まんがよみ日記

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  夏帆主演「うた魂」＠BSジャパン

  　高校のときに男声合唱をやっていた。　兄がやっていたので面白いかと思ってやってみたのだが甘かった。嫌いにはならなかったけれど。どんな世界でもそうだろうが結局高いレベルでないと面白さはない、というのが結論。人生の面白さもつまらなさもすべて自分のやり方次第だと今はわかっているしなにをいっても人のせいになってしまうのであまり女々しく語りたくはないのだが語りたい。　定期演奏会もなく、コンクールでも勝てない。貴重な練習場所はなぜだがママさんコーラスにとられるという環境でどうやったらどっぷり浸かれるというのか。八方美人の顧問にはうんざりした。昔の栄光ばかり語るのもアレだったし。そんなわけでOB会にはまったく行っていない。それでもそこからはじめて今に至るまで続けている人はすごいと思う。自分はやらないけれど。　正確には大切なのは「高いレベル」ではなく「だんだんと高さがみえてくる」位置にいるかどうかだ。好きになるコツはいまならわかる。どんな世界だって五合目はある。　この作品、高校の合唱部の強豪に在籍する女の子が自分を見失い、また歌う意味を見出していく青春ストーリー。　マンガっぽい雑な台本だが映画の企画意図がはっきりしていていさぎよかった。セリフらしいセリフよりも、高校生のナマっぽい感情を映したほうが映画として説得力がある。　元気な高校生がいて、音楽があふれている。それだけでいい。薬師丸ひろ子が可愛い。映画館で観たかった。（♂）　

  2011年12月19日

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  斉藤一九馬「歓喜の歌は響くのか 永大産業サッカー部 創部3年目の天皇杯決勝」（角川文庫）

  　とあるワンマン企業を舞台に社長から3年で日本リーグを制することを命じられた男のノンフィクション。　若かりしころのセルジオ越後もいたチームだが、とにかくあわただしいチーム強化は「サカつく」のようだ。あわただしいだけでなく人材確保のためにいろんな知恵をしぼり、あらゆる人脈をたどり、根回しをしてルールなきルールをくぐりぬけていくやりかたにあきれるというよりは感動を覚える。　敵を弱らせるための神経戦の数々も面白い。セコいといってしまえばそれまでだが。　予算規模がアマチュア時代なのでエゲつなさはそれほど感じられない。日本リーグにただよう実業団スポーツらしいのどかさがあるのが救いではある。　かつて日本のチームの試合運びをを評してブラジル人はフェアではあるが「マリーシア」が足りないとよくいったものだ。これを読むかぎり勝利の執念からくる「マリーシア」はあるところにはあったのだ、といえると思う。　違う芽を各地で出したという意味で、朝鮮蹴球団と並び、Ｊリーグ前夜の歴史を語る際にもっと再評価されていいはずだ。　

  2011年12月01日

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  奥田英朗「オリンピックの身代金」（角川文庫）

  　東京オリンピック開幕前夜の東京。浮かれる者たちとは別に虐げられる者がいた。日本の影から生まれるドス黒い想いが怪物を生みだす。　光と影。貧富の差。階級。一大イベントが覆い隠そうとする現実に抗いもがく主人公につい共感してしまうのは今年の3月から少しずつ姿を現している電力マフィアへの怒りがあるからだろう。夢から醒めた後は普通に暮らすのが苦しい。　当時いけてたはずのサヨクすらどこか間抜けに描いているのが面白い。「サウスバウンド」もそうだが、サヨクを決して無条件に褒めないのがこの著者の時代感覚だ。主人公がときどき真剣に口走る思想が浮ついた印象を与えるのもそのせいではないか。　スピード感と肉体感覚。文体にひきずられて会場にたどり着く。ラストは納得できないが「虚無」で終わらせるのは照れがあったのだろうか。（♂）　

  2011年11月17日

• 却下2点

  　ムスメが突然、　●●●のCDを買って！と言い出した。　ひとりのデブプロデューサーがひとり儲かるようなアイドル軍団にカネをだすほど親切ではありません　とはいえないので、　「歌がヘタだから却下」　とだけいう。　今度は少し考え、　「じゃあ●●●●買ってよ！」と言い出した。　某有名子役がなにかとバラエティで機会があるたび「大好き」「憧れ」と称して売り込みをさせられているガイジンアイドル集団だ。　整形だらけな某テレビ局ごり押しアイドル（しかもガイジン）にどうしてカネをだせよう？　とはいえないので　「大人になったら自分で買いな」　　とだけいっておく。　なんだかなー。　メディアが汚すのは常に子供か年寄りなのね。　基本的には表現に対して「いいもんはいい、悪いもんは悪い」というニュートラルな姿勢をとってほしい。人気があるからという幻想にひっぱられるような子にはなってほしくない。　でも、嫌なもんは嫌だ。好き嫌いは親としてあっていいと思う。　もしかしたら将来反発してそっちによっていく可能性はあるのだが。それならそれでしょうがない。　服は某安売り店のひとり勝ちで、音楽はこの手のふたつの流れになっている。なんと選択の幅の狭いことか。クニが動脈硬化を起こしているなあと思うのは私だけだろうか。（♂）

  2011年11月12日

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  伊吹有喜「四十九日のレシピ」（ポプラ文庫）

  妻を亡くした男のもとに、生前妻に託されたという「四十九日を宴会ですごすためのレシピ」をもった女が現れる。愛情表現がうまくできない男と、結婚生活が破綻しかけているその娘。さまざまな傷を抱えた者達が確かめる、ひとりの女の生きていた証。娘の夫のダメさ加減にはいらいらするが、家族の足跡を追うことで傷を癒す過程には共感できる。ずっと一緒に過ごしていても、永遠に別れる日がくればまだまだ相手にしらない人生があったことに気づき驚くのだろう。むしろ別れないと知ることができないことのほうが多いのかもしれない。ドラマを見逃したのを後悔した。主演伊東四朗と聞いてなおさら。（♂）　

  2011年11月11日

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  須藤靖貴「抱きしめたい」（講談社）

  　高校の剣道部の男にバンドの参加がオファーされる。未経験からはじまる新たな世界。　高校ボクシングを扱った「セコンドアウト」にも共通する初期衝動と喜びと葛藤、本人の成長という流れは熱さとせつなさとトホホ感に満ちていて好感がもてる。バンドという題材を扱うのは遅いと思うほどだ。ロックスピリッツに満ちている。「男子」ならわかるだろう。　壊れかけのバンドこそ最高のバンドと鴻上尚史がいったが。バンドのもつ、調和だけではいい音にならない特性にも触れている。　やや語りすぎるきらいはあるけれど、人生のひとくぎりを切り取ったスピード感と充実感。買いだ。青春小説とは大人のためにあるのだ。　

  2011年11月10日

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  アニメ「No.6」を観る

  　DVD録画をしたままほったらかしだったアニメをようやく観る。　あさのあつこ原作のSF作品。　完璧な都市の裏では虐げられている存在があった・・というような内容。SFと言い切るにはファンタジー色が強すぎる。　音楽は鈴木慶一。　キャラクターがはっきりしていてよかったが話そのものはよくある、というより80年代SFの焼き直しのような気がする。「サイバー」とかいうキーワードに反応する人にはたぶんストライクゾーンだ。破壊から再生という流れはなぜか今年の日本とリンクする。再生しているかどうかはともかく。　紫苑とネズミの関係が腐女子のツボを押すようだ。ちょっとあざとい。アニメの演出なのかどうかわからないので近々原作を読んでみよう。　ブラピの「ファイトクラブ」とか好きな人にもおすすめ。（♂）　

  2011年11月06日

• ふたり「コクリコ坂・父と子の300日戦争～宮崎駿×宮崎吾郎」＠NHK

  　一流のアニメ監督としての位置を築いた父と、まだ2作目の息子。その軋轢と制作現場での葛藤を描く。9日に放映したものを録画して鑑賞。　絵コンテを一瞥して画が死んでいる、とバッサリ切り捨てる父。試写会で容赦なく退席する父。「長嶋監督や野村監督にはなりたくない」と言い切る父。　親という立場より作品への誠意ならではの発言ではあろうが身もふたもなくてしびれた。　駿はいう。ファンタジーの難しい時代だ。うまくいっているときにこのままじゃだめだ、と伝えるのはいい。でもみんながもうダメだと思っているときになにをつくるか、というのは本当に難しいのだと。　一方で息子はまだまだジブリアニメにしか目が向かっていないようにみえる。その辺の視野の狭さは若さゆえなんだろうか。　世間的にはゲド戦記で失格の烙印を押されたかもしれない息子の経歴は普通の社会人だったというのにも驚いた。比較されるのを承知で、経験のなさを笑われるのを承知であえてその世界にとびこんだのは勇気として称賛するべきなのだろう。　今後息子が親の呪縛から解放されたければ父子の話の企画を撮るべきだろう。父の世界を好きなら好きでいいのだ。でも「劣化コピー」扱いされるのは一監督として不本意だろう。リスペクトはリスペクトとしてもっと世界を拡げるべきだ。　…しかし若いな駿。当分死にそうにないようなアクの強さに感心。（♂）

  2011年08月13日

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  津原泰水「たまさか人形堂物語」（文春文庫）

  　テレビにでてくる人形師は十中八九人形みたいな顔をしている。作品に自らを吸われてしまうのだろうか？というのが以前から疑問だった。　美大出身者によれば一番みている顔（つまりは自分）が画に投影されるそうだ。とすれば、人形師というのはなるべくしてなるのかもしれない。人形師という仕事を選ぶのではなく、人形に選ばれるのだ、たぶん。　ひょんなことから祖父の人形店を継ぐことになった女性が体験する、人形にまつわる物語。　「ブラバン」が面白かったので期待して買ったのだが予想を裏切らず。　その業界に蠢く人々のキャラの濃さであることよ（詠嘆）。　つくるひと。買うひと。つかうひと。　代理機能という言葉にとどまらない、趣味のもつ業にひきつけられた。　その中で何物にもなりえない、主人公の位置取りが面白い。（♂）　　

  2011年08月10日

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  小路幸也「COW HOUSE」（ポプラ文庫）

  左遷された男が会社のもつ物件の管理人になる。そこに次々と現れる奇妙な人々。自分探しならぬ家探しの物語。正直ぬるい。善意だけの物語にそれほど抵抗はないけど、あまりに展開が予定調和すぎないか。順を追って丁寧に描いているはずが何か隙間を感じさせるのだ。行間から潮風は感じるけど、もう少し五感に訴える肉付けをしてほしい。背景が下手。世界を明るくしようとしてなのか、過去と現在のつながりがいまひとつ頼りない。仕事か家庭か？ではない新たな居場所探しは大人のファンタジーとしては評価できる。　wikipediaで見る著者経歴を信じるなら、ゲーム脚本家の小説として読むべきなのかもしれない。こういう読者からの逆ハンディがいいことかどうかはわからないけれど。（♂）

  2011年08月08日

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  永田俊也「県立コガネムシ高校野球部」（文春文庫）

  　とある進学校の弱小野球部に売出し中の女性起業家が乗り込んでくる。目的は甲子園に出場させること。　あれ？どこかで聞いたような？　帯は「ドラッカーも裸足で逃げ出す！」　おいおい。そのまんまですか。　　↑たぶんこれを意識しているのは間違いない。アニメしか観ていないが。　必要なところには投資を惜しまず、お金をかけないところには徹底的にかけない。はっきりした費用対効果の計算、目標設定の巧みさ、スタッフのリクルートの上手さ。　いわゆる「青春」の言い訳をいっさい認めずビジネスの論理でつきすすむ。いっきに読めた。ラストはちょっと納得いかないけれど。　情報の利用法、明確なゴールの設定。もしドラと並んで評価していい作品。でも主人公のダメさ加減はもうすこし愛すべきものに描いていい。　最後のあっさりとした終わりもこの作品にはふさわしい。（♂）　

  2011年08月06日

• 原田芳雄主演「火の魚」＠NHKBSプレミアム

  　原田芳雄の追悼企画。　島に引っ込んだ作家と編集者。理不尽な作家とそれにこたえる編集、という緊張関係を描く。　途中からみはじめたのだが引き込まれた。原田の弱さと粗さはもちろんいいのだが編集者を演じる尾野真千子の丁寧な芝居がいい。死への意識、ふたりの距離、豊かな自然。丁々発止のやりとり。ストイックな関係なのにあやうい雰囲気がただようのがドラマではもったいない気がした。こういうシンプルで太い話こそ映画にすればいいのに。　病院に見舞いのために作家がいくとわざわざスーツに着替えて迎える編集者という場面がよかった。なにもいわないが伝わる深いつながり。　wikiによれば室生犀星と装幀家との実際にあった話が基らしい。探してみよう。　・・・という脚本・演出もすばらしいけど単純に原田芳雄がカッコイイ。追悼。（♂）

  2011年07月21日

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  三浦しをん「仏果を得ず」（双葉文庫）

  魚介類系歌舞伎役者がサッカー崩れの小物と喧嘩して怪我して騒ぎになったのはいつのことやら。歌舞伎を名乗るなら、画にならん相手じゃプロとしてダメだろう。朝青龍とか和田アキオとか絵面がいい相手が他にいくらでもいるだろうに。所詮その程度の器ということか。とはいえ、本来こういう人種だったのだろう、ともあらためて思う。本職の肥やしになるなら謝罪会見はいらんだろう。だいたい誰に謝っているのか。なんの興味もないはずのヤンチャな高校生が、修学旅行での衝撃体験によって文楽の世界に飛び込み成長していく物語。芸に生きるという緊張感と情熱と狂気。日本の伝統芸能がはらむ艶っぽさ。解釈は解釈として、理屈っぽくならないように登場人物に生を与えようとする苦労。恋愛模様をからめつつ作品と格闘する姿に好感。自己表現とか小さな視野にとらわれず、時代を超えて残ってきたものを尊重して血を通わせようとする姿勢がいい。謙虚だが枠におさまらない野心。表現をかじった者ならはっとさせられるだろう。NHKで実写化してくれ。浄瑠璃の細かい解説つきでよろしく。（♂）

  2011年07月20日

• 戒厳令

  　●しんごなる芸人のネタが不快だ。あらゆる一発芸人はだいたい許せるがこいつは許せん。笑いというものは本来タブーを侵すものであって、だれかの反発を買うのは当たり前だと思う。だからだいたいご利用限度額は高く設定しているのだが。　こいつだけは生理的に受け付けない。美学を感じない。タブーの一線への覚悟みたいなものがないだらしなさに今のテレビのだらしなさを感じるのだ。いや、テレビがだらしなくなかった時代なんてあるんだったら教えてほしいのだが。　そんな私のことを知ってかしらずかムスメが保育園で覚えてきて何度も繰り返す。　それつまらないからべつのを考えてやりなさい。　としばらくはやさしいパパでありつづけたのだが、内なるキャパを超えたので戒厳令を発動した。　●しんごのネタをやったらおやつなし　ムスメ、「ドド・・・」と言いかけて必死に飲み込んでいる。　つーか、ほんとにやめてくれ。器が小さい男でしょうか？ええ、そうでしょうとも。認めたくないがそれを認めても聴きたくないんです、はい。　もうどうにかしてくれ。（♂）

  2011年07月18日

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  荻原規子「RDGはじめてのお使い」 （角川文庫 ）

  上橋菜穂子・佐藤多佳子絶賛と書かれていたら本好きなら釣られてしまうだろう普通?引込思案の少女が進学間近に己に秘められた力に気づく。神社、修験道、謎の転校生。日本人が馴染みある要素で勝負している作品世界もさることながら、新しい世界への不安、親との関係、異性への興味などがちりばめられていてうまい。自らに秘められた可能性や使命を探る、みたいな設定がある年代にはツボなんだろう。と、ふだんファンタジーを読まない者としては分析してしまうのだが。そのへんを作品の「骨」とするなら、神社のもつ鬱蒼とした空気や、あやかしなるものがでてくるもやもやした空気の描写が「肉」だ。次になにがでてくるかわからないドキドキ感はいい。正直なことをいうならスタートにむけて「序章」だけで1冊終わっているのがもどかしい。これだけ土台をがっちり固めているなら次の巻では飛躍するよな？いや、してくれないと困る。そんな食いたりなさは大人だからだろうか。（♂）　

  2011年07月05日

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  梯久美子「昭和二十年夏、僕は兵士だった」（角川文庫）

  　角川文庫を3冊買ったら発見くんストラップを3個もらった。うれしい。　ある分野でトップをとったひとたちに戦争体験を語らせたインタビュー集。　三国連太郎。水木しげる。人選がいい。　戦争からの時間の経過もあるし、インタビュアーの上手さもあるのだが語る内容への距離感がすばらしい。　イデオロギーに狂っていたり、美化をしたり、自己演出したりしていない。　それでも語る冷徹な真実。体験者ならではの重みがある。　戦後大学ではなぜ徴兵から逃げなかったかということで糾弾されたという話には絶句した。重罪だからといっても仮病とか手段があっただろうということらしい。いったいなにをいっているのだ。　結局今にいたるまで「われわれ」は戦争にたいして戦争放棄という名のもとに思考停止しているだけなのかもしれない。　なにをやったかという事実よりは語ることそのものが尊い。　おそらく苦痛ではあろう。でも読み手としては語る覚悟を受け止めたい。　例に出してはなんだが光人社文庫などは書き手の思い入れと時系列の流れとの整理がされていないので非常に読みづらい。　「伝える」というのは捨てるということだ。ダシのネタではなくダシを味わいたいのだ。　風化は避けられないならせめてなにをつたえてほしい。　同じような編集方針でどなたかガクセー運動を語ってはいただけないだろうか。　　デモの最前列だと捕まるから後ろのほうにいたよハハハ　とかどこぞの総理大臣が語ったり、　火炎瓶を投げるのは上手でしたよ　と元法務大臣が語ったりとか。　ありえん。　もしかしたらインタビュイーに政治家がいないからいい本なのかもしれない。（♂）　

  2011年06月24日

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  重松清「カシオペアの丘で」 （上）（下）（講談社文庫）

  ガンになった男が幼なじみとの思い出の場所をめざす。忘れ物をとりにいくように。同時に周囲の止まっていた時計が動き出す。生まれ。育ち。恋愛。仕事。時代。年齢なりの悔恨を残しながらこの世を去る苦しみや想い。きれいごとだけではない日々の積み重ねは暗く目をそむけたくなるような悲惨なことばかりだが、なぜだか目が離せない。時間の経過が朝日を連れてくるだろう、と思わせる希望が作品を照らしているからだ。後ろ向きな姿勢から、落し前をひとつひとつつけていく過程が痛く、心を揺さぶられる。哲学書のいう「死ぬまでの心の過程」や「リア王」の一節を引用して、こちらが先読みしそうな元ネタをあえて消化せず出してかわすのは卑怯なつくりだが。テーマとかこちらの読み込みを超えてそれ以上に「生きて」いる主人公の強さ。同年代の自分にはぐっときた。親の仕事って、最優先はたぶんなにがなんでも元気でいることなんだろう。簡単だが道のりは厳しそうだ。（♂）

  2011年06月01日

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  SDS「Movie!」＠シアターグリーン

  　閉館間際の映画館に集まった客に､映画を撮ろうと声をかける男｡そんな話｡　学生芝居にはすこし厳しすぎることを書いてみる。　話が平坦｡出演の緩急がない｡みんなが万遍なく出過ぎ｡｢ｷｬﾗ｣が漫画的すぎる｡漫画でもいいのだがふくらみがない｡次の場面にいくときに飛躍がない｡なんとなく話がだらっと流れている｡飲みに行くとか退場の理由を無理やりつくるのではなく､場でなにが発生したのかを演出で絞るべき｡突然映画を撮る､といいだす不条理にみあうﾗｽﾄがほしい｡なぜ映画なのか｡芝居でもﾌｯﾄｻﾙでもいいじゃん（極論）！と客にいわせない､｢思い入れ｣をみせてもらいたい｡全然撮影が大変そうじゃないんだもの｡｢みんなでやる｣意義しかみえないのが悪い意味で話を軽くしている｡ほかに何かないのか。なにもかも簡単に｢みんなで｣うまくいきすぎている｡そのへんを「流れている」というのだ。　実生活でそんなに他人と仲良くでいるの？すぐに？スムーズに？　できているならゴメン。　どうせならﾗｽﾄは稚拙ながらも熱い映像が流れればいいのに｡｢元映画監督｣などひとりひとりの過去ﾌﾟﾛｯﾄ自体には面白いものもあったのだから編集構成の問題だろう｡もうひとつは役者と役との距離である｡世界が狭い｡飛躍が足りない｡つぎにこいつは何をしでかすだろう？という｢ﾀﾒ｣､ゆらぎがないのだ｡　舞台はかならずしも設定した場所である必要はない。しゃべりはじめれば過去にも未来にもいけるのが舞台の便利（かついい加減な）ところだ。「ｼﾞｭﾘｱｽ･ｼｰｻﾞｰ」は別にﾈﾀとしてださなくていい｡団体名にたいするアリバイか？いろんなことを説明しすぎている｡書く過程でたくさん書いて､最終的にはいかに喋らないかが脚本の勝負だ｡ﾃｰﾏに関係ない状況説明は削るべきだろう｡（♂）前回公演【中古】afb【古本】光源／桐野夏生　【中古】B6コミック あどりぶシネ倶楽部 / 細野不二彦【10P18May11】【画】

  2011年05月28日

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  原田マハ「キネマの神様」（文春文庫）

  ギャンブル中毒にして借金中毒。これ以上ないダメ人間にして映画好きの父が病に倒れる。独身の娘はディベロッパーをやめ無職。「中毒」の治療のため父がはじめた映画評論ブログが評判になりおきていく奇跡。出てくる映画（「フィールドオブドリームズ」とかメジャーなものばかり）を知らないひとが読むとどうなのか？という疑問はあるが、種があちらに散り、こちらに散りたくさんの花を咲かせていく展開にはぐいぐい引っ張られた。偶然と必然の幸福な出会い。すこしずつ世界が拡がっていく展開がいい。映画がもつ力だ。同時にそれは人間関係の新たな発見の物語でもある。親が子を知り、子が親を知る。プロがアマを知り、やがて理解が国境を越える。それぞれの居場所探し。映画を見終わったような充実感。なんとなく黄昏れている雰囲気もまた「映画」らしい。そしてネタが映画なのに映像化するとなると難しそうなのも面白い。脳内名画とでもよぶべきだろう。（♂）

  2011年05月27日

• SONGS「DREAMS COME TRUE」＠NHK

  　このグループには同時代性を感じながらもへそ曲がりが災いして何の思い入れもないのだが。なんとなく観る。　発声練習のとき、頭蓋骨のてっぺんから指を上に突き上げるようなアクションをよく高校の音楽教師がやっていた。このひとのボーカルを聴くとそれはイメージではなくてできるひとはできる基本なのだという実感がある。とにかく声の響かせかたが尋常じゃない。　上顎をまじまじとみてしまった。骨格で分析するのもやらしい見方だが。　しかも（いまさらいうことでもないが）グルーブ感が半端ない。激しく動いているわけでもないのに血からビートが刻まれている。周囲のミュージシャンがどんなアクションをとろうが、あくまで中心は吉田のボーカル、という説得力。テレビ画面でこれだけ伝わるのだから生ならもっと凄かろう。　あっという間の時間だった。　「音楽の力が伝わらない絶望を知っている、でも伝えたい」というMCはよかった。自信と謙虚。これが一流というやつだろう。（♂）

  2011年05月25日

• 地球ドラマチック「ギャレス先生、オペラに挑戦」＠NHK教育

  　イギリスの有名音楽家が合唱になじみのない学校にいって合唱指導をするシリーズ最新作。今回はご本人も初体験というオペラの合唱指導をする。　普通にメンバーを募集するのではなく、ストリートギャングの抗争を描いた作品の雰囲気にあわせていろんな環境からリクルートするという野心的な企画。　そのままイギリスの階層を反映しているのが興味深い。同じ10代なのに刑務所帰り。移民、軍隊暮らし、引きこもり。日本ももしかしたら平等は幻想になりつつあるのかもしれないが、この国にくらべればまだまだだ。　モノをつくるときの顔つきは万国共通なのだなあという気がした。芝居の稽古場や、音楽スタジオでみる雰囲気と同じだ。迷いと不満、野心と発見。　シャイなのは日本人だけかと思えばどこにもいるらしい。引っ込み思案な子がだんだん変わっていく様子は可愛かった。　途中生活や本人の性格によってリタイアが出る。才能とモラルが共存しづらいというのはサッカーの世界でもよくあることだ。こういうスリルはノンフィクションならではだ。「やる気がないなら去れ」というあたりまえの告知がいかに苦痛を伴うものかというのは自分にも体験があるからわかる。先生の苦労がしのばれた。　実際の舞台の盛り上がりには素直に感動した。出演者がなにかをつかんで次のステップにいくことを祈る。（♂）

  2011年05月07日

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  伊吹 有喜「風待ちのひと」（ポプラ文庫）

  　心に傷を負ったエリートの男と、トラックドライバーから大切に扱うと運がひらけると噂される女。出会うはずのない同年齢の２人が田舎町の古い家で同じ時を過ごし見つけるなにか。　３９歳という年齢が隔てるふたりの壁、という設定がなんともリアル。クラシックのアルバムのセレクトや、ガンプラなどの小道具など、ちりばめられた仕掛けがいいなあと思ったらほぼ同世代の著者だった。納得。　心の揺れ具合。それまでに歩んできた人生。夢を語るだけじゃすまない、くたびれただけじゃない男女の息遣いがこまやかな描写で描かれる。季節感や飲食の扱いがいい。身体感覚がある。いいタイトルだ。　強張ったなにかが解けていく良質のマッサージのような小説。　贅沢をいうなら主人公の妻の描き方が直線的というか、あんまりかもしれない。悪役すぎないっすか？　

  2011年05月02日

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  穂高明「月のうた」（ポプラ文庫）

  　母と祖母を亡くし、再婚した父とその再婚相手と折り合いをみつけなくてはいけない女子中学生の姿を描く。　劣化保坂和志のような文章を読まされるのではないかという警戒心はいい意味でうらぎられた。重松清ほどドラマチックではないが日常で出会いそうな設定から心理を追う構成は好感がもてる。幼馴染。部活のうるさいやつ。クラスの嫌われ者。うるさい親戚。登場人物に無理がない。　よくも悪くも行間がないのが欠点か。もうすこし隙間をつくれば読者の想像力が飛躍するのに。　男はダメで、女はしっかり。古典的ながらそんな設定は話をしぶとくするような気がする。　　

  2011年04月28日

• つかこうへい よみがえる伝説の舞台＠ＮＨＫＢＳ２

  　70年代から強烈な言語表現と劇構造で日本の演劇に影響を与えた演出家つかこうへい。ＮＨＫに眠る稽古映像をもとに実像に迫る。　こういう番組作りだと結局在日韓国人である出自中心になってしまう。たとえば他ジャンルであるがクラシック音楽の作曲者たちもざっくり「ストーリー」で語られることが多いからしょうがないといえばしょうがないのだが。　小西真奈美の駆け出しのころと韓国公演の映像がみられたのはよかった。ネタのかませ方が日本の舞台とまったく変わらないのが面白い。　それは地方のワークショップでも変わらない。キツいセリフをぶつけられた側が感情をむき出しにし、生身の人間がさらされていく展開。　本人はソウルでの反響が弱かったことに失望して国を去ったという。演出をうけた俳優たちがそれぞれブレイクしている、というのは救いではある。　草薙や小西といった役者のコメントが貴重だ。草薙いわく「つかさんがいないところでボクがなにをするかつかさんはわかるんです」とのこと。内面に踏み込んだ演出は愛と観察眼がないとできないだろう。つくづく惜しい。（♂）

  2011年03月30日

• 新聞を読んだり買い物行ったり

  　朝から掃除。　産経は放射線量にしぼった報道。それによれば３０キロ圏外である東京はローマより低いぐらいだそうだ。　問題は「放射性物質」をどう扱うのかだと思うのだが。この辺の交通整理がどのメディアもできていない。水にはいったらどうなの？　データがないというのが現実なのだろう。肉体の実験結果があったほうがよっぽど怖い。　私の大学の社会心理学の先生はいわゆる「推進派」だったのだが、推進派と反対派の戦いをPR技術の差だと言い切っていた。　隠すことでかえって疑心暗鬼をあおってしまう。臭いものにふたをすると臭くないものまで疑われる。そうなる前にどんなに小さな事故でもはやめに公開して安全性をアピール、というのが原発のPR方針だったはずだ。そういう積み重ねがここにきて全部チャラになってしまった。東電がダメなのか政府か。両方か。ま両方だろう。　あーあ。　隠してもバレるというのはSENNGOKU38で学んでないのかミンス？　先日お隣さんと話すとフクシマの話になった。　「東電の城下町みたいなものらしいですよ周辺」なるほど。それを甘い汁とかなんとか批判するのはあまりに単純な見方だ。雇用を生んでいる、という視点も必要だろう。　これだけ不安を抱えて暮らすのは新型インフルエンザ以来だ。宗教団体出番だぜ。広大な市場が広がっているぞ。オレは入らんけどな。　21日が雨ということで暇つぶしグッズとしてのスケッチブックをホームセンターに買いにいく。節電の影響でCDの視聴ブースがとめられているのが痛々しい。エスカレーターもとまっている。ついでにとあるゲームの物語が「パニックもの」だということで発売延期になっていた。いつまで続くんだこんな日々。　夕方、ムスメに縄跳びをさせていると両隣からおともだち登場。シール交換やら自転車練習やら。楽しそうでなによりだ。大人同士で近況報告。意外と福島出身者はいるようだ。　かみさんが帰ってきたのでハヤシライスで夕食。食べても足りなくなる危険なメニューだわこれ。（♂）

  2011年03月20日

• TAROの塔＠NHK

  　松尾スズキが岡本太郎、小日向文世が丹下健三、寺島しのぶが岡本かの子って、企画力すごすぎるよNHK？天才！　とはいいながら岡本太郎を「知っている」とはいえない私なのだが。「バクハツだ！」と叫んでいたおっさんという記憶しかない。　物語は自分の画をもとめて葛藤する戦前の青年時代と、太陽の塔誕生までを同時平行に描く。　陰影の深いパリの町並み。盲目的な愛を注ぐ退廃的な母。耽美的な映像は賛否の分かれるところだろうが私は「是」だ。　丹下の弟子たちを仮面で迎え翻弄する太郎。　方向性を見失い放浪する若き日の太郎。　時系列をとばした大胆な構成。創作への苦悩。混沌としたつくりも作品世界への敬意なのだろうか。　パリでの「居場所」がみつからない太郎に母がいう台詞が印象に残った。　「他人に評価を委ねてはいけない。自分の評価は自分でしなさい」　誠意あるクリエーターにはつきささることばだろう。（♂）

  2011年03月05日

• 「声をひとつに～パレスチナとイスラエルの音楽家たち～」＠NHKBS１

  　パレスチナとイスラエル。あいいれない二つの「クニ」のミュージシャンが合同コンサートをやるドキュメンタリー。　プロデューサーのフランス人はウッドストックのステージにも立ったことがあるらしい。その後、セルビアであるとか紛争地域での音楽活動に関わっているという。ロックスピリッツ健在だ。　彼はいう。平和コンサートとは名乗らないと。　目標と現実との折り合いの付け方に「現場」にい続けている者ならではのリアリズムを感じる。卑屈になる必要もないのだけれど、どこぞの国にはなんと安易な「平和コンサート」が多いことか。平和の証拠なのだろう。　困難を極める企画は政治を注意深く排除することで進行する。スピーチ。ステージアクション。日常会話。逆に政治的ですらある。　やがては企画も終わりに近づき、双方の心が近づいていくのは感動的だ。　草の根レベルかもしれない。劇薬にはなりえない。しかし確かな一歩。　ただ国だけではない、宗教だけでもない。生活レベルの差という壁もあるという実態には問題の根深さを感じた。どちらが正しい正しくないと簡単に評価すべきではない話が世界にはいくらでもある。　でもいい音楽はいい。そういう耳をもっていたいと思う。（♂）

  2011年03月04日

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  和田竜「忍びの国」（新潮文庫）

  伊賀国をめぐる、伊賀者と織田の次男との攻防、そしてその人間模様。伊賀者が徹底的に超人（というより怪人）に描かれていて格闘シーンがぶっとんでいてよかった。金に汚く、策謀と殺戮を好む存在が跳梁跋扈するさまは時代小説とは思えない（山田風太郎という偉大な先人はいるが）。映画化されるときは（間違いなくされるだろう）SFXつかいまくりの、妖怪のようにつくってほしい。タランティーノの映画のごとく画面上にごろごろ死体が転がることになるのだろう。　「のぼうの城」に較べるとキャラクターがばらついたイメージがあるが、どう転がっていくかわからない展開は楽しめた。　単純に金だけ、義だけではないところがまた読んでいて爽快だ。どれだけ欲望に忠実でも許せる不思議な作品である。　　

  2011年03月02日

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  情熱大陸　今井美樹＠TBS

  　歌手今井美樹のドキュメンタリー。　正直昔は「ちゃらい歌を歌いやがって」というのが印象だったが。気づけば深い表現力をもつ歌手になっていた。積み重ねの力というのはあるものだ。　あるのは才能だけじゃない。目減りしていく才能と地道に築いていく自分の技術とのバランスにベテランシンガーとしての重みが感じられる。　４０後半という年齢もあるだろうが、首の筋肉と血管から日頃の節制が伝わってきた。　歌詞を決めるためにレコーディングぎりぎりまでもがき、出ない音域のためにトレーナーをつけ、ライブ前にナーバスになりいらいらする。子育てを悩み母の前で２時間泣いた、という壮絶な話をぽつりと語る。そういう裸の姿をすべて撮る映像は偉大だ。　プロなら努力をみせるもんじゃない、という考え方もあるだろう。ただ画面からは「みせる努力」ではない本物がみえた。　「爽やかな歌を歌うひと、といわれるならそうじゃないといいたくなる」　そういう発言もいい。　低音が一部聴こえないという告白もあり。　宣伝に終わらない、密着ルポとしての作品の質に好感。アルバム聴きたい。・・・と思って検索したら結構値段が激安ばかり。なんだろうこの扱い。（♂）　

  2011年02月20日

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  五十嵐貴久「For　You」（祥伝社文庫）

  親しくしていた親戚の死。女性編集者が部屋を訪れるとそこには日記があった。かつての親戚の青春時代を描いた内容にのめりこみつつ、現在の仕事と恋愛の日々を描く。やがてみえてくる親戚と主人公の秘密。韓国ネタ＋OL生活を描けば話のスケールが広がると思ったのだろうか。といういい方はひどいかもしれないが。正直成功しているとはいえない。　そもそも女性の一人語りからしてあまりうまくはない。この著者は構成で押してきた人で、文章のレベルにケチをつけはじめるとつらいことはわかってる。　　それに加えて韓国ネタだ。　ヨン様ブームのときなら違うかもしれないが、これだけごり押しアイドルがテレビを占拠すると雑誌の売り上げを左右するアイドル登場といわれてもリアルさがない。　がんばりましょう。（♂）　

  2011年02月18日

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  NOKKO こころから歌いたい～母になったNOKKO

  　以前民放で観たのと構成があまりかわらない気がするのだが。　１２月にＪＵＪＵとイベントでデュエットした貴重な映像がメインか？　海沿い（熱海）の風景と、近所のおばさんとの交流。地元に根差した生活がうかがえる。　日常でつかっている手作り味噌が自作というのもいい。いい生活をしているのだろう。　それでも目の輝きはトップを極めたひとのそれだった。　母としての映像よりは、トレーナーについてもらって身体をつくっている場面に感動した。　鍛えれば増えていく２０代と違い、地道に錆を落とす作業というのはかなり大変なはずだ。　もう歳なりに太っているし、全盛期の声量にも動きにも程遠いのだが、それでも彼女がもちつづける輝きの陰にはこういう努力がある、というあたりまえの事実。クリエーターのものづくりとはなにか考えさせられた。　若いころのお釣りで食えるほど甘い世界ではない。実際はおでんのように注ぎ足し、じっくり煮込まないと「味」はでないのだ。そしてそれは濃く、深い。断固支持したい。（♂）　

  2011年02月11日

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  飯田譲治・梓河人「黒帯」（講談社文庫）

  軍の強制的な空手道場接収に抗った師匠の死をきっかけに弟子が袂を別つ。実戦派と原理派。時代の空気と己が欲望に身を任せる前者と、非戦の教えに縛られ悩む後者。方法論は違えど空手完成を目指して歩む両者の道の先にみえるものとは？梶原一騎DNAが埋め込まれている展開。期待して読んだ。語り部として一番弟子（才能なし）を置いたのはうまい。陸軍憲兵隊が絡んでくるのも暴力の意味を問う意味でいいだろう。混沌とした時代に舞台を設定したのもまたいい。･･･だが設定で終わっている。ペーパースポーツマン（命名:かみさん）としては、格闘技を描くなら肉体感覚があるのが前提だ。戦いであり、あるいはエロであり、食欲でもいい。痛み、増える乳酸、湧き出るアドレナリン。読んでいて身体に響いてこない。時代の描きかたがステレオタイプすぎる。戦争にしろ、貧困にしろ、ありがちなキーワードをつないだ流れはａｖｅｘの音楽を聴いているようだ。映像化したらもしかしたら面白いのかもしれない。文章表現としては×。軽い。（♂）

  2011年01月25日

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  江上剛「我、弁明せず」（PHP学芸文庫）

  大正から昭和にかけて銀行経営、財閥統括、日銀総裁、大臣と歴任した池田成彬（せいひん）の伝記。恐慌から戦争、敗戦と長いトンネルへ突入していく激動の日本経済と時を同じくしていくあゆみが描かれる。その時その時の判断、決断力と洞察力がすばらしい。英米で学び、その力を知るがゆえに軍の暴走を抑えるべく奔走する姿に、日本にもこんなひとがいたのかと感動。白洲次郎いうところの、「プリンシプル」がある。　火急のときに普通の結論を出すことのなんと難しいことか。バランスシートだけでもダメ、現場だけでもダメという池田の方法論はあたりまえだがあたりまえをつらぬき通すのは強さが必要だ。しかし結果として暴走はとめられなかった。その辺が名前を残しているとはいえない理由だろう。池田ひとりに押し付けるのはもちろんフェアではない。皇道派と統制派の熾烈な争い。メディアに扇動される世論。歪んでいく日本の政治。「しかたがなかった」で終わらせていいのだろうか。歴史を考えるときに、思考停止ではないのか、と疑う部分だ。きれいごとだけではない。北一輝に金を出していたりするあたりは著者も書きづらそうではある。時代を考えて評価すべきではあろう。笹川良一から小林一三、高橋是清と、昭和に活躍した面子が次々登場する。経済小説というより、昭和初期の別の一面を描いた歴史小説といえよう。それにしても、理より情に流され、問題がおきても先送りしがちな行動パターンは現在もかわっていない。経済をおきざりに軍が暴走すれば負けるに決まっている。新渡部稲造が武士道は経済となじまなかったと書いているが、軍人に経営という思想を教えなかったのは組織として欠陥ではないのか。統帥権あるいは大臣現役武官制に法的な規制はできなかったのか。テロを背景にした力を前に、聖域をつくってしまった要因をもっと追求すべきだろう（杉山隆男氏によれば、いまは「米軍管轄」が聖域になるらしい。歴史からは学べないのか）。冒頭の鈴木商店とのやりとりはそのまま日本のその後の暗示だ。統制がきかない現場、能力の冷静な見極めのない拡大路線。そういえば当時の陸軍では現場優先主義の「独断専行」をよしとしていたそうだ。そりゃ破滅もするだろうよ（怒）。朝日がミスリードしていた実態もちくりちくり書いている。なんだかねー。（♂）　

  2011年01月20日

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  山本兼一「命もいらず、名をもたず」（NHK出版）

  なぜ剣の道が出世の近道だったか、というのが長年疑問だった。侍という武装階級が治めていたからだ、という単純な理由の他に理由はないのか。政に武術で得るなにかが通用するのだろう、と今は考えている。対峙し倒そうとする技術を磨く中でヒトの見方が冴えていくのではないか。実際、社会で成功しているひとに武道を嗜むひとは多い。もっとも、この論理は「できるやつはなんでもできる」という言い方で崩れる可能性はあるが･･･まあいいや。さて本書。明治維新の時代、勝海舟の江戸開城の使者として、明治天皇の侍従として知られる剣豪山岡鉄舟の伝記。金をもたず家を省みず、撃剣と座禅と書と酒を愛し、ひたすら腕を磨いた日々が描かれる。禅寺で葛藤する姿は決して青くなく年齢にみあったものであるところが共感をよぶ。利休・火天と読んできて、山本節というのがあるなあと思っているがそれがなんだかわからない。時代小説っぽくない構成の部分か？個人的にはちょっと鼻につく。でも読んでしまう。むーん。（♂）

  2011年01月19日

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  ジェイムス・ブラッドリー　ロン・ハワーズ「硫黄島の星条旗」（文春文庫）

  　テレビを点けると映画「ハンコック」をやっていた。PR会社の社員と嫌われ者のヒーローの出会い。この本ってこの映画みたいだ。　　本書は、硫黄島に星条旗を立てる兵士の有名な写真の「出演者」たちの人生を描いたノンフィクション。　ノンフィクションとしてすばらしいのは読み手の自分達と地続きのかつての若者たちの描き方である。　どこにでもいる若者が戦場に赴く。だれにでもタイミングによってはありうるのだ、というのはなかなか理解されづらい。多くの戦争体験談が失敗しているのは聴き手の「でも昔の話だろ」のツッコミにたえられるかどうかという部分だ。　この本は十分堪えられる。　著者は「出演者」のひとりだった父がその体験談を封印していた謎を追っていく。　悲惨な実情。体験と他人の目とのギャップの大きさ。英雄であることの悲しみ。今日でも十分ありうる個人へふりかかる悲喜劇。　戦記物として読むのもいいがメディア論を語るためにはいい教科書かもしれない。　さきに映画を観たが、読んでみるといかに原作を慎重に扱っているかがよくわかる。これとセットで日本側を描こうとするイーストウッドはやはり凄い。　

  2011年01月14日

• 暴れるおっさん。

  　夜、テレビをつけると宮崎義援コンサートで泉谷しげるがあばれていた。　「野性のバラッド」のロングバージョンとともに、叫び暴れ煽る狂乱のステージ。　客席に近づき、寝そべり、跳んでいた。たしかこの男はおそるべきことに片足が不自由だったはずだ。客席のだれもそんなことに気づかないだろう。　23年前の秋に観たものと同じことをやっていた。　あのときの汐留PITでもすでに泉谷はオヤジで、なにかに怒っていて、客の怒号をうけとめる気を発していた。　高いテンション。ステージング。質の高いバックバンド。　しびれた。声量とか、技術とか、年齢とか、細かい話をすっとばすなにか。　何度も映される客席がみんな笑顔だった。　あとからでてきた他の出演者もみんな笑顔だった。　ひとにみせるものはカラダを張るものだ、というきわめて単純な話を再認識した。　最近、こういう続けているひとを尊敬する。　衝動とともにデビューして、衝動とともに去っていく存在もまた尊い。　それとは別の話だ。　目の前の客のために、今あるものを誠実に全部さらけだす。　たぶんその繰り返しにみんな耐えられなくなるのだろう。　GLAYを観なかったことを後悔した。今井美樹の柔らかな声にホンモノを観た。　歳をとり、腰が重くなり、ステージや、舞台をすっかりスレた目でしか観られなくなったけれど、ときどきこういうモノを拾う。　「最近のはいいモノがない」とはいわないでおこう。　たまたま知らないだけなのだ。　そういう謙虚さだけは持っておきたい。（♂）

  2011年01月07日

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  斎藤智裕「KAGEROU」（ポプラ社）

  　話題の本なんて5年ぐらい寝かさないと手をださないのだが。　かみさんのママ友がGETしたものを借りた。　20分ほどで読了。　個人的には、みんながくさすのをいっしょになってくさすのはつまらないと思っている。　紅白とか。　民主党政権とか。　日本代表のサッカーとか。　DQN俳優が珍走族OBとケンカしたニュースとか。　ついったーで不倫がばれた女優のニュースとか。　みんなとおなじこといってなにがいいのだ？　オリジナリティのかけらもないぢやないか。　できればほめたい。　中二病といわれようが。　逆にみんながほめるものは。　韓国アイドルを広告会社がプッシュしようが。　最後までつまらんといいつづけたい。　でも、　これはないわ。　文章に比喩がやたらでてくるのだが、無理やり華美にしようとしてリキいれているのがわかる。　編集はいったいなにをしているのか。　そもそもプロットからいってダメだ。　自殺志願者の男の前に不思議な男が現れて・・・　　中学生の創作レベルだ。　水嶋センセイも被害者だよこれ。　このレベルで賞がとれるというのはにわかには信じがたい。　ぜひ、編集者を育てる専門学校ではこれをテキストにして　いかに赤字をいれるか？いかに名作にしたてるか？という材料にしていただきたい。　もしかしたら日本文学界が編集力を試されているのかもしれない。　とにかくひどさをあじわっていただきたい。そういう1冊。　なにかに似ていると思ったら映画「死霊の盆踊り」だ。　あまりのつまらなさに話題になったという伝説の映画だ。　･･･ところでポプラ社は経営が苦しいのか？ほかの作家が作品をひきあげるとかいいださないだろうか。（♂）　

  2010年12月28日

• つかこうへい　日本の芝居を変えた男＠NHK

  　追悼番組の再放送。デビューから2度目の韓国公演の失敗を経て晩年の若手女優の育成までを描く。　全体の印象は「総論」という感じだ。つかを知らない人までわかる入門編。芝居という消費されるメディアの性格上しょうがないのかもしれないがすこしものたりない気がした。　平田満から黒木メイサまで、いろいろな役者がでてきては語るつかの世界。それこそが貴重な映像とはいえるがもう一歩踏み込んでほしい、と思うのは全体像の大きさのせいなのか。　大分のアマチュア劇団の亡くなられた役者さんの話は知らなかった。たしかに主役が強烈に滑舌が悪かっただけに印象に残る方ではあった。　ただ韓国公演の失敗の責任をつかにおしつけるのはどうなのか。「目新しさがなかった」という証言でおわらせていたのは足跡を追う上では雑すぎると思う・・・というのはファンの視点だろうか。　結局この演出手法というのは一代かぎりのような気がする。平田オリザもそうだが、影響下にあるアーチストはたくさんでても同じようにはならないというのはなにか手法をとらえるときに決定的に勘違いしている部分があるのかもしれない。　ほんとうは、あの口立ての秘密に踏み込んでほしかった。もはやかなわぬ話ではあるが。　NHKにありがちな、出自にこだわるドキュメンタリーにしなかったのは評価する。故人だってそれを望んではいないだろう。（♂）

  2010年12月24日

• 石塚真一「岳」13巻

  　待望の新刊。　あいかわらず人間模様の充実っぷりがすばらしい。　不倫を清算した女。歌のために山に来る人。死の受け入れかた。命の軽さにむきかう警官。　あれやこれやありながらも山はそこにある、という話の流れはどれも粒ぞろいでつい何度も何度も読み返してしまう。　床屋に置いてほしい漫画チャートというのがあれば上位に食い込むのではないだろうか。根拠はないけど、リピートに耐えうる漫画はそうそうない。　ちなみにいきつけの床屋にあるのは頭文字Dだ。もう耐えられん。　そういえば映画版は小栗旬らしい。納得がいかないキャスティングだが、だれなら許せるのかオレ？　若い役者ってみんな細いのう。（♂）

  2010年11月30日

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  映画「笑の大学」

  第二次大戦中の日本。検閲官と脚本家の攻防を描いた本作。以前感想を書いたが、ＢＳ２で観たら違う印象だったので書いてみる。三谷幸喜が狙ったかどうかわからないが、演じるとはなにかを考えさせられる映画だ。役をやらされて生き生きしてくる役所広司。場の終わりで退場のためにお辞儀をする稲垣。役者ふたりがいることを強く意識させられる。とくに役所扮する検閲官の役割がいい。話を否定し、要求し、無理をいう。なかなか本音を語らない。しかし少しずつのめりこんでくる。それは観客そのものなのか。いまだに稲垣のキャスティングには納得がいかないが、それはそれ。場面場面の緊張感は凄い。台詞よりも、感情のリアルさが本作品を重厚なものにしている。昭和初期の舞台はおそらく再現なんだろうが、そういう「物語の世界」 を思わせる、のんびりした雰囲気と物悲しさに満ちている。陰影に満ちた部屋といい、映像のすばらしさには感動。もったいないのは言葉遊びの部分か。「おもしろくなさそうな話が面白くなっていく話」なので仕方がないのだが、舞台でみたときになんとも思わない部分が映像化されると悪い意味でくだらなくなる。西村雅彦と近藤芳正の舞台の印象が薄れてきたからこそ気づいたことだろう。映画は映画。わりきるべきとわかっていても難しい。（♂）　

  2010年11月24日

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  小松成美「和を継ぐものたち」（小学館文庫）

  和蝋燭職人から書道家まで、日本文化の今を担っているひとのインタビュー集。小さいころからなりたくて、というひとはほとんどいない。空気のように日常で触れていた、というひとがほとんどだ。継承とはなにかを考えさせられる。伝統技術を学校で教えたりするのは最後の手段で、本来は「地元」で細々と続けるものなのだ。そんなきれいごとをいってられないところに「地元」の空洞化っぷりがあらわれているわけだが。小松氏の水のむけかたの上手さというのか、言葉がいい。だれもが語る言葉を持っている。継いだものへの誇りと、学ぶことを恐れない先進性。他ジャンルからヒントを得ようとする貪欲な姿勢には頭がさがる。伝統技術とはこうして「残る」のではなく「残している」のだ。だれもがサラリーマンなどの違う世界を知っているのも面白い。これだけ逆風が吹いている時代、伝承者が伝える強さをもつためには純粋培養よりは混ざること、対象への客観性が必要なのかもしれない。（♂）　

  2010年11月16日

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  池上彰「記者になりたい！」（新潮文庫）

  　週刊こどもニュースで人気がでたあのひとが、記者になり、そして現在にいたるまでの軌跡を追った自伝。　とはいっても実は私はこの番組をそんなに観ていない。最近のメディア露出度も存じ上げてはいるがとくにみてはいない。　そんなわけでファンでもないのでとくに期待しないで頁をめくったらひきこまれた。　時系列で追った文章がそのまま著者の成長と、時代時代の出来事を追ったものになっているので読みやすい。光人社の軍記モノを読めばわかるように、時系列の多くは読みづらいことが多い。このひとが「伝える」ということをいかに大切にしているかがわかる。　伝える使命、といったときに多くのメディアはインプットの量を重視するはずだ。このひとは違う。伝えるための咀嚼に力をいれている。　読みやすく聴きやすく簡易化した上で、影響力を考え、構造を考え、いろんな視点にさらし、説明する。わかってはいるだろうがなかなかできるものではない。　メディアへの就職を考えている大学生は必読だろう。　なによりも上品な文章がいい。（♂）　

  2010年11月10日

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  新野剛志「あぽやん」（文春文庫）

  　旅行会社の空港係にとばされた男が居場所を探し、成長していく物語。　「バブル期の社員は明るさに対して強迫観念をもち、ロストジェネレーションは存在感にこだわる」　「女は自分探しという病に冒される」　さりげないイタイ指摘の数々。あるある。　社内政治。女性社員の扱い。クレーマーとの戦い。現場を知らない営業マンのわがまま。オンライントラブル。　時間に追われるように次から次へと起きる事件。　スピード感と、感情を殺して任務を全うするサラリーマンのリアルさが読み応えのあるものにしている。　クールであろうとしつつ、仕事へ情熱をぶつけていく姿に共感。　「企業小説」とか「ビジネス最前線」とかいう具合に肩肘は張らないが、でも緊張感は維持している。そんな文体がいい。（♂）

  2010年10月13日

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  宇仁田ゆみ「うさぎドロップ８巻」（祥伝社）

  　「うさぎドロップ」新刊GET。親代わりになった男と娘のように育てられた女が一緒にくらすがゆえの微妙な心理を描いているのがいい。さらりとした絵柄でずいぶんとテンションの高い内容を維持していると思う。　この寸止め感覚をブンガクと呼ぶべきだ。　過去に雰囲気が似た作品で「恋風」というのがあった。著者も設定も違うが生き別れた兄妹の恋愛話で、じらすような展開が「文学的」でよかった。が、結局なるようになってしまうエロゲのようなオチだった。がっかりして速攻古本屋に叩き売ってしまった。著者が主題から逃げたな、という気がする。「寝て」しまうオチが一番簡単だろうよこの設定。　この作品にはそうなってほしくない。　「うさぎ～」の台詞によれば思春期になると異性の親から異臭を感じるような仕組みになっているという。もし本当なら近親婚を防ぎ繁殖を確実にするためのシステムのようだが神様はよく考えて人間をつくったものだと感心する。　ただ、そういう生体システムというハードの話以前に、実際長い間粗相を処理したりいっしょに風呂に入ったりしたソフトの問題がある相手にこういう感情を抱くものなのだろうか？　･･･などとツッコミを入れるのは野暮というものだろう。　映画化は松山ケンイチらしい。監督SABUというのも気になる。出来は子役次第のような気がする。ほのぼのストーリーにはしないでいただきたいが、さて？（♂）　

  2010年10月08日

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  和田竜「のぼうの城」（上・下）（小学館文庫）

  日本には守備の文化がない（フィリップ・トルシエ）硫黄島を知ってるかい、と訳してくれないかいダバディ？フットボールについての話限定なのはわかっているのだが。「玉砕」を世界標準では「守備」とはいわないのだろうなあ。戦術は高い評価らしいが。元浦和のホルガー・オジェックがカウンター攻撃の説明を「魚群の構え」という兵法の言葉で説明していた、と聞いたことがあるが。南アＷ杯の日本代表はどう考えるべきなんだろう？いまだに評価はぐらつくが、リアリズムは買うべきだ。負けたら何も残らない。・・・と、「守備」について頭を巡らせつつ。小城500の兵が三成率いる2万の軍勢に挑む。軍略を好む者。武勲にこだわる者。さまざまな武者をさしおいて、百姓にもつかえないと思われている男が総大将になってからはじまる反撃。物語に力を与えているのは敵が愚かではない、という設定だ。強者にして賢者。敵にまわすには恐ろしい相手が人間の心理を見誤り躓く様は痛快だ。知略よりも、誇りと愛嬌。それぞれの持ち場を守り、職務を全うする脇役たちの魅力も見逃せない。淡々とした歴史小説としての文体が作品に秘めた熱を与えている。忍耐と限度。古くは忠臣蔵から王道のテレビ時代劇まで流れる共通のテーマか？日本人を理解する上で重要なひとつの要素とみた。消えた歴史をひもとくような静かな読後感に震えた。野村萬斉主演で映画化？うーん、頭良さそうにみえるけど？（♂）　

  2010年10月04日

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  朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」（集英社）

  夏目京氏から借りた本。とある同級生が部活動をやめる。ある高校の小さな事件から拡がる波紋を描く群像劇。それぞれのざわつく感情がリアルな時間感覚で拾われていく。言葉遣いこそ現代的だが（10年後は恥ずかしいかもしれない）、すきまなく緻密に変化を描いていく文章は純文学の気配が。たちまち引き込まれた。早過ぎず遅すぎないリズムがいい。いやらしい間を狙わないのもいい。この手の題材では偽初期ばななとか劣化江国みたいな文章をよくみるのだが。溢れるエネルギーと他人にみせたくない孤独感が同居していた、あの時間。演劇を評するときにつかう言葉でいうなら「ちゃんと場が動いている」。なにもおきていないようでおきている。舞台を若い世界に置くと作家が風俗を追うことに酔うことが多いが、著者の年齢のなせる技なのか（現役大学生！）そういう力みがない。階層にわけられた10代のもがきという題材は今後も古びないだろう。20年前だってダサいのやらカッコイイのやらでわけられていた。きっとこれからもそうだ。私はどっちだったかって？聞くな。肥大化する自意識。夢中になれる時間の輝き。十分に過ぎ去って振り返らないと気づかない価値。醒めず、酔わずに描かれているのがすばらしい。語りすぎず、黙りすぎでもない。この心理描写でサラリーマンって描けるのだろうか？と考えると10代って雑音だらけのようで実はいい音楽しかない時間帯だったのかな、などと思う。映像化するなら中原俊「櫻の園」みたいな映像でよろしく。そういえば漫画の「櫻の園」も高校が舞台だった。　いい作品にはいい空気といい風が吹いているのがみえる。ちっとも戻りたくないけど、ときどき思い出す。ふるさとみたいなものか？なんてな。（♂）　【中古】文庫コミック 櫻の園(文庫版) / 吉田秋生

  2010年10月01日

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  やもり

  　NHKの「SONGS」にやもりが出ていた。　矢野顕子と森山母のユニットだ。　　かっこよすぎる。　正直、矢野の本来の活動自体はジャズのように自由自在すぎて、ビョークのように難解なイメージがあり。　森山のそれはライブは観てみたいけどCDを買うほどの思いいれはない。　本人の方向性をある程度制御した上でPOPにまとめる職人芸。　それをもってしても溢れ出る自由自在なボーカル表現。　ピアノというのはリズムをつかさどるものなのね、などと思ったり。　歌って業だなあ、と実感した。　このひとたちは歌わないと死んでしまうのだろう。　以前「編集王」という漫画をいしかわじゅんが「最終回にいくほどタッチが薄くなっているので描くことがなくなってしまったのだろう」と評していたのだが。　このふたりから発するのは薄くならない徹底的なエゴだ。　年齢的な理由で枯れることのないエネルギー。　方向性をめぐってケンカして解散するような大人気なさをぜひ発揮していただきたい。　まあキャリアからいってありえないのだが。（♂）

  2010年09月22日

• 個展に行こうと思えども

  社長のお嬢さんが個展を開くときいた。上司から「まわりにいくひとがいたらいってみて」と案内状をもらったのだが。さすがシャチョーのおじょーさんですなあ、わたしはげーじつのことはよくわかりませんがなかなかりっぱだりっぱ、がははとかいうつもりはなく（だれだよ）。芸術の秋だからとかベタな発想もなく。くさすにしろ褒めるにしろ、一度は観ておこうと思ったのだ。日本の芸術系を停滞させているのは素人は口をだしてはいけないような雰囲気だ。すくなくとも演劇系はそうだ。教養があればなおいいのだけれど、ぱっと観でおもしろいつまらないと語ることはありだ、と日ごろから主張しているのだが。　まっさらな気持ちで観てみよう、といってみた。　考えてみたら芝居からも映画からも離れて。　げーじつ系との接触は非常に少ない。　まあなくてもなんとかなるのが生活というものなのだろう。　・・・などとだらだら書いたが、結局労組の会合が長引いていけず。　社会人には８時で閉まるのはきついんだよ画廊？とあくまで自己都合でやつあたりしつつ。　珈琲を飲んで帰宅。とほほ。　それにしても日本橋の造形はかっこいいなあ。とライトアップを眺めて気を紛らわせる。（♂）

  2010年09月17日

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  赤い鳥逃げた・・・

  　中森明菜のベストを買ったので車で聴いていた。　　ふと「赤い鳥逃げた」を芝居につかっていた某小劇場の劇団が気になり検索。　黒烏龍のＣＭの方も在籍していた劇団である。　ぽちっとな。　･･･あった。まだ活動していたのにびっくり。ホームページ（公式ＷＥＢと呼ぶにはダサすぎた）が垢抜けていないのにも笑う。　ほっとした。　３回しか観ていないのだが、物語のクライマックスに派手な大道具の転換がみられるのが売りの劇団だった。かつては。最後に見たのは15年前ぐらい前だ。　いまはどうしているのだろう？　「継続は力なり」とはよくいう言葉だが。　正直「あんたのところたいしたことやってないのになんでいつまでもやっているわけ？」と思う集団もある。付き合いで観にいって、客席のヌルさにストレスを抱えて帰ったこともあった。本当は名前も出したいところだ。　　でも一方で続いていてアタマがさがるのもあるわけで。　結局は同時代性というか、自分の思いいれの問題なのだろう。　晩年のジャイアント馬場がなぜあのゆるんだ肉体をもって客を満足させることができたのか？と考えれば継続の流儀というのがわかる。　ゆるんだら、ゆるんだなりの誠意の尽くし方があるのだ。　先に述べた集団に感じたのは客への甘えであり。客からの期待ハードルの低さと。共犯の構図である。　この劇団はどっちだろう。　ああ観にいきたいなあ離風霊船・・・あ、いっちゃった。（♂）

  2010年08月25日

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  井上尚登「幸せの萌黄色フラッグ～ホペイロの憂鬱 J2編」（創元推理文庫）

  　先月の「JFL編」につづく、ホペイロ坂上がサッカークラブの小事件を解決していくほのぼのミステリー。連続発売がうれしい。　リーグ昇格にともない、いつのまにかあれほど怖がっていた女性営業とつきあいはじめたり、経営者がかわったり、多少環境はかわってはいるもののクラブの雰囲気はのんびりとしている。　事件もあいかわらずしょぼいのだが、次をもっと読みたくなるのはキャラの書き込みのうまさだろう。光恵ばあさんは健在で、かつての若手選手はいつのまにか主力へと成長している。　ちゃんとそれぞれ年をとっているのがいい。　洗濯。屋上。風を感じるような描き方が作品をからっとしたものにしている。　情景描写の効果を感じる作品というのは意外と少ない気がする。　スポーツ小説ならとくに大切なはずなのだが。　ああ次が読みたい。恋愛が絡むからなかなか長期連載は難しそうだが。ベテランになってからどうなるかみてみたいものだ。　

  2010年08月23日

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