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テーマ:ひとりごと(15376)
カテゴリ:ことばのスナップ
すっかり忘れていたけれど、子供のころ、ピアノを習っていた。
教室で一番練習しない、怠け者の生徒だった。どのくらい怠け者 かというと、1週間で1小節だけしか覚えていかなかったりした。 (今思うと、1小節で止めるということの方が難しい気がするが) それでも先生は、私を見捨てるようなことは無かった。 「じな♪ちゃんはバッハを弾けるだけの表現力があるからね」 そう言ってくれた。 これは、母親の解釈によれば、 「ちっとも練習しないから、テンポの速い難しい曲は弾けない。 バッハの小品しか弾けなかったから、慰めてくださったのよ」 ということらしい。 でも、今と違って素直だったリトルじな♪は、先生の言葉を 信じた。 私は表現力があるんだ♪ ある日先生は、小学校4年生のリトルじな♪に、発表会に弾く曲の 楽譜を渡しながらこう言った。 「この曲はね、小品だけれど、世界的な演奏家の〇〇〇が リサイタルのアンコールに好んで弾く曲なんだよ。 短い曲だけれど名曲だからね。発表会のときには、じな♪ちゃんも 世界的な演奏家になったつもりで弾いてね」 世界的な演奏家・・・ わたしが、世界的な演奏家・・・ ライトを浴びる、プロのピアニスト・・・ 単純なリトルじな♪は、そのイメージをふくらませて、 いつもよりはちょっとだけマジメに練習したような気がする。 そして発表会の当日。 リトルじな♪は、先生や母親をびっくりさせるような、 堂々たる舞台度胸で、その小品を演奏した。 母が褒めてくれたのは「お辞儀がとっても立派だった」という ことだけだったけれど、とにもかくにも、「いつもみたいに ハラハラしなかった」と言っていたから、まあ上出来だったの だと思う。 結局ピアノは上手にならなかった。 でも、あの先生の一言のおかげで、わたしは舞台度胸という 素晴らしい宝を手に入れた。 先生、ありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年01月21日 03時46分44秒
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