一風変わった、今年の[23 NISAN] (1)
イ~ルミウチ、ニッ、サン、クトゥル、オルスン~♪イ~ルミウチ、ニッ、サン、クトゥル、オルスン~♪(ド~レミ、レ、ド、レ、ミ、レ~ド~♪の節で)このところテレビから毎日のように聞こえてきて、耳について離れないこのメロディー。トルコ語で「23 NISAN, KUTLU OLSUN !」とは、「4月23日おめでとう!」の意味。先日16日の日記でもチラと取り上げたが、今日は国民の祭日「チョジュック・バイラム(子供の祭典/子供祭り)」。正式には、「23 NISAN ULUSAL EGEMENLIK VE COCUK BAYRAMI(4月23日国民主権と子供の祭典)」という。国民主権と子供とがなぜ結びつくのか、不思議に思われる方も多いと思うが、1920年4月23日のトルコ大国民議会の開会を記念し、子供好きでも知られていたアタトュルクが、この幸ある日を「子供たちへの贈り物」として祭日に制定したのである。今週一週間は、そのためバイラム・ハフタス(祭りの週)として、授業内外でチョジュック・バイラム(子供祭り)にちなんだプログラムが企画された。例えば、2年生である上の娘の授業では、再び第1次世界大戦後の共和国成立の歴史をおさらいし、なぜチョジュック・バイラムの日が生まれたか、というところまでを習う。準備クラスに通う下の娘は、『4月23日』の歌を習い覚える。校舎や廊下、教室はトルコ国旗や様々な飾りで埋め尽くされる。先の国旗掲揚運動(クルドの春祭りネヴルーズに、トルコ国旗がクルド系の若者によって焼却された事件の後、トルコ全国で沸き起こった国旗掲揚プロテスト運動)の影響か、今年はトルコ国旗が生徒一人一人にまで手渡された。バイラム前日の金曜日の終礼では、この国旗を全員が手に手に持って国家斉唱を行い、自宅へも持ち帰って飾るようにとお達しがあった。ハイライトは、バイラム当日である4月23日に近くの4ツ星ホテル(毎年5ツ星だが、今年はなぜか格下げ)で催される、チョジュック・バロス(子供ダンスパーティー)。午後1時半開場で2時から始まるこのバロに、今年は下の娘も揃って参加。下の娘のドレスや靴は姉のお下がりだが、清楚で上品な白がよく似合って、娘自身も満足そう。上の娘のドレス(というか、スパンコール付きの白いビスチエ+パンタロンのセット)も昨年来のものだが、娘の雰囲気にはよく似合う。経費削減で、今年はクアフォル(美容室)にも連れて行かず、見よう見まねで自分で髪の毛もアレンジしてやり、昨日のうちに髪留め屋で購入しておいた髪留めでアクセントをつけた。子供たちを会場に残すと、もう何ヶ月も会っていなかった友達のユリ&ヒロ夫妻と落ち合って、ビーチパーク内のピデジ(ピデというトルコ風のピザ専門店)で腰を下ろす。社交好きで、あちこちのレストランやカフェ、出掛けるべき場所を知っているヒロさんの案内してくれる場所は、ほとんどハズレがない。ピデジというと黒海地方出身者の経営する、あるいは名前にカラデニズ(黒海)をつけている店が多いのだが、ここもそうで、私の注文したマンタルル&カシャールル(マッシュルーム&カシャールチーズ入り)は、最近出会ったことのない美味しさだった。その後、ビーチパークの遊歩道を軽く散歩すると、あっというまに4時のお迎えの時間に。子供たちを引き取って、さあとりあえずここを出ようかという時、もてなし好きのヒロさんが突然、「どこかへ出掛けよう。そう、クンドゥ方面はどう?」と提案してきた。クンドゥといえば、昨年10月に、花卉栽培業者で働く日本人の知人を訪ねるため、初めて足を伸ばした時以来。ここはトルコ版ラスベガスか?(といっても、ラスベガスに行ったことはないので、よく分からないが・・・)と思わされる奇抜なデザインの大型リゾートホテルが立ち並び、中でも「顔」のひとつである「クレムリン・パレス・ホテル」に、先日ユリ&ヒロ一家が泊まってきたばかりだというので、大方、その近くのホテルで見学がてらお茶でもするのではないかと思ったのだ。「じゃあ、一度家に帰って服を着替えさせないと」ユリは、この後の行動もあらかじめ考えて、娘のユキちゃんの着替えをちゃんと用意してきていたが、私はパーティーが終わったらまっすぐ家に戻るつもりだったので、当然娘たちの着替えなど頭になかった。すると、ヒロさんは「着替える必要なんかないさ。その方がずっといい」という。夫も、そうだそうだと、ヒロさんに加担し、結局着替えも、温かい上着を用意する暇もなく、我が家の車を置いてヒロさん一家の車に全員が乗り込むと、そのままクンドゥへ向けて出発となってしまったのだった。車は、ララ地区を抜け、新しく整備された観光道路を抜けて、建設ラッシュ中のリゾートホテル・エリアに入った。窓の外には、規模ばかり大きいがなんとも悪趣味の「豪華」ホテルが、軒並み新登場していた。口ではなんとも形容しがたい「豪華さ」である。例えば、爽やかなスカイブルーの空や海をバックに聳え立つ、全体がくすんだ赤茶色の巨大な塊。その上には、これまた巨大な金色のドームが載っていたりする。最後に、クレムリン・パレス、ヴェネチア・パレス、トプカプ・パレスの前を通り越すと、突然アスファルトが切れて、車はなぜかそのまま田舎道へと入っていった。(つづく)