東京チャイナタウン
昨年後半から、戦後最悪の不景気に見舞われている日本。2001年の不況なんか、もう目じゃないほどの、経済の急激な落ち込みがありました。そんな状況下で、真っ先に職場を切られるのは外国人、とよく言われます。たとえば、昨年11月頃から、中部地方の工業都市で社会問題となった、中南米系住民(日系人が主)の大量失業と生活苦、ブラジルやペルーへの帰国ラッシュは、記憶に新しいところです。東京のIT業界でも、インド人の帰国ラッシュが目立ってきています。最近、ウェブ上で、在京インド人による「帰国サヨナラセール」の広告を見ない日はありません。大きなインド人コミュニティを持つ江戸川区西葛西では、インド人住民の数が、最盛期に比べて半分程に減ったとの話も聞きます。では、日本に暮らす外国人の数も、この不況の影響で減っているのかと言えば、そうでもないようです。東京都は、外国人関連の統計を、日本で一番きっちり取っている(と思われる)自治体ですが、今年4月1日付けの統計が、今日発表されました。それによると、東京都に外国人登録している者の数は、不況直撃後も、一貫して増加傾向にあります。405,060名 (2008/10/1現在)408,284名 (2009/1/1現在)412,817名 (2009/4/1現在)さらに、国籍別内訳を見ると、興味深い事実が判明しました。なんと、増加分の約9割を、中国人(台湾、香港出身者を含む)が占めているのです。中国人142,213名(2008/10)→145,320名(2009/1)→149,113名(2009/4)半年間の増加数:6,900名中国人以外の外国人262,847名(2008/10)→262,964名(2009/1)→263,704名(2009/4)半年間の増加数:857名各国籍別に細かくみてみると、タイ人、ミャンマー人、ネパール人は微増、フィリピン人、米国人、英国人、豪州人は微減、韓国人やインド人は横ばい・・・という傾向はあるにせよ、いずれも、目だった人口増減はありません。東京都の統計数字は、中国人だけが増えている、という事実を物語っています。なぜ、そうなるのか?中国人も、不況の影響を思い切り受けているはずです。日本での職にあぶれ、あるいは商売がうまくいかずに、帰国を決意する者もいるのでしょう。でもそれ以上に、日本での再就職を希望する者や、中国から新規に流入してくる者の数が多いのでしょう。その背景には、中国出身者の、首都圏への定住化が大きく寄与しているのではないかと思います。もともと、東京に住み着く中国人は、新宿区や豊島区といった、大きな繁華街を持つエリアに集中していました。ところがここ数年の傾向を見ると、東京の周辺部にある、江戸川区、板橋区、江東区、大田区、足立区といったエリアでの人口増が目立っています。これらの区は、「ファミリーが多く住む、暮らし向きの住宅街」で、東京のなかでは住宅価格が比較的安い。そうしたエリアで家を買い、定住する中国人が増えてきた、ということなのでしょう。余談ですが、これらの区から川ひとつを隔てた、神奈川県川崎市、埼玉県川口市、千葉県市川市などでも、中国人の増加が目だっています。もう一つ、驚くべき数字があります。首都圏(一都三県)における中国人人口の分布は、東京都に集中していることを除けば、日本人の分布と、ほぼ一致しているのです。【東京都】中国人14万5千人、総人口1290万人、構成比1.13%【神奈川県】中国人4万7千人、総人口895万人、構成比0.52%【埼玉県】中国人4万人、総人口715万人、構成比0.56%【千葉県】中国人3万7千人、総人口615万人、構成比0.60%数字だけ見れば、世間のイメージ以上に、日本(首都圏)に根付き、日本人社会に混じって暮らしている中国人の姿が、浮かび上がってきます。その一例を挙げると、私の同僚のCさんがいます。彼は、日本在住10年目。パスポートは中国ですが、今年中に、日本永住権取得を目指しています。すでに千葉県内にマンションを買い、子供は地元の公立小学校に、日本人と一緒に通学しています。夫婦とも東京で勤務し、休日は子供を隣り町の中国語補習塾に通わせる以外は、ライフスタイル的には周囲の日本人サラリーマン家庭と全く変わりません。彼のように、すでに日本の暮らしにどっぷり漬かり、定着している者は、いくら日本が不景気であろうと、中国に帰らず、仮に仕事にあぶれたとしても、日本での再就職を目指すと思われます。現在、首都圏に暮らす中国人は、日本に帰化した者や、短期滞在者も含めると、約35万人と推計されます。首都圏の総人口が約3500万人ですから、ざっと1%を占めているわけです。さらに、彼らの出産意欲も比較的高い。毎年、日本で出生する子供の0.7%は、両親、ないし片親が中国人です。日本全体における中国人比率が0.5%であるのに比べて、高い数字となっています。定着化・永住化と、出生による自然増・・・今後、日本における中国系住民の数は、増えることはあっても、減ることはまず考えられません。年を追うごとに、定着化も一層、進んでいくのでしょう。