今日も明日も。
最近、クリニックに通っていた患者さんが一人、また一人と減っていきます。 先日も、開院の時から通っていたKさんが亡くなられました。 とても男気のある、シャキっとしたKさんでしたがだんだん足腰が弱くなり、家でも奥様に甘えてベッドから動かなくなってしまったのがクリニックに来れなくなった理由です。 歩いて5分とかからない距離に住んでいましたがその手前の床屋さんには行くのに、「薬は嫁が取りに行けばいい、俺はめんどくさい」と、いつしかクリニックには顔を出さなくなりました。 それでも2週間ごとの薬はしっかり飲んでご飯も食べて元気に過ごしていたようです。 途中から往診になり、院長は2週間おきに顔を見に行きましたが私たちは付き添わなくても大丈夫ということで(なんでも一人でこなす院長・・・)奥様が話す様子や、院長の言葉で「ああ、Kさんまだまだ元気だな」なんて思う日々でした。 そんなKさんでしたが数日前、家族に連れられてかなり久しぶりにクリニックに来たのです。 だいぶ痩せていてあの頃の威勢の良さもなく弱弱しい感じがみてとれました。 車から車いすに乗せ、診察して 「Kさんおひさしぶりですね」「元気な顔が見れてよかったです」「また、顔を見せに来てくださいね」 スタッフにそういわれ、照れ笑いをしていたKさんは数日後に誤嚥性肺炎を起こし入院先の病院で永眠されました。 院長が「Kさんはもったいない。まだまだ長生きできるはずなのに、自分から動かなくなってしまってそれが寿命を縮めたよね。」 と悲しそうにつぶやいていました。 私も、そう思います。 元気に挨拶をして、笑顔で「ビタミン注射してくれ!」と毎回言って注射が大好きで背筋がピンと伸びていたあの面影は「動くのがめんどくさい」という気持ちから、こんなにも簡単になくなってしまうんだなあと。 Kさんを、ご家族の車からクリニックの車椅子に乗せるとき私は整形外科で働いていたのが長かったせいもありわりと簡単に移動させることができました。 もちろん全介助ではなく半介助でなるべくKさんの足で立ってもらってスムーズに移動できるように手伝いましたがご家族や、Kさんが「やっぱり看護師さんは上手だね、こんなに簡単に移動ができた!」と喜んでくれて、ほんの小さなことでしたがなんだかすごくうれしかったのを覚えています。 それがKさんに触れた最後の出来事でした。 総合病院で働いていたときは自分の受け持ち患者さんが何人もいて入院から退院までしっかりと接することができましたが今は小さなクリニックなので担当も何もありません。 けれど、やっぱり患者さん一人一人に対する思いは昔と同じで別れは辛いものです。 開院して4年が経ちましたが4年の間にお別れをした人は何人もいます。 まだ若かったI社長さん。「まだまだこれからなのに、やり残したことがあっただろうな」とみんなで言っていました。 男の人なのに笑顔がかわいいTさん。家族みんなに愛されていました。 昔自衛隊に入っていたMさん。90歳すぎなのに何度も危ない時期を乗り越えては、元気にクリニックに戻ってきたことに「やっぱり体力があるね、Mさんはすごい!」と話していたこと。 デイサービスが嫌いだから行きたくないと言っていたのにいざ行きはじめたら楽しくて笑顔が増えたとご家族が喜んでいたYさん。 あまり笑わないけど、真面目に通っていたKさん。突然体調が悪くなって持病が悪化し、かえらぬ人となってしまいスタッフみんなが驚いたこと。 そのほかたくさんの人とのいろんな場面や会話はまだ心の中に鮮明にのこっています。 少しでも長く、少しでも多く、この出逢いが続くといいなと最近よく思います。 今日も明日も、これからも。患者さんの笑顔を、言葉をちゃんと忘れないようにしよう。