悪女の汚名 4
男の嫉妬がこんなにも恐ろしいとは思ってもみなかった だけに、私は由井の一挙一動に恐れおののくようになって きました。 ある日のことです。 大学のキャンパスで由井と連れ立って歩いていると 私とおなじクラスの男子学生と出くわしました。 たがいに軽く会釈をかわして、すれ違いざまに 「今日の心理学のゼミは休講よ」 と、たった一言声をかけただけで 「いまのやつとは一体どういう関係なんだ」 と、問い詰められるのです。 「どういう関係なんて、いうほどのものじゃないわ、 心理学のゼミが一緒なだけよ。ただそれだけよ」 いちいち言い訳をしなければならないということ 事体が不愉快で苦痛でした。 たったそれだけのことで、果てしない口論になる のでした。 それならばと、言い訳がましいことは一切言わず ご想像におまかせします、というふうに柳に風と 聞き流せば、したで、また由井には気にいらず、 今度はRのことを持ち出して、難癖をつけてくる のでした。 どちらに転んだところで、丸く納まるはずがない のでした。