冷静沈着のお手本?
『違う、違うって、119よ!』私は父から慌てて、電話を取り上げると、119番を押した。はっきり言って、生まれて初めてだった。この番号を押したのは…今日は朝から、実家に年末の大掃除に出かけた。叔母と2人で出かけたので、掃除は順調に進み、午後3時にはあらかた終わっていた。ひと休みでもしょうかとコーヒーの用意していた時、来客があった。私がサイトをリンクしている“ピアノ職人西田絵里奈”の母親と祖父母の3人だ。1時間ほど談笑してから帰ると言うので車のところまで見送りに出ることにした。玄関を出て、2、3歩、歩いた時だった。私の前を歩いていた絵里奈ちゃんの祖父が突然、前触れもなく倒れたのだ。その時、まだ、絵里奈ちゃんの母親は家の中にいた。慌てて、呼びに帰る。と、同時に『救急車!救急車!』と大きく叫んだ。叫ぶ私の横をすりぬけて、絵里奈ちゃんの母親が裸足のまま、飛び出していった。家にいた私の父親が電話の子機を持ったまま、番号を押しながら出てきた。が、父も焦っていて、『救急車は109番か?』と言っている。『違うって!』と子機を取り上げ、電話の受話器を耳に当てると案の定、『この番号は現在、使われておりません』と聞えてきた。改めて119番を押し、息を整えた。幸い、絵里奈ちゃんの祖父はたいしたことには至らず、その後、運ばれた病院で倒れた時に受けた擦り傷の治療を終えると、入院もせず、家に帰れた。もちろん、大変なことになっていたのなら、この日記も書きどころではなかったのだが…私の母は地方公務員で消防局にもいたことがある。たまに遊びに行くと消防本部で119に答える救急隊員のきびきびとした対応が垣間見られた。全く冷静、沈着とはこのことだ。今日は身を持って体験した。119番に電話をする人は大体焦っている。父が簡単な電話番号を度忘れしたほどである。私もかなり焦っていたと思う。だが、その電話の相手は恐ろしいほど、冷静だ。隊員の問いに一つ一つ、丁寧に答えていく。『救急ですか?火事ですか?』『救急です』『では、あなたの名前をお知らせください』『えっ、私の名前?』関係ないと思いながらも、答える。『どうされましたか?』『親戚が倒れたんです。今、道に倒れてそのままです。』『では、その方の名前を教えてください』質問されることにとにかく、答えていく。『場所はどこですか?』私は実家の場所を言う。『では、ただいまからそちらに救急車を回しますので…』その言葉でようやく落ち着いた。『早く来て下さいね』と頼み、電話を置いた。そして、寒い外で倒れた絵里奈ちゃんの祖父にかける毛布を持って外へと急いだ。私にとって初となる119番だった。119番と110番だけはできたら一生、お世話になりたくないとつくづく、思った。 急に冬らしい天候になりましたね。体にはくれぐれも過信せず、気をつけて下さい。蓮4044