机の上、総点検
昨日も書いたように、月曜と火曜は本当に不調だったため、会社でも「余分なことはしゃべりたくない~~~」という空気を全身から醸し出していたように思うし、昨日はもともと休みだったので医者に行ったら、今日は朝からほぼいつもと変わらない程度の調子に戻って来たのが自分でわかる。朝からみつこさんと2人、ようやく久々に話をする気になって、仕事の合い間にムダ話もしていたところで、みつこさんが「あ、そうそう」と言った。この間、私が日本に行っていたある日、みつこさんのご主人のジョージが会社に寄ったのだそうな。彼のその日の仕事が、うちの会社の目と鼻の先のところであったので、お昼をみつこさんと食べた後で、一応どんなところで愛妻が働いているのか興味津々で見に来たらしい。もちろん、うちのスタッフとジョージはパーティやなんかで何度も会っているので、迎えたゆみさんもゆきちゃんも「ジョージ、久しぶり~」って感じで歓待し、ジョージは「イヤイヤ、どーも」ってな感じで私たちのデスクのあるところまでとことこやってきて、まずはみつこさんの机の上を一渡り見回す。「オー、ノォーッ」とつぶやいたらしいジョージ。ゆみさんもゆきちゃんも、そして当のみつこさんも「オー、ノォーッ」の意味がよくわからずにいると、ジョージは次にゆみさんの机周りを見渡す。「You either, Yumi(ユミ、おまえもか)!」とジョージはゆみさんにそう言う。ゆみさん、きょとん。そしてジョージはゆきちゃんの机へ行き、こう言った。「You must be joking, Yuki(冗談だろ、ユキ)」最後にジョージはいちばん奧にある私の机のところまで来て・・・そこに私はいないが・・・「I can’t believe it!(信じられん)」と大きな声で言ったらしいのだ。みつこさんが「What’s wrong?(どうしたの)」と聞く。もちろん、ゆみさんもゆきちゃんも、ジョージが一人ずつの机をわざわざ点検して、何にそんなに興奮しているのかわからない。ほどなく真相判明。ジョージは、愛妻みつこさんだけでなく、ゆみさんもゆきちゃんも私も、ともかく誰一人として机の上に相方の写真を置いている人がいないという事実に愕然としたのだった。しかし、である。実はみつこさん・ゆみさん・ゆきちゃん・私の4人の机に共通して置いてあるものがある。それはにゃんこのカレンダー(爆)私が去年、自分の机に置いていた週めくりネコカレがあまりにも可愛く、みんな、自分が土曜出勤の日の帰りがけには、自分のカレンダーでもないのに(笑)勝手に翌週のネコちゃんに変えて帰ってしまう。それくらいそのネコカレが人気だったので、私は去年の11月に日本に帰省した時にそれぞれ違う週めくりネコカレを4つお土産に買って、アミダで分配したのだった。私の趣味ではあるが相当可愛いやつばかりを選りすぐったため、今年になってからはみんなそれぞれ週が変わると「私の今週のにゃんこ、見て下さいよ~」ってな感じで自分のカレンダーのネコ自慢。おまけに、みつこさんは近所のネコの写真と、ゆみさんは自分の飼いネコの写真を追加で貼っている有様だから、この4人のだーれも、まさか机の上に配偶者の写真を置くなんてことは頭の隅っこにもなかったのだ。そう言えば、うちの会社でも他のイギリス人たちはみな一様に家族の写真を机の上に置いていたし、以前の職場もそうではあったのだが、私たちは揃いも揃って、そんなことに思い至らなかった。4人が4人ともネコのカレンダーだけを大事そうにそれぞれの机のベストポジションに置いているのを見て、ジョージとしては「オー・マイ・ゴーーーッド(アリエナイ)」と、かなりショックを受けて帰って行ったという顛末だったわけだ。それをみつこさんから聞き、私がみんなに聞いてみた。「じゃあさ、みんな、例えば今、定期入れとか財布の中だったら写真持ってる?」「あ、持ってない」「ないです」「持ってません」・・・3人とも即答だ。で、私も持っていなかった。私もクマイチの写真を持ち歩いたことは、結婚してこのかた一度もない。(爆)持ちたくないというわけではないが、わざわざ写真を探してきて財布の中に入れる、などということをするのがめんどくさいのだ。今さら、という感じがする。日本でも時々、友達から「ご主人の写真、見せてよ」と言われて「持ってないの」と言っても「またまたぁ、そんなにもったいぶらなくたって」と信じてもらえないが、本当に持っていない。クマイチは私の写真は一応持っている。それは、まだ日本にいた頃に、お客を連れて行ったミュンヘンのビアハウスで、そこの写真屋さんが、お客さんが一人ずつジョッキを持った写真を撮ってキーホルダーにして売っていたもので、そこでもらった自分の分をクマイチは家の鍵につけているという形だ。日本だと、ケータイで写真を取る文化が膾炙していることもあって相方の写真や子供さんの写真を待ち受け画面に入れている人も多いのかもしれないが、こっちのケータイで写真が撮れるものの普及率はまだまだ多くない。しかし、こっちはそういうわけで、イギリス人(その他ガイジン)は机の上には家族の写真というのが当たり前に見られるのだが、われわれ4人組は揃いも揃って、相方の写真を机に置こうなんて発想すらなかったのである。「ジョージ流に考えると私たちって冷たいよねぇ、ダンナよりネコの写真のほうが大事なんだからねぇ」と言って大笑いになった本日、ちょっとヒマな午後の時間帯のひとコマであった。