世の中素敵な出会いばかりじゃないぞ!
世の中素敵な出会いばかりじゃないぞ! 高校二年、学校も部活も楽しくて楽しくてしょうがない時代のお話です。学校へは私鉄に30分程乗りその後バスに乗るという、煩わしさがあったものの二年生のある時期はとても充実していた。 オレ達は先頭車両から数えて三両目と四両目の間の連結部分のところが所定の位置で、オレ達二人のいるところから、一M程離れたところに別の学校に通う二人の女子生徒がある日を境に乗ってくるようになった。二人の制服で判断すると×××高校で、この場所だと明らかに改札に対して不便な場所にあった。世の中の常として男二人・女二人の場合大概一人を巡って戦いが始まるが、その時には綺麗に好みが分かれた。「よぅ、昌樹!オレ右手の目の大きな子が好きなんだけど、おまえは?」「オレは左手の日焼けした方が好きだな」よーし、それじゃ何とかしようぜ!と言ったものの何とかするには何とかしなくちゃいけないけれど恥ずかしさばかりが先走り挨拶も出来なければ何も出来ず、唯々彼女達のことをチラリと見ては「はぁ~」と溜息を付くばかりで何の進展もなかった。友人と彼女を攻略するための「傾向と対策」を必死に考え(今でも同じですね〈笑〉)オレ達が学校で何の部活をやっているかアピールすることにした。昌樹は野球部だったのでバットとでかバッグ。オレは剣道部だったので竹刀と防具一式。混んでいる電車の中でアピールするのに必死だったのね。 彼女たちと一緒の時間は15分程で、オレ達は二人で話をしながらも耳を「ダンボ」のようにして彼女たちの話を一言一句漏らさぬよう情報収集に努めた。同じ学年でオレが好きな子はバスケットボール部で昌樹が好きなほうは陸上部である事がわかった。 「こうなったからには、偵察に行かないといけないな」と昌樹が言い出し、放課後部活をサボりジャージに着替え彼女たちの高校に行ったりもした。帽子もかぶっているし、ジャージ姿だからバレル事は無いだろうと思っていたが、後になってバレていたことが判明した。 ある朝の事.検便用の「うんこ」入りのパッケージを紙袋に入れて網棚に置いといたら降りるときに忘れてしまい学校に着く直前に気づき「アッア・ア・ア・ア・アアアァァァァーー」状態になった。マズイ、非常にマズイ。あんなものが網棚に放置されたら・・・落ち着くんだ!落ち着け!!エトエト、うんこパッケージは硬く閉じてあるしビニール袋で何重にも包んである。異臭騒ぎにはならないだろうけれど拾得物で駅員に届けられでもしたらオレの名前は書いてあるし身元もばれてしまう。果ては学校に連絡が行き職員室に呼び出され・・・あああああぁぁぁ・・・クラスの仲間達にもバレてしまい・・・オレの楽しい学校生活は、まさに今崩れようとしている。きっと、クラスの皆に「うんこチャン」とか呼ばれるに違いない・・・検便の提出時間が迫っていたので、昌樹に同じ電車に乗っている仲間として責任を感じるだろ!連帯責任としてお前の「うんこ」をオレによこせ。名前を書き換えてオレは提出するのだ!しかし、友人は頑として受け付けずオレは素直に忘れましたと先生に謝った。が、が,しかしである。三時間目の途中職員室より呼び出しがあり行ってみると、そこには電車の彼女達が・・・「君の忘れ物、親切に他校の生徒さん達が届けに来てくださったぞ」ま、まさか・・・先生の机の上には見覚えのある包み紙が・・・足の先から頭の先までカァーーーーーーッとなり、恥ずかしさで顔を上げる事が出来なかった。「コレは君のだろ。中身は一体なんだ!」あっダメダメダメ。開けちゃダメです。彼女達は恥ずかしかったのか、可笑しかったのか下を見て肩を震わせていた。静止するのも聞かず先生は紙袋からブツを取り出し、しばらく絶句し「君ねぇこういったものは鞄に入れてこないといけないな!」と言ったさっ、彼女さん達にお礼を言わないか!開き直る事も出来ず、かと言って素直になる事も出来ず、頭だけペコリと下げた。肛門まで(あっ違った)校門まで送ってあげなさい。オレは、うんこ包みを片手に彼女たちを見送った。 「コレね、オレの名前が書いてあるけれどホントはオレのじゃなくて友人のなんだ!」と言っても嘘だとばれちゃうよな・・・悪戯でね、家で飼っているネコのなんだ!やっぱりバレるよな~嘘は状況を一層深くするので「わざわざどうもありがとう。お礼させてね」と勇気をもって彼女さん達に言い別れた。 映画なんかだと見送る彼女に渡す花束を片手に・・・なんかがあるが、オレの場合は片手にうんこだ。彼女とは縁が無かったんだ!しかし、運(ウン)はあったようだ。絶体絶命の大ピンチだ! 朝、彼女さん達はオレ達が下車したあと例の忘れ物に気付き「あっ、忘れ物。タイヘンタイヘン」等と言いつつ中身を確認し『うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ-------』となり、ドーシヨウ・ドーシヨウと一時間ばかりオレの「うんこ」を片手に相談したに違いないのだ!オレは教室に戻り、事の顛末を昌樹に話して「もぅ大変な事になった、ドーシヨウ・ドーシヨウと騒ぎまくった」昌樹の「キチンとお礼すべきだな!」の提案を受けプレゼントを買うことにした。お礼のプレゼントを買うために部活をサボり翌朝に備えたが、開口一番ナント言ったらよいのだろか悩みに悩んだ。結局、分からないままに朝を迎へ彼女さん達に「エトエト昨日はありがと、エトエトこれお礼の気持ちです」と言って手渡した。彼女さん達がニコッと微笑んでくれたら、思い切ってデートに誘ってしまおう、と思っていた。週末に映画を観に行ったのが彼女との初デートでその後別れるまで色々と出かけた事が忘れられない。追記: 彼女さんとの終わりは、待ち合わせによく行った喫茶店だった。 「コレだけど、もぅ持っていられなくなったの」と言ってテーブルに置いたのは紙ナフキンだった。折りたたんでいるのを丁寧に広げると、「サリーちゃんの足」や「サザエさんの鼻」や「鉄人28号」などのイラストが描いてあり「×××ちゃん 大ーーーーぃスキ!」と大きく書かれていた。いつ、書いたものなのか思い出せなかったが、喫茶店にいるときにオレが書いたもので、彼女さんはズーーーーット大事に持っていたのだ。偶然なのかどうか分からないが「×××ちゃん 大ーーーーぃスキ!」と書かれたところには折り目の跡が無く綺麗になっている。「持っていられないって?」「重荷なの・・・」と彼女さんは小さな声で言い、「楽しかったけれどゴメンナサイ」と言って、半分ほども残っていたオレンジジュースをそのままにして店を出て行った。オレはなんだか急に居場所が無くなり落ち着かない気分でナフキンに描かれたイラストや彼女宛に書いた文字を見ていた。水の入ったグラスとオレンジジュースのグラスから水滴がテーブルに垂れ、広げたナフキンが水滴を吸い取りテーブルに張り付いた。「くそっ、なんてこった。」「バァーロー」「ナニがあったというのだ!オレがナニをしたのだ!」悲しかった。テーブルに張り付いたナフキンを剥がそうとしたら、水に溶けたところもあってビリビリに破けてしまった。「終わりだな」「なるようになっただけだ」破けたナフキンに、彼女さんの飲みかけのオレンジジュースをストローの口元を指で押さえて何度も掬って破けたナフキンにかけた。溶けて無くなってしまえばイイのだ。