円高で海外資産づくり
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、「日の昇る国」などと、日本経済が絶賛されていたあの時代は、どれだけ遠くに過ぎ去ったことでしょう。世界経済の成長センターは、すでに中国、インドなど新興国に移り、かたや日本は、伸び悩む経済、急速な少子・高齢化、雇用不安、年金・医療制度不安などを抱え、将来に明るい展望がなかなか開けません。それでも、「腐っても経済大国」ではあるわけです。私は、2000年から07年まで、オーストラリアと中国で働き、現地の給料で生活しつつ、時には日本の実家への仕送りなどもしてきたました。現地で、豪ドルや中国元を使って暮らす分には、全く不自由しませんでしたが、日本円で送金すると、とたんに安月給が身にしみたものです。父に、人民元でもらってる俺の給料って、日本円に換算したら、初任給とそんな変わんないんだぜと、こぼしたこともあります(とはいえ、中国では大きな家に住み、これまでの人生で一番リッチな暮らしをしていたのですが・・・)。結局、外国に出たところで、東京で働くのと比べて、より多くの給料を手にできる国って、滅多にないってことです。そして今、再び、円高の時代がやってきました。目下、1米ドル=91円、1ユーロ=120円、1ポンド=136円・・・日本円はここ数ヶ月、欧米主要国通貨に比べて、2~4割も価値を上げました。そして、お隣り韓国に至っては、今や1円=16ウォン。つい数ヶ月前まで1円=8ウォンを切ってましたから、韓国旅行で買う靴やパーカーは、円換算すると一気に半額になったわけです。では、日本経済がそんなに良いかというと、全然そんなことはなくて、今は明らかに不況、マイナス成長の時代です。それでも円が上がるのは、100年に1度と言われる金融大混乱と世界同時不況の時代が生んだ、これまでにない、異常な経済状態のなせるマジックです。今は米国が絶不況、欧州も絶不況、そこへの輸出に依存していた中国経済も落ち込む。リーマン破綻もあって世界中のカネ回りが悪くなり、ロシア、インド、ブラジルなどへの投資も激減、それら新興国に資源を売っていた産油国なども軒並みダウン。不況だから主要国の政策金利も急降下して、うまみがない・・・今や世界中で、日本円くらいしか、買うものがないのです。とはいえ日本経済が特に魅力的なわけでもないので、皆さん、一時避難のために買っているのでしょうね。世界経済の状態がもう少し良くなれば、以前の円キャリーみたいに、ほぼゼロ金利の円で調達して、もっと収益の上がるような国の投資対象に、お金が流れ込むようになるでしょう。状況はまだ流動的ですが、世界経済のいたずらで、にわかに到来した円高の時代も、そう長くは続かないと思います。とはいえ、この円高の時代、私たちがもらっている日本円の給料は、海外通貨に換算したら結構なお金になりますし、海外で何を買っても安く感じてしまう・・・この状態を、どうチャンスとして生かすか?円の力を利用して、海外で不動産を買うのも、一案かとは思います。たとえば、私が数年前まで住んでいたオーストラリア。あの頃はバブってたし、物価はどんどん上がるわ、豪ドルも金利も上がるわで、シドニーなど大都市で家でも買おうものなら、相場は東京以上。「たけー!」と絶叫するしかありませんでした。現地の生活実感から見る限り、「たけー!」(不動産の値段が高い)状態は、今でもそう変わらないでしょうが、日本円生活者からみると、為替のマジックで、とっても安く感じてしまうのが、今の時代です。ほんの数ヶ月前まで、1豪ドル=100円だったのに、今は60円前後ですから、いきなり4割引になったようなものです。realestate.com.au、domain.com.auなど、現地の不動産サイトを見て、私が「安いな、これいいな」と思った物件が、いくつかありました。たとえば、1)シドニー都心部、Broadway Shopping Centre近く、大学生が多く住むエリアで、週235ドル払ってくれるテナントがいて、ここ数年間の空室率が2%、というStudio(1部屋)アパートが、135,000豪ドル(810万円)2)ケアンズの中心地(CBD)、エスプラネードの屋外プールから歩ける距離で、週130~150ドルのレントが期待できるStudioアパートが、70,000豪ドル(420万円)みたいな感じでした。日本の地方都市でワンルームマンション買うような値段で、シドニー、ケアンズなどの都市の一等地に、不動産を持てるのであれば、これはおいしい話だとは思うのです。オーストラリア永住・長期滞在に魅力を感じる日本人にとって、同国で不動産を持つことは、いろいろなメリットがあります。たとえば、1)永住権をとった後、5年毎に再入国ビザ申請をする際、自分名義の不動産があれば、オーストラリアでの滞在年数が少なくても、更新できる可能性が高い。2)オーストラリアで働き、給与収入を得ていれば、投資用不動産を持つことによる税金面でのメリット(Tax Return)も期待できる。円高マジックはさらに続きます。投資家リタイアメントビザで、同国の永住権を取る障壁が、円高のおかげでずっと低くなる。たとえば、シドニーに移住する場合、75万豪ドルの資産証明が必要になるが、この金額は数ヶ月前まで7500万円だったのに、今のレートだと4500万円で済んでしまう。ということは、たとえば自宅の評価額が5000万円の人の場合、数ヶ月前は同ビザを申請さえできなかったのに、今や巨泉さんみたいに、豪州でセミリタイアという選択肢が射程に入ってきた、ということでもあります。そう考えると、今こそ日本円を持って、海外で資産をつくる、絶好のチャンスかもしれませんね。