☆<消費増税>引き上げる?取りやめ?長所と短所を検証!
☆4~6月期の実質GDPが3期連続のプラス成長を確保したことを受け、政府は消費増税の議論を本格化させるが、来年4月に予定される税率5%から8%への引き上げについて慎重論も出始めている。引き上げた場合と取りやめた場合、それぞれのメリットやデメリットを検証した。 消費税率を引き上げることの最大の意義は、財政の健全化を進めること。国の借金残高(国債、借入金、政府短期証券)は6月末で初めて1000兆円を超えた。GDPの2倍近い水準は先進国では最悪だ。財政を圧迫する最大の要因は社会保障費の増加。急速な少子高齢化の進展で、年金、医療費など社会保障費は年1兆円規模で増加している。 政府は消費税率の1%引き上げで、約2兆7000億円の増収につながり、増収分は持続可能な社会保障制度維持のために使うとする。甘利明経済再生担当相は7月30日の記者会見で「社会保障改革と増税とは密接に組み合わさっており、まったく引き上げないという選択肢はない」と増税の必要性を訴えた。 一方で、税率を引き上げた場合の懸念材料は、景気を冷やす恐れだ。税率引き上げは家計への負担に直結する。大和総研の試算では、夫婦どちらかが働く年収500万円の4人家族の場合、消費税が10%となった後の2016年には、5%の11年に比べ、消費税負担が年間16万7000円増える。厚生年金の保険料増加など消費税以外の負担増を含めると年間31万~32万円に達し、上向く消費の足を引っ張る可能性もある。1997年4月に消費税率を3%から5%に上げた際は、同年4~6月のGDPは、個人消費や住宅投資の落ち込みの影響で年率換算で3.7%減と大幅に落ち込んだ。 安倍晋三首相は、さまざまな経済指標を踏まえて10月中旬に予定される臨時国会開会前に最終的な増税判断をする方針。消費増税法には、景気悪化時に増税を停止できる「景気条項」が存在するため、首相が凍結する可能性も指摘される。 凍結した場合、景気の底割れ懸念は遠のく。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「景気は緩やかな回復を続けると見込まれ、(増税停止で)腰折れのリスクは当面小さくなる」と指摘する。しかし、日本の財政健全化が遅れるとの懸念が市場に広がり、国債の投げ売りや、それに伴う金利上昇、株価の下落につながることも予想される。みずほ総研の高田創チーフエコノミストは「これだけの財政赤字がありながらも日本の国債が信用を維持しているのは消費税の増税余地があるからだ」と指摘。麻生太郎財務相は「増税は国際公約になっている。(予定通り)上げなかったときの方が大きな影響を受ける」と強調している。