彩雲国物語 空の青、風の呼ぶ声/雪乃紗衣
『The Beans ザ・ビーンズ VOL.11』 掲載の番外編。『空の青、風の呼ぶ声』燕青の過去編。静蘭(清苑公子)との出会い、茶鴛洵との出会い、南老師の存在、殺刃賊との因縁、隠された過去と、今の燕青に至る始まりの物語。この話は静蘭の、清苑公子から小旋風と呼ばれる時を経て静蘭となる空白の時期を埋める話にもなる。うん。番外編を読むほどに、知っていた筈の登場人物の顔が変わっていく感じがある。リアルに考えるなら、今の彼らを知る人間は彼らの過去を知る必要な無い、知らない方が良いんじゃないのかなぁと、今回は特に思ってしまった。本編・表の話、まぁ初期設定を元に、その隙間や過去を埋めていくのが番外編。それにしても書き進められて行くのを読んで行くと、雪乃さん苦労しているなぁ。最初大まかな設定しかなかったところを掘り下げて、尚且つ存在している今に不自然無く繋がる話でなければいけないし、全体の登場人物とのバランスも有るし。大体、大まかな初期設定さえも微妙に軌道修正されて行ったりして。これも全部今に重きを置く為というか、大掛かり。「彩雲国物語」は過去を語れば語るほど話が暗く重くなって行く。今を救いとするのなら、その過去は報われて当然と思われるほどのものであり。だけど、思うに、そもそも「彩雲国物語」はこんな暗い話じゃなかったと思う。それこそ頑張りやの少女・秀麗のその人徳と努力の末のサクセスストーリー、、、つーか。深読みすればテーマは重たいんだけど、軽く読めば明るい物語。それがね~、登場人物を深く掘り下げれば下げるほど暗くどんよりとして行ってしまう。平凡じゃない人間はいないけど、幾ら物語にせよ主要人物がこれほどみんな競うように暗い過去を背負っていると言うのも、凄まじいものがある。「彩雲国物語」って暗いというよりはエグイ。明があって暗が在るんじゃなくて、表面明るい表の話を引き立たせる為に過去の暗がどんどん掘り下がって行っている気がする。 まるで登場人物の不幸の品評会? こんな事が有って、あんな思いをして、やっと掴んだいまの幸せだから、何が何でも守る つーのを納得させられる過去編群と言うか、ね。 それも主な登場人物が10代から20代と若いから、その過去の話も自ずと若くなり。彩雲国のターニングポイントは13歳か!?(苦笑)今考える13歳とは雲泥の差の老成した13歳が揃っているし。尤も昔の13歳は確かに今の13歳児よりも遙に大人にならざるを得なかったと思うけど。と言う訳で今回の燕青・清苑公子も13歳の試練の時。うん。まぁ幾つかの驚きと言うか誤解と言うか、へ~、、、そうだったのと言うか、ここに来て言葉を変えずに設定変更したな~、、、とか。一番に気になったのが南老師の風貌。今まで漠然と身軽なじーさんくらいにしか考えてなかった。勿論、彩八仙の一人なんだろうな、とは思っていたけれど、イメージと違ったな~。いや、元々南老師が彩八仙の一人だと言うのは最初から設定していたかどうかは怪しいな~と睨んでいるのですが(笑)キャラクター的にも立場的にも合っているから彩八仙で良いんじゃないの~だったりして。静蘭も燕青も殺刃族の一味みたいな書き方をされていたから、それを如何持っているのかな~と思っていたら、ふ~んそうか、と納得。ここで、静蘭は燕青よりも華奢だから体力的に劣ると言うように書かれてあって、武道の実力も燕青の方が上と描かれている。茶州に入り襲われた清苑公子を助けたのは誰か!?と言うのが、実は今までずっと朔だと思っていたんだけど、ちょっと解らなくなってしまったわ。朔の様でも在り、もしかして叔斉だったのか?と思ったり。何れにせよ、殺刃族の中に客人として放り投げたのは朔だよね、多分。燕青の隠された過去で隠し球で持ってこられたのが、生きていた燕青の次兄の存在。あれ~、作るかそれ!?今は全然その存在すら匂わせていないつーのに。でもまぁね、燕青は何処まで行っても燕青だったし、それこそ三つ子の魂100までの変わんない燕青の性格であり人柄。清苑も、その前に描かれた過去編と合わせ、何処まで行っても賢しらしい為政者の視線と厭世観と、劉輝しかないと言うのがやっぱり切ない。この時点ではまだ清苑公子、清苑と呼ばれているのが慣れなくて(苦笑)燕青が燕青で有るから尚更、清苑と書いてせいらん(静蘭)と自動変換して読んでしまう。燕青を中心に過去の因縁から殺刃族壊滅までが描かれており、最後には静蘭が無事邵可様に拾われたと書かれてあった。静蘭も燕青もこれからの十数年は癒しの時となる。で、彩八仙、一体何人出揃っているのか!?彩八仙として存在しているのが、霄太師、葉医師、南老師の3人。中に潜んでいるのが、陽月と薔君。多分藍家に一人居て、次元の間?で朔に語りかけたのが最後の一人?かな。そう、秀麗の設定も多分大幅に変わっているんだよね。で、何やかや言いながら、最近は本編よりも番外編の方が好きかも知れないと思っていたりする。