帰国~そして新しい一歩~
1999年10月27日(水)固い床にも関わらず8時間も熟睡して朝5時に目覚めた。昨日午後にプノンペンをたちバンコクまでたどり着き、今朝の東京行きまで12時間もあったものの空港の外に出ることもできずに、かといって空港内のホテルは高くて泊まれず、通路脇に広告塔用の板の間を見つけてそこに寝袋ひいて熟睡してしまったようだ。旅の最後の宿が空港とは。旅も4ヶ月になるともはやどこでも眠れるな。ねぼけまなこで空港のトイレに行って顔を洗い、着替えをして、あとは搭乗を待つのみ。これが今回14回目、最後のフライトである。飛行機は予定通りにバンコクドンムアン空港を発てばあとは東京まで6時間半のフライトである。最後最後と言いながらこの旅を振り返る気持ちは今はない。数時間後に日本にいることを想っても今は深い感慨もない。今胸にあるのは、そう、あのワラスに着いた日のような、シャモニに着いたあの日のような新しい一歩を踏み出した時のあのワクワクする気持ちだ。今は日本に戻ってからやりたいことがたくさんある。「本当にやりたいこと」が胸の中からあふれ出てくる。そうなんだ。アンデスに登ったあとずっと考えていたこと。アンデスというひとつの目標を果たした後で、僕が本当に登りたい山はアルプスでもヒマラヤでもなかった。だから「本当に登りたい山」は明確にありながらそこに向かっていけない状況が辛かった。だからこそ想う。この日本へのフライトが次の夢への始まりなんだと。これが新しい一歩なんだと。この先どんな道どんな未来が待っているのかわからないけれど、~したいという気持ちがついえぬかぎり夢が生まれ、夢が育ち実現してゆく中で道が開け未来が生まれる。今はその空白の未来を見据えて歩き続けてみよう。辛いことも嬉しいこともすべて自分の強さにして歩き続けてみよう。今この一瞬が最高の輝きの中にあることを信じながら・・・・ 第一章 完