俳ジャッ句　　　　　

[連載小説] カテゴリの記事

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• 残花抄より抜粋　　妻と愛人の対決

  残花抄より妻と愛人の対決を抜粋しました。 　胸の動悸がざわざわと鳴って、私は息苦しくってねえ。 　あえぎながら、長橋の奥さんのまえに行きましたよ。　すると、女の勘なんでしょうね、奥さんもなにごとかと　私を見据えました。　私は丁寧に頭をさげましてねえ。　｢本日は奥さんにぜひともお返ししたいお品がございまして、　こうして場所柄もわきまえませず、まかり越したしだいで　ございます｣　と、芝居もどきのあいさつをしましたよ。　｢お宅のご主人さまから生前お預かりいたしておりました　お品でございます。どうぞ、お改めになってくださいまし｣　われながら仰々しいとは思いましが、そう言って風呂敷包み　にした短刀を差し出したんですよ。　奥さんは、一瞬とまどった顔をしましたけど、その包みを　あけてみました。　｢これは、ご丁寧にありがとうございます｣　と言いながら、短刀の鞘を払いました。　そして、長船吉次をしばらく見ておりましたがねえ。　次の瞬間、私に刀の切っ先を向けてかざすじゃあ　ありませんか。　その時殺気を感じました。　てっきり切りつけられるかと観念して　思わず目をつぶってしまいましたわさあ。　奥さんは私の頭上で空を切ってから、　やがてなにごともなかったみたいに短刀を鞘に納めて、　｢たしかに主人の愛用いたしておりましたものでございます。　わざわざお返しいただきありがとうございました。　主人もこれで成仏できることでございましょう。　ではこれにて｣　と、まるで古武士の妻のようなあいさつをしてから　静かに、それも能役者のように摺り足で立ち去って　しまいましたよ。　まったく手に汗を握る瞬間でしたわさ。　これも一種の修羅場にはちがいないですよね。 　　　

  2006年10月24日

• 風花楼より　　１３

      　 ところで、その中尉ってえのは、何をやらかした　んだ、って？　長橋中尉はね、１５０人の兵を率いて麹町の　鈴木貫太郎侍従長官邸に乱入したんだよ。　ところが、めざす侍従長に天誅の弾丸を浴びせたら、　夫人が泣いて夫の命乞いをしたっていうじゃないか。　そこは、長橋中尉のことさね。女子供に手出しは　しやしないのさ。　やむなく夫人の懇願をききいれて、とどめの刃を　刺さないで、さっと敬礼して、その場を引きあげた。　そのおかげで鈴木侍従長は死をまぬがれたんだよ。　その引き際は、さすがに鮮やかなものだったよ。　小勇姐さんは、この話をひとつ話にしては　中尉のことを自慢してたよ。　惚れ直したってね。　私だって同じ気持ちだったよ。　中尉はにがみばしった、いい男だったから、　私だけじゃない、ほかの芸者衆にもずいぶん　もてたしね。　このことで、また一段と男をあげたってわけさ。　　　　　　(続く)　

  2006年10月11日

• 風花楼より　　１２

       　浩太郎がばくちに入れ込んでつくった借金は、私では　もうどうにもできないほどの額になっちまっていたんだよ。　結局、借金のカタに私は女郎に叩き売られたってわけさ。　ふりだしは、小浜の三丁町だったよ。　それから、舞鶴、敦賀と流れていったんだよ。　私が舞鶴の遊郭にいるときに浩太郎はほかに　女をこさえて、いつのまにか消えちまったよ。　私は、自分の男運の悪さを嘆いてみたけど、　後の祭りだった。　男を見る目がなかったのは、自分が悪い。　だから、浩太郎を恨む気にさえならなかったよ。　まあ、そういうわけで、私の身の上話は　これでおしまいだ。　なんだか、あっけない話だわね。　　　　　　(続く)

  2006年10月06日

• 風花楼より　　１１

       浩太郎がいくら 呉服屋の若旦那だからったって　芸者を落籍せるほどの大金を自由に出来るはずが　ないよねえ。　で、仕方がないんで、二人して逃げようって話になってね。　手に手をとりあって駆け落ちしたってわけさ。　行き先は若狭の小浜だ。　浩太郎の学校の友達がそこの若狭塗りの箸屋の若旦那でね。　その人をたよって行ったのさ。　浩太郎はその人の世話で小浜の本屋に勤めた。　ところが、なにしろ甘ったれた坊ちゃん育ちなもんで、　人並みに勤まるはずがなかった。　職を転々としたあげくが、自暴自棄になっちまって、　酒とばくちにのめりこんだのさ。　やむなく私が仲居として働いたけど、とても　追いつきゃしなかった。　　　　　　　(続く)　 　

  2006年10月05日

• ちょっとひと言！

    　ちょっとひと言！　｢風花楼より｣の時代背景を言いますと　昭和２６年ごろのことです。　北陸のさびれた港町の遊郭での　物語です。 　２・２６事件から１５年後に一人の　女郎が身の上話ふうに２・２６の回想を　語るという設定になっております。

  2006年10月04日

• 風花楼より　　１０

    　ところで、お前はなんで女郎に身を落としたんだって？　旦那、よくぞきいておくれだねえ。　話が横道へそれたついでに、それじゃあ、私の身の上話でも　しましょうかねえ。　さっきも言ったように、長橋中尉には片思いのままだったけど、　私にほれ込んだ男がでてきましてね。　私も憎からず思うようになった。　その相手っていうのが、四谷の呉服屋の若旦那でね、　浩太郎ってえ名だった。　ちょうどその頃、私に旦那をとるって話がふってわいてねえ。　いやさ、６０歳前のじじいが私の旦那にって名乗りでたんだよ。　私がまだ１９にもならないっていうのに、あんまりって言えば、　あんまりだよねえ。　そいつは、麻布の米屋でたんまりお金のある奴だったけど、　私にすりゃあ、身の毛もよだつほどいやだったよ。　浩太郎が私にホの字だったのは、通いはじめの頃から　ぴーんときて、わかっていたんだよ。　だから、私は浩太郎に旦那をとらされるって話を打ち明けた　ってわけよ。　そしたら、浩太郎は、血相を変えたよ。　｢そんなことは、この俺がさせやしない｣　って、浩太郎は真剣になって言うじゃあないか。　さすがに、うれしかったよ。　　　　　　　　（続く）　

  2006年10月04日

• 風花楼より　　９

    　話が横道にそれちまったけど、小勇姐さんは長橋中尉が２・２６に　かかわっているんじゃないかってえんで、食事ものどを通らない　くらいに心配したんだよ、そりゃ、当たり前さね。　事件当日の号外では、まだ、事件のくわしいことは出ては　いない。　岡田啓介首相をはじめ主だった重臣たちが襲撃された、とは　出てはいたけれども、誰と誰が犯人かとまでは、わかりゃあ　しなかったんだよ。　ただ、皇道派の青年将校が決起したっていうだけでね。　まるで雲をつかむような話だわさ。　２月２９日の朝から｢兵に告ぐ｣のラジオ放送があって　｢今からでも遅くないから原隊へ帰れ。　抵抗するものは、全部逆賊であるから射殺する。　お前たちの父母兄弟は国賊となるので皆泣いておるぞ｣　っていう文句が流されたんだよ。　それとともに同じ文句のビラもまかれたんだ。　ついに、討伐命令がくだったんだよ。　その日のうちに叛乱軍の全員が投降して、事件は　あっけなく鎮圧されたてわけさ。　もちろん長橋中尉も逆賊の一人としてつかまって　しまったんだよ。　そうして渋谷の陸軍刑務所にぶちこまれちまった。　　　　　（続く）　

  2006年09月22日

• 風花楼より　　８

    　２月２９日にようやく叛乱が鎮圧されて、事実上戒厳令も　解かれたんだけどもね。　それで、私ら庶民もやっと自由になれたってわけだ。　ところが、藤丸姐さんの姿が忽然と消えちまったんだよ。　実家にも帰ったでもなし、まるで煙のように消えたんだ。　うちの置屋・花村のおかあさんが血相を変えて探したけど　いやあしないのさ。　｢まさか、留さんと手に手をとりあって逃げたんじゃあ　あるまいね｣　おかあさんは、大きなため息をもらして言った。　ところが、その｢まさか｣だったんだよ。　これは、あとになってわかったことなんだけども、　藤丸姐さんは、留三と駆け落ちしちまったんだ。　なんでも満州へ逃げたっていう話だよ。　花村には、まだ前借が残っていたんだけど、ね　　つまり、足抜けしたって寸法なのさ。　｢栃木げじげじ｣殺しの犯人は、一体誰なんかって？　それは、３ヶ月ほどたってから、わかったんだけど、　半月亭という地元の料亭の仲居だったんだよ。　春江ってえ、渡り仲居でね、４０歳なかばの、ちょっと垢抜けした　女だった。　病気勝ちな、内縁の夫を抱えて苦労してたっていうのに　げじげじと深みにはまってね。　よくある話だわさ。　げじげじは、始めはいいこと尽くめでくどいたんだそうだわ。　お前を囲ってやるから、とかなんとか言ってね。　春江もすっかりその気になっていたんだけど、げじげじが　まだ２５歳のあでやかな藤丸姐さんに心変わりしたもんだから、　そりゃあないだろうって、逆上しちまって、ついに犯行におよんだ　んだそうだよ。　春江は、もちろんお縄になって一件落着だわ。　それにしても、藤丸姐さんが殺ったんじゃないってことが　わかって、私たちもほっと胸をなでおろしたもんだよ。　　　　　（続く）

  2006年09月19日

• 風花楼より　　７

    　藤丸姐さんは、殺された矢野さんのお座敷に出ていたから、　とりわけしつこく事情聴取されたんだよ。　まるで犯人扱いだわさ。　警察で２泊３日も足止めをくって、さんざんしぼりあげられたのさ、　まったく気の毒さね。　なぜなら、矢野さんが藤丸姐さんを落籍せたいって、　言い出したんだけども、本人は好きな人があって、　いやがっていたんだよ。　その好きな人っていうのが、姐さんの幼馴染ですし職人の　留三っていってね、いずれは所帯を持つって言い交わした仲　だったのさ。　決定的な証拠がないっていうんで、いったんは帰されはしたんだ　けどね。　そこは口さがない花街のことさね。　犯人は藤丸姐さんだっていう噂がぱーっと広がってしまってね。　おかげで姐さんは、すっかりしょげかえってしまったわさ。　当たり前だわね。　２月２７日の明け方から出た戒厳令のおかげで、まともに外出さえ　できない状態なんだ。　言ってみれば、監禁されたも同然なんだよ。　赤坂の花街はすっかり灯が消えたみたいになっちまってね。　芸者衆はあがったりだよ。　暇をもてあまして、もっぱら噂話に熱中したってわけさ。　だから、ますます藤丸姐さんは、いたたまれなくなっちまった。　　　　(続く)　　　

  2006年09月18日

• 風花楼より　　６

    　なんでも殺された矢野さんは、胸をめった刺しにされて　八百菊の二階の奥座敷で血まみれになって息たえていたんだそうだよ。　数箇所の傷があって、失血死だったそうだ。　見つけたのは、八百菊の古参の仲居だったんだって。　それにしても、物騒な話じゃあないかえ。　明け方に発見されて、すぐさま警察に通報されたらしいが、　なにぶんにも、２・２６事件が起きたその日のことだから、　警察もそれどころの騒ぎじゃない。　後手後手にまわって、３時間もたってから、ようやくご出動って　寸法だ。　２５日から翌日までの間に八百菊に出入りした者は全員　事情聴取ってことになったんだよ。　もちろん私も事情を聞かれたさね。　私のいた置屋は花村っていうんだけど、そこの抱え妓は　皆で６人いた。　その６人ともが八百菊に出入りしていたのさ。　なかでも藤丸姐さんは、当の矢野さんのお座敷に出ていた　ので、しつこく聴取されたよ。　　　　　　　（続く）　　

  2006年09月13日

• 風花楼より　　５

    　２．２６事件の翌日、２７日は明け方から戒厳令がしかれちまってね。　事実上外出禁止のところへもって、音曲は一切ご遠慮するってえ　んで、お座敷も休業になっちまってねえ。　私たち芸者衆は商売があがったりさね。　もっとも、私はまだ１８歳だったから、たまに休みになったんで　かえってうれしかったよ。　同朋の小鈴と二人でこっそり裏通りを歩いたりして、おしゃべりするのが　楽しかったものだった。　ところで、２．２６の前夜から未明にかけて、殺人事件が起きちぃまったのさ。　八百菊っていう赤坂じゃあ一番の料亭で、事件があったんだ。　２５日の夕方にゃ私もお座敷があって、八百菊には出向いていたんだよ。　なんでも２６日の明け方になって、事件が発覚したらしい。　殺されたのは、矢野さんていってね、宇都宮の株成金だったのさ。　羽振りがよくって、大盤振る舞いをする割には、きらわれていたよ。　栃木弁まるだしで、しゃべるものだから、野暮天の見本みたいな　客だった。　私たちは、陰で｢栃木げじげじ｣って呼んでいたんだよ。　そのげじげじが、胸をめった刺しにされて死んでいたんだから　おどろくじゃあないか。　　　　　　(続く)　 

  2006年09月10日

• 風花楼より　　４

    　２．２６事件の当日は、私たち庶民には一体なにがおこったのか、　よくはわからないんだけども、わからないながらも、途方もない　大事件が起きたっていうんで、上を下への大騒ぎでね。　皇道派の将校さんたちが、世直しのために決起したっていう　噂が飛び交ってねえ。　なにしろ赤坂は陸軍さまご用達の土地柄だからね、将校さんたちに　実に好意的でね、昭和のご一新だとかいうものに期待する風潮が　あったことは、たしかだよ。　長橋中尉たちが、日頃寄るとさわると、｢昭和維新｣だのと声高に　話していたのを、この私だってお座敷でなんども耳にしていたものね。　２６日の朝９時頃、まず第一報の号外が出て、霞が関、三宅坂一帯が　皇道派の青年将校がひきいる兵に占拠されたってことだったがね。　小勇姐さんは、　｢やっぱりねえ｣　って、私の顔を見て、ひと言ぽつりとつぶやいた。　｢悪いことがおこらなきゃいいんだけどもねえ｣　って、ため息まじりに、そう言ったんだよね。　姐さんだって、日頃の中尉の様子から予感するものがあった　んだろうね。　中尉の身を案じて姐さんは食事ものどを通らないふうだったよ。　赤坂から霞ヶ関や三宅坂はさして遠くはないのに、それでも、　何がおこっているのやら、わかりゃあしないんだからねえ。　物騒だったら、ありゃしないのさ。　ただ息をひそめて何か、決定的なことが起きることを待っている　といった具合だったよ。　　　　　　　　　　　（続く） 　

  2006年09月08日

• 風花楼より　　３

    　小勇姐さんは、赤坂でも指折りの売れっ子芸者だったんだよ。　そりゃ、きっぷのいい、江戸前の鑑みたいな人だった。　見返り美人って感じの、すっきりとした、実にいい女でねえ。　女から見たって惚れ惚れするほどだったよ。　長橋中尉とは４年越しの仲だったのさ。　もちろん、中尉には、れっきとした奥さんがいたよ。　まだ新婚３ヶ月の新妻がね。　だけど、姐さんは、心底惚れ抜いていたんだ。　中尉が上官命令で結婚したというのを聞いて　私という女がありながら、ってかき口説いちゃあ　いたがね。　将校さんともなれば、ましてや近衛連隊の将校ともなれば、　結婚するにも相手の身元まで調べられるし、軍の許可がいる、　くらいは、姐さんだって百も承知ではいたんだけどね。　そこは、女心っていうもので、当座は私にも、よく愚痴っては　いたがね、長橋の仕打ちはあんまりだ、ってね。　中尉の奥さんは福井の老舗の呉服屋の娘で、上官の親戚の　人だったとかで。　中尉としても断りきれなかったんだろうね。　２．２６事件の当日は、朝から号外がでるは、大変な騒ぎだった。　なんでも岡田啓介首相が叛乱軍将校たちに襲撃されて、殺されたって　いうんで、ね。　もっとも、首相は危機一髪で難をのがれて、首相の義弟松岡大佐が　人違いで射殺されたってえのが真相だったんだけども。　あの日は前夜から灰のような、細かい雪がしんしんと降ってね、　３５年ぶりの大雪だった。　長橋中尉が事件にかかわっているらしい、ってんで、　姐さんは、雪のなかを素足で駆け出したんだよ。　　私もあとを追おうとしたんだけども、なにしろ膝まである大雪だ。　ふつうの下駄じゃあまともに歩けやしない。　とても、ついては行けやしないのさ。　あとで聞くところによると、姐さんは、六本木の大通りまで　行くには行ったけど、それから先は兵隊さんたちにさえぎられて　通せんぼをくらったそうだよ。　　　　　　(続く) 　　 　　 　　　　　　

  2006年09月07日

• 千夏のちょっとひと言！

       　　　　　　　 ｢ 風花楼より｣について 　蛇足ながら、２・２６事件について付け加えさせて　いただくと、昭和１１年のことです。　その当時の日本は、未曾有の不景気で、失業者が　あふれておりました。　生活苦から東北地方などでは娘を芸妓や娼妓に売るといった　現在では信じられない人身売買がまかり通っておりました。　また軍部が幅をきかせていて、やがて太平洋戦争への道を　突き進んで行った暗いご時世だったのです。　どうぞ、そのあたりをご理解いただき、お読みいただければ、　幸いです。 

  2006年09月06日

• 風花楼より　　２

    　私の惚れた人は長橋中尉といってね、２・２６事件の首謀者の　一人として銃殺されたんですよ。　苦みばしっていて、そりゃあ、いい男でしてねえ、そこにいるって　いうだけで絵になる人でしたよ。　で、なれそめはだって？　旦那、野暮は言わないでおくれでないか。　なれそめなんてものじゃないのさ。　まったくの片思いにすぎないのさ、私のね。　だけど、それでも私は真剣に好きだった。　色恋沙汰じゃないんだよ。　そりゃあ、きれいなものさね。　一度だけ長橋中尉が酔っ払って私の耳もとで　ささやいことがあった。　｢小波ちゃん、そのうち恋をしようね｣　ってさ。　やさしく、とろけるようにささやくじゃあないか。　私はまだ１８歳でお酌から芸者になったばかりの頃だったから　純情だった。　｢そんな、小勇姐さんに叱られます｣　って、まともに答えちまったもんだ。　小勇姐さんてえのは。私の姉芸者でね、鉄火肌でならした、　売れっ子だったのさ。　その姐さんが、長橋中尉のいい人だったってわけ。　　　　　　　(続く）  　

  2006年09月05日

• 風花楼より

    　よおく聞いておくんなさいましたね、旦那。　私はこれでも東京うまれの東京育ちでしてね。　葛飾の出でござんすよ。　自慢じゃあないが、高等小学校は出ているんですよ。　おかげで読み書きの一通りくらいはできますのさ。　女郎、女郎って馬鹿にしないでおくんなさいな。　今じゃあ、こんな北陸のさびれた港町に流れ、ながれて、　よりにもよって、こんなしけた女郎屋に落ちては来ましたがね。　風花楼(かざはなろう)だって、名ばかりは情緒があるものの、　ごらんのように、わびしい店でしてねえ、抱え妓が私をいれたって　たった４人じゃあないかえ。　さびしいの、なんのって、話にはなりゃしませんさ。　まあ、それはおいといて、お前のはじめて惚れた男はどんなかって？　ここだけの話ですがね、私の生まれてはじめて惚れた人ってえのが、　ほら、２．２６事件の青年将校で銃殺になったなかの一人だったんですよ。　うそだろって？　いえいえ、これは本当のことなんでしてね。　　　　(続く) 　筆者よりひと言！　　　残花抄の小勇の妹芸者だった女から見た長橋中尉の物語を　　　書いてみようと思います。　　　小勇とはちがった観点から、もう一度２．２６事件を描いて　　　みたかったのです。よろしくおつきあい願います！

  2006年09月05日

• 熱帯夜の告白　終章

    　あの夜は夕方から雪になりました。　天気予報では夜から明け方にかけてかなりの大雪になる　とのことでした。　私はまたとないチャンスだと思いました。　私は幸子さんとの打ち合わせどおりに決行する腹をきめました。　夫は、｢花吹雪｣にはほとんど毎晩飲みに行く癖がついていましたから　その夜もまちがいなく出かけるはずでした。　幸子さんとは、夫を波止場に誘い出す寸前に電話連絡をくれる　手はずになっておりました。　予定通り電話が入ったときは、さすがに身震いがとまりませんでした。　ちょうど午後１１時になっていました。　夕暮れからふりだした雪がいったんやんでいたので、足元が悪いほど　ではありませんでした。　レンガ造りの倉庫の脇を通って波止場に出ると、すでに夫が幸子さんと　来ておりました。　二人は別れ話をしていたらしく、夫は私を見て、お前は何で来た、という顔を　しました。かなり酔っ払っていて体が頼りなく揺れておりました。　まさか私と幸子さんが示し合わせているとは、思ってもみない様子　でした。　｢奥さんが迎えに来てくださったんだから、今日のところはおとなしく　帰ってくださいな。　もうそれ以上は飲んじゃあダメよ」　幸子さんがそう言うのを合図に私は無言で夫の背後にまわり、力まかせに　海に突き落としました。　暗い海面に夫の体が浮いては沈むのを私と幸子さんは肩を寄せ合って　見ておりました。　夫の助けを求めるさけび声がいつまでも私の耳に残っておりました。　そうです、今でも聞こえてきます。　１５分ほどで夫は絶命したのでした。　幸子さんとはもう二度とは会わない約束をしました。 　もう私には残された時間がないのです。　３ヶ月前にすい臓がんの宣告をうけたのです。　もう末期になっており、手術はできないとのことでした。　そろそろ私は自分の始末をつけなければなりません。　これまでかかりつけの医者に小出しに出してもらっていた睡眠薬を　致死量ためてありますので、それを飲みさえすれば、楽になれるのですから。　　　　　　（完）　　　 　　　　　

  2006年08月21日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　９

    　｢時効になったからといって、罪は罪だ｣　という平田の言葉が私の胸に突き刺さりました。　その痛みにたえかねて、すべてをお話ししようという気に　なりました。　そうなんです、夫を海に突き落としたのは、まぎれもなく、この　私なんです。　当時娘の冴子はまだ小学５年生だったんです。　それなのに、こともあろうに義父である夫が手を出したのです。　それがわかった時、私は逆上しました。　もうそれ以上娘には何があっても同じことを繰り返させてはいけない、　と私は煮えくり返る思いのなかで決意しました。　私は妻であり、女であるよりも、母であることを第一に　考えたのです。　娘を夫から守るためには手段を選ばないつもりでした。　その時私には殺意が芽生えたのです。　夫の行きつけの小料理屋｢花吹雪｣の女将の幸子さんに会いに　行きました。　幸子さんが結婚したがっている相手との仲を夫に邪魔をされて　困っているときいたからです。　そして二人でじっくり話合っているうちに、夫をなんとかしなければ、と　いう結論に達したのです。　まず夫が｢花吹雪｣に飲みに行ったときに幸子さんが夫を波止場まで　誘い出すのです。　そこには私が夫を待ち伏せしていて、夫が来たら海に突き落とすという　筋書きなのです。　あの夜は夕方から雪になりました。　天気予報では夜から明け方にかけてかなりの大雪になると　いうことでした。　これはまたとないチャンスだと思いました。　　　　　（続く） 　　　 　　　　　　　

  2006年08月19日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　８

    　｢奥さん、あんたって人は強情だな、ご亭主が娘さんに　手をだしたんだね。　まだ、小学生の連れ子にね｣　平田は勝ち誇ったように、あごをしゃくりました。　私は頭のなかで、なにかが音をたてて崩れ落ちていく気が　しました。　｢だから、あんたは殺ったんだ、ご亭主をね。　あの雪の夜に海へ突き落としたんだ。　それを、そしらん顔をして時効になるのを待った。　恐ろしい人だな｣　平田は言葉を続けました。　｢そりゃあ、娘に手をだした亭主を許せない、と思う気持ちは無理も　ないかもしれんよ。　だからって人をひとり殺してもいいというわけにはならんだろう。　もう、いい加減に罪を認めたらどうなんだ｣　｢平田さん、何度も言ったように、あれから１７年もたっているんですよ。　立派に時効が成立しているんですよ、仮に私が殺ったにしてもね。　お引き取り願えませんか｣　私は顔色が青ざめてくるのをおぼえましたが、それでも最後の力を　ふりしぼって言いました。　｢たとえ時効が成立したからって言ったって罪は罪なんだから、　のうのうと生きているっていう神経がわからんよ｣　平田は吐き捨てるように言うと、立ち去りました。　　　　　　（続く）　　

  2006年08月10日

• 千夏のモノローグ　　５９

    　ご無沙汰いたしましたが、久々のモノローグです。　このブログも、どうにか丸半年持ちこたえることができました。　その間色々なことがありました。　ブログ開設まもない頃からの仲間がひとりやめてしまいました。　それも突然のことでしたので、ただ驚くばかりで、なんの力にも　なってあげることもできないままでしてね。　どうやら彼女はかなりの嫌がらせを受けていたようです。　一体誰がそんな心ないことをしたんでしょうか。　今となれば、わからないことだらけですが、そういえば、彼女が　消えてしまいたい、などともらしていたことを思い起こして　呆然としております。　ネットでは相手の顔が見えません。　見えないながらも、気持ちだけでもつながっているような　錯覚をもってしまいがちです。　ブログでも、コメントのやり取りをしているうちに　なんだか相手がわかったような気分になってしまうのですね。　それが、そもそも錯覚だったのです。　まるでくらがりのなかで手探りでいるような、暗澹たる思いに　なっております。　たとえ顔がみえなくっても、それでも手探りで誰かをさぐりあてようと　することは徒労なのでしょうか？　では　今日はこの辺で　　Ｇood luck！ 　　　

  2006年08月10日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　７

    　平田に図星だと言われて、思わずかっとしました。　相手の思うつぼだとはわかっていながら、言わずもがななことを　口走ってしまいました。　｢冴子がどうしたって言うんですか。あの子はまだ小学５年生だったん　ですよ、あの当時は｣　｢だけど、もう体はりっぱに一人前の女ですよ、その年頃じゃあ｣　平田は下卑た笑みを口許にうかべていました。　｢一体なにが言いたいんですか、平田さん｣　｢奥さん、こんなことを私の口から言わせるつもりですか、　あんたが一番恐れていたことを、ね｣　｢今更恐れることなんてありゃしませんよ｣　｢奥さん、あんたって人は強情だな、ご亭主が娘さんに手を出した　んだね。まだ小学生の連れ子にね｣　平田は勝ち誇ったようにあごをしゃくりました。　私は頭のなかでなにかが音をたてて崩れ落ちていく気がしました。　　　　　　　（続く）  　　　

  2006年08月03日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　６

    　｢たしかに夫とは再婚でしたよ、娘を連れてね。だからって　それがどうしたって言うんです？｣　私はむっとして言い返してやりましたよ。　私が娘の冴子を連れて再婚したのは、もう２６年もむかしの話　なんですよ。　今ごろになって蒸し返されたって、それこそとっくに時効ですよ。　｢その娘さんがネックだったんだ、奥さん、そうでしょうが｣　平田は鬼の首を取ったかのように得意げでした。　｢いまさら、なんだって言うんですか？　主人と娘はうまくいってましたよ。あれで、なかなかの子煩悩　でしたからね｣　｢そりゃあ、娘さんが幼いころは、ね｣　平田は意地悪くせせら笑ったんですよ。　｢だけど、奥さん、娘さんが年頃になるにつれてご主人の態度が　変わった、そうでしょう｣　｢平田さんておっしゃいましたよね。　いい加減にしてくれませんか。娘は今では結婚して子供まで　いる身です。万事がうまくいっているんですよ｣　｢ほらほら、奥さん、娘さんのことになると、そんなに興奮する。　図星だね｣　　　　　　　　（続く）　

  2006年07月31日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　５

    　どういう下心か、ですって？　人の弱みにつけこんでお金をゆすろうって魂胆なんです。　そうは問屋はおろしませんよ。　当たり前じゃあありませんか。　私にはなんの弱みもありゃあしませんからね。　平田っていう元刑事が今頃になって難癖をつけたからって　私はびくともしませんよ。　１５年の時効が成立している以上、もう誰もとやかく言うことは　できないんですからね。　たとえ私がやったとしても、ですよ。　でもね、あの元刑事が一体私にどういう動機があったって思っているのか、　そこのところだけは、きいてみたかったんですよ。　｢奥さん、あんたは死んだご主人とは、子連れで再婚しているでしょうが｣　って平田さんは、してやったり、というように満面に笑みをうかべて　言いましたよ。　　　　　（続く）   

  2006年07月31日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　４

    　つい２.３日前に元刑事の平田さんて方が訪ねてきました。　夫の死の直後私の任意の取調べを担当した刑事さんなんですがね。　なんでも今春定年退職して今はぶらぶらしているんだとか。　その平田さんが来て言うのには、　｢奥さん、あんたって人は怖い人だなあ。ご主人をやって平然としている。　そのうえ運がよかった。　ご主人が海に転落したあの夜は、夕方降った　雪が一旦やんで、また夜中から明け方にかけて１メートルも降ったんだ。　だから足跡はどれも皆きれいさっぱりと雪に覆われてしまったんだ。　あの日の天気予報があたった、それがなによりもあんたには都合が　よかったんだ｣　ってね。　｢言いがかりはやめてくれませんか。　もう１７年も前のことをほじくりかえしてもなんにもなりゃあしませんよ。　殺人の時効は１５年なんですよ。　もしも仮に私がやったとしても、もう立派に時効になっているんですから｣　って言い返してやりましたよ。　どういう下心があるのか、だいたい察しがついているんですよ。　　　　　　（続く）  　　

  2006年07月30日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　　３

    　｢花吹雪｣の幸子さんだって充分に動機はあったんですから、ねえ。　やっぱり警察で取り調べはされたらしいですよ。　でもね、動機があったにしても、やったといえる確証もないんじゃあ　仕方がないんですよね。　それからまもなく幸子さんは恋人と所帯を持って東京へ舞い戻り　ましたがね。　まあ、ハッピイエンドってわけですよ。　うちの人をやったのは、じゃあ一体誰だったんでしょうねえ。　容疑者と呼べる人はまだ一人いるんです。　玉村っていって夫の会社の同僚だった人ですが、この人とは気があって　よく飲みにも行っていたらしいんですがね。　死んでからわかったんですが、この人に２００万ほど借りていたんです。　うちのがね。　なににつかったんだか、おおかたパチンコでもして負けがこんだんでしょうが、　その借金はもちろん私が返すしかないじゃあありませんか。　どうやら生前、返す返さないでもめていたそうでしてね。　そのせいか玉村さんだってあやしいんじゃないかってみなされていた　ようでした。　ところが、うちの人の死亡推定時間には玉村さんは大阪に出張中で　この町にはいなかった。　つまり立派なアリバイがあったんですよ。　とどのつまり、事故死ってことになってしまいました。　　　　　（続く）  　　

  2006年07月28日

• 熱帯夜の告白　　時効になった殺人　２

    　介護サービス業をはじめてみて、まず思ったのは、要介護の老人をお世話する　なんて聞こえのいいことを言うけれど、しょせんは姥捨山の管理をまかされて　いるにすぎないんだって、それもしっかりお金を取ってね。　今では会社がどんどん大きくなって、ケアマネージャーやヘルパーなど　全部で社員４０人の所帯にふくれあがってしまってね。　娘夫婦が経営を手伝ってくれているので、ずいぶん助かっていますがね。　そうそう、夫の死んだ直後、私だって一応取り調べにあっているんですよ。　警察にすれば女房の私が一番殺す動機があるってみたんでしょうよ。　まちがっても夫婦仲はよくはなかったしねえ。　だけど、それはあんまりだわねえ。　私、警察で言ってやりましたよ、幸子さんのほうがあやしいってね。　なぜって、幸子さんには結婚を申し込んでいる年下の恋人がいたんですよ。　それなのに、うちの人が嫉妬して二人の仲をこわそうとした。　だから幸子さんがうちのを海に突き落としたんだって、ね。　でも、結局は決定的な証拠はあがらないままに夫は事故死として　片づけられましたがね。　それにしても、なんであんな雪のなかをわざわざ波止場まで出かけて　行ったんでしょうねえ、うちの人は。　　　　　　（続く）   　　　

  2006年07月28日

• 千夏のモノローグ　　５８

    　どうも近頃気分がすぐれませんで。　一頃ほとばしるように出た書く意欲が今ではさっぱりわいてはきません。　これをスランプと言うのなら、しばらく休養をとも思いましたが、　せっかく半年近く続けてきたこのブログを中断するのも残念ですので、　何とか持ちこたえたいと悪あがきをしております。　ところで、もしも生まれかわれたら男になりたいですか？　それとも女になりたいですか？　私はやはり女にうまれたいですね。　ただし可愛い女にね。　女も可愛げがないといけませんねえ。　誰も助けてはくれませんから。　私など強がってばかりいますから、損なたちでして。　もっと素直になって、たまには人の好意にすがってみたいものですけれども。　それが出来ないんですねえ。　死ななきゃなおらないんでしょうか？　今日は夜も明けないうちから愚痴になってしまいました。　ごめんなさいね。　ではGood luck！ 　　

  2006年07月23日

• 千夏のモノローグ　　５７

    　まったくよくまあ降りましたよ。　三日三晩、まるでバケツをひっくりかえしたような土砂降りでしたが、　ようやくやみました。　なんの被害もなくすんだのはラッキーでした。　さて今日はすこし趣向を変えてみることにいたしましょう。　　　　　　　夏帯や泣かぬ女となりて老ゆ　　　鈴木真砂女 　前にも真砂女について書きましたが、この句にも思うところが多くあり　ましてね。　真砂女は千葉県鴨川の老舗旅館の家つき娘として生まれ、なんの不自由も　なくそだちましたが、５１歳のとき家も夫も捨てて恋に走り、そのために辛酸を　なめました。　おそらく生活の苦労をして、何度泣いたことでしょうか。　そして年を重ねていくうちにだんだん泣かなくなっていったのでしょう。　私も年とともに泣かなくなりました。　若いころは泣くまいと思っても涙のほうがほとばしって我慢できなかったの　ですが、今では涙腺の具合がおかしいのか、一滴も出ません。　涙は女の武器ともいいますが、その武器さえも捨ててお手上げをして　いるようで、なんだか淋しい限りです。　ですが、そのかわりに実に楽天的にもなりました。　明日は明日の風が吹く、と割り切ることができるようにも　なりましてね。　これが千夏流の年の功でもあるのです。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 

  2006年07月19日

• 千夏のモノローグ　　５６

    　集中豪雨と雷多発のためＰＣがつかえなかったので遅くなり　申し訳ありませんでした。　ようやく雨も小降りとなりました。　親友に初孫が誕生したので名づけ親をたのまれましてね。　私もはりきって智子(さとこ)と命名しました。　この名はもとより画数もよく、親友一家も大変気に入ってくれました。　そのせいか智子はすくすくと育ち今春小学校に入学しました。　ただ残念だったのは、智子の母親は智子の生後まもなく離婚してしまい、　智子をひきとって実家にもどってしまいました。　智子はほとんど母方祖母である私の親友が育てたのも同然でした。　というのも、智子の母親は女医で仕事がいそがしいために私の親友に　智子をまかせっぱなしなのです。　それにもめげずに智子はのびやかに育ちました。　というより私の親友が癒し系のおだやかな人柄なので、それが　かえってよかったのかもしれませんが。　６歳から始めたバレエが今ではだいぶ上達して、本人に言わせると　大人になったらバレリーナになるのだそうで。　たしかにバレエのせいで智子のしぐさはとても美しく、ほれぼれする　くらいなのです。　やはり女の子は見るからに女の子らしいのがいいですねえ。　これは私のひいき目かもしれませんが、智子がプリマドンナとして　舞台に立つ日が早く来るといいですね。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！　　　　

  2006年07月17日

• 千夏のモノローグ　　５５

    　これは、ほんの出来心だったのですが、いけませんねえ。　たまたま浮気心からはじめての美容院に行きました。　行きつけのお店は前もって予約をしなければなりませんので。　思いついたが吉日とばかりに、その美容院に入ってしまいました。　新しいお店ができたのが前から気になっていましたのでねえ。　ところが、やっぱりいけません。　仕上がった髪型がどうしても気に入りません。　だからと言って手直しさせる強引さももちあわせてはおらず　不承不承店をでました。　家に帰ってから鏡を何度も見ましたが、やっぱり気に入りません。　いつもの髪型とはかけ離れたボブ調なのが、たまらなくいやでならない　のです。　結局泣き寝入りするしかなかったのですが。　それにしても、気に入らない髪形では、落ち着きません。　なんだか自分が自分でないような気がしましてねえ。　これは女ばかりではないはずです。　男の方だってそうじゃありませんか？　まったく、ほんの出来心からおかしなことになってしまいましたね。　では今日はこの辺で　　Ｇood luck！　　  　　　

  2006年07月16日

• 千夏のモノローグ　　５４

    　おかげ様でこのブログも５ヶ月続けることができました。　もともとが飽きっぽいたちですので、自分でも三日坊主で終わるのではないかと　気がかりでしたが。　これもひとえに皆様がたのおかげです。　この場を借りましてお礼申しあげます。　コメントも数多くいただきました。　幸いなことにこのブログの常連の方々はハイセンスでいらっしゃって　思いもかけないご意見をいただき、はっと目が覚める思いをしたことも　たびたびありました。　また私が落ち込んでいるときに叱咤激励をたまわり、お力になっても　いただきました。　なにとぞこれからもよろしくお願い申しあげます。　年のせいでしょうか、現在のことよりも過去に関する事柄が多いのも　仕方のないことかもしれませんが、にもかかわらずこのブログをご愛読　いただきました。　なるべく年寄りの繰言にならないように気をつけてはおりますが、　もしもそうなったとしても、どうぞ大目に見てくださいますように。　というわけで今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 　 　　　

  2006年07月15日

• 残花抄　　その２　　５

    　山根健一君があまりにも長橋に似ているので、私には長橋の生まれ変わりと　思えてなりません。　ただ山根君はどことはなしに気の弱そうなところがあって、ほってはおけない　のですよ。　お節介なおばさんだと思われるかもしれないのだけれども、私でできることが　あればしてあげたいのです。　それからの私はなにやかやと口実をもうけては山根君の様子をみに　病院へ行きました。　その日もちらし寿司をこしらえて持参したんですよ。　山根君はさすがに若いんですねえ、おいしいと言って、見る間にぺろりと　たいらげましてねえ。　｢死んだおふくろの自慢料理だったんですよ、ちらし寿司が｣　とよろこんでくれましてねえ。　そのよろこぶ顔を見るのがまたうれしくってねえ。　私には子供がいないので、束の間でも母親になったような気分を　味わうことができまして。　｢今週末に退院することになったんです｣　｢それはおめでとう、よかったわね｣　とは口では言ったものの、なんだかさみしい気がしましてねえ。　退院したら、それっきりだなんていやだなと思いましたよ。 　　　　　　（続く）  　　　　　

  2006年07月14日

• 千夏のモノローグ　　５３

    　熱帯夜が明けてもあいかわらず暑苦しくて、早朝からクーラーの　お世話になっております。　年がいくにしたがってこらえ性がなくなってきて、やれ暑いといっては　騒ぎ、そうかというと冬は冬で寒いといってぼやくことしきりなのですが。　若いころはともかく、年がいって夫婦仲の悪いのは、見苦しいもの　ですねえ。　私の友人に２０年以上も仮面夫婦をつづけているカップルがいます。　ところが、その夫のほうが最近白内障の手術をしました。　するととたんに気弱になってしまい子供のようにつれあいにまつわりついて　世話を焼かせるようになってしまいました。　私の友人は夫の豹変ぶりをうるさがり　｢まったくうっとおしったらないのよ｣　と愚痴ります。　｢仲良くしたら｣　と言うと　｢冗談じゃないわ、これまでさんざん極道をしておきながら、今頃になって　仲良くなんてできるわけないわよ｣　と言い返します。　彼女には長年の積もる恨みがあるのでしょうが、もうすこし寄り添うことも　大事なのじゃないでしょうか。　年がいってからこその夫婦といいますからねえ。　朝っぱらからよその夫婦のことをあれこれ言って、ますます暑苦しくなって　申し訳ありませんでした。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 　

  2006年07月14日

• 忘れえぬ人　　４

    　｢それはもうショックでした、三島が自衛隊本部に立てこもったって　いうんで、市谷まで走っていった者までおりましてなあ、あれはしかし　びっくりしましたよ。　そこへもって割腹自殺でしょう、いやもう大学の図書館の中が一時騒然と　したくらいでした。　なんですか、礼子さんが亡くなったんですか。　そんなはずはありませんよ、あの人とはついこのあいだ出会ったばっかりで　すから、そうです、半月前になりますかね、ミニスカート姿がそれはそれは　キュートでしたよ｣　どうやらＢの頭のなかには、伯母は２２、３歳のままではりついている　らしかった。　それは永遠に氷の花のように凍りついているのかもしれなかった。　海鳴りが遠くでざわめいていた。　ヘルパーによるとＢは今でも公判準備だからと言って六法全書を　ひもといては終日過ごしているのだそうだ。　Ｂには時間もまた凍りついているのかもしれない。　｢どうぞ、お元気で｣　私はＢに深々と頭をさげて病院をあとにした。　海鳴りがだんだん近づいてくるにつれ、松林に遮られて海は視界からは消えてしまった。　　　　　　　　　（完）  　

  2006年07月13日

• 千夏のモノローグ　　５２

    　ひところオタクという言葉がしきりとつかわれましたが、夜も明けきらない　うちからＰＣに向かっている私は、さしずめ熟年オタクということになるの　でしょうか。　なにか面白いネタはないものかと、あたりを見回してみてもこれといった　新発見はありませんでねえ。　気づくことといったら自分がだいぶもうろくしてきたといったことばかりでして。　どうやら私も認知症予備軍に入ってしまっているようです。　これは私だけかと思って同年配の人にきいてみるのですが、似たり寄ったりの　答えがかえってきますので、まあ、仕方がないのかと思い直してみたりしており　ます。　なにごとも惰性で流れているという実感がありましてねえ。　いけないなと思いながらも、それでも流れに逆らう気力と体力が　ありません。　かりに流れに逆らったとしたら年寄りの冷や水と笑われるのがオチで　しょうね。　年をとるということも、なかなか芸のいることではあります。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 

  2006年07月12日

• 忘れえぬ人　　３

    　Ｂの入院している認知症専門の病院は丹後半島の小高い海辺に　あった。　一見リゾートホテルのようなしゃれた構えである。　ヘルパーらしき女性が押す車椅子に乗っているのは、見るからに　上品な白髪の老人だった。　新聞の切り抜きの写真とはまた趣きのちがう、どこか人なつこい表情で　あった。　ヘルパーにあらかじめ言い聞かせられているのか私の出し抜けな面会にも　別段不満に感じてはいないようすだった。　｢蓮見礼子の姪でございます｣　私は手短に突然の非礼をも詫びた。　｢礼子さんですか、これはなつかしい｣　Ｂは感極まった面持ちで言った。　｢たしか昭和４５年１１月の初めでしたなあ、私が在学中に司法試験に受かった　直後に出会いましたから。　それからほどなく三島由紀夫が割腹自殺しましたよ｣　Ｂはつい２．３年前の出来事のような口ぶりで言った。　｢三島の割腹の報を大学の図書館で知りましたが、あのときの礼子さんの　驚いた表情を私は今でもありありと思い出しますなあ。　それにしても、あのときの礼子さんはきれいでした、大きく目を見開いて　『本当にそんなことってあるのかしら』って首をかしげてねえ。　夢二の女のようにきれいでしたよ」　Ｂの口から言葉がほとばしった。　それは６０年近い歳月を一気に飛び越えたような躍動感があった。　　　　　　　（続く）　　　　　　　

  2006年07月12日

• 千夏のモノローグ　　５１

    　人間の習性というものは、こわいものですねえ。　やれスランプだ、などと言いながらも、時間になればこうしてＰＣの前に　座っているのですからねえ。　また、なにを書くかわからぬままにキーをたたいておりますけれど、　そこのところは大目に見ていただくとしまして。　カウンタが突如ゼロになり楽天ブログをやめた友人が、３日目に　思い直して戻って来ました。　当人にしてみればいろいろ言い分はあるのでしょうが、私としましては　ほっと胸をなでおろしましたよ。　カウンタももとに戻ったというので、それはそれでやれやれ、といった　ところです。　人ごとばかりではありません。　私の場合たった一日更新しないと、アクセス数がゼロとまではいきませんが　がたんと落ちてしまいますので、なかなか気が抜けないのです。　こんな面白みのないブログでも、読んでくださる方がいてくださるのは　本当にありがたいことでして。　というわけで今日もまた、とりとめもないことを書き散らかして　しまいお粗末でした。　ではこの辺で　　Ｇood luck！ 　　

  2006年07月11日

• 忘れえぬ人　　２

    　伯母の残した新聞記事の切り抜きの日付は１８年前になっている。　伯母は享年７７歳だったから、５０代のころに切り抜きをしたことになる。　記事はどれも枯葉色に変色しているのも、無理はない。　Ｂは、しかし現在生存しているかどうかも知れたものではない。　私はＢの消息をたずねてみようと思った。　あれこれ手を尽くして、Ｂの現在の連絡先がわかった。　なんとＢは認知症専門の病院に入院していたのだ。　私は電話でその病院に問い合わせてみると、Ｂは現在のことはおぼろ　なのだが、遠い過去の出来事だけはしっかりと記憶していると　いうことだった。　私は思案した結果、思い切ってＢを訪ねることにした。   　 

  2006年07月11日

• 千夏のモノローグ　　５０

    　このところスランプにおちいってしまって、今ひとつやる気がでないで　困っておりまして。　PCに向かってもいっこうに筆が進みません。　仕方がないので、とりとめのないことばかりで申し訳ありませんが、　書きちらします。　私のブログ仲間が一人楽天ブログをやめてしまいました。　彼はブログランキング上位の常連でしたが、ある日カウンタが　突然ゼロになってしまったのに嫌気がさして、他のブログに　引越ししてしまいました。　せっかく１７万アクセスまでいっていたのに、残念でなりません。　こうしたカウンタの不具合は最近よくおこるのだそうで、それにしても　楽天さんももうすこし首尾よくしていただけないものでしょうかしら。　もし私が突然カウンタがゼロになってしまったら、やっぱり憤慨やるかた　なしになると思いますからねえ。　皆さんはどうお思いですか？　もっとも私の場合アクセス数が伸び悩んでいますので、それもまた　頭痛のタネではありますが。　まったくとりとめもないことを書いて、芸がありませんねえ。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！　

  2006年07月10日

• 忘れえぬ人　　１

    　伯母の礼子が亡くなって４９日も過ぎ、遺品を整理していたら、同一人物に　関する新聞記事の切り抜きが何枚も保管されていた。　それも伯母がよほど気に入っていたと思われる加賀蒔絵の文箱の　なかに後生大事にといった感じで仕舞いこまれていた。　その文箱にはほかに伯母の２０代のころの写真も何葉か納められていた。　そのいづれもが伯母の女子大時代のものと思える写真だった。　まるで宝塚のスターのようにあでやかに微笑んでいるものばかりだ。　伯母自身が特に気に入っていたものなのだろう。　新聞記事の切り抜きは６枚あった。　その人物を仮にＢという名にしておくが、ＢがＨ高裁長官に就任した　ときのものは写真入りであった。　それは、けっして美男とはいえないが柔和で上品な笑顔の６０年配の　紳士が写っていた。　伯母は２０代で離婚したきり再婚はせずに通したから、おそらくＢは　伯母にとってよほど思い入れのある人なのだろう。　私には伯母の長年にわたるＢへの思慕がみてとれた。　それも、ほとんど執念に近いような思慕だと思えた。　　　　　　　(続く)    　　

  2006年07月07日

• 千夏のモノローグ　　４９

    　我が家の柴犬タローがうおーん、うおーんと鳴きます。　獣医さんによると、背骨が痛むからだそうです。　あまりに鳴くので、はじめのうちは背骨をさすってやっておりましたが、　納まるようすがありません。　やむなく痛み止めのステロイドを飲ませました。　薬がきいてタローはようやく眠りましたが、この痛み止めは　副作用がてきめんにでます。　翌日血便がでます。　それほど副作用がひどいのです。　ですから、よほどでないと飲ませたくないのですが、　タローが痛がるのを見るのがつらくって、今回もついつい　飲ませてしまいました。　もうタローの余命も尽きかけています。　それは百も承知していながら私はどうしてやることも　できないのです。　タローが初めて我が家に来た日のことが昨日のように　鮮明に思い出されます。　生後４３日でタローは来ました。　１３年前のことです。　丸々と太ったやんちゃな子犬でした。　そのタローがいまや老犬となって病に臥せっております。　命あるものの哀しい末路です。　今日はもうこれ以上書けません。　Ｇood luck！　　

  2006年07月05日

• 千夏のモノローグ　　４８

    　私がまだ小学生の頃のことですが、いまだに鮮烈に記憶にのこっている　ことがあります。　同級生のＡちゃんの家へ遊びにいくと、とんでもない光景を目にしました。　Ａちゃんのお父さんが、お母さんを足蹴りにしているのです。　私の父は母に手をあげるということがなかってので、私は子供心に　ひどく驚き、そしてなにか見てはならないおぞましいものを見たように思い　衝撃をうけました。　聞くところによると、Ａちゃんのお母さんは、前夫に戦死されてしまいＡちゃんの　お父さんと再婚したのだそうです。　Ａちゃんのお父さんは、お母さんの過去も充分承知のうえで、結婚した　のだそうです。　にもかかわらず、なにかにつけてお母さんにつらく当たり、はては昔の　ことを持ち出しては殴る、蹴るの暴力をはたらくのだとか。　今でいえば、りっぱなドメスチックバイオレンスになりますよねえ。　もっともこの平成の世でさえもＤＶはあとをたたないのだそうですから、　Ａちゃんの両親の場合もよくある話だったのかもしれませんね。　それにしても、妻の過去を承知のうえで結婚していながらも、それでも　その過去に嫉妬するという心情は、いったいどうなっているのでしょうか。　私も年の効でそのあたりの心情がわからなくもないのです。　その手の男性はきっと自分なりに妻を愛しているのかもしれません。　愛しているから、妻の過去を許せないのかもしれません。　けれども、そんな愛し方しかできないというのも、なんと狭量なのでしょう。　また、そんな愛し方をされる側はたまったものではありませんよねえ。　私にいわせれば、男の嫉妬ほど手に負えないものはありませんから。　というわけで今日はこの辺で　　　　Ｇood luck！　　 

  2006年07月05日

• 千夏のモノローグ　　４７

    　　　　　　　　　羅(うすもの)や人悲します恋をして　　鈴木真砂女 　この句は３年前に９６歳で大往生した女流俳人、鈴木真砂女の　代表句のひとつです。　真砂女は千葉県鴨川の老舗旅館の家つき娘で女将をしておりましたが、　５１歳のときに夫も家も捨てて恋に生きたのです。　年下の恋人には妻子があったため、銀座でちいさな小料理屋を　営み暮らしをたてました。　そのかたわら数々のすぐれた恋の句を生み出しました。　　　　　　　　夏帯や一途といふは美しき 　　　　蛍火や女の道をふみはづし 　など、悪女と人にそしられながらも、ひたすらに恋をつらぬいた　真砂女に私は爽やかな感動をおぼえます。　その恋の相手の死をも乗り越えて真砂女は俳人として、また小料理屋の　女将として、けなげに生き抜いたのでした。 　　　　　路地住みの終生木枯きくもよし 　　　　　今生のいまが幸せ衣かつぎ　　という澄きった心境にいたります。　２０数年前に私は真砂女にひと目会いたくて銀座の小料理屋を訪れた　ことがありました。　もちろん一人の客としてですが。　その当時真砂女は７０代でしたが、小柄ながらもきりりとした美しい　人でした。　私にもさりげなくビールを注いでくれながら、俳句の話などをしてくれ　ました。　人をそらさない応対のなかにも、けっして人にこびることのない気品が　ありました。　真砂女をしのびながら　　Ｇood luck！   　　

  2006年07月03日

• 千夏のモノローグ　　４６

    　女、三界に家なし、といいますが、平成の世でもやはりそうなのですねえ。　ある認知症の老婦人がしきりに　｢家に帰りたい｣　と言うので　｢ここはおばあちゃんの家じゃないの｣　と家人が言い聞かせるのですが、どうしても聞き分けないのだそうです。　それでもまだ帰りたいを連発するのだそうで。　おそらくその老婦人は実家に帰りたがっているのでしょう。　実家といってもとうの昔に代替わりしていたり、すでになくなっていたり　しているはずなのです。　にもかかわらず、帰りたがる。　女にとって婚家はあくまでも婚家であって、けっして実家に代わるもの　ではないのでしょう。　なんともせつない話ではありませんか。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 　　 

  2006年07月02日

• 千夏のモノローグ　　４５

    　私はよほどのあまのじゃくだからでしょうか。　おかしなことばかり気になるのです。　たとえば司馬遼太郎の｢龍馬がゆく｣を読みますと、龍馬の死後　龍馬の妻のお龍がそれからどうなったんだろうか、と考えこんでしまう　のです。　これは、もうここ何十年間気にかかってきたことなのです。　お龍だけではなく、歴史上の人物の脇でほんのわずかの間スポットライトを　浴びた女のそれからの人生がどんなふうだったのかということに興味が　あって、自分なりにしらべてみたくなるのです。　要するに、脇役のその後ばかりを拾い集めたがるのです。　お龍のほかに、私が興味をひかれたのは、唐人お吉、山川登美子　などです。　そこで思い切って新しい企画を実行しようかという気になりました。　まだ仮題なのですが、｢女たちのその後｣というコーナーをこのグロブで　始めてみようかと思います。　もし、いいアイデアがありましたら、お力をお貸しいただければ幸いです。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！   

  2006年07月02日

• デッドライン　　　４　

    　祇園祭の宵山は７月１６日である。　矢野との待ち合わせ時間は１７時。　宇都宮から京都までは、どう少なめに見積もっても５時間はかかる　はずである。　私は念のために午前中に宇都宮地検に電話をいれてみた。　中村検察事務官が例によって愛想よくこたえた。　｢検事は私用のため今日明日は休暇をとっております｣　｢そうだったのですか。じゃあまた後日お電話さしあげますから｣　と適当なことを言って切った。　案の定矢野は京都までやって来るつもりなのだ。　私は時間に余裕があるので３時すぎに大阪の高槻のマンションを　あとにした。　京都の四条河原町に出て、雑踏のなかをぶらりと歩いてみた。　頭のなかでは矢野とかわす会話の筋書きをえがいていた。　それは、私なりのささやかな復讐のシナリオだった。 　　　

  2006年07月02日

• 千夏のモノローグ　　４４

    　占いをゲーム感覚で楽しむというのは、けっして悪いことではないと　思うのです。　｢今日はなにかいいことがありそうだ｣　とか、また逆に、　｢あまりついてはいないみたいだ｣　とか、縁起をかつぐのだって、その日の天気予報を見るくらいの程度　なら害にはならないでしょう。　けれども、なかには神経質な人がいて、　｢今日はなにか悪いことが起こらないといいんだけど｣　としきりに気にするんですね。　私にいわせると、この気にするのがよくないんです。　悪い暗示をもろに受けてします。　心のどこかでなにかよからぬことが起こらないかという不安を　抱えてしまうのです。　そして、ついてないことが起きると、　｢ああ、やっぱり｣　と、変にうなづいてしまう、これが一番いけないのです。　そんなくらいなら占いなどはじめからあてにしないほうがいいのです。　かく言う私もそのクチでした。　凝り性なので、その日の吉凶をくわしく調べて、いい日ならほっとするのですが、　悪い日は気になって仕方がない。　どことなく落ち着かないんですねえ。　悪い方へ悪い方へと想像をはたらかせたりして。　ですから、私は占いに左右される自分につくづく嫌気がさして　一切信じないことにしました。　それで占いの暗示からようやく開放されたのでした。　皆さんもほどほどになさってくださいね。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！  　　　

  2006年07月01日

• 千夏のモノローグ　　４３

    　一時期占いに凝ったことがありました。　友人がプロの易者だったこともあり、ほとんど本格的に四柱推命を　勉強しました。　よほどプロになろうかとも思いましたが、最後のところで思いとどまり　ました。　やはり易者になるということは清水の舞台から飛び降りるくらいの　一大決心が必要でした。　易者という職業は税務署では露天商扱いなのだそうです。　露天商は堅気の商売ではありません。　そこのところが、私には最後までひっかかったのでした。　ですから、易は趣味でおいておこうと思いました。　今でも赤ちゃんの命名を頼まれることがありますが、私は　絶対に礼金を受け取らないことにしております。　プロでないのだから鑑定料を受け取るいわれがないのですから。　というわけでプロの易者にならない、私なりの言い分でした。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！ 　    　　

  2006年06月30日

• 千夏のモノローグ　　４３

    　親子はよく似るものですねえ。　それもいいところではなく、悪いところばかり似るものなんですねえ。　以前から私は膝の関節炎にかかっているのですけれど、これは　母に似ました。　もちろん老人性の関節炎でして、加齢により軟骨が磨り減ってくる　のです。　今までなら湿布をすれば一日で痛みが納まったのですが、近頃では　そうもいかなくなりました。　そのうち母のように膝に水がたまって、それも通り越すと、軟骨が　完全に磨り減ってしまうのでしょうね。　そうなれば、間接が曲がらなくなり、歩行に困難をきたしますから。　それにしても、因果なことになりました。　ずうんという鈍い痛みにおそわれると気がめいりましてねえ。　余計なことまで考えてしまいます。　老化現象とはいえ、やりきれません。　こんなふうに愚痴をならべるのは、もとより本意ではないのですが、　悩ましいですねえ。　では今日はこの辺で　　Ｇood luck！ 　

  2006年06月29日

• 千夏のモノローグ　　４２

    　ブログに書き込むのはいつもなんの下書きもせずにぶっつけ本番で　やるのが、私の流儀なのですが、皆さんはどうされておりますか？　これは、ブログを初めて以来ずっとこの方法でやってきましたので、　今更変えるわけにもいかず、かといって思うにまかせられない時もありましてね。　筆の勢いにまかせて書いてはきましたが、近頃そうはいかなくなりましてね。　なかなか筆がはかどらないことも多くなりました。　そのうえタネがつきてきまして、はて今日はなにを書こうかと思案する　時間がふえてきました。　まったく遊び心で始めたこのコーナーも、私には頭痛のタネに　なりつつあるのです。　まあ、前置きが長くなって恐縮ですけれども、一頃四柱推命に　凝ったことがありました。　この占いは、詳しく出せば死ぬ時間までがわかるという脅威の　易でして。　一体自分がいつ死ぬのかと躍起になって調べたものでした。　考えてみれば、自分の死期がわかったところでどうなるものでもなし　これといって意味がないのですが。　あまり占いに凝るのも考えものですね。　では今日はこの辺で　　　Ｇood luck！  　 

  2006年06月27日

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