[交通事故調査員への道]の記事一覧 | jiko-t.com blog

【事故調査員への道6】調査員は足で稼げ

現場での聞き取りや状況を想定した調査です。通常、調査員は現場を確認しないことには事故の状況が見えてきません。事故の一報からの先入観や、当事者の言い分だけでは判断すると危険だからです。当初は、先入観から全く違う調査結果を出してしまい、迷惑を掛けた事もありました。なぜ、現場に拘るのかというと、交通事故の調査員をしていると道路や交差点等の形状を見ることで、事故の原因がわかることがあります。例えば、事故が起きやすい形状の交差点であるとか、運転手の視点で信号を見落としやすいだとか、簡単に説明すれば、人為的ミスが発生しやすい状況を知ることになります。その点を考慮して、当事者の証言を聞くと事実内容に近づいてきます。また、事故多発地点では、事故の形態が似通っていることがあります。その上で、事故現場周辺住民に聞き取りを行い、当事者の意見をすり合わせます。だからどうなのだと言われればそれまでですが、自分の好き勝手に証言する当事者の言い分に偏らない調査が出来ることになります。それにより、真実に近い調査ができます。また、先輩調査員からよく「現場調査には時間を掛けろ」と言われました。事故が発生した同時刻に出向き、そのときの車の流れ等をチェックすることで、真相を究明したこともありました。夜中でもお構いなしです。なんか刑事ドラマみたいですが…『調査業とは足を運んでなんぼ』と今も思っています。

【事故調査員への道4】おまわりさんと仲良し

事故現場の所轄警察で聞き取り調査です。皆さんもご承知の通り、警察は一切民事介入をしません。従って、交通事故を担当した警察官は、事故証明書に記載されている事以外の内容は、当然答えてくれません。いつ、どこで、誰と誰が事故を起こした…それと事故の形態ですが、それ以外は事故証明書を申請してくれ…の一辺倒です。いかにも素っ気ない対応ですが、しかし、これが毎日のように通っていると、警察官の名前や顔見知りになり、一言二言交わす言葉も増えてゆきます。事実関係の調査ですから、事故後いち早く現場に急行した警察官が、事故の状況を詳しく知っているのです。根掘り葉掘り聞き取る事になるのですが、時にはご機嫌伺いをしたり、警察署の食堂でごちそうしたり、でなんとか人間関係を形成します。また、別の所轄にいる警察官同士の情報交換を手伝ったりして、何とか浸透していくわけですが、この分野は、営業で培った経験がものを言いました。顔なじみになれば、保険会社がもっとも欲しい情報を向こうから教えてくれます。逆に現場調査で聞き取りした内容を提供することもあります。ひき逃げ犯の検挙の手助けをしたこともありました。ただ、新たな目撃者の情報を提供しただけなのですが、たまたまそれが決め手になったのです。意外に持ちつ持たれつの関係です。例えば、信号の絡む事故で当事者同士の言い分が割れていたとします。当事者は両方共に、自分の不利になる証言はしません。真相はどうなのか？警察は各当事者の言い分を聴取した上、目撃者の言い分も聴取しています。しかし、民事不介入の立て前上、一切そのようなことは話しません。後に刑事記録で明らかとなる場合がありますが、刑事記録は事故が発生してから早くても3ヶ月～4ヶ月です。大事故となると半年以上になるかもしれず、過失割合が決まらなければ賠償は先に進みませんので、問題を先送りして発生する経済的損失の方が多くなることもあります。従って、こういった事故の事実関係をもっとも保険会社が欲しがるのです。調査員の情報網を駆使して、目撃者の証言をもとに裏付けていきます。長年の付き合いとなると「よく調べたね…」と苦笑いで応じてくれることもあります。こういった苦労も知らず、貴重な情報を獲得しても、保険会社に都合の悪いこととなると、急にトーンダウンとなります。都合が悪い→不利になる→損害額は増えるであれば、最初から調査しなくともいいのでは…？いや、しかしすべて知っておくのといないのでは違いが出ます。ずる賢い子供が、そのまま大人になったようなものです。昨今の不払い問題で、「担当者の勉強不足、認識不足…」と役員が言い訳をしていますが、あれは真っ赤な嘘、すべて知っていてバレたから、謝っているに決まっているのです。これを世間では嘘の上塗りと言います。

【事故調査員への道3】過酷な労働

調査の概要です。各保険会社の連絡センターへ加害者が事故の内容、被害者の状態、車の修理入庫先、事故の場所、所轄警察名を確認するのみで、翌日に契約者の代理店を統括するサービスセンターの査定担当者が各方面に連絡をします。ここまでは、加害者（契約者）が一方的に主張しているわけですから、後に「実は嘘」となっては取り返しが付きません。そこで、事実関係を調査することが必要となるのです。調査関係会社には、概ねFAXで調査の依頼があります。基本的な調査は、警察、事故現場の事実確認調査、事故現場製図、加害者、被害者双方への聞き取りです。期間的には、依頼から約1週間以内で報告しなければなりません。逆算すれば、1週間後の調査報告日前に報告レポートを提出しなければなりませんので、文章作成、聞き取り、調査活動を3日以内で仕上げなければなりません。慣れてくると、1事故の処理は1日で完了することも可能です。本当は、じっくりと調査するべきなのでしょうが、調査に係る費用は、1事故で3万5千円～4万円程度です。調査会社が5割～6割を間引きしますので、調査員の手元に入る実収入は、その7割（1万5千円～2万円）、経費込みです。当初は見習い期間でしたので、1件の単価は3千円～4千円です。したがって、１つの案件に時間を掛けてられないのです。生活がかかっていますから、多いときで1日4件分の事故を処理したこともあります。朝は6時頃に自宅を出て、帰宅時間は午前2時頃、当時の睡眠時間は約3時間です。時には、家に帰る時間がもったいないので会社に寝泊まりしている事がありました。当時は保険会社もバブルがはじける前で経費的にも余裕があったのでしょう。連日、調査依頼と督促の毎日でした。現状では、経費削減、個人情報保護の点から、調査員が活躍する場面が少ないようです。知人の保険関係者からは、損保の調査よりも生保の事実確認調査、病院に対する医療確認調査が主流となっているそうです。時代の変化とともに要求される調査も変わります。このような点から、小間使いと称されている所以です。さて、今日からゴールデンウィークです。皆さん車で移動する際には、事故に気をつけてください。各所で渋滞も発生しています。道路情報を駆使して、休憩所では十分な休憩を取ってください。楽しい連休が嫌な思い出に変わらないように願っております。

【事故調査員への道2】時には損な役目

調査員の仕事内容について簡単に説明します。事故後、契約者から報告を受けた保険会社は、契約者にどれぐらいの過失があるのか、また、被害者の損害がどれだけの損害になるのか？という予測は実際に足を運んで確認してみないとわかりません。車の場合であれば、修理工場よりの見積書によって、保険会社専属のアジャスターが交渉することになるわけですが、人身となると電話で「ハイ、そうですか」という訳にはいきません。被害状況は、保険担当者が直接被害者に会うことで把握できるのですが、担当者としては、会う前にある程度の情報を取得しておきたいものです。更に被害者がどんな人間なのか、要求している内容はなにか、を事前に確認しておきたいものです。そこで、調査員の出番です。事故発生現場での聞き込み、警察聞き取り、各当事者に対しての事故状況確認、被害者に会ったときの印象、被害者の職種、家族構成などを総合的に調査します。今の時代では個人情報保護の問題で制限されることではありますが、当時はこのような調査を平気で行っていました。余談です。その道（ヤクザ）の人が被害者となると、担当者は直接会うことを非常に嫌がります。彼らも人間ですからその道の人とは関わり合いたくありません。それに何を要求されるかわかりません。担当者はなるべく電話で済まそうとするのですが、相手は被害者ですから、邪険にできないのです。こういった場合、必ず調査員がその餌食となります。なるべく私達に悟られないように依頼してくるのです。（わかったとしても、避けようのないことですが…）損な役目となり、一方で担当者は、「ついでにこの件説明してきて・・」と高みの見物です。お陰様で、3回ほど組事務所に軟禁されました。（汗）それで誰が助けてくれたの…？誰も助けに来てくれる筈がありません。保険会社に連絡しても、留守番電話…加害者はシカト…哀れに思ったのか、「お前もかわいそうやなぁ…」と解放してくれるまで待つしかありません。でも、本物はやはり、竹内力よりも恐いです…ハイ（汗）

【事故調査員への道1】夢見て転職したものの…

私的な事ですが、僕自身がこの仕事に従事するきっかけになった交通事故調査員の仕事について説明します。24歳のある日、交通事故の加害者になってしまいました。そのとき、初めて交通事故調査員の存在を知りました。被害者への対応や賠償の進め方はどのようにしていけばいいのか？任意保険とはどのような対応方法を行うのか？不安は募るばかりです。何せ交通事故の経験はありませんでしたので、藁にもすがる思いでした。率直な感想は「保険の事、詳しいなんてスゴイ！」と感動したのです。また、「加害者のすることは、すべて保険会社がやってくれるんだ…」と初めて知りました。当時は、バブルの真っ直中、建設関係の営業職をしていた私ですが、会社の中では単なる歯車に嫌気がさしていました。個性が強く、人から指示されることがもっとも苦手で、上司と度々トラブルを起こしていました。周りの知人友人が次々と独立していく様を見ていたこともあって、「将来的には自分も独立を」と夢見ていた時期でした。保険調査員は、一般では口にすることすらない過失問題や、休業損害、後遺障害の問題などの保険知識が豊富であるところに、興味が沸いてきたのです。また、調査員は出来高扱いで、実力次第で大きな利益が実現できるという魅力もあります。人によっては月収100万円前後も少なくありません。欲と希望に駆られて、半年後には保険会社専属の調査会社の門をたたくことになったのですが…後悔こそしていませんが、保険調査員への道はそんなに甘くはありませんでした。素人がすぐに稼ぐことなんて…簡単にできるはずがありません。当たり前のことですが、若気の至り、勢い、という感じです。それに簡単な企画書、営業日報しか書いたことのない人間が、事故の調査レポートを書くなんて･･増して過失割合？判例？道路交通法？初めて知ることばかりです。「これは大変な業界に入り込んだものだ…」それでも1年ぐらいは頑張ってみよう、と勉強することになったのです。でも、急に収入が途絶えることを見かねた社長が、定額給与と能率手当を支給してくれることになりました。しかし、「見習い期間」ですので、月に10万円程度です。無いよりはマシ、夜のバイトを覚悟しました。まずは、先輩調査員に仕事の手ほどきを受けるために、付き人兼運転手です。同行することで調査のノウハウ、多くの経験談を知ることになります。しかし、聞けば聞くほど、難解な仕事です。見た目と中身がこれほど違うとは思っても見ませんでした。次回に続く