大五郎は天使のはねをつけた (大谷淳子)
私が小学生の時に出会った児童書です。 『大五郎は天使のはねをつけた』 旺文社 大谷淳子著 確か小学5年生の頃だったでしょうか。教室の入り口付近に小さな本棚があって、皆が持ち寄った本が収納されていました。学級文庫といってました。その中にこの本があって、何度も何度も読んでは泣きを繰り返してました。1977年(昭和52年)7月15日。大谷家に一匹の子ザルがやってきます。生まれながらにして重度の奇形を負ったサル、大五郎だ。 後足はつけねからまったくない。前足は手首まで。 それもまがっていてまっすぐにのびてはいない。もちろん、ゆびは一本もなかった。夫が淡路島に写真の仕事で出掛けた際にもらい受けてきたのでした。2、3日しか生きられないかもしれないというのに・・・でも、大谷さんは本当の母親のように、いや、それ以上に愛情を注ぎ、大五郎を育てていきます。その過程を写真を交え日記風に綴った本なのですが、日付は1979年12月21日で終わっています。残念ながらその一ヶ月前の11月20日に、大五郎は『天使のはねをつけた』のでした。奇形のサルがいる、ということ自体がまずショックでした。当時はスモッグ警報が出ると、校庭で遊んではいけないとか、教室の窓を閉めなさいとか、そんなことが度々あったのを記憶しています。とちぎではその昔、『足尾鉱毒事件』という公害の元祖みたいなものがあったので、学校でも詳しく教えてもらっていたと思います。なので、一応の知識としては公害について知ってたと思うのですが、それ以上にこの大五郎の写真のインパクトは大きかったと思います。子ども心にも環境問題について考えるキッカケの一つとなったのだなと今にして思いますが、それ以上に心を掴んで離さなかったのは、やはり自身も広島で被爆経験があるという大谷さんの愛情だったと思います。それに応えるかのように大五郎が成長していく姿にも泣けて仕方がなかったですね。生命力の凄さと命の尊さ、また家族の愛情とその一方での公害の恐怖。色んなものをこの本から学んだ気がしますね。今では『ありがとう大五郎』という新潮文庫版もあるので、こちらもぜひ『子どもに読んでもらいたい本』に入れたいと思います。