Paul, the 心は日本男子
新宿読売文化センターでボディワーク入門の講座。遠方から参加してくださる方があり、しかも拙作の本を持っていらしたのを見て感動する。もう一人の新しい参加者の方も「ずっとロルフィングに興味を持っていたんです」と言ってくださった。横浜から新宿に移ってきたIちゃんは先日のパーティーがきっかけでデート、ロルファー志願のIさんはブログを立ち上げて書き始めるという。皆さんのフローに刺激される。私もがんばらねば。先週からずっと体調が良くなく、今日も微熱が下がらず。ダルいなあ、と思いながら新宿の歩行者天国を歩いていたら、190センチ近くあるガイジンがサングラスをして走っている。あれ、クライアントさんだったポールじゃない??ポールー!と声をかけると、ミッションインポッシブルのトムクルーズみたいな格好良さでサングラスを外して「おー、ひっさしぶり、今からパフォーマンスするから見ていってよ」と元気な声で日本語が返ってくる。ポールはずっと、横浜の山下公園でパフォーマンスをしていた。ところが横浜市のポリシーが変わって、山下公園を追い出されてしまった。セッション中にそれを聞いて心を痛めたが、本人は「いいんだよ、自分が転機にきているのは分かっている、いいきっかけだったよ。大道芸はきっついしなー」と流暢な日本語で淡々と話してくれた。前向きだったので安心した。時々連絡は取り合っていたが、今日の新宿での予期せぬ再開である。驚いた!武道を学びに日本に来て16年、話せるばかりか漢字の読み書きもできる。因果応報なんて言葉もフツーに使うので最初は驚いたが、ジュードロウにエミネムをちょっと足したような外見からは想像ができないくらいに中身は日本男子である。礼と仁義を重んじる好男子だ。パフォーマンスを始めて数分、すぐにポールは人の輪に囲まれる。人をひきつけるのは、彼の持つ太陽みたいな明るさとパワーだと思う。抵抗なく観客をパフォーマンスに引き込み、参加させ、笑わせる。大技のチェーンソーとファイヤーバーまでにたくさんの笑いの小技(もちろん危険を伴うものだが)で観客の注意をひきつけていく。最後の見せ場、チェーンソーにエンジンがかかる。アスファルトをこする。火花が散る。オイルを足したファイアーバーが、めらめらといっそう燃え上がり陽炎みたいだ。「あぶねーから拍手で応援してください」というと、大きな手拍子が起こる。知らないもの同士が、ポールのパフォーマンスに導かれて一体になる。隣の観客の身体が硬く止まり、緊張が伝わってくる。チェンソーを放り、投げる!ファイアーバーが、空中で回る!まったく重さの違う小さなボールが間に挟まれるので、バランスを取るのがひどく難しいはずだ。one,two,threeとtenまで数える間も手拍子は止まず、終わった後は大盤振る舞いの千円札がぼんぼんポールの帽子に入れられる。「私たち、大道芸人は、みなさまのご好意だけで、生活しています。どうぞ、お気持ちを。なるべく、軽くて折りたたみができるものを」なんて冗談にお願いしていたが、気持ちよく千円札を出しているのが人々の表情からも判った。「ねえ、いくら入れれば良い?」「やっぱり千円でしょう」なんて会話が背後からも聞こえてうれしくなる。あれ、私の知り合い、なんて言いたくなってしまう。ポールとは、セッション時間をフルに使って、いろんな話をした。歳が同じだし、お互いに明日をも知れぬ自由業ということもあって、人生について、生き方について、たくさん話した。彼をよく知っているつもりでいたが、今日の息を飲むパフォーマンスを見せられて、私が知っていたのは彼の一部だったんだなあと思った。身一つで生計をたてているポール。誰にでもできることじゃないし、努力なしにできることじゃない。いいものを見せてもらったよ。I am so damn proud of you,dude.※新宿伊勢丹と、三越の間でパフォーマンスをしています。千円札を握って見に行ってあげてください。力いっぱい応援してあげたいナイスガイです。