東口
このデパートは複雑な構造になっていて3階が地上への出口になっているぼくは買い物を済ませトイレに行きたくなったので3階から2階へ降りていったトイレの構造も複雑で男性用のものは多角形の柱に鏡張りでその柱に用を足すさて3階へ戻ろうとしたら簡単には戻れないまず階段がなくなっているその代わり幅広のアルミ製のはしごが3階へ向けて架けてあるぼくが上っていくとどういうわけか3階へ辿りつかないぼく以外のひともいっしょに上っていくのだがどういうわけかぼくだけが辿りつかないぼくははしごそのものの位置をずらしなんとか地上への道をつけようとするそうして上り始めたが最期の数段でそのはしごがずれ始め途中から落ちそうになるんだ先ほどぼくといっしょだったそのひとはもうすでに3階にいるのでぼくは助けを求めまずは買ったものを手渡しそうしてぼくの腕を掴んでくれるようお願いをしたしかしそのひとは自信がないというとてもぼくを支えられるような感じがしないというああぼくは絶望的であるが絶望する一歩手前で全身の力を出してぼく自身の力でずれて落ちるはしごを後にしそのひとを当てにせず自力で3階のフロアの縁につかまりなんとか這い上がることができたんだふと出口をみると広い道路が拡がっていて鉄道の駅も見えるんだああここが地上だシンプルな構造で道と駅があるだけのここが地上だぼくはそのひとに笑って声をかけたこちらは東口ですかなんだかずいぶんと遥か昔の東口である車もひともほとんど通っていない閑散とした東口である父や母が過ごした東口に来ていたぼくは自力で辿りついたんだこの東口に