グラスは3つ
今日は亡き祖父の誕生日。決して強くはなかったが、お酒は大好きだった。お酒と言うより、誰かとワイワイと杯を交わすのが好きだったのだろう。「○○さんからお電話です。」パートのおばさんから電話がまわされると、その苗字を聞いただけで、一瞬、反応する祖母。平静を装っているようでも、受話器を取る背中が喜んでいる祖父。「どちらに?」祖父が受話器を置くと、間髪入れずに聞く祖母。「いや、ちょっと横になる。」そう言いながら立ち上がり、居間を後にする祖父。「○○ちゃん、おじいちゃん、絶対に出かけるから。」祖母は私にそう言うと、「やれやれ」というような顔をした。しばらくは、祖母も目を光らせているのだが、夕方の慌しさに紛れ、祖父はこっそりと出かけてしまう。(いや、本当に抜け出すのが上手かった。笑)そして夜も更けた頃、祖父はご機嫌になって帰宅するのである。酒癖は決して悪くない。他人に迷惑をかけるようなお酒でもなかった。ただ、足元が危うくなるので、怪我をすることがあった。たんこぶに青あざなんて日常茶飯事。どこかで転んでしまったようで、帰宅した時に顔が血だらけということもあった。祖父には、どこでぶつけたとか、転んだとか全く記憶がない。翌朝、帰宅時の様子を話すと、「そうやったかのぉ~」とか、「どおりで、痛いはずやのぉ~」とか、実にあっけらかんとしていたものだった。我が実家にも賑やかな時期があった。呼び出したり、呼び出されたりした仲間の多くが先に旅立ち、「酒飲みは好かん!」と言いながらも、訪問者をもてなし、相手をしていた祖母も先に旅立った。祖父は寂しかったのかもしれない。今頃、空の上で大宴会・・・なんて。ご機嫌な祖父の顔が浮かんできた。