友 遠方より来る
いや、別にそうめちゃくちゃ遠方と言うわけでもないが、ダンナの友達のTimが我が家を訪れた。Timは音楽のエンジニアでいろんなバンドを手がけてきているヤツで、その音楽絡みでダンナとの付き合いはもう15年ほどにもなるらしいが、もちろん私がTimと会ったのはダンナと結婚してからだ。私たちは今のところに引っ越してくる前、ロンドンの北部に住んでいて、Timの住まいも近かったため、うちにも何度か来たことがあったのだが、その後、私たちが引っ越した。ダンナのほうは時々彼に電話して、彼の家でジャムをしたりしていたので年に3回くらいは会っていたが、私自身はそれには一度もついて行かなかったので、私が会うのは4年ぶりくらいだ。ダンナは1月に買ったMacについて、いろいろ彼からアドバイスが欲しかったらしく、その上、Timもダンナが使えそうなソフトがあるというので、それを持ってくるということだった。問題は、だ。このTimは結構、男前なのだ。ぐふふ。ダンナいわく「Timもちょっとは年をとったよ」と言ってはいたが、自分の目で確かめなければ、だ。昨夜も早々にベッドにぶっ倒れた私は、今朝は比較的早く起きてシャワーを浴び、ティント乳液をつけ、眉毛だけちょっと描いておくだけにして、「化粧しましたで~」という行き過ぎの顔にならないように気をつけた。昼過ぎに一度、Timから「今、ドコソコにいる」と電話がはいる。かなり近いところまで来ていたので、それからしばらくして到着。フラットの門のベルが鳴ったので、ダンナは車が通れるようにゲートを開けに下に降りた。ダンナとTimが一緒に上がって来た。おおぉ~、Timだ!少々、年は食ったが相変わらず男前じゃないか!「Hi, Tim! Long time no see!(久しぶりねぇ)」「Hi, ちゃと! Good to see you again.(また会えてうれしいよ)」そしてイギリスお決まりのハグだ、ハグ。Timは私の耳元でチュッと音をたてるがキスはしない。ちぇっ、ケチくさいやつだ・・・出し惜しみしやがって・・・男前とハグする時はこちらも思わず力がはいってしまう。しかし、そのTimはだいぶ前に、一緒に住んでいたガールフレンドと無事結婚した。(なのに「オレは結婚というものに別にそこまでこだわっていたわけではないんだけどね」だと。)とりあえずコーヒーを飲みながら、話題は近況へ。Timいわく、最近の音楽業界も大変だそうだ。ちょっと若くて売れそうなヤツが出てくるとレコード会社も目先の目新しさでどんどん押し上げてしまうくせに、長くて4~5年経って息詰まってくるとポイ。ポイ捨ては物だけに限らず、音楽でもそうらしい。大物が出てきて、その人だけを売り込んだりするよりも、いろんな話題性のある人物を引っ張ってきて複数で手がけて回転よく回していくのが今日の音楽業界だから嘆かわしいとTimは言う。私たちは私たちで、今回アジアに行ってきた話だとか、今の日本の状況だとかの話をするのだが、彼は見場がいいだけではなくて、わりあい頭もいいやつだなぁなんて思う。私は残念ながら、今日はいろいろと会社から宿題を持って帰ってきていて、それもやらないといけなかったので、しばし会話からはずれる時間もあったが、彼の話の中で、かつて住んでいたロンドンの北部のお気に入りだったレストランがかなりランクアップしている話なんかも聞いて、またロンドンの北部に戻りたいなと思わせられたりして久々に気の置けない友達との時間を過ごした。ダンナも彼と話していて、また音楽の部分でいろいろインスパイアされたようで、リラックスしてくれてよかった。Tim自身ももう少し話していたそうだったが、彼はまた遅がけに友達と約束があるようで、名残惜しそうにここを後にした。「今度は4年ぶり、なんて挨拶はなしだぞ」とそう言ったTimはまさにメル・ギブソンとジョージ・マイケルを足して2で割ったヒゲ面を私の両頬に押し付けて帰って行った。また来いよ、Tim。