時と場合に夜

[社会の底辺から] カテゴリの記事

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• さよなら生活保護

  異動の発表があってから年度末の忙しさに加え引継の準備やら度重なる歓送迎会やらで帰りがとっても遅くてすっかりご無沙汰してしまいました。そしてドタバタのなか、今日をもって生活保護業務にサヨナラです。４月からはいわゆる管理部門で地方行政の裏方を支える仕事に就きます。この１週間忙しくて家庭訪問にも出掛けることができず、担当している被保護者の方のほとんどに会うことができなかったため昨日何人かに電話で挨拶だけしました。あんなに苦しめられた仕事なのにいざ去ろうとすると少しだけ寂しい気持ちになります。一番力を入れていた母子家庭の母親は、担当が替わることを本当に残念がってくれました。仕事とはいえ、人から信用されるというのは嬉しいものです。人と人との繋がりがどんなに大切なことなのかをいろんな角度から教えられました。「この電話が最後になっちゃうんですよね」なんだか男女の別れ話だな、なんて思いながらも僕まで寂しくなってしまいました。本当はもっともっとあなたと素晴らしい子供達を見守ってあげたかった。３人の子供達を一生懸命育て上げる母親。アルバイトで少しでも家計を助ける泣き虫高校生の長男。小５ながら家事の手伝いをしっかりできる運動音痴の次男。少し知的障害で今年の春から特殊学級に入る母親の一番の心配ネタの三男。「僕はずっとずっとあなたたちのケースワーカーでいたかったです。」本当は電話でそう言いたかったけれど言えませんでした。４人家族で６畳と４.５畳じゃ手狭だもんね。これから引越し先を探そうとしていた矢先でした。生活保護の仕事を離れても、きっと僕は彼女達のアパートを探し続けることでしょう。夏にはまた、子供を連れてカブトムシをプレゼントしに行くつもりです。特別にメールアドレスを伝えておきました。パソコンの前では、僕はこれからも現役のケースワーカーです。

  2006.03.31

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• 速報！

  ４月１日付けで異動になりました！これで生活保護の仕事とはおさらばです。「得たものもたくさんあるけど、失ったものもたくさんある」これが３年間保護の仕事をした感想です。日常生活では知ることも無い世界を覗くことができた。所得の格差が広がっているとか言われているけれど、社会の底辺はそんなレベルじゃない。日本の福祉の厚遇を感じることもあったし、逆に福祉の限界を感じることもありました。僕が得たものはなんだろう？失ったものは？簡単に言葉にすることができません。今日は飲んできました。乾杯！です。頭の中が曇ってきたので今日は寝ます。おやすみなさい。

  2006.03.24

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• 福祉職員のキモチ

  僕の仕事は老人福祉、児童福祉、精神保健福祉と密接なつながりを持っています。当然のことながら役所の中にこれらの部門があるのですが、僕が生活保護に携わった３年間の間に、これらの部門の職員のうち８人の職員が精神的なストレスで体調を崩して仕事を休まざるをえなくなり、１人が仕事を辞め、そして１人が自殺をしました。（自殺と仕事の因果関係は不明ですが）社会福祉士、精神保健福祉士という資格を知っていますか？いずれも国家資格で専門的知識と技術を持ち、何より福祉に対する志を持つプロです。実は病気休暇を取った（取らざるをえなかった）職員８人のうちこれらの資格を持つ職員が半数を占めたのです。退職した職員もそうでした。まだ入社４年目でした。福祉に関して人並み以上に関心を持ち、福祉のプロを目指してきた彼らが福祉の現実にぶつかり、ダウンしてしまったのです。福祉の現場はこんなに大変なんだ！というつもりは（今日は）ありません。僕が今日書きたいのは、彼らが福祉のプロとしての意識があるがゆえ、人一倍頑張り、悩み、理想と現実のギャップに苦しみ、あらゆる矛盾を感じていたのではないかということです。真剣に仕事をすればするほど悩みも増える。真剣に相手のことを考えれば考えるほど裏切られたときのショックは大きい。制度を知れば知るほどその利用価値の無さも知る。自分が助けたいと思っていた人々が「こんな人たち」だったことを知ってしまう。本当に助けたい人たちを救えずに、人間のクズのような人たちに振り回される。本当に困っている人たちが救われず、ずる賢く醜くいやしい人たちが得をする。こんな世界にいたら心も病みます。それでいて打開策が見つからない。漂う閉塞感。これからの福祉を担う人たちは、決して明るい未来が待っているとは思っていません。でも彼らは頑張っています。そして悩んでいます。人一倍。精神保健福祉士の友人に聞いた話では、大学で同じ道を志した友の多くが社会に出てわずか２、３年でまったく違う業界に転職したそうです。その気持ち、何となくわかるなあ。

  2006.03.05

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• 生活保護の「割合」

  生活保護の話。これまで時々仕事を通して見てきた生活保護の実態を書いてきましたが、今日は統計的に見た生活保護の実態を少し書いてみたいと思います。まず生活保護を受けている人は今や人口の１％。つまり１００人に１人は被保護者なのです。これって結構な割合ですよね。次にどんな人たちが生活保護を受けているのか。僕が仕事をしている市の例で見るとまず６５歳以上の高齢者のみの世帯が約６割、身体障害者や精神障害者の世帯が約２割。病気、ケガなどで就労できない傷病者世帯が約２割、そして母子世帯が１割弱。ほかにもこれらに分類できない世帯はありますが大体こんな感じです。でもこんな数字は厚生労働省のホームページにも載っているのでここではケースワーカー的な数字を出していきます。まず、生活保護を受けるに至ってやむを得ない事情がある場合と自業自得の場合の割合。もうこれは声を大にして言いたい。自業自得が８割以上！明確な根拠はないですよ。僕の主観というか経験というか実感です。だいたい年金のない高齢者が多すぎる。今１００歳ぐらいの人たちは制度が充実していなかったこともあるけれど、今時の６０～７０歳で「年金がありません」なんて将来設計しなさすぎ。障害者の方々はやむを得ない場合が多いですね。母子家庭の場合もそうです。やはり一家を支えるだけの生活費を女性一人で稼ぐには限界があるようです。糖尿病のため「体がだるい」「目が見えない」人がやたら多いのですがこれも一部を除いて自業自得の場合が多いようです。自己管理しなさすぎ。次は常識のある人と非常識な人との割合。もうこれは何と言っても非常識９割以上！履歴書に貼る写真がスナップ写真なんてことは日常茶飯事。電話をかけるときに自分の名前を名乗らないのは当たり前。毎日あきれるやら笑えるやら。親兄弟子供と１０年以上疎遠になっている人も８割ぐらいいるのでは？申請時に親族と連絡を取るため連絡先を書き出してもらうのだが「わからない」ばかりで僕らが戸籍で追跡するハメになる。親が生活保護を受けていた人は、割合は小さいが少なくはない。これは母子世帯の母親になぜか多い。いわゆる「保護の再生産」である。なんだか統計というより被保護世帯の特徴みたいになってきましたね。こんなことを書くのもあと１か月かもしれません。もっともっと生活保護の実態を知りたい方はカテゴリー「社会の底辺から」をどうぞ。

  2006.02.26

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• モチ代

  生活保護の話。生活保護費は毎月ほぼ同額のお金が出るのだけれど12月はいつもの生活費のほかに、いわゆる「モチ代」が上乗せされます。正式には「期末一時手当」といい、ボーナスのようなものだ。１人当たり約11,000円から14,000円で（地域によって異なる）５人家族だとちょっとした金額になるのです。名目は「年末年始はいろいろと費用がかかるから」。これっておかしいと思いませんか？生活保護費より少ない年金で暮らしている人たちがたくさんいるんですよ？年金にボーナスがありますか？年末年始にお金がいるのは生活保護受給者だけじゃないですよね？しかも最近はこんなニュースが新聞の片隅に載り、僕らを笑わせます。まあ、こういうのは本人たちの意思ではなく、とある団体が後ろで動いているんですけどね。ついでに。地元の新聞社が歳末慈善事業とかなんとかで、子供のいる保護世帯にお年玉をあげるんだって。そのほとんどが親のパチンコ代に消えてくことを知らないんですよね。与える親を選ぶ裁量を僕らに与えてほしいです。全然関係ないけど、今日訪問したお宅で被保護者が自転車に油を差していたんです。その油がなんと「ごま油」。ＣＲＥ５－５６がないのは同情するけど、たぶんごま油のほうが高いよ。

  2005.12.15

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• 来年もよろしく？

  今日の夕方、ボケジジイいや痴呆のお年寄りからかかってきた電話。「○○さん？あー今年は色々とお世話になりました」「はあ…」「また来年もどうぞよろしく」「はあ…」用件それだけ？ひょっとして年末のあいさつ？確かに今日は月末だけどちょっと早くない？あっけにとられて「よいお年を」って言えなかったよ。電話が終わって同僚に話したら大ウケでした。なんとも質の悪い笑いで満たされる職場であります。やれやれ。

  2005.11.30

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• 刺される？という恐怖

  久しぶりに生活保護の話。今日は「包丁で刺されるかもしれない」という恐怖を３０分以上にわたり味わってきました。いや、ホント、心臓に悪いです。あれは。これだけの危険にさらされて月２５００円の危険手当だけじゃ割にあわないッス。６０歳ぐらいの夫婦と３０歳ぐらいの息子という家庭を後輩と訪問したんですね。ご主人は割とまともで普通に話ができる。玄関で挨拶して奥の部屋に通される。台所を横切ろうとした瞬間、体が硬直した。「あんだよ、てめえら！ここは○○（自分の名前）の家だ！なにやってんだよ！」と台所に立つ鬼のような形相をした女性が叫ぶ。すかさずご主人を見ると「相手にしないで」と目で奥の部屋へと促す。「お邪魔します…」と目を合わさないようにしてそそくさと部屋へ入る僕ら。背後から怒鳴り声が飛んでくる。「ふざけんなよ！誰んちだと思ってんだよ！殺すぞコラぁ！」とても女性とは思えない。何かが乗り移ったような感じだ。悪霊？冗談抜きでそう思う。「最近いつもああなんです。時には包丁を振りかざすんです」とご主人。いつも？？包丁？？ちょっと待ってよ。それマズイっすよ。「僕らもいつ殺されるか分からないです。息子が気の毒で…」おいおい、冷静に言うなって。警察呼ぼうよ。警察には何度も相談したらしい。一度は救急車で精神病院に強制入院させたらしいけれど、すぐに退院したとか。警察も家の中で騒いでるぐらいじゃ出動してくれないんだって。症状から見て統合失調症でしょう。でも、ものすごくタチが悪い。ほぼ２４時間ああやって怒っているらしい。疲れると寝る。起きては怒っている。すでにご主人を家族と認識していないらしく、「他人」が家にいることが気に入らないのだという。自分以外はみんな敵で、誰彼構わず攻撃するという。ご主人に事情を聞いている間、襖１枚を隔てた向こうで怒鳴り声は続いている。「家族でもないのに○×※△…！！殺してやろうか！！」台所でガチャガチャとすさまじい金属音がする。包丁？包丁？？包丁なの？？？もうやだよぉ、こんな家。襖は僕の背後にある。襖が開いて包丁を振りかざしてきたら僕は逃げれるだろうか。正面に見える掃出し窓のカギを確認した。よし、カギはかかっていない。いざとなればベランダに逃げれる。最悪の事態を頭の中でシュミレーションする。住宅ローンはチャラになるだろう。公務災害でいくら払われるのだろう。僕は息子の成長を見届けることもできずに、こんな所で精神異常者に殺されるのだろうか。唯一の救いはご主人が常に冷静だったこと。疲労困憊していたが、本気で包丁で他人を刺すとは思っていないのだろう。でも何かあってからじゃ遅すぎるよ。結局この日は一旦役所に帰り、保健所、警察、精神科医らの協力を得て明日強制的に精神科の受診を試みることとした。帰りに玄関に辿り着くまでがまた恐怖でした。本当に途切れることなく怒鳴ってるんです。台所で何かを手にしている。手元に注目してしまう。ナベ、ザル。幸い包丁らしきものは見えなかったけれど仁王様のような顔で僕らを睨みつけてるんですよ。あ～冗談抜きで怖かったー。

  2005.11.17

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• 一部の人たち

  時々思うんだけれど、役所の窓口でゴネてる人やお店でトラブってる人、タバコをポイ捨てする人、シルバーシートに堂々と座る人、信号無視をする人、これらの人って実はみんな同じ人物じゃないかなって。世の中の９割の人が常識をもって社会生活を営み、お互い気持ちよく生活していこうとしているのにそれをブチ壊す１割の人たちがいる。ああ、この１割の人たちがいなくなれば世の中どんなに平和なんだろう、そんな風に考えてしまうことがあります。どうして気持ちよく生活しようと思わないんですかね。どうして他人を傷つけ、妬み、蹴落とそうとするんでしょうね。今は一部の人たちだからまだいいけれど、みんながみんな、そんな人になってしまったらスラム街みたいになっちゃうのかな。あ、生活保護を受けている人だけの話じゃないですよ。もちろん彼らを念頭に置いて書いていますが。被保護者の中でも一部ですからね、そういう人たちは。その一部の人たちに多大な労力がかかり、多大なストレスを与えられるのだけれど。

  2005.09.14

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• 自立のさせ方

  最近、仕事のやり方が少し強硬的かなあと自分で思うことがあります。僕の仕事は生活保護のケースワーカーなので強硬的な仕事といえば「無理やり保護を廃止する」ことなんですね。例えば、病気が回復したのに１か月も求職活動せずにズルズル保護を受けつづけている人を切る。素人目には「そんなのスグに切っちゃえばいいじゃん」と思われますが、即、人権に関わる問題なので手続きをきっちり踏んで慎重に行わなければならないからタチが悪いんです。それでも僕は強硬にやります。法の許す限り。保護を打ち切ろうとして、よく上司に止められます（笑）。でも相手方から感謝されることもありました。「これを機にがんばります」なんて言われたらケースワーカー冥利に尽きます。「やっと息子が人生を前向きに考えてくれるようになった」と今日言われました。まあ、教育で言えばスパルタ教育みたいなものでしょうか。個人的には「放置プレイ」も好きなんですが（笑）。「放置プレイ」は楽なんです。僕らは何もしないから。文字通り「放置」することで自立に目覚めさせるんです。例えば金銭管理がルーズで１週間で生活費を全部使っちゃうような人はその後どんなに泣きついてきても一切無視するんです。次の保護費支給日まで２０日もあるのに所持金２０００円だったとすると「１日１００円使えますね」と言ってアドバイス終わり。内心は「栄養失調で死にはしないか」と、ちょっとドキドキ。家賃を滞納して退去勧告された人も放置。「分割納付を申し出て交渉すべき」と言ってアドバイス終わり。いや、終わりじゃなくって「住宅費相当分を市に返してもらいます」と追い討ちをかける。もちろん相手を見てのことですけどね。本当の社会的弱者には冷たくできません。でもつくづく思います。「日本人の生活は守られている」と。個人的にはもっともっと強硬に切ってしまっていいと思っています。今年僕が担当することになった人はモデルケースかな。運が悪いねえ。

  2005.08.29

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• 仕事減った

  僕が仕事を休んでいる間に、担当しているご老人が亡くなりました。実は亡くなる前日に家庭訪問をして顔を合わせていたんです。一人暮らしで介護サービスを受けていて、１１月までに今の借家を出なくちゃいけなくて、アパートを借りるにしろ施設に入るにしろ、保証人の問題とかで大変だなぁ、と思っていた矢先でした。今日出勤してその訃報を聞いて、自分がどう思ったと思います？「ああこれで仕事減った。ラッキー♪」「かわいそう」とか「苦しかったかな」とか他に考えることあるじゃないですか。真っ先に自分のこと考えちゃいましたから。ヒドイでしょ。これでも福祉に関わる人間ですよ。変なことでカミングアウトしてしまいました。僕は少し前に、被保護者のことが頭から離れずに不眠に陥り、うつ状態になって本気でメンタルヘルス科にかかろうと思った時期があったんです。その時期を脱したときに悟ってしまったんですね。仕事は仕事。僕自身がやるべきことをきちんとやれば、彼らが苦しもうが死のうが関係ない。関係ないことはないけれど、僕が夢の中で考えることじゃない。なんだか冷たい人間になってしまったような感じですが、看護むなしくバタバタと患者が死んでゆく看護婦や医者の心境と似ているかもしれません。いちいち感情移入していられないでしょ。そんなことより、ネット上で「ラッキー♪」とか言ってるほうが問題ですけどね。本音なんです。許してください。読んで不快になる方も多いでしょう。ケースワーカー全員が同じことを考えるわけではありません。毎日すべての被保護者に対して「死ねばいい」なんて思っているわけではありません。でも介護施設で老人が虐待されているニュースを耳にするとそれは氷山の一角で、同じようなことが本当にたくさんあるんだろうな、と思えてなりません。愛される老人になりましょう。「他人のためにどれだけのことをしてやれたか」ということが老後に評価されると思います。人を愛し、人を思いやった分だけ自分に返ってくる。かといって見返りを期待た愛や思いやりは見抜かれますね。この亡くなったご老人の娘、今日窓口で終始笑顔でしたから。福祉の現場で得た生々しい経験則の一つでした。

  2005.08.23

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• 悪いけど。

  今日も怒ってきました。仕事の話です。そして保護の打ち切りを宣告してきました。あー気持ちいい。ストレスのプチ発散です。生活保護世帯に車の保有・借用・使用が認められていないのは周知の事実。それでも隠れて乗る人が後を絶たない。まあ、乗りたい気持ちは分かるけれどルールはルール。ルール以前に「もし人をはねたら」ということを本当は考えて欲しいのですが。今日僕が保護打切りを宣告してきた人は、度重なる注意の上、「今後車を使用した場合は保護を打ち切られても異議を申しません」という誓約書まで書かせた人物なんです。子供じゃないんですからね。責任は取っていただきます。権利を行使する以上は義務も果たしてもらわないと。本当は心の底で心配してるんです。糖尿病で体力がないことは知っている。足が痛くてゆっくりとしか歩けないことも知っている。毎日６０錠の薬を飲んでいることも知っている。毎月の医療費は２万円を下らないだろうな。運良く雇ってくれる会社を死ぬ気で探すしかないでしょう。僕が知る限りでは、保護費以外に収入はないのだから。保護の打切りは、彼らにとって文字通り死活問題です。路頭に迷った挙句に自殺というケースも十分に考えられます。実を言うと５月に同じようなケースで自殺があったばかりなんです。（ブログに書こうと思っていたけど結局やめました。）それでも僕らは、時に強引に、クールに事務を進めます。正直言うと、それはかなり「気持ちがいい」。批判もあるだろうけれど、それも仕事の一つなので。悪いけど。

  2005.08.16

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• 「怒り」がエネル源

  僕らの仕事は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することだけれど、同時に生活保護費の不正受給を防止することにかなりの労力を費やすことになる。健全な精神の人は、やむを得ない事情で生活保護を受けることになってもなんとか自立しようと最大限の努力をするものですが、一度そのうまみを知ってしまうと、その世界から抜け出せない人も多いのです。例えば、大ケガをして仕事に就くことができず一時的に被保護となった場合。ケガが直ればいくらでも就労先はあるのに働こうとしない人。生活保護受給中はすべての収入を申告しなければならないのに申告しない人。医療費の自己負担がないからといって毎日のように病院に行く人。言い出せばキリが無いけど、とにかくそんな人たちのために僕らは貴重な時間を使わなければならないんです。不正受給防止のための仕事は、間違っても喜ばれる仕事ではありません。憎まれはするけれど感謝されることはない。僕らだって気分のいいものではありません。エネル源は「怒り」ですね。働かずに楽して、しかもズル賢く生きていこうとする奴等に対する怒り。だってその傍らでは一生懸命に生きていこうとしている人たちがいるんだもん。今日の午後は、そういった人たちばかりをまとめて訪問しました。ずーっと「怒り」のテンションを上げておくんです。そうしないと仕事にならない。相手もバカじゃないですからああでもない、こうでもないと言い訳してくる。それを打ち負かすのは結構なエネルギーを浪費する。「私の言ってることは間違っていますか？」今日何度も使った殺し文句です。大抵は黙りますね。こんな調子で半日やってると役所にもどるとグッタリ。でもねえ、これで保護が切れるとたまらない快感なんです。もちろん僕らの仕事は保護を切ることが目的ではないのですが許せないものは許せないですからね。国が定める基準では、被保護８０世帯に対してケースワーカー１人なんです。実際は８０世帯以上持つことがほとんどです。大阪のひどいところではワーカー１人に対して２００世帯とも３００世帯とも。８０世帯でも不正受給に目を光らせるなんて難しいんです。それだけが仕事ならいいんですけどね。やれやれ。

  2005.08.12

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• それは不幸せなのか？

  ある家族の不幸せさを図るモノサシは、世間一般の基準であるべきか、それともその家族の基準でよいのか？最初っからワケのわかんないことを言ってますが今日一番考えさせられたことでした。夏休みに入って生活保護の申請をした５人家族がいました。父５０歳、母３７歳、共に少し頭が「弱い」。僕の経験ではこういう人たちに限って生殖能力は高い。知識が無く本能で生きるため必然的に子沢山になります。高２（男）、中２（男）、小５（女）の子は両親から必ず悪いところを遺伝される。子のうち二人が療育手帳（知的障害者手帳）保持。父親は廃品回収など簡単な仕事しか就けない。しかも長続きしない。生活費に充てるため消費者金融から数百万の借金をする。ここまでなら僕らの仕事の世界では「よくある話」で済むけれどこれに加えて「家が無い」とくると少し事情が違ってきます。本当は家があるんです。持ち家なんです。数年前に築２０年、敷地３０坪の家を法外な値段で買わされたそうです。頭が弱いことに付け込まれて。住宅ローンが滞りつつある古い家に、悪徳リフォーム業者が群がります。要りもしない床下換気扇をたくさん付けられたそうです。そして、こともあろうにその悪徳リフォーム会社に（正確には裁判所に）債務不履行を理由に間もなく住宅を差し押さえられるところだそうです。まだ家は彼らのものだけれど、消費者金融の取立てが厳しく家に帰れないんだそうです。そして彼らは車の中で生活することに決めました。やれやれですね。僕らもどこから手をつけていいのかわかりませんでした。住む場所の確保？債務の整理？子の通学？とりあえず子供の生活を確保するために「入所措置」を執ろうとしましたが受入れ施設が確保できずに断念。生活保護の申請があったからといってすぐにお金がでるわけでもない。彼らは今日も車の中で寝て、一日一食の食事で済ます。行政がどれだけ手を尽くしても当面は車での生活を余儀なくされる。行政の限界を感じましたね。そして会議中に誰かの一言で僕らはすごく考えさせられたんです。「彼らは自分たちが不幸だと思っているのかなぁ？」うーん、そう言われると限りなくNOかもしれない。だって話をしていても悲壮感なんてないんだもの。この夏に１か月も風呂に入っていないことなんてまるで気にしていない。お金の計算が苦手だから、あとどれだけ返せばいいのかも理解していない。もともと騙されるようにして欲しくもないのに買った家。定職も無いのに不動産屋の提携業者がたくさんお金を貸してくれたらしい。マイホームを奪われたという感覚はないに等しい。だから何もしなくていいわけじゃないんですけどね。僕らの仕事は「人間として最低限の生活を保障すること」。何から始めるか考えただけで頭がクラクラしちゃいましたよ。でも今の生活をまんざらでもないと思っている彼らを見ると緊張感がなくなるんですよね。彼らは彼らで幸せなのかもしれない。そう思ってしまうほどです。５人の家族がバラバラになったわけでもない。怖い借金取りは公園の駐車場まで追っかけてこない。嫌いな学校に「行け」と父にも母にも言われない。なぜかみんな笑顔。現状を把握していないかのような笑顔。僕らはいつも笑顔に癒されるけれど、その笑顔だけはちょっとなぁ…

  2005.08.03

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• 不幸という波

  生活保護の業務に携わって僕が一番痛烈に思うことは「なぜこうも不幸は重なるのか」ということなんですね。たった一つの不幸だけで、人はそう簡単に落ちたりはしない。這い上がってくる力が必ずある。もちろん「あの事件が私の人生を変えた」ということも珍しくないけれど僕が関わる人たちは、その事件をきっかけに次から次へと波のように小さな不幸が押し寄せてくるんです。ＤＶ、アル中、離婚、家庭内暴力、病気、障害…これらすべてが重なる家庭だって珍しくはありません。ＤＶ→離婚ぐらいの図式は成り立つけれど、それにしたって全部が重なり合う必要性なんて全くないし、確率論からいえばそうそうありうるものではない。今日、訪問した母子家庭は男の子が３人いるのですが、一番下の子がどうも自閉症らしいんですよね。お母さんの心境を聞くとついつい仕事であることを忘れてしまう。ただでさえ食べていくので精一杯なのに心配事の種は尽きない。なんでまたこの家庭に？って思っちゃうんですよね。何やら負のエネルギー（？）を感じてしまう。ご先祖様を供養すればすべてが好転するんじゃないか、ついついそんな風に思ったりもします。まさか仕事でそんなこと言えませんしね。金持ちはより金持ちに。幸福な家庭はより幸福に。みんなが幸せになれる社会を、そろそろ本気で創りませんか。

  2005.07.13

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• 古く暗いアパートの一室で

  ここに書き残したところで、誰もどこへも辿り着けないけれど。生活保護の申請があったので、初めてのお宅訪問をする。線香の匂いが出迎えてくれた。チェストの上には、一目でそれと分かる重度身体障害児の遺影が。生まれた頃から「ママ」以外の言葉を覚えることができずほとんど寝たきり状態だった重度身体障害者の息子を、３２歳まで育て上げてながら、古く暗い木造アパートの一室で我が子の死を一人で見届けた母親の気持ちなど、誰がどう分かってあげられるでしょうか。３人の子に恵まれながら夫との不仲で離婚し、長男である障害者の息子だけ引き取ったその母親は、２年前に次男を肝硬変で失い、しかも葬儀にも呼ばれなかったという。最愛の長男の葬儀の時、音信不通だった三男と離婚後初めて会い、「自分も結婚して子供もできた。２度と自分たちと関わらないでくれ」と言われたという。孫の顔はもちろんまだ見ていない。月に９万円足らずの障害基礎年金でやりくりしてきた母親は、長男の死によって唯一の収入源を断たれ、途方に暮れた挙句、生活保護の申請となった。保護の決定がなされれば、たぶん今までの二人分の生活費よりも少し多い保護費が手に入るけれど、彼女はそれで幸せなのだろうか。一日中目が離せない息子がいなくなって、彼女はそれで自由になれたのだろうか。長男が息を引き取るその瞬間まで、ずっとその傍らにいたという。病院ではなく、古くて暗いアパートの一室で。ここに書き残したところで、誰かが何らかの教訓を得られるわけではなく、僕もその母親も亡くなった長男も新しい一歩を踏み出せるわけでもなく、誰もどこへも辿り着けないのは分かっているけれど、やっぱり書いておかなければならない気がしました。たぶん自分のために。

  2005.07.01

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• お宅訪問リポート

  土地や建物を持っていても生活保護を受けられる場合があるということは意外に知られていない。もちろんそれは限られた場合ですけどね。生活保護を受ける前に売れる物は売ってもらいますから。僕が担当している世帯でも一人だけ持ち家を認めているのですが、この人の風貌がもう、現代版乞食（こじき）、人呼んで「家持ちのホームレス」（←すごく矛盾してますが）という感じなんです。風貌に劣らず家もやっぱりすごい。ここで画像をお見せできないのが残念でなりません。建坪１０坪ぐらいの小さな家ですが２階建てです。外見は廃屋だけど、ちゃんと人が住んでいる。玄関を空けると家具一つないＬＤＫがある。ほとんど用をなさない雨戸を年中閉めているせいで（すでに開かない）暗くてよく見えないが、流しであっただろうと思われるものもある。僕はこの家に靴を脱いで上がったことがない。靴下が大切だからだ。土足で上がるこの家はまるでアメリカンホームドラマのようでカッコイイ。落ちているガラスの破片やゴキブリの死骸などに気をつけて５歩ほど進むと６畳ほどの寝室兼台所兼居間に辿り着く。床に置かれた電気スタンドが唯一の光源だ。裸電球よりもなぜかわびしい。その明かりが照らし出す光景は、まるで自分がハムスターになったような錯覚を起こさせる。直径３０センチほどの球状に丸められた新聞紙が床一面にある。ここが遊園地だったら新種のボールプールだと思って子供たちは喜ぶかもしれない。しかし部屋の真ん中には人がちょうど横になれるスペースが空いている。傍らには丸めていない新聞紙が数枚ある。まさかと思って聞いてみると、やっぱりそれは布団なのだという。敷布団と掛け布団、僕にもなんとなく区別がつく。その「布団」の近くには唯一の熱源である電気コンロがあり、誰もが予想できるように２年前にボヤを出している。消防署の指導が実り、見た目にはほとんど変化がないにもかかわらず、２年間火事にはなっていない。彼は１年間のほとんどを、この部屋か図書館で過ごすのだという。２階もあるにはあるのだが、階段にびっしりとネズミの糞が敷いてあるため、詳細は調査していない。僕はこの家が持ち家でなかったらいいのに、と常々思う。お金はかかるが、引っ越してしまえば不潔さはリセットされるのだ。この家だけはもうどうにもならない。お手上げである。僕らの仕事は、一言で言えば国民の最低限度の生活を守ることなのだが、彼が求める最低限度の生活は、国が定めるそれより、もっともっと下にあるため、僕らがどんなに手を尽くしても、わずかな時間で元通りになってしまう。この家の伝説は、もっともっとあるのだけれど、長くなってしまったのでまたの機会にしておきます。ほんとテレビに出れますよ、この家。

  2005.06.29

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• じっと待つ人たち

  お骨が職場に雑然と置いてある職場ってちょっとないだろうな。と思う。葬儀屋さんでもないだろうなぁ。僕の職場にはあるんですよ、お骨が。以前「他人よりも遠い家族」で少し触れたように、亡くなっても誰一人駆け付けないし、骨も引き取ってもらえない人がこの世にはたくさんいます。僕らが携わった人々は葬儀屋さんから骨箱に入って一旦職場へ戻っていらっしゃるのですが、とりあえず職場のキャビネットの片隅で僕らの手が空くのをじっと待っていただくことになります。僕らは今を生きている人たちの最低生活を守ることに精一杯で、何ヶ月もほっておいても死ぬことのない「お骨」を納骨堂に納めに行く仕事など、優先順位からみると限りなく後回しになってしまうのです。キャビネの中で資料と並んでいる光景を初めて見たときはさすがにギョッとしましたが、慣れというのは恐ろしいもので、「あ～ずいぶん貯まってきちゃったなぁ」「そろそろ（納めに）行かなくちゃね」などという会話を笑顔で交わすことが普通となります。このキャビネに近い席の人からは時々「なんか頭が重い…」などという原因不明の体調不良を訴える人が冗談抜きでいるのですが、（本当にいるんです。）まあ、あまり深刻に考えると、ただでさえダークな職務が耐えがたいものになってしまうため、「崇りだよ、崇り」となるべく笑ってごまかすようにしています。お寺関係の人が聞いたら怒られちゃいそうですね。一般の方々でもけげんな顔をされるかもしれません。でもね、本当にそれぐらいの気持ちでやらないとやってられないんですよ。何もバカにしてるんじゃない。軽く扱っているわけでもない。僕らは僕らなりに仕事として割り切ってやろうとしてる。でも正直言って、亡くなった時点で僕らの仕事としては一区切りついたという意識がある。そうこうしているうちに、次から次へと生活保護の相談にみえるんです。明日食べるお金がない人もいる。莫大な医療費に困り果てている人もいる。年金もなく息子から虐待を受けている高齢者もいる。これじゃ当分納骨堂まで行けませんね。もう少し待っててくださいね。

  2005.06.21

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• 生活保護は繰り返す

  今日は懐かしい顔に再開したと思ったら、最も聞きたくない言葉を聞いてしまいました。２７歳女性、４人の子持ち。昨年１２月に再婚を期に生活保護から自立した人でした。「元気でやってる？」の問いかけに「保護を受けたい…」との答え。聞けば夫が覚せい剤使用・所持の現行犯で逮捕されたとのこと。残されたのは小学校１年生から生後５か月までの子と彼女。やれやれ。最初に結婚した男性は、小遣い欲しさにひったくりを重ね、逮捕。服役中に離婚し、再婚した相手が覚せい剤で逮捕。僕はこれまで仕事を通じて数多くの不幸な家庭を見てきましたが、彼らに共通するのは「同じことを繰り返す」ことです。彼女のように犯罪者ばかりと結婚し離婚を繰り返す人、酒に溺れ立ち直り、また溺れていく人、パチンコが原因で自己破産し、それでもまだ借金を繰り返す人、何度も日本人にだまされて子供だけ増えるフィリピン人…本人の怠惰だけではありません。離婚する夫婦は、どちらかの親が離婚している確立がものすごく高い。ついでに言うとその兄弟も離婚している場合が多い。こんなことを書いていると批判を受けるかもしれないけれどきれいごとでは済まされないので続けます。母親に知的障害がある場合は、子に遺伝します。その子がまた知的障害の子を産むんです。僕らは生活保護の申請を受けると、その人が生まれてからの生活歴を調べ、親、兄弟、子供の居場所を調べ、現在どのような生活をしているか調査します。判明した親族には手紙を出し、扶養を依頼します。その過程で明るみになるのが先ほど書いた「繰り返し」なんですね。親の人生そっくりな人生を大抵は歩みます。それがまともな人生なら結構なのですが、似てくるのは借金や離婚、犯罪といった部分です。知的障害の家系は圧巻でした。驚きながらも納得しました。もし家柄に上流、中流、下流という階級をつけたとしたら、彼らは永遠に下流家庭から脱出できないのです。逆に中流家庭が下流家庭に落ちることもないのです。仮に上流家庭にいた人が事業に失敗して借金を抱えたとしても、心が豊かな人たちであれば、下流家庭になることはないでしょう。普通の人は生活保護にならない。そうなる人はなるべく環境が生まれたときからすでにある。僕が生活保護の仕事を通じて得た哲学です。反論もあるでしょうが、これは経験則なんです。ものすごく問題発言ですね。しばらくしたら日記から削除するかもしれません。でも一度でいいから世間に叫んでみたかったんだぁ、このこと。

  2005.06.16

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• 他人よりも遠い家族

  自分の親や兄弟が亡くなったことを知らされて、大変迷惑がる人々がこの世にたくさんいることをご存知でしょうか。以前書いた「天国に一番近い老健」を経て入院した老人が亡くなりました。初めて老健に入所してから約２か月半。「３か月以内に死亡する」というジンクスどおりでした。珍しくその老人には兄弟と子供がいました。姉が一人に妹が２人、息子が３人。戸籍とＮＴＴの電話番号案内で把握した連絡先に電話を入れる。帰ってくる言葉は「私は関係ない」「なぜここ（居住地）がわかったのか」「市のほうで何とかしてくれ」「遺骨も引き取らない」など、とても家族とは思えないものばかり。時には怒鳴られることさえあります。確かにいろんな家庭があるでしょう。いろんな事情があるでしょう。幼い頃に生き別れた親もいれば、金銭トラブルで縁を切った兄弟だっているでしょう。でも、せめて亡くなったときぐらい駆け付けてやれないものでしょうか。せめて最後に骨を拾ってあげることぐらいできないものでしょうか。あなたの父親なんです。あなたの兄であり、弟なんです。それぐらい当たり前、と思っている僕らの考え方が間違っていますか？世の中いろんな家族があるんだから、と納得しなければならないでしょうか？まったくもって「常識の通じない世界」であります。余談ではありますが、引取り手のないご遺体は、葬儀屋の倉庫の片隅でお経を上げ、誰にも見送られずに火葬された後、無縁仏として市の納骨堂に納められます。

  2005.06.09

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• 冷蔵庫の中は

  まずは前回の日記の続き。行方不明になっていた母子家庭のビニールテープで目張りをしていた冷蔵庫のこと。警察からは８人の鑑識が来て、それはもう慎重に開けられたそうです。（僕は現場にはいませんでした。）中には…何も入っていなかったそうです。やれやれ。開ける前は、もう、そりゃあスゴイ雰囲気だったそうですよ。指紋はとるし、目張りしてあるテープの長さまで１本１本測ったそうな。警察の皆様、ご苦労様でした。

  2005.06.03

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• 事件は毎日起きている

  相変わらず「変な死に方」とは縁の切れない職場です。もちろん警察ほどではないですが…今日一日にあった出来事。その１。近所の人が訪ねても反応がない生活保護受給者（独居老人）の家。病弱なので出かけるはずがない。入院もしていない。嫌な予感がし、ガラスを割り家の中に入る。床にはなぜか糞尿が…布団の中には衰弱した老人がいた。もう１週間も何も食べていないと言う。救急車を呼び、そのまま入院となった。その２。３週間ほど前にアパートを追い出され、「故郷に帰りたい」と懇願したため、九州までの片道切符を手渡した生活保護受給者（独居老人）。なぜか今日、市内の墓地で死体で発見された。自殺だった。一度は九州に帰ったらしい。なぜ戻ってきたのか。なぜ死ななければならなかったのか。７０歳だった。その３。いつ訪問しても不在だった母子家庭の生活保護受給者。何日か前から夜中電気が点きっぱなしとの連絡を受けて住宅管理会社の協力を得て立ち入ったその部屋には、ビニールテープで目張りをした冷蔵庫があった。電源は入っている。なぜ目張りを？母子はどこへ？これは事件？明日の朝、警察の協力の下、真相が明かされる。

  2005.06.01

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• 分かってやれない

  知的障害のあるＡ子ちゃんが行方不明になったと聞いたのは午後の４時近くでした。その家庭は、つい１週間前に生活保護を受けることになったばかり。５０過ぎの父親とともにホームレス生活をしていた２５歳の彼女。本人たちからの申請という形をとったものの、警察からの通報により半ば職権で生活保護を受けさせた世帯でした。公園で寝泊りしていた彼らに保証人不要のアパートをあてがい、とりあえず布団とガスコンロを買い与え、これから生活を立て直そうと思っていた矢先に冒頭の連絡…父親曰く、１週間もの間テレビも何もない６畳一間のアパートに閉じこもっていたため、精神的におかしくなり、パニックを起こして突然家を飛び出してしまったとのこと。なんせ１週間前に引っ越してきて近所へ買い物にしかでかけないため地理も分からない。普段は持たせてある療育手帳も持たずに出てしまった。住所はおろか、自分の名前さえ人に伝えられない彼女。そんな知らない街で帰り道が分からなくなり途方にくれている知的障害の２５歳の女の子のことを思うと、本当にいても立ってもいられませんでした。まず警察に連絡し、現時点では保護されていないことを確認。名前と特徴を伝え協力を要請し、自分もすぐさま役所を飛び出しました。探すこと２時間。とある駐車場で座り込んでいる彼女を発見したときは涙が出そうになりました。半年近くも父親とホームレス生活を続け、この１週間、６畳一間のアパート以外落ち着く場所のなかった療育手帳Ｃ判定の彼女が、何を想い、何を考え、駐車場で一人ぼっちで座り込んでいたのかは、僕には想像もつきません。本当に何一つ分かってやれないのだと思います。僕に今日できたことは、彼女たちをリサイクルショップに連れて行き、中古の１４インチテレビを買わせ、部屋に戻ってアンテナをつなぎ、当面の退屈凌ぎをさせてやることだけでした。明日から僕は彼女にどんな援助をしてやれるだろう？父親に職が見つかったら、彼女は昼間一人ぼっちになってしまう。さあどうする？また迷子になったら？またパニックになったら？精神病院か、それとも施設？それが彼女のため？また家を飛び出してしまう前に何か手を打たなくっちゃ…

  2005.05.25

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• 彼らの主張

  連休明けにかかってきた生活保護受給者からの何とも自分勝手な電話の数々。１　家主とケンカをしてアパートを飛び出した。　　カッとなって家財はすべて捨ててしまった。　　５月２日にもらった保護費も一緒に捨ててしまった。　　何とかして欲しい。２　通信販売でモノを買いすぎて生活が苦しい。　　こんな額の保護費では生活できない。　　保護費を増やして欲しい。３　熱があるので病院へ行きたいが自転車に乗れない。　　公用車で迎えに来て欲しい。　　税金で買った車なのだから我々のために使うのは当然だ。４　赤い羽根の募金の一部をなぜ我々に配らないのか。　　市役所内で横領しているのだろう。５　市役所への電話代が先月で３万円もかかってしまった。　　市に請求したら払ってくれるのか。などなど。これを堂々と主張するからたいしたものですね。「テレビの音が出なくなったので買って欲しい」というのもありましたが、まあこの程度はカワイイものです。ある意味、毎日飽きない職場ですが（笑）、あまりにレベルが低すぎて説明の仕方にも苦労します。もちろんこんな人々ばかりではないのですが、こんな人々のために１０分も２０分も時間を取られるのはちょっとね…せっかく連休で充電できたのに、すでに半分ぐらい放電してしまいそうです。でもここだけの話、こういう人たちには必要以上にガツンと言って、我々も日ごろのストレスを晴らすことがあるんですよね。どうせガツンと言ったところで分かっていないんだけど。あの人たち。明日はどんな電話がかかってくるかなぁ。

  2005.05.10

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• 役所ｖｓ役所

  最近、仕事をしていると用もないのによく声を掛けられます。内容は決まって「最近仕事どう？大丈夫？」どうやら先日僕が涙ながらに窮状を訴えたことが広がっているみたいなんですね。恥ずかしいやら少し嬉しいやら…しかし、まあ、心配してくれる人がいるということは嬉しいもんですね。おかげさまでまた今週末も飲み会です。古い職場の仲間たちで。そうそう、昨日課長が本を貸してくれたんです。ＮＨＫの「きょうの健康」「？？？」と思って表紙を見て噴き出しましたね。特集が「不眠に悩むあなたへアドバイス　スッキリ眠れていますか？」あのさあ、課長。お気持ちはとっても嬉しいんですけどそういう問題じゃないんです。何にも分かってない。雑誌に書いてある不眠解消法を実践したところであなたの職場の問題は解決するものなのでしょうか？ま、いいけどね。別にあなたに期待もしてないし。また愚痴になっちゃいましたね。いっそのこと「こんな仕事辞めてやる！」っていうブログにしたほうがいいのかもしれません。今日も１日振り回されましたよぉ。とある被保護者が隣の市へ転出することになったのですが、被保護者一人を市外に転出させるのってものすごくエネルギー使うんですね。僕らが追い出したわけじゃないのに先方（転入先の市）の生活保護担当者はチクチクと僕らをイジメるんですね。大人気なく。先方にとっては「お荷物」を持ち込まれた感覚なんですね。そりゃあ仕事は増えるし支出も増えるし大変なのは分かりますがお互い様でしょ？確かに手間のかかるジイサンだよ。一人で歩けないしボケてるし家族からは見放されているし。今日は色んな所を走り回って手続きして頭下げて挙句の果てに役所の人間から嫌味言われて。ま、これで最後だと思えるから頑張れるんだけどね。気が付くとまた愚痴になってました。やれやれ。

  2005.04.26

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• 読まねばならぬ本

  「福祉川柳事件の検証」という本がどうしても読みたくなりました。ネット書店ＨＰによるこの本の概要は「福祉事務所のケースワーカーによる、生活保護受給者を揶揄する川柳に端を発する「福祉川柳事件」。事件はなぜ起こり、社会にどのような影響を与え、どのような経緯を辿ったのか。事件を詳細に検証し、その真実に向き合う。」うーん、どうしても読みたくなってきました。でも金は出したくないな。時間がかかるかもしれないけど、図書館に買ってもらおう。読む前からなんとなく内容は想像できるけど福祉事務所ケースワーカーとして、しかも生保受給者を揶揄するなんて日常茶飯事のケースワーカーとしてはぜひとも読まねば。

  2005.04.23

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• 天国に一番近い老健

  介護の世界にも不思議なジンクスはあるもので、生活保護受給者が入所すると３か月以内に死んでしまうという介護老人保健施設（以下「老健」）が我が街にある。昨年度だけで４人の生活保護受給者が亡くなった。入所して１か月目→体調を崩す、２か月目→系列の病院に入院する、３か月目→心不全か脳梗塞で急死する、というパターンである。なぜ今日はこんなことを書く気になったかというと、先月末に入所させた僕が担当している被保護者が今日、脳梗塞を起こし意識不明に陥ったとの連絡を受けたからである。ちょっと早すぎる。そう、一つ忘れていた。僕らがその老健に入れる被保護者は、決まって身寄りのない人達なのである。亡くなっても誰も困らないし悲しまない。こういう言い方をすると批判する人がいるけれど、事実は事実なのだ。老健に入所できる人は、少なくとも２、３か月以内に死亡するほど病弱な人ではない。老健は本来リハビリを目的とした施設であって、死ぬ直前の人が入所する場所ではない。僕の経験上、その老健以外で入所後２年以内に死亡した人は皆無である。この老健での死亡率がいかに高いかお分かりいただけるだろうか。この事実を僕らはどう受け止めているか分かりますか？ここに書き記すことは避けておきます。一人暮らしが困難な身寄りのない老人を施設に入れることは僕らの仕事の一つなのです。施設入所を望む方々はたくさんいるのです。みんな入所待ちなんです。さて、あの人が老健に戻ることはないだろうからベッドが一つ空いたよね。次は誰を入れようかなぁ…

  2005.04.13

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• ここぞのありがとう

  「今までいろいろありがとうございました」そんなに多くの人に御礼を言われたのは初めてだったので少々面食らった。異動はできなかったけど地区替えをすることになった。僕らはエリアを区切って担当する。営業の受け持ち地区みたいなもんだ。年度末でやらなければならないことが文字通り机の上に山積みになっているときに限り、入れ替わり立ち替わり来客がある。今日の午後はずっと誰かとしゃべっていた気がする。用件を済ました後、ついでに担当が替わる話をした。「○○さんいますか？」彼らが電話をかけてくるとき、自分の名前を名乗らないのがこの世界の常識である。僕らはその度に「失礼ですが？」と繰り返す。たまに「○○ですが」と名乗ると心の中で「よく言えたね」と誉めてあげる。そもそも常識が通じない人たちなのだ。そんな世界だから、「ありがとうございました」なんて御礼を言われると面食らってしまう。社交辞令はこんなにも浸透しているものなのか。はたまた心からそう思っているのか。それだけはないだろうな。本当は、僕らが生活の建て直しに奔走し、無事に保護から脱却したときこそ、この言葉をもらいたい。いくら仕事とはいえ、僕らだって人間なのだ。ありがとうと言われれば嬉しくないはずがない。それなのに、それなのに、生活保護から自立した人たちから僕はこの言葉を聞いたことがない。まるで保護を廃止されることが恨めしいかのようだ。もっと胸を張って社会に旅立ってください。どん底から這い上がったことを素直に喜んでください。自分でお金を稼ぎ生きていくことに誇りを持ってください。もうあなたは役所に収入を申告しなくていいし、医者に行くのにいちいち許可をもらわなくてもいいし、車だって自由に運転できるんです。僕らのことなんか忘れちゃってもいいから、苦しかったときにみなさんの税金で生きてこれたことを忘れないでください。そして、ここぞというときに「ありがとう」と言える人になってくださいね。

  2005.03.30

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• 保護費はいくら？

  生活保護世帯が１か月にいくら保護費をもらっているのか知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。気になりますか？気になるでしょ。ひょっとしたら自分の給料より多いかもしれないもんね。計算はいたって単純です。世帯構成に応じた単価の積み上げになります。このブログを読む世代であろう２０歳から４０歳までの単身者を例に取ります。（手元に最新の資料がないので１６年度の単価で計算します）主に個人の飲食に必要な額　＝３９，９７０円主に世帯で必要な光熱水費等＝４３，４３０円合計８３，５００円プラス家賃の実費です。どうですか？安心しました？思ったより高い？なお、この単価は物価が高い東京の単価であり、田舎に行くほど原則として基準は下がります。また、家賃は地域ごとに上限が設定され、「そんな安いアパート探すのに苦労するよ」というレベルの低さです。世帯員が一人増えるとプラス３～４万円、冬の間は暖房代がプラスされたりと実際の算定はさらに細かくなりますが、だいたいこんなもんです。ものすごく気になる人は世帯構成と地域を教えてくれれば算定して差し上げます。（笑）こうして算出した金額を「最低生活費」というのですが、この最低生活費に満たない収入であれば生活保護が受けられるというワケです。もちろん収入が少ないだけで生活保護を受けられるというわけではありません。本人が最大限努力をしても、という条件がつきます。実際にはもっともっと条件があって、役所の窓口で申請書を手にするにはかなりの難関があります。最近は「年金が少なく子供からの援助も受けられない」といった相談が多くなりました。「離婚はしたけれど親元には帰れず子供を抱えて仕事ができない」というのも典型的な母子家庭の相談事例です。「５５歳でリストラされて仕事が無い」といった話はあまり聞かなくなりました。なぜだろう？僕らが追い返しちゃうからかな？キリないもんね。そうそう、母子家庭プラスうつ病ってのも多くなりました。この前は５９歳男性でうつ病って人もいたなぁ。そんな社会の陰のバロメーターを毎日見ています。だからといって気持ちが暗くなるわけではありません。ちょっと心が病んでしまうときもありますが…

  2005.03.29

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• 命の順位

  今日は３軒だけ家庭訪問をしました。１軒目は７０歳のおばあさん。おばあさんというよりはまだまだオバサンの域だ。生活保護のきっかけとなったのは母親の死。理由は簡単だ。母親が死んだことによって母親の年金が入らなくなり、自分の年金だけでは食べていけなったから。親の年金を食い物にして、自分は国民年金さえ払わない。多いんです、最近。そういう人。２軒目は１９歳の母親と２週間前に生まれたばかりの子供の世帯。同棲していた彼が妊娠発覚直後に姿をくらまし、一人で産んで育てる覚悟を決めた。離婚した自分の母と弟達と３年前まで一緒に暮らしていた。その家庭もまた生活保護世帯だった。僕らの業界では「生活保護の再生産」と呼ぶ。生活保護家庭で育った子供は将来、生活保護を受ける可能性が高いからだ。３軒目は６７歳のおじいさん。歳の割にはボケが激しく、廃人に近い。いつも小便を垂れ流し、白のモモヒキは見ただけで吐きそうなぐらい黄ばんでいる。部屋には異臭が漂い、窓ガラスの淵はゴキブリの死骸で黒く見える。オマケに徘徊が激しく、いつもお世話になる警察から今日だけで２件も電話がかかってきた。警察からも家主からも民生委員からも「早く施設に入れろ」と言われる。そんなことは分かっている。僕だってそうしたい。老人ホームでも病院でもどこだっていい。でも物事はそう単純じゃないのだ。もしも、これら３世帯のうち１世帯だけにしか明日の飯代を渡せないとしたらあなたはどの世帯を優先しますか？僕らには時間が限られている。毎朝その日の優先順位を決め、その順位は時間が経つにつれ激しく入れ替わる。８０歳のジイサンと０歳の赤ちゃんが命を失いかけていたら、誰だって赤ちゃんを助けるだろう。その後にジイサンを助けに行っても、途中で７０歳のバアサンが助けを求めてくるかもしれない。僕らは常に優先順位を考える。年齢だけではない。その人が守るべき家族がいるか。その人が死んで悲しむ人がいるか。その人がどれだけたくさんの人に支えられているか。その人がどれだけたくさんの人を幸せにしてきたか。その人を支えるべき人がいないからこそ、僕らが支えなければならないことも多い。むしろそれが僕らの仕事のようなものだ。でも僕らは優先順位を決めなければならない。施設の管理者だって優先順位を決めなくてはいけないのだ。警察も家主も民生委員も、自分の目の前から邪魔者が消えて欲しいと思ってるだけなんだよね。そんなことは順位を決める基準にならないんだから。

  2005.03.16

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• ものすごく応援してるから

  「歯科助手のバイトを始めたんです！」今日一日の仕事の疲れを吹き飛ばしてくれる笑顔で彼女は報告してくれました。以前リストカットをした女の子（といっても28歳だけど）の家を訪ねたんです。僕自身はかなりブルーな気分だったんですね。精神障害者手帳２級を持つ彼女、うつ病が原因で義母に強引に離婚させられ、完治したら子供を迎えに行くという目標をもっている彼女。そんな彼女が自立への第一歩に選んだ歯科助手への道。通信教育で資格を取りたいと相談があってからというもの、僕は毎月の生活保護費とは別にその費用を出してあげることはできないか上司に相談しました。生活保護では「生業扶助」といって生活費とは別に技能取得を目的とした費用を支給できる制度があるのです。上司の答えは「ノー」想定された答えでした。なんせ実績が無さすぎる。毎年何人かを対象に専門学校（たとえば理容師）の費用を出したことがあったけど、なぜか全員が途中で辞めてしまっている。費用に見合う効果がまったくないのだ。だからノーという答えは想定していました。でも僕にはその理由が納得できなかった。「精神２級だろ？ダメダメ。モノになるわけがない」精神２級だから？僕はその言葉に反発し、激怒した。一度しか面接したことがないアンタに何がわかる？彼女がどんな過去を背負っているのか知らないくせに。彼女が将来のことをどれだけ真剣に考えているか知ろうともしないくせに。もちろん理解してくれる仲間もいましたが、結局どれだけやりあっても上司は首を縦に振りませんでした。今日はその報告に行ったのです。彼女から借りた通信教育のパンフを片手に。「ごめんね。これでもかなり上司を説得したんだけど…」そう言い掛けた僕に彼女は円満の笑みで返してくれたのです。「歯科助手のバイトを始めたんです！この前、私歯医者に行くって言ってましたよね？その歯医者さんと話しているうちに雇ってくれることになったんです。メンタルの先生もそろそろ仕事をしてもいいっていうし。大丈夫。バイト代が入れば通信のお金払えますから」強くなったね。ものすごく頼もしく見えるよ。バイトしたい、って思い切って言えたんだね。だって歯を治療しに行っていきなり雇ってもらえる人ってそんなにいないよ。その前向きな気持ちと勇気に僕は心から拍手を送りたい。今日は５件ほど家庭訪問したけど、どの家庭で話す内容も何だかブルーというかダークというか、こちらが責められることもあったし、とにかくストレスが溜まる一日だったけれど、彼女の一言で随分と心が軽くなりました。ケースワーカーが救われててどうすんねん、って突っ込まれそうですね。でも本当はまだまだ不安定なんだよね。夜になると苦しくて泣いちゃうときもあるんだよね。だいじょうぶ。君は確実に前に進んでる。僕が思っている以上に、いや君が思っている以上に、前に進んでいるから。僕は応援しているから。も・の・す・ご・く・応援しているから。

  2005.03.10

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• 裏切られ、欺かれ

  だまされたああああああｱｱｱｱｱｱｱ！！！！！！ーあーちくしょーこんのやろおお！！！２月５日の日記「幸せへの転換期」で書いた母子家庭のこと。子供３人を朝から晩まで働いて必死に育ててきた挙句、うつ病になり働けず生活保護を申請してきた彼女。保護決定の電話連絡したとき、あなた泣いていましたよね。「（生活保護が）ダメだったら子供３人を連れて死のうと思っていた」と。「新たに生活保護を受けることになった世帯があります」と民生委員（地区の福祉の窓口になる人）に連絡しました。そしたら…「あの人が？？よく知ってるわよ。昨日もスナックで会ったのよ。結構常連で昨日も若い男の子と来てたわよ。こんな時間に子供さんはどうしてるのかなといつも思っていたけど。」はぁ？スナックですか？民生委員さんも夜な夜なそんなところに行くんですね、と余計な感心をしながら愕然とした。彼女にはまだ保護費は渡していない。明日食べていくお金がない人間が、どうしてスナックで飲めるというのか。保育園児の子供を家に置き去りにして。百歩譲って飲食代は連れの男が払ったとしよう。でもあなたはうつ病になって買い物さえ行けなくて、働くことも病院に行くことさえも怖いんじゃなかったのですか？ついでに聞いた話だけれど、父親が心配してよく様子を見に来ているらしいじゃないですか。「16のときに家を飛び出して以来父には会っていない」ってあなたは僕に言いましたよね。これまでにどれだけウソをつかれ、欺かれたか。どれだけ心を病んだことか。調査が甘かったと言われればそれまでです。どうぞ非難してください。僕らは反論する気力も残ってません。反省はします。次の機会に生かします。それでもこういうことが繰り返されているのが現状なんです。明るい兆しが見えた話もありました。先日リストカットした女性からとても明るい声で電話がありました。「歯科衛生士の資格を取りたいんです。取ってもいいですよね？」もちろん。誰があなたの未来を遮るものですか。少しずつ前に進みましょう。10人中９人が僕らを欺いたとしても、本当に援助を必要としている１人のために僕らも前に進みますから。

  2005.02.10

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