ゆうれい
私はゆうれいがこわい。68才にもなって、ゆうれいがこわいだなんて、馬っ鹿みたいだと思う。でも、ゆうれいなんか、この世にいないと知ってはいてもこわいという恐怖感は、消えない。特に、夜、ひとりで留守番はできない。ゆうれいが、そこここにいる気配がする。夜になっても電気を煌々と点けて、明るいと、何でもない。しかし電気を消した途端に恐怖が襲う。真っ暗でも、家のどこかにだれかがいれば少し、恐怖心が軽減される。暗い中でちょっとその辺がぼうっと白いとすぐに電気を点けて何が白いのかを確かめずにはいられない。特に、睡眠中の暗い部屋で、もしこの目を開ければ、私のそばで私の顔を、じっとのぞいている幽霊がいるのではないかという恐怖心が取れない。このバージョンが一番恐い。と、ここまで書いて思いだしたことがある。私が小学生の時だったある夏の暑苦しい夜のこと。真夜中にふと寝苦しさに目が覚めた。真っ暗の中目の前、50センチほどの上に何か黒いものがあった。どきっとして目をこらすとばさ~~っと長い幽霊の髪が浮かんでいた。私は恐怖に駆られて思わぬ行動に出た。反射的に手を伸ばし、ムズと髪をつかんだのだ。ドサッ 髪が、私の胸に落ちた。声も凍りついた。「何すんの~」と姉のねぼけた声。な~んだ、姉も目がさめて、隣でぼんやり座っていたのだ。あんなに恐かったことはなかった。あああ恐かった~~~これだ、これが私のトラウマになっている。今分かった。