サルバドールの朝
2006年 スペイン ダニエル・ブリュール レオノール ワトリング レオナルド・スバラグリア ストーリーは、1970年代初頭、フランコ独裁政権下のスペイン。自由を愛し正義感にあふれた青年サルバドール・ブッチ・アンティックは、世の中を変えたいという純粋な気持ちから無政府主義グループに参加、反体制活動に関わるようになる。そして、活動資金を得るために銀行強盗にも手を染めることに。やがて警察にマークされたサルバドールは、ついに追い詰められ、激しい銃撃戦に巻き込まれる。その混乱の中、彼の撃った銃弾は若い警官を直撃、サルバドール自身も瀕死の重傷を負ってしまう。結局、撃たれた警官は死亡し、一命を取り留めたサルバドールは逮捕され、軍事法廷にかけられる。その後、死亡した警官には別の銃弾も残っていたことが明らかとなるが、死刑判決を覆すことは出来なかった。減刑を求める家族や世論の声もむなしく、死刑執行の時は刻一刻と迫っていくが…。 フランコ独裁政権下のスペインが舞台になってるけど、ほんの30年ちょっと前まではスペインがこういう国であったというのが驚きですよ。今では観光スポットの定番として紹介されるような美しい国やけど、人々が自由な発言も出来ない国でドイツのような秘密警察が存在してる国やったんですよね。そんな独裁政権に反発してアナーキスト集団の活動に身を投じわずか25歳の若さで死刑判決を下された実在の青年サルバドール・ブッチ・アンティックの人生を描いた映画です。独裁政権を自分達の手で何とか変えたいと思う若者がいてるのは良い事やと思う。映画の中ではフランコ独裁政権がどれほど酷いかってところが描かれていないので、サルバドールの行動を理解するのに苦しむシーンもあります。彼らの行動って一歩間違えたら若者が徒党を組んで暴れてるだけって思えるんですよ。実際のサルバドールの行動がどうやったのか知らないけど、この映画を観るだけなら彼らの行動に共感出来る人は少ないかな。民主主義で自由が当たり前の生活をしてる日本人やから彼らの思想と同じ目線で考える事が出来にくいのかもしれないですね。以前あつぼうが紹介した映画でヒトラー政権の打倒を誓い散っていった女性を描いた【白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々】などと比較すると主人公達の行動が薄っぺらく思えました。死刑が執行されるのか不安になる後半なんですが、看守とサルバドールの友情が心地良かったです。この2人の奇妙な友情は立場をこえた友情で、重たい雰囲気の後半を少し和ませてくれました。ダニエル・ブリュールは社会派ドラマが本当に似合いますよね。【グッバイ・レーニン】や【ベルリン、僕らの革命】の彼も良かったです。ハリウッドにも進出するらしいのですが、アート系の映画こそ彼が映えると思うので大作には出ないでほしいです。評価(3.3)