『KAHRAMAN INEKLER (HOME ON THE RANGE)』を観る
アンタルヤでも2週間ほど前から公開になっている、最新(?)ディズニー・アニメ『KAHRAMAN INEKLER (HOME ON THE RANGE)』に、娘ふたりを連れて観に行った。本当は、今日も一日どこにも行かず、家でゆっくり過ごしたかったのだが、来週末まで上映が続いているものかどうかハッキリしなかったので、頑張って重い腰を上げたのだった。シネマ(映画館)は近所のミグロス・ショッピングセンターの中にあり、すぐ横にオープン・カフェや本とCD類を扱う『D&R』などもあれば、ついでにウィンドウ・ショッピングをしたり、スーパーマーケットで買い物をしたりすることもでき、なにより歩いて行けるので非常に好都合なのだ。大抵は、事前に同じマンションの年の大きな子供たちを誘い、チケットだけ買ってやって、劇場の中には子供たちだけで入らせ、親たちはその間サロンで待ったり、買い物を済ませたりしているのだが、昨日の夜になって急に決めたので、今日は子供はうちの娘ふたりだけ。で、仕方なく私が付いて入ることになったのだった。普段、ディズニーの世界にもアニメの世界にもまったくと言っていいほど関心のない私にとって、というわけで、子供用のアニメ作品を劇場で観るのは、実に自分の子供時代以来(!?)のことではないかと思う。『KAHRAMAN INEKLER』とは、訳せば『英雄の牛たち』というところだろうか。日本未公開(?)なのか、邦題は決まってないらしい。原題は『HOME ON THE RANGE』で、『牧場の我が家』とでも訳せるだろうか。この原題から類推できるように、舞台は、古きよき時代のアメリカ(中西部?)であり、小さな小さな牧場『CENNET BAHCESI (LITTLE PATCH OF HEAVEN)』(天国の畑)であり、果てしない荒野と、田舎町である。登場人物は、牧場に住む動物たち(2頭の牝牛、年老いたヤギ、豚の親子、たくさんの雄鶏に雌鶏、ひよこたち)と、そこに新しく連れて来られた巨大な牝牛、シェリフの飼い馬の他、ほとんどが動物たちであり、人間は牧場主である老婦人の他は、せいぜいシェリフと賞金稼ぎのリコ、牧場荒らしのスリムが前面に出てくるくらいだ。一見してディズニー・アニメと思わなかったほど、この作品のタッチは独特で、リアリズムから極力離れたような、誇張され、風刺的に描かれた各キャラクターが際立っており、昔のアメリカン・アニメの雰囲気をどことなく湛えているようにさえ思えた。私は昼寝でもするつもりで一緒に入ったのだが、結局最後まで愉しんで見てしまった。時には小さな笑い声を上げて。3頭の牝牛たちの、勇気と冒険と友情がさりげなく描かれているし、人間世界の悪や冷たい現実に対する動物たちの正義感や果敢な奮闘ぶりは、まるで大人世界に立ち向かう子供の純粋な心と行動を表現しているようで、気持ちよく感情移入できるし、当然のようにハッピーエンドで終わる後味が爽快で心地良い。いまどき当たり前の3Dも使わず、一見まことに地味な作品なのだが、「ディズニー最後の良心」といわれる(らしい)ように、この作品には心温まる、古きよき精神がある。幼いお子さんにでも安心して見せることのできる、なかなか優れた「小品」という気がした。ちなみに、全編トルコ語吹き替えはいいとして、挿入歌までトルコ語に吹きかえられているのには、少し驚いた。途中何度か挿入される、そしてラストを飾るメインテーマ『LITTLE PATCH OF HEAVEN』も、“CENNET BAHCESI, BURASI~♪”(天国の畑、それはここ~♪)と、見事にトルコ語に吹きかえられていた。昔懐かしいカントリー・ソングを思わせる美しいメロディーのこのメインテーマ、できればオリジナルで聴きたかったなあ~。