ネオテニーワールド

[現代詩] カテゴリの記事

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• あなたに届け！

  きょうはあなたにとってとても重要な一日になるぼくはあなたを支えたいけれど訳があってきょうは離れているどんなことが起こるのかそれはあなたにはわかっているそうそれはもうすでにあなたの中では決定事項なんだぼくはそれを認識しただからこそなにも言わないなにも干渉しないそういう関わり方もあるんだしかし強烈にぼくはあなたを気にしているそう気にしているんだよぼくはだからこそぼくはなにもしないなにも見ない気にしているそれが重要なんだぼくは勘違いなんかしない関わることはなにかしなくちゃいけないなんて勘違いなんかしないぞぼくは黙することもときには必要なこと黙祷籠められたぼくの全身全霊よ！あなたに届け！ぼくはここにいる！あなたに届け！

  2004/05/14

• その日まで

  なんのために生きるのかなんて考えるのはやめよう生かされているんだだから生きるんだぼくはこれまで随分躓いてきたまず学校の成績は悪かった体育はとくに出来なかったさらに音楽はもうほとんどダメだった小学校にしてもうすでに落ちこぼれてきたんだ中学では自我が崩壊した高校では半泣き状態だったなにもなかった大学では4畳半の下宿に閉塞していた社会人にならなかった会社員にもならなかったただ直面していたんだぼくの頭蓋骨の真っ黒い眼窩にただ直面していたんだあるときぼくは肉体関係を持った溺れることはなかったしかし性癖のように求めた求愛活動を営んだどうしても手に入れられないんだあなたのこころ思い気持ち気分あなたそのものぼくはあなたになりたかったそうしてぼくは直面したぼくはあなたじゃないってことにぼくはあなたじゃないあなたはぼくを跳ねた泥のように払い落としたぼくは捨てられたんだ数十年も経過してぼくは死を決定した死にたいということじゃないんだ死を決定したただそれだけ生きている限り必ず死ぬただそれだけのことただそれだけだけれどもぼくは自分でしっかりと決定したんだぼくの死をねそうしたらわかったんだ生かされているその訳がね生きるんだいまここでこうやって出会っていることそのことに全身全霊関わっていくんだぼくが自分で決めたその日までね

  2004/05/13

• ふたりでそれを見たんだ

  初めてこの公園に来たぼくはひとりで散歩できるか心配だったある晴れた日曜日同じような心配顔のあなたに出会ったこの公園の散歩はとても好奇心を刺激される行為だけれど匂いだけで辿っていけばきっと茨に鼻先を傷つけたりすることもあるだろうぼくはあなたとともに散歩することにしてあなたは了解したような気がした心配顔は消えたようだったいやむしろともに散歩することに熱中し実は公園の入り口に置き忘れてきたのかもしれないあとでこの公園の管理人さんがほら忘れているよと差し出すその手の中にぼくとあなたの心配顔があったぼくはあなたに歩調を合わせあなたはあなたでぼくの歩調に驚きながらもついて来てくれたぼくとあなたはお互いのテリトリーラインぎりぎりでつかず離れず散歩したときどきぼくのサポートであなたは輝く笑顔を見せてくれたあなたが急激に走ったりするとぼくは途方にくれたりすることもあったそのすべての散歩はぼくやあなたにとって豊穣な気づきになったのだろうしかしこの公園には無限の奥行きがあるそれは恐怖を呼び起こすこともあるし勇気をもって乗り越えなければ落とし穴もあるだろういつのまにかぼくはあなたとの距離が離れあなたの散歩したい方向をぼくは見失いあなたはあなたでもう苦痛になってしまっていたんだほらと最後にこの公園の管理人さんはぼくとあなたの置き忘れていた心配顔を差し出したほらっとねぼくもあなたもそれを見たんだやっと初めて出会ってからふたりでそれを見たんだ

  2004/05/12

• ぼくは新しいんだ

  まったく違う自分でも全然わからない記憶にあったぼくといまのぼくはまったく違うつまりは新しいということなんだその新しさにはこれからどうするのかという不安もあるいままでの人間関係もバイアスがはずれ新たな展開を見せる予兆があるなぜかいままでと違って新しい側面が見えるんだ誕生の不安かもうしばらく熟成させておこうぼくの気分は春雨のようにしとやかだ時間が止まって一歩も進めないのにはわけがあるんだヒトの気配がしない一陣の風に落とされる枯葉がカサッと地に触れる水琴窟のようにぼくのお腹に反響するネーブルの木からお香の香りが漂ってくる枯山水に佇んでわび・さびになる離人症になるここから再出発するぼくは新しいんだ

  2004/05/10

• 栄枯盛衰

  ニセアカシアの木の下でぼくは白い花びらのしわしわの朽ちかけた一面の繁殖のあとに立ち尽くす一陣の風が起こりニセアカシアはうなり声を上げ枝の間からまだまだ白い花びらのしわしわの朽ちかけた花びらを放射線状に吐き出している頭上からその吐き出した花びらがぼくを襲うぼくは悲しみに覆われ手でそれを掴もうとするぼくはこのしわしわの白い花びらを全身に浴びながら避けることもなく手でそれを掴もうとする桜ほど派手ではないしかし一陣の風で降り注ぐ花びらはしわしわなぶん軽く大量に落下する栄枯盛衰それは必然的にやってくる日没になり暗い地面一面にニセアカシアの吐き出したあとが真っ白な絨毯を敷き詰めているぼくは立ち尽くし一陣の風を待ち続けた朽ちかけたしわしわの白い花びらが吐き出されるもう一度その下で待ちわびたもう一度しかしもう二度とやっては来なかった栄枯盛衰それは繰り返すことのない記憶になって踏み止まろうとするぼくを優しく背中から支えてくれる答えはぼくは死に逝くものだということ死に逝くものとして関係性が地面一面に記憶の白い花びらを敷き詰めているぼくにニセという名前がついていたらどうだろうかニセもののぼくそれでも栄枯盛衰一陣の風によって花びらを吐き出すことはあるんだろうぼくは一陣の風によって記憶を撒き散らし悲しみとともに白い花びらを朽ち果てさせる暗い地面一面に真っ白い絨毯が出来て家族や友人にぼくの記憶が刻まれる死に逝くもののほんの僅かな記憶としてニセという名前のぼくが死に逝く激しく吐き出している白い花びらそれはニセものだろうかそれは朽ち果てる姿だろうか激しく躍動する生命の姿にみえるほんの少し悲しみを含んだ生命の姿にみえる暗い地面一面に真っ白い花びらの絨毯が敷き詰められている

  2004/05/09

• ぼくは透明になる

  小さなからだでお年を召した彼女は商売人店頭の水撒きホースは最新型で大型であんまり長くて捩れている彼女が店頭へ出てきたすばやい動物の動きだそうしてホースを取り出しぼくの方へ向かって水を撒き始めたぼくは彼女の前に出ると透明になる彼女がぼくのからだに上から下まで水を撒くぼくはずぶ濡れになる彼女はますます一生懸命に水を撒く全身が商売人になっているぼくはずぶ濡れになりながらも彼女のその動きを目で追っているぼくは彼女がなんだかぼくの分身のように思えてきて水を撒くその行為をぼくがしたくなってきたんだぼくは彼女を手伝うつもりで捩れたホースを元に戻そうと少し触れた彼女はちょっと首をかしげぼくは彼女とホースを巡って押したり引いたりぼくの姿は透明だけどぼくの力は彼女に伝わる彼女になってみたぼくの力は彼女にとってどう感じられているのかああこのホースなんていうこときかないんだろうそれでもわたしが固執しない瞬間にああなんて可愛らしくもなるんだろうこのホースはそうぼくが力を緩めていると彼女が力を発揮して全身漲るエネルギーぼくが力を出していると彼女は混乱し彼女には休養が必要なんだ小さなからだでお年を召した彼女は商売人そんな彼女の前に出るとぼくは透明になる

  2004/05/08

• 判読困難な言葉もあるんだ

  老婆がいた古い書物を持っていた修理されてはいたけれどなかの文字は習字のように間延びしてしかも墨もうすくなり判読はかなり困難だ老婆にとってとても大切な何かなんだということはわかった修理されたその古い書物を抱える仕草そうして書物を眺める様子などぼくは過去の書棚を振り返り古い書物を点検してみたいろいろな書物があったそれら一冊ごとに思いが蘇り実は古い書物の内容よりも手に入れたかった当時のぼくの思いが勝っているふと気づいたぼくは数十年近くも書棚を探索してきてそうして辿りついた結論はぼくの思いに変わりはないんだということだった一瞬が永遠に続くということ一瞬が永遠に続くということ救いではあるかもしれないが考えようによっては地獄だ中原中也の詩集が古い書物のなかにあったゆやよーんゆやよーんというリズムが意味もなく揺らいでいる古い洋館で一日過ごした絵画のなかは思ったほど窮屈ではないしかし軋みぶかぶかする木造のペンキ剥げかかった洋館だなによりも迎え入れてくれたうら若き未亡人の笑顔が一瞬の思いを込めて伝達された悪くはないぼくはただそこにいたただそこにいって会釈した古い洋館古い書物中原中也のリズムもしかすると老婆はあのうら若き未亡人だったのかもしれない判読困難な言葉もあるんだ

  2004/05/06

• 増殖するウイルスのように

  銀色の床屋さんの剃刀でぼくはぼくの頚動脈をカットする鮮血が水平に迸り出てワンルームマンションの狭い床は真っ赤な液体で汚されるぼくのからだは力が抜け姿勢を崩し肉体として汚れた床に倒れる腕は後ろ向きに捩れ首はとんでもないほうを向いている顔もゆがんでいるんだ醜い姿だ昨日のぼくはそうやって死んだ毎日毎日ぼくは死んでいる昨日のぼくは醜い姿だ今日は違うぼくは生まれたてぼくは今日生まれそうして今日また死ぬ十数時間のいのちとしてぼくは今日誰からなにを感じそうして誰に伝えたいのかぼくというこのいのち今日一日どう使うのか最大限の使い方をしようそうして醜く死ぬんだ死体は醜いなぜだろうなぜ死体は美しくないんだ美しさを感じるということは動きに関わるからだろうかしかし焼き物は美しいいずれにしろ死体が美しくないことにかわりはないんだ死に逝くぼくとして生きる気はしない毎日毎日死んでいくならば毎日毎日美しいぼくを創り続ける昨日までのぼくというメモリーを参考に今日は新しくしかももっと魅力的なぼくを創っちゃおう繰り返しのようで実は生命は常に創り変えられる増殖するウイルスのように

  2004/05/05

• あなたの代わりはいないんだ

  遊びなんだから辛くなるような話はしないほうがいいと思っていたでもこのままでいいの楽しかったーでいいのぼくはさびしいぼくにとって家族とは父と母とそうして妹妹の子供たちのことだ自己主張をするのは構わない感情の迸るに任せればいいけれどそのあと耳を塞がないで欲しい主張がどう相手に受けとめられたのか受けとめられなかったのかそれを確認して欲しい売れない商店のようにさっさとシャッターを下ろさないで欲しい今日しかないんだたぶんだからぼくはシャッターを抉じ開けるぼくが抉じ開けるぼくが開けなければこのままずーっとずーっとこのままだぼくはさびしいほんのすこしでもいい交感したいんだぼくは父と母が充分に話し合っている姿を見たことがない大抵母は少し多くをしゃべりすぎ父は押し黙ったままだぼくが離婚した最大の原因を父と母はいまだに持ち込んでいるああなんとかしたいんだぼくはその瞬間その瞬間に家族としての最大限の関わりを持ちたいんだ好奇心を持ち首を突っ込み最大限の関わりを持ちたいんだ愛情ってこういうことなんじゃないだろうかぼくは抉じ開けたいあなたが下ろしたシャッターをぶち壊したいあなたはあなたで充分満足しているかもしれないけれどぼくが離婚したのはそれが原因なんだだからぼくはあえて言うシャッターを閉じないで欲しいふと会話の外にあなたは出て帽子をいじくりはじめたあなたの遠くなった表情がぼくをさびしくさせるとにかくちゃんといて欲しいちゃんとねあなたの代わりはいないんだそうしていまこの瞬間にもいないんだあなたの代わりはいないんだだからもっと真剣にぼくたちを見て欲しいぼくたちの話を聞いて欲しいあなたの代わりはいないんだ

  2004/05/04

• 自動人形のように

  母は自動人形のように嬉しさで全身がわくわくしている富士山のお皿の上を飛行機で通過しそうしてお皿を真上から見たんだ窓際だったんだぼくは想像してみる母の顔は相好崩しカメラを構え窓に押し付け瞳を見開き嬉しそうにしているしかし父はそのときどうしていたんだろう父は頑として動かない今回の旅については相当押さえ込んだのに違いなかったご自分をね普段からご自分の主張が変更されたりつまずいたり否定されるのをとても嫌がる父父の影響をうけたぼくも妹もそれはある母は唯一自動人形のように笑い笑うために生まれてきたんだぼくたち家族の道行は母に先導されそうして笑う家族になるんだぼくも支えよう笑う家族になるためにぼくも母と一緒に自動人形になるんだなんでもかんでも嬉しがっちゃう自動人形になるんだずーっとずーっとそのままでいてねなんでもかんでも嬉しがっちゃう自動人形にね

  2004/05/03

• あなたに成り代わるまで

  お金を使うそのことによってぼくは価値に目覚める価値を手に入れたいぼくは生きる目的を考えない手に入れた価値でぼくはその時間を生きる手に入れた価値でぼくは呼吸し食事をし明日のために就寝するぼくが求める価値それはあなたを感じあなたと歩きあなたとともにいることそれだけでたぶんあなたは支えられ支えるぼくはたぶん充分に存分に生きる価値を味わえる臍の緒を切られて数十年ぼくはあなたを捜してきたんだぼくはあなたに出会うために巡り巡って時間を使いそうしてお金も使ってきたんだ見えないけれどいまだに臍の緒はあるんだカットされなかったぼくとあなたはカットされなかったんだだからぼくはあなたになることも可能でありぼくはあなたに成り代わり父とそうして妹をなんとかしたいしなんとかしてみせるよお金を使うそのことによってほんとうのぼくが見えてきたんだだからぼくは使うなという制限をはずす意図的にぼくは価値を手に入れるそのためにお金を稼ぐんだぼくの欲しいものぼくの欲しい価値それはぼくがあなたとともにいることお金で手に入れられるものじゃないしかしお金を使うことによってぼくは気づいたんだほんとうに欲しいもののことにそれまでは与えられた概念で生きていたんだ与えられた価値でねだからぼくはそれらを否定した否定したからぼくはお金を使ったんだ使ったから価値に気づいたぼくは稼ぐぼくは稼いでそうして使うあなたとともにいる時間を手に入れるまでぼくは稼ぐぼくは稼いで稼いでそうして使うんだあなたに成り代わるまで

  2004/05/02

• ぼくの羽をね

  ぼくはすきですあなたがすきですあなたと仲良くなりたいんだあなたにぼくはそのぼくの思いを伝えたいぼくの思いはぼくの姿勢ぼくの思いはぼくの目線ぼくの思いはぼくの声ぼくはそうやってあなたを惹きつけるぼくはあなたを惹きつけるんだそうやってぼくは全身全霊あなたを惹きつけるんだなにも期待しないしかしあなたを惹きつけるんだぼくの全身を下ろし金で下ろすんだぼくはあなたの前で裸になってすべてを見せるそうたましいのすべてをぼくはあなたがすきなんだこの気持ちにうそはないただ伝えるのが難しいだけだからぼくは曝け出しあなたにぼくのすべてを晒すんだ価値判断を乗り越えてぼくはあなたにぼくの存在をアピールするんだ気づいてくれるまでぼくはぼくの羽を広げるずーっとずーっと広げ続けるんだ疲れ知らずに羽を広げ続けるんだあなたが気づいてくれるまでずーっとね虹色に染まったぼくの羽をね

  2004/04/30

• ぼくは湧き水

  そこにいるそこにいることを喜ぶつまりは肯定する肯定することによって興味が湧く沸々と興味が湧いてくるこちらから寄っていく声をかける恐れないで声をかける声をかけつつもよく見るそしてよく聴く好きという感情が抑えきれぬほど迸り出てくる好きという気持ちが溢れ出てくるぼくは恐れを知らぬ湧き水だつぎからつぎへと湧き出して湧き出し続けるぼくは恐れを知らぬ湧き水だその勢いは湧き出した水を更にあとからサポートするようなあとからあとから湧き水どうしがサポートしながら湧き水のうしろにまた湧き水がどんどんどんどん押し上げてきて溢れんばかりの湧き水だそこにいるそこにいることを喜ぶつまりは肯定するそこはぼくという湧き水で水浸しになりあなたやあなたそしてあなたもぼくという湧き水でもう全身がビショビショじゃないですかぼくという湧き水はそこを占拠してぼくという湧き水はしたたかにつぎからつぎへと湧き出してきてそこはもう湖のようにどっぷりとあらゆるひとびとあらゆるものごと包み込みぼくは湖底で相変わらずにこんこんといまもなお湧き出し続けているのですそうぼくはそこにいるそこにいることを喜ぶつまりは肯定するぼくは湧き水

  2004/04/29

• ビリケンがぼくを呼び寄せた

  音のない世界を求めてぼくはフェスティバルゲートをすり抜けていたいつの間にかぼくは通天閣の下に来ていた通天閣の入り口はたこ焼き屋のようにぼくを迎えてくれた音のない世界を求めてぼくはフェスティバルを抜けたぼくは押し付けられる音がぼくの思念をぼくの感情を打ち消すその強引で傲慢でその権力志向が反吐が出るほど嫌いなんだだからぼくは抜けたいち抜けた抜けた抜けたすり抜けたぼくは大阪の中心に立った平日の通天閣はいい突っかけでいく通天閣パチンコ屋の近未来型遊戯空間よりもぼくは通天閣を選ぶ普段着で行く通天閣入り口の構えないバス停みたいなところがいいつまり存在しているぼくは明らかに吸い寄せられて通天閣の下に来たエレベーターで展望台に昇ったはじめはなんだかわからなかったなんだろう通天閣から眺める大阪は中心地発信地爆心地通天閣から放射状に広がる道路歩道人々の生活の臭いがこんなに心地よいなんてああ通天閣！ここであなたに出会ったあなたがぼくを吸い寄せたんだね究極の笑い顔は目尻がつっぱり宇宙スタンダードな表情になる神は赤ちゃんだった！ぼくはその人々にくすぐられ続けた神ビリケンの足をタッチしてくすぐり倒した神は笑ったもっともっとくすぐってくれ笑った笑ったぼくは賽銭箱に五円玉入れたくすぐってくすぐってくすぐり倒したぼくはお金持ちになりそうだ使えば使うほどお金の価値がぼくに実感されていく依存するな！お金のことじゃなく家族や親戚や友人にそして会社に依存するな！その上で可能性の限界ぎりぎりまで蓋をするな！金をためることでたましいを冷凍保存するな！泣け！喚け！笑え！怒れ！立ち向え！裸になれ！閉じこもるな財布を温めるな膝を抱えて考えるな！まずはやってみろ！まずは使ってみろ！ああ通天閣ぼくは長い迂回路を経てやっと辿りついたんだ通天閣やっと辿りついたんだビリケンがぼくを呼び寄せた

  2004/04/28

• 床にポトリと落ちた

  ヘマタイトのリングが真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちた言葉にはパワーがあるヘマタイトのリングが真っ二つに割れたのは脳がイメージしたからか脳が言葉によって変化した「ユダヤ人大富豪の教え」本田健著192ページ9行目の言葉その本を手に取りちょうど10ヶ月前にインパクトを与えられたその言葉捜そうとしたそのとき脳がパワーを増幅させた血流をよくするというヘマタイトのリングが反応しそして割れた「お金持ちの気分」を持つそのことで非常識なほど高いハードル設定しても平気平気お金の使い方学んだまずは必要最低限のお金を残しすべてを使うそのスリル味わったそうしてすべてを使うその企画に夢中になったゼロからヒトを集めヒトを集めるため企画を練って練った企画をプレゼンしそうして修正を迫られまた企画練り直しそうして毎週毎週ミーティング重ねメンバーがころころ移り変わってその変化すべてをそのまま静かに受け容れてこれはダメだこれじゃうまくいかないそんな批判をものともせずに素直になってそうして最善策を引き出してそうしてライブが開催されるその直前ヘマタイトのリング真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちたそのときぼくは次になにしようか考えていたお金がないという制約条件ほんとうだろうかむしろお金がないと思い込んでいるその思い込みが制約条件じゃないだろうかお金がないという言い訳なんじゃないだろうかもしかすると夢を実現する際の不安を棚上げしているかもしれずいのちがきょう一日限りとしたならばそうしたらどうするそれでも不安を棚上げしたい？ヘマタイトのリングが真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちた実質的にこのたび預金残高は必要最低限を残しただけで激減だぼくは貧乏になった次にはぼくは間違いなくお金持ちを目指すお金持ちになってそうしてまた次にそのお金何に使おうか考える寄せては返す波のようにお金が寄せてまた返すそんな波打ち際がここちよいヘマタイトのリングが真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちたこのリングはアフリカ産の別れた妻と一緒に買った血行がよくなるというリング真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちた割れ残ったリングぼくの指にくっついたまま依存心が払拭できたかも知れず妻に対する依存心がねやっと払拭できたのかも知れず決断できたということかヘマタイトのリングが真っ二つに割れてその片割れが床にポトリと落ちた悲しみはなかった苦しみもなかったただ床にポトリと落ちた

  2004/04/27

• 夢の階梯を上れ！

  あなたは実現できる夢を持っているんだその夢を実現するためにあなたはうまれてきたんだだから責任があるあなたにはしっかりとあなたの責任をまっとうして欲しいあなたの未来に対してしっかりと責任をまっとうして欲しいあなたは実現できる夢を持っているもっともっと「ぼくは納得できる音ができないだから代わって欲しい」そういってあなたは最後に消えたあなたの出演するはずの穴は空けられたままだ誰も埋められないあなた以外誰も自分を投げ出せよ！自分を晒し者にしろよ！「みんなに迷惑かかるからぼくはあなたにぼくの穴を埋めて欲しいんだ」馬鹿野郎ー！かっこつけんな！あなたのつくる音どれだけのヒトが聞いてくれるのかあなたの満足する音がどれだけのヒトを感動させるのかそれは音の問題か響き渡るのは音なのかどれだけあなたのたましいを下ろし金のように下ろせるのか大音量で動く空気がヒトの肉体を響かすことはできるしかしほんとうにそれは感動なのかあなたは実現できる夢を持っているんだその夢にはみっつの階梯があるんだひとつ目はあなた自身が見えない夢ふたつ目は渡り合う夢あなたと誰かのいっついの夢みっつ目はあなたが仲間の中であなたを見る夢目覚めよもっともっと囚人のようにあなたはあなた自身を追い込みあなた自身を追い詰めもっともっと夢に目覚めよ夢の階梯を上れ！

  2004/04/26

• 悲しみが増すんだ

  ぼくの父母のような老夫婦レストランの席に並んで腰掛けている左側には父がいる右側には母がいる母が気づいてスッと席を立つたぶんふたりのお茶が切れたのだ父は意識してないだろう何十年も続けてきたことだから父が茶を飲むその左腕の動きそっくりに母が茶を飲むどちらが意図的なのかはわからないけれど何十年も連れ添うということの結果なのだと思う何十年も連れ添っているうちにふたりの動作はシンクロしてくるああ悲しいことに気づかいはシンクロしていない母が気づいてスッと席を立つ首をめぐらしたぶんご自分のお茶が切れてそうして父のお茶も切れていることに思いをめぐらしているんだスッと席を立ちお茶をもってきて父にさしだしご自分もお茶を飲むお茶を飲む動作は何十年も連れ添ってきた成果を見せている父が左腕を上げお茶を口に運ぶ同時に母もそうやっている！母の意識と父の意識ふたりの意識には明らかな違いがある父の表情は綺麗でプライドに満ちている母の表情は皺だらけだそうして小間使いのように気をめぐらしているだからといってぼくがどうこうすることができるわけじゃないぼくは父にならない父の代わりに母を労おう父は戦争に行ったそうして父はなにかを失った戦争が終わって父と母は出会った幸せだったろうぼくが生まれ妹が生まれぼくたちは育ったどちらが悪いなんてぼくには言えない母は頑なに思い込んでいるし父はなんの疑問も懐かずにきょうまで来た母が気づいてスッと席を立つぼくはそのたびに悲しみが増すんだ

  2004/04/18

• 道の幅を広げるんだ

  橋桁から外された橋の道がつぎつぎとやってきて目の前にさあ進んでください分断された高速道路が桁から外されつぎつぎとやってきてさあどうぞと言わぬばかりにやってきてぼくの行く方向に道があるその道の上にはまっすぐにカラータイルが嵌められてあとはぼくが進む決断をするだけなんだ決断するのは簡単だなぜならぼくがそうしたいと思っているから分断された道がその断裂面を見せてぼくの前にすこし傾いで出現している決断するのがぼくの役目なんだそんなに広い道じゃないけれど向こうからスカートを穿いた少女もやってきているし周囲にもやってきているこちら側からもぼくのあとにやってきていることだろう道をつくるのがぼくの役目なのかもしれない出現した道は一様ではない元は橋だった道があるあるいは元は高速道路だった道があるそして元は小学校の渡り廊下だった道もあるだろうそれぞれに様々な色合いのタイルがまっすぐに嵌め込まれているぼくは飛び乗るそうして走る走る走るぼくには苦痛でもなんでもないんだ走ることに対してはねしかしぼくのうしろに誰かついてきているのだろうかカラータイルの幅はぼく一人分の幅しかないんだぼく以外の誰かが走っている道にぼくがたとえ決断したとしても踏み込むことはできそうにないだからその道を譲るぼくは次の道を選択する道は千差万別にあるんだその断裂面をぼくに見せてそうして赤やピンクあるいはブルーのカラータイルがまっすぐに嵌められている道が促すさあどうぞと言わぬばかりに道が促すその道はぼく一人だけしか進めないしぼくは決断できるだろうしかしほんとうに進んでしまっていいのだろうかぼくひとりでね大いなる気持ちで結婚を決断した駅のホームから階段を使わずにひとおもいに手すりを使って飛び降りたぼくに結婚相手の姿が意識されていたのだろうかほんとうにぼくはもしかすると妄想を描いていたのかもしれないたったひとりでねなぜなら道はひとり分しかないんだからねぼくが本来進む道にはふたり分いや数人分いやいや数十人分もっともっとたくさんの人々が進んでいける幅が必要なんだカラータイルをもっと用意しようもっともっと様々な色のカラータイルを用意してぼくの道の幅を広げるんだ

  2004/04/17

• 離れないでください

  ぼくはもともと真剣だから怒りには怒りで対応しますぼくはもともと真剣だから笑いには笑いで対応しますぼくはもともと真剣だからはじめから関わっているのだからぼくは逃げませんあなたのように逃げませんあなたのように他人の所為にいたしませんぼくはもともと真剣だからあなたを特別扱いいたしませんたとえあなたが患者であろうがなかろうがぼくはもともと真剣だからぼくの未熟も成熟もこれがぼくの100%でこれがぼくのあなたに対するせめてもの尊敬の念だから当然あなたの病は気になっているあなたは病しかしだからといって逃げるあなたを許さないこれが100%のぼくのやり方だからきついかもしれないけれど気づいてもらうために小細工は通用しないんだだからぼくはもともと真剣なんだ真剣だから怒りには怒りをもって笑いには笑いをもって対応するんだあなたのきょうは辛かったなということばぼくは忘れていないあなたを決して忘れていないんだムチャクチャあなたをコケにしたけどねぼくはもともと真剣なんだからねぼくはあなたへの愛を失ったわけじゃ決してないんだだから離れないでくださいね

  2004/04/16

• 一緒にね

  ここにいると子供の頃の体育館での床の感触を思い出すかもしれないし思い出さないかもしれない体育館で硬くて重いバスケットボールをドリブルしていたネットに向かってジャンプしてシュートしたズボッといってボールが入ったことを思い出したかもしれないし思い出さないかもしれないここにいると大人を脱いで子供に戻ったような気になってくるかもしれないしならないかもしれないバスケットの試合に熱中していたズボッという感覚がまた欲しくなってきたかもしれないし欲しくなってこないかもしれない大人を脱いでここにきているかもしれないし大人のままここにきているのかもしれないあるいは大人じゃないかもしれないし大人かもしれないし子供のままかもしれないし子供じゃないかもしれないここにいるとこころが集中してくるかもしれないししてこないかもしれないいずれにしてももうすでにチケットを買ってしまったからにはこころは集中してくるかもしれないししてこないかもしれないここにいると子供時代の自分に戻れるような気がしてくるかもしれないししてこないかもしれないズボッという感覚だけで一日過ごせた子供の頃だったかもしれないしそうじゃないかもしれないズボッということのために硬いボールをドリブルするための練習をしたかもしれないししなかったかもしれないズボッという感覚を取り戻すためにここにいるかもしれないしそうじゃないかもしれないズボッだけで幸福だったかもしれないしそうじゃないかもしれないズボッと入ったそのときが一番幸せの絶頂だったかもしれないしそうじゃないかもしれないズボッという感触がここにいると折角チケット買ったのだからズボッという感覚が呼び覚まされてくるかもしれないしそうじゃないかもしれないそもそもここにいるとズボッと大人を脱ぎたくなるかもしれないし脱ぎたくないかもしれないあるいは大人じゃないかもしれないしもう脱いでるかもしれないズボッという音が聞こえるかもしれないし聞こえないかもしれないズボッというふうに脱ぎたくなるひとも出てくるだろうズボッといって脱いでしまっているひともズボッとほら脱いでいるひともズボッきょうはいちいちズボッとしたまま過ごせるかもしれないし過ごさないかもしれないここにはなにか子供に戻るなにかを感じるかもしれないし感じないかもしれないあるいはもう子供かもしれないしそうじゃないかもしれないズボッといきなり入るかもしれないしもうすでにその状態を思い出しているかもしれないしまだかもしれないちょっとまって！みんながそうなるまでひとりで行かないでねズボッとみんなで行きましょうねみんなでねズボッとね行きましょうねもう一度いいますひとりで行かないでねズボッという感触が訪れたかもしれないしそうじゃないかもしれないここにいるとなんだか大人を脱ぎたくなってくるかもしれないしそうじゃないかもしれないあるいはもうすでに子供になっているかもしれないしそうじゃないかもしれない脱ぎたくなっているひとはまだですよみんなが一緒についてくるまでひとりで行かないでね大人を脱いでねみんなでね大人を脱いでね大人じゃないひとはそのままでね脱いだままねみんなでねだからひとりで行かないでねここにいると子供の頃を思い出すだからねこの場所でねみんなでね一緒にねフェスタしようねアンダーグランドアーティストフェスタしようね一緒にね

  2004/04/15

• とんでもないことを

  ぼくは意識しているいないに関わらずとんでもないことを思いとんでもないことをしているのだ意識しているいないに関わらずぼくという軸がハッキリしてくればその軸が回転し慣性力をつけ空間を引きずりこみ巻き込まれるヒトも出てくるんだなぜあなたは内にこもってしまうのかあなたの所為にしたぼくがほんとうは原因だったかもしれずぼくがあなたを消し去りたい度合いだけあなたは内にこもったのかもしれないああなぜそのことに気づかなかったああぼくがあなたを消し去りたいだけあなたは内にこもってしまったんだあなたを受け容れよういまからすぐにあなたを受け容れようそうして認めようあなたがそばにいることをその事実を認めよう日々の忙しさを忘れようあなたがそばにいることが忙しさより大切なんだあなたがそばにいることがぼくの軸の中心なんだぼくの軸はあなたの軸に共振しぼくとあなたは回転を共有し共有しつづけて世界の軸になっていくんだああぼくはとんでもないことを思いとんでもないことをしているのだ意識しているいないに関わらず

  2004/04/14

• そこにずっと

  ぼくが小学校にあがる前両手いっぱい荷物を抱えていた母はぼくに妹を乗せた乳母車の運転を任せてくれたぼくはその藤でできた籠に車が四つついた乳母車の取っ手をぼくの肩の位置だからよく見えない前方に向かって押した妹の手が右に出ているひらひらと走りながらやってくるものを掴もうとしているぼくはお構いもなくずんずん乳母車を押したはやくはやく次の場所目指してはやくはやくぼくはゆるい坂道を乳母車押して駆けていた母の声がうしろの遠くから朝の起床ラッパのように母の危機的な声がうしろのほうから聞こえているなんだろうぼくには皆目わからない乳母車はぼくが左にグイと押すと右へ走るまた右にグイと押すと左に走るだからぼくは左右のバランスを保ちながら乳母車押したおかあさん！見て欲しいこんなにもぼくは上手になったんだだからはやくはやく見に来ておかあさん！はやくはやくぼくにとってははやくはやく乳母車押してずんずんずんずん見えない前方へたぶん母が行こうとする場所へずんずんずんずん先回りしてでもずんずんずんずん息切らしてでもぼくは行きたいんだはやくはやくそうしておかあさんに見て欲しいはやくはやく見て欲しいほらこんなにもぼくは駆けているはらこんなにもぼくは妹を乗せて走っているよドアがあったぼくは母の声援を受けていたするとギャーという妹の声がした遠かった妹のいる場所が見えなかった妹の腕がドアに激突して妹は動物のように絶叫していた妹の腕は血だらけになって肩から外れてダラリとしていたああぼくはその場で立ち尽くしていた駆けつけた母が人格を変貌して妹を抱き上げ走り出していたぼくはその場に立ち尽くしぼくは瞳を閉じたそうしてぼくはぼくの闇のなかを覗き始めていたぼくは止まったそこにそのままぼくは止まったいつまでも永遠に止まり続けていたそこにずっと空っぽの藤の乳母車を手にしてぼくはそこにずっと

  2004/04/13

• 取り出せる！

  ぼくが小学校にあがる頃渡された教材の中に時計の模型があった青いプラスチックの手のひらサイズの小さな時計裏にツマミがあって右へまわす長針と短針が連動したぼくが小学校にあがる頃気に入ったもののひとつに青いプラスチックの手のひらサイズの小さな時計学習用のその時計ぼくがツマミを回すから長針と短針が連動し時が進むぼくがツマミを回すから長針と短針が時間を生み出すぼくがツマミを回すからぼくが時間を生み出してぼくが時間を管理する小学校へあがる頃とても気に入った青いプラスチックの手のひらサイズの小さな時計数十年も経ちましたぼくはいまでも大切に青いプラスチックの手のひらサイズの小さな時計いつでもどこでも取り出せる！

  2004/04/12

• わたしにはそれがわかる

  ２５のときから走り出したわたしはたぶん長くは生きられないだろうだからあなたにバトンを渡したいできるだけながく一緒に走ってちょうだいわたしはたぶん長くは生きられないことばになるかことばが出るのかたぶんギリギリまで恐怖とともに走っていることばにならないことばを紡ぎだそうと唇の筋肉を小刻みに震わしてそうして時間が経っているあなたを待たせてはいけないわたしの能動する指と指の掻きだす形があなたを誘う２５のときから走り出したわたしはたぶん長くは生きられない一緒にいて欲しい乾いたわたしはもう食べることを拒絶し始めたことばになるのかことばが出ないかそんな恐怖がいつもある一緒にいて欲しい気づかないあなたなにをすればいいのだろうあなたはあなたにイラついているあなたはわたしのことばを遮りあなたは後悔している伸びきってしまったバネのようにもう元には戻らないあなたはわたしのマニキュアがどす黒く変貌しているのを見た爪を立てて掻き毟るようにわたしはことばを出そうとするがあなたは見ていた晒し者にされ安売りされわたしは肉体から剥離してあなたから遠いところにいたあなたは捜しているいまどこにいるの受容することの果てに通り過ぎたことばそれは荒削りでわたしのことばにはならないあなたは思う背に断崖のような寂しさを背負ってあなたは思う支えたいんだとわたしにはそれがわかる

  2004/04/11

• ぼくが隕石になるとき

  ぼくはトランス状態にはいり地球に近づいた隕石のように患者さんに加速度つけて走りだしたあなたがぼくのその状態から救ってくれたぼくは患者さんと急激な接近合成によって声のトーンを失いかけていたあなたのちょっとしたサインはぼくの腿への一撃絶妙のタイミングたぶんぼくと一緒にいてくれたあなたは事が終わってとてもうれしそうにその大きな身体を揺すったぼくはあなたに迎え入れられぼくはあなたに感謝されたあなたがたぶんできないことをぼくはやってのけたんだ隕石のような急接近合成その治療ぼくはやってのけたんだあなたの目の前でぼくはあなたに感謝されぼくはあなたに受け容れられたことを知ったああやっと手に入れたぼくとあなたの共通地盤ぼくとあなたとそうして患者さんやっとぼくは手に入れたんだぼくはトランス状態にはいると隕石になって患者さんに向かって加速度つけて走りだすぼくにはあなたがどうしても必要なんだあなたのちょっとしたサインがどうしても必要なんだぼくと一緒にいてくれるあなたがどうしても必要なんだぼくが隕石になるとき

  2004/04/10

• ぼくの縄張りで

  ぼくの家は高台の上に建っているコンクリートでできた階段を一段一段上がるあなたがやってくるそうして門扉は内側に開かない玄関の前はねっとりとした空気が漂っているドアを開けるぼくは下着のままで応対する古紙が赤茶けたまま放置されている不揃いのスリッパは薄汚れたままだそれを履くように促すぼくはあなたの前でズボンを履くぼくの縄張りへようこそ薄汚れた枕や垢の染みついたクッションが漫然と置かれた本革ダークグレーの応接セットあなたの視線には冷めた色が輪郭を持ちぼくの視線を真っ向から捕らえるぼくは謝罪したそうして何事もなかったぼくは謝罪すら口にしたが何事も変化しなかったぼくはもう済んでいたあなたはどうなのかあなたは傷ついたのかあなたはいま許してくれているのかぼくはなんにも思っていないもう済んでいたぼくは公衆の面前であなたを罵倒したあなたを呼び捨てにしたそのことに意味があるなんて思っていなかったつまりはぼくがあなたを蔑んだということだけだあなたを蔑んだがそれは当然だと思っているんだだからぼくはあなたに謝罪したそれで済んだぼくはそれで済んだぼくはあなたの言うことはなんでも聞くそのようにぼくは言うのだからあなたはぼくを構ってくださいぼくはぼくが口にしていることそのことばの意味があなたに伝わらないことにいらいらしているぼくの本心がちゃんとあなたに伝わっていてそうしてぼくが王のようにあなたに振舞っていることそのことがぼくには見えないぼくはぼくのことを人徳者で偉くて尊敬される人間なんだと思っているあなたがぼくから罵倒された証拠としてのぼくが差し出した手紙をあなたが密かに隠し持っているなんてぼくはとっくに忘れてしまったその手紙にぼくの本性は明らかだ筆跡はグネグネと感情のままに揺れ動きあなたの名前は呼び捨てで蔑んで蔑んでとりわけてぼくよりもぼくの妻に配慮するあなたが腹立たしいぼくがすべてを決定するのだから本性があなたに握られているそのことの意味もわからずぼくは謝罪で済ませた薄汚れたぼくの縄張りで

  2004/04/09

• みんな一緒にね

  ぼくという意識は不連続線その狭い台地の周囲は断崖になっているんだぼくという意識の周囲から風や雨や砂粒がやってくるんだそれは冷たさや痛みをともなってきたりするんだぼくという意識の周囲からいろいろな音が聞こえてくるんだときにリズミカルな囁き声も聞こえてくるんだぼくという意識の狭い台地は固定しているわけではないんだ台地のその場所は探ればわかるただし深入りはときに危険を伴うその先はきっと断崖になっているから断崖の様子は皆目わからない台地は岩石でできているわけじゃないその台地はぼくという意識がよって立つ場所でしかないんだぼくという意識は不連続線その狭い台地はぼくが作り出しているぼくが意識しなければぼくそのものの根拠も怪しくなるんだそうしてぼくはなにものかになっているんだぼくがかつてこうだったということはメモリーに過ぎずぼくそのものではないんだそれは実体から程遠いところにあるまぼろしださらに他人にとってみればぼくのメモリーというものが継承されているものかどうか確認する術をもたないつまりはかつてぼくはこうだったということの成功も失敗も楽しさも苦しみもぼくの意識においては直接的な連続性はないんだだからメモリーを見定めて断絶することは可能なんだ断絶するそれは可能断絶するからぼくという意識の周囲に断崖があるぼくは自律する神経になるんだぼくがぼくを意識するときぼくはゼロから構想を練る方程式はないぼくが受容するものぼくが触れるものぼくを通過するものすべてがぼくにとっては大切なひとつひとつの薪だそのひとつの薪に拘ってぼくは関わるんだその関わる姿勢にぼくはぼくの台地を足の裏に感じるその台地地球上のどことはいえないけれどぼくがいる場所そのものなんだぼくという意識にもし行動に結びつくものがあるとしたならばそれは台地に獲得した風景だリアルに描かれた風景ほどぼくを勇気づけてくれるものはないんだ灯台が照らすその先はぼくがいるぼくは進化しているぼくの台地は厚みや奥行きや何よりも面積が格段に広がっているんだその台地は常に走っている一箇所に停滞する性格の台地ではなくむしろ液体のように流動する台地だぼくという意識は不連続次なる台地がよく見え始めたらあとは飛び移るだけのこと次なる台地は広いぼくが飛び移るとあなたも飛び移るぼくが飛び移るとぼくの意識が生み出したあなたたちが全員残らず飛び移るんだみんな一緒にね

  2004/04/08

• 貝よ

  彼女は貝と暮していた貝は生殖のためにときどきそのピンクの舌を出すが普段は大抵うしろを向いていた彼女は貝と暮していた貝は女の幻想を利用するのがとりわけてうまい彼女はなぜ貝などと暮し始めたのだろうか彼女の居ない場所で貝が密かに蠢いていたこと彼女には知る由もなかった貝のなかには腐臭のする閉塞空間がある貝それはぼくかもしれない彼女にとって貝はペットにはなり得なかった彼女は彼女の幻想と暮しはじめた貝は相変わらず彼女の幻想を利用し貝のなかは腐臭がしているたぶん貝というものは変わらない殻を永遠に持っているのだろう彼女は貝とくらしはじめた彼女の幻想では貝は破壊されしっとりとした足取りで近づいてくる男のひとがいたんだ彼は貝ではないマラソンランナーの随伴者のように決してでしゃばらずかといって遅れるわけでもなく常に方向をともに見出しときに励ましいつもいつもともにいてくれるむしろそれは感情的な存在に近い貝が幻惑させるために使う愛ではないそれ以外のすべての領域に近いもの彼女が求めていたのはこのことなんだあるときから彼女は幻想に気づいていただからといってあきらめなかった彼女は貝の殻を破壊しリアルな暮らしをしたかった家の窓という窓に丹念に選んだカーテンをつけた小さな二対の置物も買ったあらゆる場所にそれを置いた二対二対二対毎日彼女は祈っていたんだ貝の殻が壊れますようにと毎日腐りかけたピンクの肉をもういい加減にして曝け出すがいい太陽の下に曝け出すがいい焼け焦げればいい焼け焦げて焼け焦げて真っ黒になって煤になって風に乗ってもう二度と彼女の前に姿を現すな取り繕い取り入っていくのも辛かろう貝よ貝よ無理な芸当だよそれは貝よ貝でありながら貝以外のことを装うなんて所詮無理よ貝よあなたは貝であり続けるかぎり貝よその閉塞空間で窒息死するがいい貝よその腐ったピンクの舌を出すな貝よ腐臭がするんだ貝よ

  2004/04/07

• 友達が欲しい

  「すべてを決めるんだだから見てくれ無視しないでくれ」そういうあなたはぼくの目を見てはくれなかったえらいヒトがいるぼくは驕慢ということばを知ったかつてのぼくをあなたに見ただからぼくはあなたを非難はできないぼくはあなたと友達になりたいそのためにぼくはあなたを見るあなたはぼくの目を見ない「イヤだ会いたくない」あなたは逃げるぼくは追うなんとしても友達になるんだあなたの家はしっかりとした石垣の上に構築されていてついでにヒトに貸してもいるとても恵まれたあなたあなたはえらいヒトあなたの家族はどんなじんせいなんだろうあなたの妻はあなたをどう感じているんだろうとても心配ですぼくはあなたに憑いた観念を取り払らいたいあなたはとり憑かれている！あなたに友達はいるんだろうかぼくは寂しいもっともっとこころを開いて欲しいんだああ！なんてえらいヒトああ！なんて寂しいぼくもまだまだ愛が足りない友達が欲しい

  2004/04/06

• 激しく雨が降る

  きょういちにちが終わるゲームセンターのビルのなかセガの巨大なマシーンが動く音ドアを閉めればピタリと止むトイレに行くコンクリートの暗いトイレだ用をたす外は時折激しい雨が降っている夕刊が欲しかったけれど代わりに別の新聞を手に入れた一面には劇画が載っているその画面はぼくを引き付けた太く激しいタッチでこちらを振り返っているサラリーマンの夫の顔身体は筋肉質で衣服はほとんど身に付けていない朝の出勤の場面だいってらっしゃいませと見送る家族のシルエット妻の後姿とふたりの子供たちいずれも表情はわからない筋肉質のサラリーマンは全身筋肉のまま公園で自問自答する決断しているそんな表情の周囲はのっぺりとした丘を表す一本の放物線が描かれているぼくは家路に向かう激しい雨が降る家のなかにはもうすでに仲間がいて団欒しているぼくには家族がいないさきほどの劇画に戻る会社の同僚が帰ってきた彼に何かを伝えたとくにこの劇画がおもしろいそう伝えた彼はどう判断したのだろうか彼はぼくをどう思っているのかよくわからないぼくも悪いがぼくが伝えたかったことの半分も彼には伝わっていないんだうっすらと寂しさが激しい雨となって外を降っている隣室にいったここは完全なる個室だうっかりぼくは窓を開けっぱなしにしていたベットの枕がビショ濡れだ太く激しいタッチでこちらを振り返っているサラリーマンの夫の顔身体は筋肉質で衣服はほとんど身に付けていないぼくはそのようにきょういちにちをはじめた決心は筋肉のようにかたかったああしかしぼくには家族がいないんだ時折激しく雨が降る

  2004/04/05

• あたまに付いている

  道後公園さくら咲くピンクの肌の年に一度の露わな姿道後公園さくら咲くほんのり感じるこの素肌守ってあげたい気持ちです道後公園さくら咲くさくらの枝は背が低くその枝よけてその下でうたげのために円座を組んでほっけやらじゃこ天やら焼けば酒やら焼酎が座に巡って酔い進む日頃のうっぷん少しずつ解き放たれていくみたい余興のひとつと思いつつズボンずらされ俎板ショウぼくは自ら積極的に脱いで余興を盛り上げるやればやるほどぼくのことぼく自身ではとめられずぼくのなかからつぎつぎと動物の衝動湧き上がる道後公園さくら咲く年に一度でおしまいの素肌のような花びらが一枚堕ちて酔狂のぼくのあたまの上に付く円座の真ん中陣取って意識朦朧しながらもさくらの花びらあたまに付けて年に一度の露わな素肌晒せばぼくらはその下で円座を組んでうっぷんを吐き出しては盛り上がるあたまの上に一枚のさくらの花びら付いている年に一度の開放感このときばかりは侘び寂びのぼくらにとっては艶やかで性の祝祭思わせる柔肌のような満開のさくら咲いてるその下でぼくらは衝動に身を任せ道後公園さくら咲く一枚の花びら付いているぼくのあたまに付いている

  2004/04/04

• 仕事を探そう！

  あなたのからだってほんとうに敏感であなたはなにも思っていないけれどあなたのからだはほんとうに敏感でぼくはあなたに催眠術をかけるあなたの左右の腕がほらいまガッチリと音を立てて組み合わさりガッチリこの鋼鉄の構造物に何者も立ち向かうことできずぶつかれどもぶつかれどもほらガッシャンと音立てて組み合わさってもうつき崩すことできない！あなたはほんとうに鋼鉄になったあなた自身の腕をみてびっくりしてくれたぼくは内心ほっとしている対人関係恐怖症のあなたあなたは自分のことを大したやつだと思っているガッシリと音を立てて思っているからからだが逃げたいんだだからあなたの首はあなたが意図するしないにかかわらずアッチ向いちゃうからだが敏感で正直ものだからアッチ向いちゃうあなたのからだってほんとうに敏感でそうあなたはからだがいやだと言っているのに気づかないだけなんだいまの催眠術であなたは気づいてくれたからだが正直だとてもあなたは見ていなかったあなたは大したやつじゃなかったあなたは思い込んでいたんだだからからだがいやがっていたんだあなたは気づいたんだなんとなくぼくの言おうとしていることになんとなくねさああなたは必ずもとの自分を取り戻すはずだぼくは自信を持ってそう言おうあなたはからだの言うことを聴こうとしているだからあなたの首はもうあなたの意図に従うはずだもう勝手にアッチ向かないもう大丈夫だよね仕事を探そう！あなたのからだが素直に喜ぶ仕事を探そうよあなたが生き生きしてくる仕事を探そう！あなたのためにね

  2004/04/03

• 直感の黒豹が過ぎった

  直感の黒豹が過ぎった飢えている全身がなめらかな黒い野獣の毛で覆われている地表面に食い込むようにして蹴る蹴る蹴るしなやかに反応する肉体常に描いているヴィジョンにはもうすでに結果はわかっているんだそうして内側も変化している直感の黒豹が過ぎったそれはあなたへも過ぎるあなたに移りあなたの肉体に感化する生理機能が変化しあなたは笑う直感の黒豹が過ぎったぼくは愛されるそれが自然だからぼくの周囲に憎むべきひとは居ないどうしてもぼくはあなたが愛しいあなたの病を治したい直感の黒豹が過ぎった全身が黒い毛で覆われているがそれは目に見えない時間は消滅しているだからぼくの認識は位置や方向形や大きさになるしかし走ることは可能だ思考が追いつくかそれが唯一の課題直感の黒豹が過ぎったその瞬間スパークしているあなたの脳内ニューロン思わず手を上げるあなたはぼくに影響を受けている意識革命が予感されテロが止む人類は一瞬にして変化することが可能なんだ人類の歴史は創られたが現存してはいないこれが事実なんだいまこうしているこの一瞬の人類がすべてであり創造主はぼくの内部に居る直感の黒豹が過ぎった

  2004/04/02

• エイプリルフール！

  きょうはエイプリルフールなにを言っても許されるいちにちですだからぼくはきょうは思ったことをどんどん言っちゃいますやりたいこともどんどんやっちゃいますそういうふうに考えてみるとおなかの底から言いたい思いが湧き上がりますやりたいことがはっきり見えますきょうはエイプリルフールだから勇気なんていらないどんどん言っちゃえずんずんやっちゃえきょうはエイプリルフールなんだからねそういえばぼくが結婚したのは九年前のエイプリルフールその後離婚したけれどなんだか不思議あなたは許してくれているぼくはあなたを愛してるやっぱりエイプリルフールっていい日だなエイプリルフール！こんなこと考えてくれた古代のひとにありがとう！エイプリルフール！許してくれてありがとう！

  2004/04/01

• 世界は変わる

  ぼくは直感の黒豹スピードがいのち思考がそのまま草原に形を与え動きを与え色をつけ明るさを増す思考がそのまま草原にメロディを与えリズムを刻む思考がそのまま草原に暖かさを与え大地に触れる重さを感じるぼくは直感の黒豹生息地は草原その方角は全方向で地球のあらゆる地平光のスピードで巡る範囲すべて常に流転しているぼくは直感の黒豹スピードがいのちぼくが変化すると直接の影響を受けたあなたが変化し変化したあなたに直接影響を受けたあなたの周りのひとが変化しそうしてつぎつぎと変化は変化を呼び覚ましまるで地球全体にドミノが倒されるような壮大なスケールで直感は実現していくぼくは直感の黒豹ぼくが思考すれば世界は変わる

  2004/03/31

• 交尾は究極の目的ではない

  果てしなく全方向草原の世界だ一匹のオスの黒豹はその視界の遥か彼方に死を予感したその臭覚の届く範囲でメスを捜し性の衝動に身を任せ身体中の免疫力脳内物質ホルモンバランスなどすべての部分を臨戦態勢モードに切り替え湧き上がるビジョンに則ってつぎつぎと草原に光の湧き出し口やら光の屈折点やら吸収するブラックホールなどを探り出していくんだそのオスの黒豹はますます加速度をつけ性の衝動に身を任せつつもあらゆる場所を見過ごすこともなくさらにあらゆるスピードを自在に操り果てしなく全方向草原の世界で唯一その動きかたに意味を見出した動物だ一匹の黒豹の視界には遥か彼方に死の予感がある死の方向にもう一匹のメスの黒豹の疾走する尻尾のうしろ姿を捉えたオスの豹は照準をメスに定め全身のパワーを発揮して追尾したメスの黒豹はぐんぐん近づき射程距離に入った停止することはありえない黒豹の交尾オスはメスに乗りかかりその瞬間メスはオスごと疾走する雌雄合体した黒豹は更なる黒豹に変化しよりすばやくより加速をつけて草原を光の踊り場に仕立て上げる黒豹たちに別離はなくなり性の衝動は昇華され純粋速度をその身にもたらしたんだ遥か彼方にはっきりと見える死の予感にむかって黒豹の純度はますます高まり光が草原を支配しはじめる黒豹それはぼくだ黒豹それはあなただ黒豹それはぼくたちだ決してない別離死を予感したスピード光の穴を穿ち続ける黒豹交尾は究極の目的ではない

  2004/03/30

• 地下鉄のように

  草原の大地下街で二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎた一瞬の出来事に服屋のスタッフや通行人たちは見過ごしてしまったらしい唯一走り回る子供たちが気づいていた二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎたそのスピードは大脳のシナプス回路の反応二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎた雌雄一対が寄り添いながらもステップ合わせ同じ方向疾駆している彼らの姿は潜在意識にアクセスしたが健在意識に否定された二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎたときおり二匹の黒い豹はメスが先行しオスが追うそのシーンは交尾のようだ二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎた先行するメス豹は大地下街を蹴るその一歩一歩に筋力すべてをかけ追うオス豹はその視野の中心にメス豹を捕らえている追いながらもオス豹の性器は露出し血液の集中化によって勃起している二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎたオス豹は大脳のシナプス回路の反応でメス豹に追いつき跨ったその瞬間射精しメス豹スピードガクッと落ちたがそのままスピード盛り返し雌雄一対寄り添いながらステップ合わせ同じ方向疾駆している彼らの行く先見えないがただ疾駆している疾駆し続けている新たな草原の地上の光全身に浴びたくて二匹の黒い豹が地下鉄のように通り過ぎた

  2004/03/29

• あなたが欲しい

  あなたが欲しいぼくの肉体は変化するぼくはあなたに電話する疾走するあなたに電話してぼくの肉体は変化するあなたがいない場所を通り抜けてぼくは疾走するあなたがいない地下鉄谷町線降りてから大地下街通り抜け地下鉄御堂筋線迸るぼくの肉体は変化する血流どくどくぼくは疾走するあなたがいない場所を抜けて疾走する盛り上がって肉体あなたに辿りつけるまでぼくは疾走する恋愛感情を否定するなぼくはあなたとカフェレストランたましいの噂話をした恋愛感情を否定するなあなたは長い髪を金色に染めた黒豹のメスだぼくはあなたを目ざとく見つけさらにあなたを射程距離に捕らえぼくは全力で追う草原の大地下街を全力で追う美女と野獣になったぼくらはたましいの噂話をした野獣の目をしたあなたその目ぼくの目とそっくり同じ目だあああなたが欲しい疾走するあなたを抱きしめる術をぼくは探そうぼくは全力で疾走するあなたを抱きたい疾走するあなたを疾走しながら全力で抱きたいんだぼくはあなたから受け取ったメッセージ停止は死ぬことそのメッセージがぼくを放っておかないああぼくは疾走するあなたそのものを抱きたいんだあなたが欲しい全力で疾走するぼくらは夕暮れの草原の大地下街で疾走する二匹の黒豹永遠に続くだろう疾走あなたが欲しい

  2004/03/28

• スピード

  ぼくにはわからないあなたがなぜ急ぐのかぼくにはすこしもわからないんだなぜ逝き急ぐのかスピードをもって達成するということそれはあなたになにをもたらしてくれるあなたのなにがあなたを急がせているんだろうとても心配だスピード狂なのじゃないだろうかあなたはあなたは遠い距離という言葉をもたないあなたに会いたいするとあなたは現れるその間どれだけの距離どれだけの時間が経ったのかわからない一瞬のできごとだあなたはスピードそのものだあなたには別離がないいつでもあなたはスピードによって解決しているぼくにとってあなたのスピードは特別だぼくは待っていたスピードぼくには必需品ぼくはいつでもあなたに会える会おうと思ったその瞬間あなたは現れるあなたはスピードぼくはわかっているほんとうはあなたが急いでいるわけをほんとうはあなたが急いでいるわけをぼくはわかっているスピードいきるのにそんなに時間かけないんだスピードぼくはあなたに会えるスピードあなたはスピード距離がないあなたいつも急いでいるあなたいま捕まえないとあなたはいなくなるいま捕まえないとあなたはいなくなっちまうんだスピードぼくはあなたに恋をしたみたいだスピード逝き急ぐあなたぼくも急いでいるだからいっしょに行こうやスピードいまのぼくはもう二度とないいまのあなたももう二度とないぼくもあなたもスピード

  2004/03/27

• いのちを実行しつづけて

  いのちは膨張し続けているぼくらのいのちは地球から太陽系そして銀河系へと果てしなく広がっているいのちは膨張し続けている究極的なビックバン砂粒になり波になり形のないそれでもなにかの痕跡を残す発せられたことばのあとの余韻のようにぼくらのいのちは膨張する宇宙だ理解のアンテナが広がっていくぼくらは共通の宇宙に近づいていくそのためのぼくらに課せられた使命はいのちの実行しかない開放系というフィールドにおけるいのちの実行そして邁進するエネルギーぼくらのいのちは膨張する宇宙だ全体が膨れ上がってひとつひとつは離れていく離れながらもエネルギーに変化はない引力が質量に転換されたぼくたちはひとりひとり離れ続けている膨張する宇宙だひとりひとりの距離が遠くなって果てしなくなっていくけれどその分ぼくたちは重くなっていくんだぼくたちはお互いに離れ離れになればなるほどひとりひとりのいのちの責任は重くなるんだぼくたちのルールは依存ではなく責任の自覚なんだ膨張するいのちのこれがルールだ閉鎖系の依存じゃなくぼくたちは開放系の自己責任にいのちを実行し続けているんだ

  2004/03/26

• いのちが宿り始めているんだ

  ああぼくにいのちが宿り始めているんだぼくの居る場所は冷たい金属色の床の上すこし斜めになっているああぼくにいのちが宿り始めているんだ壁のなかに二重のガラス窓がはめ殺しその向こうにぼくの母らしき人物と父らしき人物が見えるああぼくにいのちが宿り始めているんだぼくに寄生したいのちよぼくのからだは気持ちいいかいぼくのからだをそなたはどうやら喜んでいるいのちよそなたはぼくのおなかに入りそうして胃や腸や臓物のひとつひとつを味わって滲み透っていっているんだねああぼくにいのちが宿り始めているんだぼくは金属色のこの床が嫌いだすでに原点からかなりずり落ちてきているからぼくは不安定なそのままあなたに出会ってそのままあなたと別れたああぼくにいのちが宿り始めているんだいのちよそなたはぼくのからだ隅々まで滲み透りそうしていまやぼくのからだからはみ出してきているいのちよそなたはどこまで拡大化するのだろうかいのちよああぼくにいのちが宿り始めているんだ

  2004/03/25

• ぼくはあなたの便利屋さん

  ぼくはあなたの便利屋さんあなたのお困り解決しますあなたの必要満たしますあなたが求めるすべてのものをあなたが求めるあらゆる時間にあなたが求めるあらゆる場所にぼくはあなたの便利屋さんぼくを使ってくださいなものや行為だけじゃないぼくはあなたを愛してる愛を付加して売っているあなたはぼくの愛もらい愛に値段はつけられぬぼくにあなたは感謝してあなたはぼくに愛くれるこれがあなたの得た価値でこれがぼくの生きる意味ぼくはすべてが満たされてものや行為の値段などどうでもいいやと思えますぼくはあなたの便利屋さんぼくはあなたを愛してる値段じゃ儲けは得られない儲けは値段じゃ表せないあなたが得たものそれは価値ぼくが得たものそれも価値いずれもまったく見えません会計帳簿に書けませんけれどぼくにはほんとうにだいじなだいじな事実ですぼくはあなたの便利屋さん見えない価値を売ってます見えない価値で儲けます

  2004/03/24

• ぼくが主役なんだから

  ぼくは運動会がきらいだ運動会の当日の朝がぼくを動かなくさせるぼくは予定通り短距離走でビリになるぼくの足は囚人のように重い足になる鎖のついた足になる走れなくなるんだぼくはどうしてもビリになる走る前から決まっているんだ走る前から見えているんだぼくがよたよたとビリになっているその姿が見えているんだぼくは唱えているいやだいやだと唱えているぼくは白いトレーニング姿で走るのがとりわけていやなんだ白い姿はぼくに似合わないぼくは真っ白じゃないんだぼくはフォークダンスがきらいだ女の子と手をつなぐああ緊張するそうして踊らなきゃいけない緊張して腕や足が思うように動かないぼくはフォークダンスの最初から最後までいやだいやだとつぶやきながら踊っているいや踊っているような格好しているいやだいやだといいながらぼくは笛を吹くのがいやだぼくにはできない指をどうすればメロディーになって出てくるのか全然わからないんだだからぼくは形だけ合わせてきたまわりの子がどんな指の形で笛を吹いているのかとたぶんぼくひとりステージに立たされ笛を吹いてごらんなさいあなたは笛が吹けないあなたは嘘っぱちだあなたは騙しているあなたは落伍者だそう先生に追求されているぼくが怖くてぼくはおどおどとしているぼくはおどおどとしているぼくのいちばん避けたいできごとぼくは運動会がきらいだそうしてぼくは探求したぼくが短距離走を走らないで済む方法をぼくが白い姿にならない方法をぼくが手をつながないで女の子と踊る方法をぼくが笛を吹かないでリズムに乗る方法をぼくは編み出したぼくは持久力を発揮できるだからぼくは長距離で勝てるぼくは仮装するのが好きだだからぼくはデザインをするぼくは女の子を躍らせるのが得意だだからぼくは男の子も呼んでパーティを開催するぼくはリズムが好きだだからリズムに乗った詩を朗読するぼくはもうつぶやいていないいやだいやだなんてねぼくはしたいことをハッキリと口に出してあなたに言うあなたは受け取る受け取ってくれたことにぼくは感謝するそうしてぼくは実行するそれはぼくがしたかったことなんだからぼくはぼくの運動会を実行するんだぼくが動くためのねぼくが主役なんだからね

  2004/03/23

• 亀のように

  ひょんなことから亀を飼うことになった全身が真っ白い亀だぼくは亀と対等にリングに上がるその緊張の寸前に白い亀がぼくを見て首を持ち上げおねだりするさらに呟いている餌が欲しいんだぼくは愛おしさがこみ上げてくるここで亀に餌をやっては元も子もないんだぼくは我慢する我慢するためにぼくは亀になる亀と亀どうしならば依存はありえないそうしてぼくはリングに上がる白い亀もリングに上がるゴングが鳴るはじめはお互いに牽制しているもしかすると噛み付かれるかもしれないそんな恐れも出てくるぼくは白い亀を愛するために決断をした噛まれてもいい愛する行為が本物なのかぼくは試されているんだもしぼくのこの愛する行為が本物ならばぼくは犠牲になっているという感覚はありえないだろうぼくはそうして信じたんだ白い亀はぼくをきっとわかってくれるんだそう信じた怖くはなくなったぼくは白い亀に近づいてテリトリーラインを踏み越えたそうして一緒にリングを下りて一緒に餌を探しに行ったぼくは亀のようにゆっくりと歩きゆったりと生活しはじめた

  2004/03/22

• 喜んで使うんだ

  世界はぼくが思う世界がそこに実現している！世界はままならないと思うのかそれともままになると思うのかそれがぼくの最初の分水嶺だ宿命とか運命とかそう考えるとぼくは無力になる無力だから誰かに依存するぼくを誰かに委ねちゃうということその結果ぼくはバスに乗り遅れあなたの車は定員オーバーでぼくはひとり取り残される薄汚れた笑顔であなたに会釈し振り向いてくれないあなたを見送る役立たずの門番のように緩みかけたネクタイがぼくだった世界はままならないと思ったらぼくはこのままそこにいるだけなんだ誰かが迎えに来てくれるまで保証はない世界はままならないと思っているからぼくが頼ろうとすれば頼られるあなたは逃げるぼくはそもそもそういう世界を選択していたんだぼくの世界にはあなたが住んでいないぼくはあなたが住んでいる世界を構築しなかったからああ世界はままならない！誰ひとりとしてぼくをぼくのいのちを面倒みてはくれないんだああ世界はままならない！もういちどぼくはぼくに問いかけてみようこのままでほんとうにいいのかと問いかけてみよう分水嶺に戻るんだ！いまこの瞬間に！世界はままになると思えばいい！そうしたら考えるどうこの世界をままにしようかとままにするためのデータを集める集めたデータに基づき世界を構想するその構想に基づき実行に移すまずはやってみるできなかったことについては仔細に検分するそうしてぼくは手に入れる！世界をままにする方策をねやってみてはじめて手に入れる！またぼくは構想する世界をどうままにするのかというようにぼくは構想するそのことに夢中になるんだそうしてやってみるできなかったことを仔細に見るまた手に入れる！構想する世界はぼくが思う世界がそこに実現している！そうもう実現しているんだままになる世界がねその世界にぼくはぼくのいのちを使う喜んで使うんだ

  2004/03/21

• この家が気に入ったのだ

  古い木造のガッシリとした借家だ黒光りする梁が見えている屋根裏部屋にこの家のあるじの部屋があったあなたはウキウキしてそこへ行きひとつひとつに感動しひとつひとつの感想を声に出す低い天井壁際はさらに低まった天井襖の裏側に貼り付けられた各地の神社で手に入れたお守りの数々ああこの家のあるじはあなたそのものかもしれないぼくはあなたのあとについてここまでやってきたんだここまでふと隣の襖が半開きになっているあなたには気づかないこの家のあるじが見えるもうだいぶ年老いた女性が見える布団に寝ている病気なのだあなたがひとつひとつの感想を感動して声に出すたびに彼女は身じろぎし髪を乱して病気の身体を布団からはみ出させ着物はだけてぼくを見るぼくはあなたにそっとそのことを伝えたあなたはそのあるじの彼女に対面したあるじは言ったあなたを見て「賃借人がいるっていいわね」とあるじの顔はみるみるうちに血の気がもどりぼくたちはこの家が気に入ったのだ

  2004/03/20

• きっときっと

  ぼくという世界観が駆けつける夜行バス12時間の距離を移動してあなたのそばに駆けつける駆けつけるそのことに意味がありあなたの世界観にぼくの世界観が近づくそれがあなたを躍動させる躍動するあなたをぼくは受け入れぼくもまた躍動するこうやればいいああやればいいと遠くで言っているだけじゃ聞いてくれるはずもないぼくはあなたに躍動してもらいたいただそれだけたとえあなたが岩のような関係性を構築していてもたとえあなたが岩になっていたとしてもぼくが近づくあなたに思いを寄せるその行為は無駄じゃない決して無駄なんかじゃないんだ決してあなたは躍動するきっときっと躍動するこのぼくが近づくこのぼくという世界観が近づくただそれだけでただそれだけであなたは躍動するんだきっときっと

  2004/03/19

• 手放してぼくを見て

  あなたは身の丈以上のゴツゴツとした岩石にしがみついているしがみついていることそのことはあなたがもうそれで手一杯な状況あなたにうしろを振り向く余裕もないことはよくわかるたぶん岩石のことしか見えないだろうそれでもぼくはいましかないと思っているんだそのあなたの岩石はぼくからどんどん遠ざかっている猛スピードで宇宙の一点に向かって強力な重力によって落下し続けているんだその宇宙の一点はカオスださまざまな思い込みが重量となって集結しているそこは怨念やら撞着やら疑惑やら欺瞞やら果てしなく暗い場所だぼくはあなたを剥がしたいんだあなたが向かう場所じゃないあなたにはあなたの太陽がきっとあってその太陽のまわりにあなたの居場所があるはずなんだあなたはきっとビーナスなんだぼくらの太陽がもしかするとあなたの太陽かもしれないぼくらの太陽系にはビーナスの場所にビーナスがないんだバランスが悪いあなたがぼくらを救ってくれるぼくらも太陽に向かって徐々に落ち続けているんだあなたに振り向いて欲しい手を放して勇気を持ってしがみついているその岩石をいますぐに手放してぼくを振り向いていまだから手放して猛スピードであなたは遠ざかっているんだだからさあはやく手放してぼくを見て

  2004/03/18

• 微笑んでくれる

  淡々と打ち続けているぼくはバッティングマシンだ緑のレモン状カプセルをぼくはひとつひとつ淡々と打ち続けている数人の女性たちがそのカプセルに「ほんとうのあなた」を詰め込んでぼくに手渡してくれるぼくは淡々と打ち続けているすくなくともあなたはグランドまで出てきてくれたそんなあなたにぼくはエールをおくるあなたは柔らかな皮でできたミットを左手にはめてぼくの打ち出す緑のレモン状カプセルをバシッと小気味よくキャッチしてくれたかあなたは緑のこれがもうすこしすっきりと球になっていれば好いと言ってぼくを困らせるグランドに立っているんだよあなたはもうすでにミットも手にはめているあなたは緑のレモン状カプセルを開けるのが怖いんだあなたはいろいろ言い訳をしたり過去の決定に拘ったりしてぼくを困らせるぼくはそれでも淡々と打ち続けるあなたと同じグランドに立つにんげんとしてぼくは当然のように打ち続けるこれがぼくに与えられた役割なんだあなたの役割はまず緑のレモン状カプセルをキャッチしてから明らかにされるあなたが長年積み重ねてきた罪はもう修正不可能だ言わなかったこと隠してきたこと騙してきたこと避けてきたこと逃げてきたこと嘘をついたことあなたは罪を認識しているかあなたのために緑のレモン状カプセルをそれぞれ作ってくれたのはあなたの最愛のと思っているはずのあなたのパートナーなんだあなたの勇気があなたのパートナーにどれほど安心を提供するか思ってごらんよ男らしいってほんらいそういうことだったハッキリ言っちゃえよ男になりたいってバシッと小気味よくキャッチしてあなたがぼくに微笑んでくれる

  2004/03/17

• ぼくが自閉していたとき

  ぼくが自閉していたときぼくが一番えらいと考えていたな確かぼくが自閉していたときありがとうって言わなかったな確かぼくが自閉していたときぼくがぼくをどう満足させるかが世界の課題だったな確かぼくが自閉していたとき純粋にぼく自身でなにかを達成できると信じ込んでいたよなあ確かぼくは自閉してぼくの価値を確かめたかったよなあ確かぼくは自閉してぼくの存在をぼくが確認したかったよなあ確かぼくは完全なぼくという幻想に囚われていたよなあ確かぼくは「蹴りたい背中」を見せていたんだよなあ確かぼくは三年間自閉を選択し自閉に留まり自閉を味わったぼくはその自閉の果てにぼくの限界に突き当たったあたりまえなことであるしかしそのあたりまえがわからないんだぼくはエベレスト単独登頂に成功したしかしその瞬間とても重大なミスを見つけてしまった取り返しのつかぬミスぼくはエベレスト単独登頂に成功したことを世間に知らしめる手段を考えもしていなかったんだなんたるこっちゃぼくは全能なぼくを手に入れたがその全能さを証明できずその手段を持たないことの重要性にあとになって気がついたんだあたりまえのことしかしあんまりあたりまえすぎてつい軽く考えがちなことぼくはぼくだけで世界が構築できると思っていた傲慢で無能なおとこだったんだやっと気がついた出会いを大切に扱うということ出会ったことに感謝するということ出会って出会い続けて関わり関わり続けぼくという自己に拘らずむしろぼくという自己を破壊してあなたを受け入れあなたを認めあなたを愛しあなたがぼくと同一になるまでいつまでも続けていこうとする意思その関係性あたりまえなことだけれども全然気がついていなかったんだぼくが自閉していたとき

  2004/03/16

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