富士ハウス 経営破綻の後始末
2015年1月20日富士ハウスの破産をめぐる被害者との訴訟で、高裁判決が確定しました。原告団127人のうち33人に限って元社長に賠償を命じるというものです。(東京高裁 2013年4月25日)賠償を受けるか受けられないかの分かれ目は、社長が破産を知る前の契約か、それとも破産を知った後の契約かというタイミングでの振り分けのようです。富士ハウスの経営破綻は2009年1月29日東京地方裁判所に破産手続開始の申立同日午後6時に同裁判所から破産手続開始決定という経緯ですが、日経アーキテクチャ(2015/02/10)によると、それに先立つ2週間前2009年1月15日メーンバンクである静岡銀行が支援打ち切りを宣言しています。東京高裁は、元社長が自社の破産を認識したのは、銀行支援打ち切り時点だとして、1月15日以前に契約した94人に対しては倍賞の請求を認めない と判断していました。コレに対して、社長側、被害者側 双方が上告していた というものです。(上告は94人のうち90人でした。)富士ハウスの倒産は民事再生法や会社更生法ではなく、破産法による手続きだったので、被害者にとっては 青天の霹靂 だったことでしょう。また、完成保証制度を利用していなかったため、未完成物件への対応がすんなり引き継がれなかった点も 当時大きく取り上げられました。更に 倒産前の時期、着手金の請求が過大になっていったこともあり、会社ぐるみでの詐欺ではないかとも疑われました。さて 東京高裁が判断した「社長が倒産を知った時期の認定」は適当なものだったのでしょうか。倒産直後の日経ホームビルダー2009/02/10から引用します。浜松市内の工務店数社によると、富士ハウス経営悪化のうわさは昨年秋ごろから業界内で広まっていた。企業ならば、そうした情報をいち早く入手して富士ハウスとの取引を縮小したりやめたりすることができる。しかし、業界内のうわさは消費者には必ずしも伝わらない。上場企業の財務・業績情報は開示されるが、富士ハウスを含めて、住宅会社の大半は未上場企業だ。 業界内で噂になるくらいだったので、経営者が自覚していたことは当然想像がつきます。ただ 私が以前勤めていた会社でもそうでしたが 危機を信じたくないという意識を経営者が持つのも事実です。そしてなんとか日々過ごしているうちにある日突然銀行が手形の決済を何らかの理由をつけて履行せず、いきなり倒産する というパターンです。破産法に寄る手続きも 消費者の感情を気にするよりも先に 財産の保全を優先した弁護士による指示だったと思います。富士ハウスが破産することで被害を被るのは 消費者だけではなく、下請け会社や材料の販売会社も同じです。彼らの中には、会社や材料置き場に乗り込んで、少しでも被害を小さくしようと材料や道具を持ち出すものもいます。工務店の破産としては多く有る事例かもしれませんが、ハウスビルダー大手の富士ハウスが取る手法としてはいかがなものか と思います。元社長に同情はしませんが、銀行や弁護士の対応にも消費者としては恨みが残ることでしょう。それにしても 被害者の方が報われないまま事件が終わるのは残念です。富士ハウス被害対策静岡県弁護団富士ハウス訴訟 賠償対象33人で確定2015.1.26.中日新聞住宅メーカー「富士ハウス」(浜松市)が経営破綻するまで契約金を集めたのは違法だとして建築主側が元社長に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は、当事者双方の上告を退ける決定をした。約八千九百万円の支払いを命じた二審東京高裁判決が確定した。決定は二十日付。二審判決によると、元社長は資金繰りの悪化を知りながら、二〇〇九年一月に倒産するまで建築代金を集めた。一審静岡地裁は「住宅の完成は不可能だったのに契約金を前払いさせたのは違法だ」と、原告百二十七人全員に計約四億八千万円を支払うよう命令した。しかし二審は、元社長が倒産を予測できた時期を一審より遅くとらえ、賠償の対象を三十三人に減らした。富士ハウスの残務を引き受けたのは、らいずほーむ という会社です。2009年2月24日に請負工事を引き継ぐ株式会社富士ハウス再建パートナーズ(後に、株式会社らいずほーむ)が設立されている。wikipediaこの会社も倒産しています。わずか5年の運営でした。木造建築工事、企業再生事業株式会社らいずほーむなど2社破産手続き開始決定受ける2014/05/16帝国データバンクTDB企業コード:967305413「東京」 (株)らいずほーむ(資本金3億5000万円、中央区入船1-1-20、代表阿藤豊氏)と、(株)八丁堀投資(資本金9000万円、中央区入船1-1-20、代表梨田智人氏)の2社は、4月10日に債権者から東京地裁へ破産を申し立てられ、5月13日に破産手続き開始決定を受けた。破産管財人は竹村葉子弁護士(新宿区新宿1-8-5)。(株)らいずほーむは、2009年(平成21年)1月に、破綻した富士ハウス(株)(2009年1月破産、負債約358億8500万円)の受け皿会社として、企業再生事業を手がける(株)スピードパートナーズ〈現・(株)八丁堀投資〉の100%出資により設立。同社グループの住宅事業部門として木造注文住宅の設計・施工・販売を手がけ、一般個人向けにセミオーダーからフルオーダーの注文住宅を扱っていた。設計した住宅を関東、中部、近畿地区の工務店などに外注するなどし、2012年1月期には年売上高約72億3800万円を計上していた。(株)八丁堀投資は、2006年(平成18年)5月の設立。企業再生事業を主力に、IT関連事業も手がけていた。2009年以降、破綻した企業の買収を本格化し、(株)らいずほーむをはじめ、子会社化した各社から経営管理料を得て、2010年3月期には年収入高約7億600万円を計上していた。しかし、近年はグループ各社において支払いの遅れが散発、一部支払い請求訴訟にも発展するなど、取引先の警戒感は高まっていた。加えて、関わった企業の再生に失敗するケースもあり、グループ全体の動向が注目されていた。その後、(株)らいずほーむは2013年以降、一部事業の切り離しなどで事業を縮小していたが、夏頃までに展示場を閉鎖するなど実質的な営業活動を停止し、グループから離脱していた。負債は現在、調査中。なお、(株)らいずほーむの商号、代表者等は破産申し立て時のもの。 住宅に関わる業者というのは、かくもいいかげんなものかと暗澹たる気持ちになります。加藤一高建築設計事務所http://kato-kazutaka.com/(FB)https://www.facebook.com/kato.kazutaka.nagoya.japan丹羽かずたか(FB)https://www.facebook.com/profile.php?id=100004948120484