第4-370話 不穏な動き -2 (違うと思うよ)
.こういち 「必要ないよ。 身に付ける防具の方がおいらよりも軟弱だもん。」椿 勇姿 「うっ・・・、ま、まぁ・・・」こういち 「んじゃ椿さんも下がってて下さい。 はじめますよ。」椿 勇姿 「あ、あぁ・・・。」 何回もこういちを振り返りながら、爆発物処理班長と共にその場から離れていく椿。爆発物処理班長 「手元に資料が無いタイプでは・・・我々では適切で素早い対応は出来ません。 彼を・・・、こういち君を信じましょう・・・。」椿 勇姿 「そ、そうですね・・・。」 こういちからはほとんど姿が見えなくなる程、遥か遠くに全員が避難した。 その様子を確認したこういち、すると、少し斜面を登る感じで 50m 横に立ち位置を変えた。 斜面と飛来物をじっと見つめる。 何かをイメージしているようだ。しばらくしてそれまで 下にブラさげていたこういちの左手が、右の腰の辺りにゆっくりと移動を開始する。 続いて 両足の立ち位置を肩幅くらいの前後に据え、前にある左足の膝を少し曲げて腰をやや落とすよ うに構えた。 そして飛来物の刺さった位置よりも斜面上方を目掛けて、こういち 「 南流 空撃波 !! 」 ===ズボーーン> 手元から大き目の空撃波が放たれる。破裂するゲレンデ横の斜面。 巨大な土煙が吹き上がったっ! \\ドッバーーン// 『おぉぉっ』 遠巻きに眺めていた自衛隊員達から、驚きの声が湧き上がる。爆発物処理班長 「な、なんという・・・ 」 (*o*;;;)椿 勇姿 「なんとっ! す、凄いっ !!! 」 (あっけにとられる椿。) そういえば、椿はこういちが放つ空撃波を目の当たりにするのは初めてだった。 土煙が落ち着くと、突き刺さる飛来物の斜面上方に球体が通過したようなえぐれたゲレンデ の姿が見て取れた。 ===ズボーーン> 今度は飛来物の下方へ、 \\ドッバーーン//爆発物処理班長 「あ、有り難い・・・。 これで重機が使える。」~~~ ~~~ ~~~ ザク、ザク、ザク ブォーー ガサン、ガサン、ガサン 重機により大掛かりな掘削とシャベルによる人かい戦術にて、飛来物は後方から徐々にその姿 を現し始めた。椿 勇姿 「こういち君、こんな発掘のような作業だけで我々は呼ばれたのだろうか・・・。」こういち 「違うと思うよ。」椿 勇姿 「す、すると・・・?」こういち 「この飛来物、表向きは爆発物かも? として動いているけど・・・ きっと、飛行機か宇宙船か、何かしらの生物の移動手段じゃないかな。」椿 勇姿 「移動手段の飛行物体・・・?」こういち 「うん、その乗員は得体の知れない生物かもしれないでしょ。 万が一のその対応だろうね。 まっ、得体の知れない生物は今のところ発見されなかったけど・・・。 でもね、かなり遠くからだけど。 振り向かないで下さいね。 さっきからこちらを伺っている3人くらいの塊が左手後方の山の中腹から感じるの。」椿 勇姿 「なんだってっ !? 」こういち 「そこそこの[気]の持ち主達。」 二人は首も振らず、何食わぬ振りをして会話を続けた。椿 勇姿 「宇宙人・・・なのか?」こういち 「そこまでは分らないけど・・・。 以前現れた スペック-1くらいのレベルがある。」椿 勇姿 「スペック-1だって !? 」こういち 「うん、同等の・・・だね。」 椿の額から一筋の汗がこぼれ落ちた。椿 勇姿 「仮に彼らの残党だとしてもおかしくは無い訳か。 ウイルス事件の後、全てのスペック要員を片付けた訳ではないのだから・・・。」こういち 「でも彼等にはこんな移動手段なんて必要ないでしょ。 製作するにしても大きな費用が必要なはずだし。」椿 勇姿 「すると・・・」こういち 「直接彼らに聞かないことには何も分らないってこと。」椿 勇姿 「どうする・・・。」 (何気なく立ち位置を変えながら、チラっと山の中腹に目をやる。)こういち 「ただ強い[気]を持ってて、こちらの様子を伺っているだけでは、直接のこの機体の関 係者と断言するのには無理がありますよね。 悪い人かどうかも分らないのだから、暴力で口を割らすというのもどうかと・・・。」椿 勇姿 「確かに。」こういち 「でも、不自然です。 そんな[気]の持ち主が、偶然にもこの現場を複数人で見ているということが。 しばらく出方を伺いましょう。」爆発物処理班長 「こういちくーーーん。」 (飛来物付近から大きな声で呼んでいる。)椿 勇姿 「ん・・・? 班長が呼んでいるようだ。」こういち 「行ってみましょう。」爆発物処理班長 「こういち君、見たまえ。」 足早に駆けつけた2人に指差す爆発物処理班長。 その指し示す指先には、飛来物の片側半分が、完全に太陽の下にあらわになっている姿が。椿 勇姿 「こ、この前方の形・・・・。」爆発物処理班長 「うむ、恐らくはこの機体の操縦席のようだ・・・。」 前方から流線型の姿が美しく見え、その途中には視界を確保するためか、透明なフード状の スペースがあった。 中には機器類のスイッチやメーターが配置されており、人らしき生命 体に合わせた着座する形のシートのようなものが有り、その足元から操縦かんと思われるレ バーのような物も突き出ていた。爆発物処理班長 「先端部の弾頭からは、爆発物は発見されなかったよ。」こういち 「すると、移動手段に使う乗り物・・・って可能性が高いってことですね。」爆発物処理班長 「現段階では断言できんが、推測ではどうもそのようだ。」椿 勇姿 「コックピット・・・。 まるで人間が操縦するにピッタリの配置に見える。」こういち 「 手足の本数、皮膚や肌の状態はともかく、サイズはそう見えるよね。」爆発物処理班長 「ヘリで輸送し、詳しく調べてみることにしよう。」こういち 「護衛のために、付き添った方がいい?」爆発物処理班長 「空輸だから、どうにもならんだろう。 それに航空自衛隊が護衛してくれる手はずに なっているから。」こういち 「分りました。」椿 勇姿 「では我々はせめて今晩はこちらに泊ることにしよう。」こういち 「うん。」~~~ ~~~ ~~~ -つづく-第4-371話 不穏な動き -3 へ (大丈夫、任せて♪) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。