐ。それから3時間以上も、その彼の最近の暴力行為について聞かされた。僕はずっと、自分が卵の殻をかぶっている姿について考えながら、あいづちを打っていた。(2007)