「天使にラブ・ソングを 2」
昨日、久しぶりに「天使にラブ・ソングを 2」をテレビで観た。ビデオも持っているが、ここしばらくご無沙汰だったので思わず画面に食い入るように見る。この映画はここでネタばれしたからって怒られることもないだろうと思うので勝手に書きます。(いつも勝手やんけ~、ですが)ウーピー・ゴールドバーグ演じる本名デロリス・またの名をシスター・メリー・クラレンス・・・この映画の「1」のほうで、ヤクザの恋人から逃げてかくまってもらった修道院のシスターたちが、自分たちが教える高校の生徒たちに手を焼いたあげく、デロリスの助けを求めにやってきた。せっかく元のおもしろおかしい生活に戻っていたデロリスは、またもやエセ修道女としての窮屈な生活に戻るのかと思うとげんなりしたが、縁の出来たシスターたちの頼みを断ることはできない。説得にほだされて修道院の生活に舞い戻り、問題の高校生たちの音楽の授業を受け持つことになったが、聞きしに勝る手に負えなさであやうくブチ切れそうになる。しかし、そこでキレては女がすたるとばかりに、自分の音楽に対する思いを交えながら生徒たちに教科書を離れた授業を進めようとするが、なかなかコトはそう簡単には行かない。そのゆくてを阻むのは、その高校の理事長(?)であるクリスプ(ジェームズ・コバーン)。彼は、手の施しようがないここの高校を閉鎖し、自分は早期退職でがっぽり退職金にあやかろうと目論んでは教育委員会にゴマをする日々を送る。デロリスは、学校閉鎖の危機を知ると一念発起し、ここの高校は地元にとって必要な学校だという信念で生徒たちの目を一つところに向けて精進させるため聖歌隊を目指そうとするが、生徒たちはみんな、そんなダサい聖歌隊なんかより流行りのラップのほうがお気に入りだ。ある日、この閉鎖の話が生徒たちの耳にもとうとうはいる。そんな時、ひょんなことから、この学校は過去に全州の聖歌隊コンテストで栄えある優勝に何度も輝いていた歴史を持つことがわかり、それを知った生徒たちは、どうせ閉鎖になるなら聖歌隊を最高のジョークとして最後に一発カマしてやろうとみんなが思い始め、6週間後のコンテストに出るべく練習を始める。***映画としては「やられた」とか思わずうならされたというようなプロットではなく、意表をつく作品なら世の中にゴマンとある。しかし、この映画を何度も観たくなるのは、やっぱりこの中で披露されている歌によるところがいちばん大きい。ウーピー・ゴールドバーグ自身は歌手ではないから、その歌に魅了されるということはないが、ここに出てくる生徒役のLauryn Hill。ここしばらくは活動停止しているものの(なんと彼女は今や4人の子持ちなのだ・・・信じられない)彼女の声はこの映画のハイライトで魂の底から出ているようなチャーチを聴かせてくれ、何度聴いても素晴らしいと思う。最初にこれを映画館で観た時から「これ、ダレ?」気分一色。それからしばらく、このLauryn Hillが何者かを調べまくったが、映画の直後はわからず。かなり経って、とあるレコード屋で同じ声を偶然に耳にした時、レコード屋のにーちゃんに「今、かかっているコレ下さい」と言って買って帰ったのはFugeesの「The Score」。その時に聴いた曲は「Ready or Not」で、それはちょっと気に入ったし、Roberta Flackの「Killin’me softly with his song」もはいっていたが、はっきり言ってHip-hopが苦手な私はこのCDには結局まったく感情移入できず、1回か2回しか聴いていない。その後、Lauryn Hillのソロアルバムの「Miseducation」ももう一度買ってみたのだが、やっぱりこれも私にはダメ。1回を最後まで聴けずに、そのまま家に置いてある。私としては、特に今やっと30近くなった彼女にはもうちょっと正統派に近いSoul・R&Bをやってほしいなと思うのだが、贅沢だろうか。Hip-hopとかオルタナRapとか言われる種類の音楽の、あの「アト出しジャンケン」みたいなずれ方が私にはまったくいいとは思えないのだ。そうは言っても、彼女はシンガーとしてだけではなく「Miseducation」の後はアレンジャー・プロデューサーとしての活動が多くなってきたようで、Whitney Houstonの「Your love is my love」のアレンジとプロデュースを手がけた上に、Aretha Franklinの「Rose is still a rose」でもアレンジとプロデュースの他にバックでの歌も入れているし(この2つはまあ聴ける)その後にはSimply Redのベストの中の「Angel」にも参加・・・と、非常に才能と魅力を感じるアーティストであるのは確かだが、自前の歌がボロ過ぎるやんけ。(笑)あれだけの才能があるなら、後の時代に残るような歌をもうちょっとやってくれればいいのに、と待ちくたびれている気分だ。 片や、この映画の中でゴスペルの「His eye is on the sparrow」をこのLauryn Hillとともに歌うもう一人の歌姫がTanya Blount。彼女も別な声質でスゴい。Lauryn Hillのほうが、他にないものを持っている印象は強いが、このTanya Blountも当時の若手の中では群を抜くうまさだったと思うけれども、アルバム「The Narutal Thing」を1枚出したきりで今は結婚して歌手を辞め、美容関係の仕事をしているそうだ。このアルバムの中では2曲めの「Through the rain」が僅かに売れた程度で、5曲めの「Is it love」では、かのFreddie Jacksonとデュエットできるラッキーさだったにも関わらず、これは曲自体のつくりが安易で今一つ。この人が精進すれば、Whitney Houstonと肩を並べるシンガーにもなれたと思うのだが、このアルバムの中では微妙な不安定さも残っていて、ただ、その分、逆に将来性はあったと思うのだ。そしてもう一人。最初にこの映画の中で聖歌隊として「Oh, Happy days」を披露する部分でソロを取っていたRyan Toby。映画の中でもアフリカン・アメリカンであることに誇りを持ちながらも、いまいち脱皮できない男子高校生を演じていたが、まだまだ若かった(というより幼かった)この頃の彼のこのソロを聴いて非常に将来に注目していたら、今はFugeesのエンジンであるWyclef Jeanが育てる男2+女1のCity Highというトリオで活動しているが、2001年にトリオと同名のアルバムを1枚出したきりらしい。試聴してみたが、これもいわゆる「アト出しジャンケン」スタイルのリズム満載で、買って聴きたいと思うような魅力はまったく無し。(泣)この映画の中のクライマックスとなる1曲は、なんといっても「Joyful, Joyful」。ベートーベンの「歓喜の歌」なのだが、これを、過去3年間連続優勝しているライバル高校の聖歌隊と、ウーピー率いる落ちこぼれ聖歌隊の両方が偶然選び、それぞれに歌う。この場面に来ると私はいつでも何度でも泣いてしまう(笑)のだが、これは楽曲自体の持つパワーと、アレンジのうまさと、全体のパフォーマンスによるものだと思う。もちろん、ここの歌自体はその場面で収録したものではなくて後で重ねたものだとは思うが、それにしても私は素直にこの歌には感動してしまう。そして、エンディング・タイトルで流れる大団円の「Ain’t no mountain high enough」。それから、この人は歌ってはいないのだが、同僚の神父役のマイケル・ジェター。彼がここでも終始、ラヴリーな人柄の神父を演じているところにとても好感が持てる。あの「グリーン・マイル」で、性悪な看守の手によって拷問に近い形で電気椅子の死刑に処されてしまう哀れな死刑囚の役を演じていたが、彼もエイズで50歳そこそこでここ1~2年の間に亡くなってしまったことが惜しまれてならないことも書いておきたい。音楽の好きな人には、映画の質を超えて楽しめる映画であることは間違いないし、もしも「最後までオイシイ映画は?」と聞かれたら、どんなにベタネタだと酷評されても、やっぱり私はこの一本を上げるだろうし、サントラも買って損しない1枚であることは確かだ。