震災後の人口動態
東日本大震災の影響で、日本全体で人口の大きな移動が起こっていると、マスコミにはよく出てきます。たとえば、1)被災3県(宮城、岩手、福島)から首都圏への人口移動2)首都圏から、放射能を懸念しての、西日本、或いは海外への人口移動反面、全国にいる、大家仲間の声を総合すると、震災の影響は、マクロでみれば余りないという。確かに3月、4月は、自粛ムードもあって、問い合わせや成約が極端に少ない時期があったが、5月以降はおおむね平常通りに戻ったと・・・東北の被災エリアはともかく、首都圏、東海、関西、九州、北海道・・・どこで物件を持っていても、皆、市況はあまり変わらないと言います。一方、全国にいる、不動産仲介業の友達は、震災の影響は確かに大きかったという。3~4月には、東京からの避難で、住まいやオフィスを関西に求める人が相次ぎ、特に福岡では、7月になった今でも、首都圏バイヤーによる購入の動きが活発だという。一体、どういうことなんでしょう?何が起こっているんでしょう?というわけで、総務省の人口動態統計を調べてみました。【2011年3ー5月期 転入超過数 (前年同月比)】1)東京都 39,616 (-1,448)2)神奈川県 13,122 (-4,687)3)埼玉県 8,267 (-1,389)4)大阪府 7,026 (+6,183)5)愛知県 5,852 (+4,145)6)千葉県 4,376 (-5,632)7)福岡県 4,349 (+3,827)8)滋賀県 1,660 (+800)9)兵庫県 1,139 (+2,321)10)京都府 1,042 (+1,174)-------------------------------46)宮城県 -10,188 (-9,225)47)福島県 -17,542 (-12,855)2011年3-5月期に、人口が転入超過(転入-転出がプラス)だった都道府県はわずか10。その他は全て、他の都道府県に人口を流出させています。確かに、前年に比べると、首都圏への転入超過が少し鈍り、大阪、愛知、福岡への転入は増えたと言えます。それでも、東京を筆頭に、トップ3はすべて、首都圏なのです。一都三県には、震災をはさんでも、依然として、全国から人口が流入してきているのです。次に、年齢別の人口動態をみてみましょう。マスコミの言うように、放射能を懸念して、首都圏から人口が西日本へ流出したならば、その多くは、子供のいる家庭でしょうから、「親の意向で転出した」と思われる、10歳未満児童の人口動態を調べてみました。【2011年3ー5月期 0~9歳(前年同月比)】首都圏(東京&神奈川&埼玉&千葉)の転入超過 -2294名愛知県の転入超過 -176名関西圏(大阪&京都&兵庫)の転入超過 +392名福岡県の転入超過 +983名 確かに、首都圏から2千名超の児童が、3ヶ月間の間に流出してはいます。これは人口基本台帳の数字ですから、実際にはもっと多いのかもしれません(※住民票移さずに、西日本に避難した人々も含めれば・・・)。しかし、西日本のどの地域が首都圏の児童を吸収したのか、人数が少なすぎて、はっきりしたことは言えません。ちなみに、同時期の、若年層(20~29歳)の人口動態をみてみると、【2011年3ー5月期 20~29歳(前年同月比)】首都圏(東京&神奈川&埼玉&千葉)の転入超過 +43157名愛知県の転入超過 +3953名関西圏(大阪&京都&兵庫)の転入超過 +3800名福岡県の転入超過 -182名 若者が首都圏に流入する、その数に比べれば、首都圏から避難していると思われる子連れファミリーの数は、せいぜい20分の1。微々たるものだと分かります。結論・・・震災による、一時的な人口の動きはあっても、日本全体規模で影響を及ぼすような人口移動は起こらなかった。人口の首都圏一極集中は、ややブレーキがかかったとはいえ、依然として続いている。少なくとも、マクロな賃貸経営に影響するような、大きな人口動態上の変化は、今のところなさそうです。「震災前と、あまり変わらないよ」という、大家友達の言葉が、データ上、裏付けられたとも言えます。