高給取り日本人
前回の日記で、「日本のサラリーマンにとって、今後は受難の時代」という内容のことを書きました。それは、日本円の給料を得ているサラリーマンが、日本国内で暮らすことを前提に書いています。しかし、「日本国内で暮らす」という前提を一つ外してみると、全く違う世界が見えてきます。なぜなら、日本円の給料を、今の為替レートで外貨に換算してみると、国際的にみて、かなりの高給取りになるからです。私は、いまの職場で、アジア太平洋地域を担当するITマネジャーの一人ですから、この地域の各国で、社員(ITエンジニア)がだいたいどのくらいの給料を得ているのか、だいたい知っています。日本の社員は、当地域のなかで一番高給取り(というか労働コストが高い)ということは、ずっと以前から言われていましたが、震災後の超円高で、その傾向がますます鮮明になりました。いま、日本でサラリーマンやってる人が、「海外に行って、働きたい。給料は、いま日本円で得ているのと同等か、少し安くなっても構わない」と考えているのだとしたら、私のいまの職場の場合、それを辛うじて実現できるアジア太平洋の国は、オーストラリアくらいしか見当たりません(もちろん、この国で就労できるだけの英語力や業務スキルがあればの話・・・彼の地も景気良くないので、狭き門ですよ)。シンガポール、という選択肢もなきにしもあらずですが、この国は管理職とその他の職種の給与格差がかなり極端で、ものすごいシニアなレベルの管理職だったらともかく、同じITエンジニアの職種だと、日本と同等というわけにはいかない。台湾や韓国は、アジアのなかでは比較的高給の部類に入る国・地域ですが、それでも円換算すると、年俸100万円台、という世界(経験年数にもよりますが・・・)。中国大陸は、就業機会こそ豊富ですが、給与レベルは(当社の場合)、台湾にさえ及びません。インドネシア、フィリピンあたりになると、年俸、数十万円台(しかも、下手したら下の方)になってしまう・・・。以前、インドネシアの社員に、200米ドルだったかの、IT資格試験の料金を自己負担させる、という話が、大問題になったことがあります。その主な理由は、その社員が得ている給料に比べて、200米ドルが高額すぎるからです。結局、会社負担ということで、話は落ち着きましたが・・・日本のサラリーマンにとって、200米ドル(約15,400円)なんてお金は、自己負担させてもほぼ問題になりませんが、他の国ではそうはいかないのです。私自身も、いま、日本でITマネジャーやって得ている円ベースの給料を、米ドル、ユーロ、人民元などの通貨に換算した時、これと同等の給料を、日本以外で得ることは、少なくともサラリーマンの枠内では、かなり難しい、ということが分かります。たとえ、今やってるポジションより、一段階、二段階、上のランクのシニアな職種に就いても、結局同じこと。結局、私は何が言いたいのか・・・日本人は普通にサラリーマンやってても高給取りなんだから、外国行くことなど考えずに、日本でおとなしく仕事してなさい、と言いたいわけではありません。むしろ、円高のために、自分の給料や財産が、国際的にみて高く評価されていることを、良いチャンスとして、将来に向けた布石を打った方が良いのではないかと・・・そこまで行かなくても、自分のもらっている、日本円の給料というものを、「海外からみた」目で、相対化してみる。さらに興味を感じたら、国際経済・金融というものを、もっと深く学んでみる・・・その契機のなるのではないかと、思います。私は、こう考えます。今は円高だけれど、1998年当時は極端に円安(1ドル=147円)だった・・・というように、為替というものは、常に変動するものなので、為替が円高に振れても、円安に振れても、その変動に耐えられるような、バランスの良い資産ポートフォリオを、世界各国、各通貨でつくっておきたいのです。今はたまたま、日本円資産の割合を減らし、海外資産の割合を増やしたいと思っていたタイミングだから、円高の今をチャンスとして、米ドル資産、人民元資産などに、順次、組み替えていきたい。但し、何が何でも、円資産を海外資産に組み替えれば良い、というわけじゃなくて、何事もバランスが大事。時々、日本の震災リスク、放射能リスクを嫌って、急いで円資産を海外資産に組み替える日本人富裕層の話を聞きますが、上に述べた、世界経済の動き、為替の動きを意識しつつ、国際的にバランスの良い資産ポートフォリオづくりを狙っていかないと、多くの場合、損するのではないかと思います。いずれにせよ、私たちが、たなボタで、高給取りになっているのであれば、そのチャンスを味方につけたいな、と思います。