南トルコ・アンタルヤの１２ヶ月*** 地中海は今日も青し

[トルコ的生活/わたし的生活] カテゴリの記事

全143件 (143件中 101-143件目)

< 1 2 3

• 義兄の死～事の真相～神の裁量

  一日の間に、イスタンブールでの仕事を終え、イズミールに立ち寄り、夜11時発のバスに乗った夫が、早朝６時に我が家に辿り着いた。綱渡りのような日程を、すべてギリギリのタイミングで上手くこなし、電話で娘たちに約束した通り予定ぴったりに到着。すやすやと眠る娘たちの脇に滑り込み、添い寝をする夫。娘たちが気がつき、大喜びで首っ玉に齧りつくのを楽しみにしているのだ。子供たちへのお土産を披露し、日本食などの一杯詰まったバッグを空にすると、家族全員で朝食のテーブルを囲む。私は夫好みのメニューを用意した。昨夜作っておいたほうれん草とパンジャル（テンサイの葉）の煮物に卵を落としてユムルタル・ウスパナックにし、トマトとマッシュルームのソテーも作った。食事が一段落して子供たちがテーブルを離れると、夫は、義兄の亡くなる直前の様子、死の原因などについて、家族や親戚たちに聞いた話をもとに、ぽつりぽつりと話して聞かせてくれた。・・・・クルバン・バイラムに合わせて郷里に帰った義兄。カルカンを出た時から、すでに身体の具合は相当悪くなっていたらしく、これが最後の別れという覚悟をしていたものらしかった。しかし、なぜか母親のところにも妹のところにも顔を出さず、安ホテルや親戚宅などを泊まり歩いていたらしく、そのために母も妹も随分悲しんだという。3番目の兄のところに立ち寄っては、俺はもう終わりだからと、遺書のことを口にしたり、夫に対し過去にしてきた酷い仕打ちについても、「さんざん悪いことをした俺に対し、あいつは仕返ししたことはなかった」と自らの過去を反省するような言葉を残したという。結局、母や妹の顔も見ないまま郷里を発った義兄は、ますます具合が悪化していたにもかかわらず、病院に立ち寄りもせず、アンタルヤまでの途中で一泊して休憩することにしたらしい。ベッドに横になり、ふうっと力を抜き、手を頭の近くまで持ってきたところで、心臓が停止したのだった。（「車が滑って」というのは、私の単なる聞き間違いだった。泣きながら伝える義妹の声と私の動転もあって、「カルピ・ドゥルドゥ」（心臓が止まった）がなぜか「カイドゥ」（滑った）と聞こえたのだった）ベッドメイキングの時間になっても起きてこない義兄の部屋に入ったホテルの人間によって、義兄の遺体は発見された。車の中からは、飲みかけのラク（ブドウの蒸留酒で焼酎並みの強い酒）の瓶と紙コップが発見された。・・・・夫が郷里に着いたのは、深夜2時半は過ぎていたという。アダナの空港から長距離バスの通る国道までタクシーで行き、そこで1時間近く待ったが、1台もバスは通らない。結局タクシーを呼んで、８０ｋｍはある郷里までの道を飛ばしてもらったという。母の家の前に着いた夫は、しかしすぐには家の中に入れなかったという。横に止められた白いバンの、その中に兄が横たえられているような気がして、そこから離れられなかったという。家族にも誰にも気付かれないまま、泣きながら5時頃まで玄関先に佇んでいたのだという。母も妹も、家族全員が、夫が来たことで随分安心したに違いない。とくに妹は、夫の顔を見るまで、葬儀は一体どうなるんだろうと、心配で仕様がなかったらしい。心理的にも経済的にも、家族が一番頼りにしているのが、夫だった。訃報が入った時点で、取るものもとりあえず母の家に駆け付けた家族の面々は、葬式代どころか、帰りのバス代にまで事欠く状態だったのだ。イマーム（イスラムの僧侶）への謝礼、墓の準備、弔問客への食事代、家族の交通費・・・全てをつつがなく手配・準備できたのも、夫が間に合えばこそだった。墓穴の中に遺体を降ろす役は、夫がやったという。「重かったなあ・・・」と思い出しながら、夫がつぶやく。酒好きな兄のために、車の中から出てきたラクの瓶を棺に一緒に入れようと提案して、皆んなに反対されたと苦笑い。自分のことを、もうひとりの兄に語ったという言葉を伝える時には、涙もろい夫のこと嗚咽を押さえることができなかった。・・・・「不思議だなあ、と思うんだ。説明しても分かってもらえないかもしれないけれど・・・」夫が、兄の死にタイミングを合わせたかのように帰ってきたことも、偶然といえば偶然である。実は２５日から4日間の臨時の仕事があって、それを終えて２９日の便に乗ろうと考えていたという。しかし、なぜだかその４日間が無駄なものに思え、２６日の便に運良く空席も出て、早く帰ってくることができた。私からの電話で兄の訃報を聞かされたとき、「やっぱりなあ～」と夫がつぶやいたのは、何かがあるという予感がしていたからだったという。このような偶然に恵まれたことのない方々には、本当の「単なる偶然」にしか思えないだろうと思うが、夫は昔からこのような「必然」のような「偶然の重なり」をよく経験している人間である。私自身は、霊感や予知能力などとは無縁の鈍感人間であるが、なぜだか子供の頃から、常ならざる現象を無条件に信じていた。「ひょっとしたら、お兄さんも、ババ（夫のこと）が来るのを待ってたんじゃないかなあ。具合が悪くていつ死んでもいいくらいだったのに、神様が何日も持たせてくれたんだよ。きっと」夫は、葬儀のための臨時出費についても説明した。私にも、そのことは気掛かりのひとつだった。夫にしても、葬儀やもろもろの準備にかかる何十万円もの大金がいつもポケットに入っているわけがない。お世話になっている取引先の会長さんが、夫の出発間際に、仕事の前払い金数十万円を、ポンと先払いしてくれたのだという。その一部を使わせてもらうことで、イマームへの謝礼も払い、３００人にものぼる弔問客への食事を準備し、バス代のない家族にチケットを買ってやることができたのだという。それもまた、偶然というには不思議で有り難い巡り合わせである。人の運命を知り、人と人との巡り合わせを導き、その時々で本当に必要としているものを与えてくれる、このような超越的存在を神と呼んでいいのなら、今回の不思議な偶然にも、きっと神様の裁量が生かされていたのだと、そんな気がしてならない。

  2005/02/01

• 

  トルコのオンライン書店＆県別読書成績表（画像付き）**追記

  日一日と気分が軽くなっている。久し振りに太陽が顔をのぞかせた今日は、まるで春のように生暖かい陽気。肩が凝るほどパザールで買い物をして、汗をかいた。洗濯物もいっぱい干した。チョコレート・ケーキは焼かなかったが、トルコ版チョコパイを買ってきて、子供たちと一緒に全部食べ尽くした。ネットで注文した本が来るのを、今か今かと待っている。４日以内には着くというので、早ければ明日には届くかも。・・・・オンライン書店で本を購入するのは、実はこれが初めて。日本国内であれば楽天ブックスのお世話になることもあるかもしれないが、海外在住の身では、利用できるオンライン・ショップも限られる。海外発送となると、場合によっては書籍の値段を発送料が上回る。日本の住所にという手もあるが、国内出張の多い夫が無事に受け取れるとは限らない。というわけで、私がオンライン書店を利用するのは、専ら検索目的に限られていた。急にその気になったのは、トルコのオンライン書店の存在を知ったから。いや、ここまでインターネットの普及しているトルコで、ないわけがないのだが、必要もないので本気で探したこともなかったのだ。なにしろ本は、内容を仔細に検討してからでないと、なかなか買えない人間である。日本の作家のものなら、大体内容の想像がついても、トルコ語の本となると、まずは手にとってみないと判断がつかない。今回は、欲しい本があらかじめ決まっていたから、その点での迷いはなかった。つい最近、ストラボンの『Geography(Geographika/地理学、地誌)』を読んでみたくて、日本の代表的書店のオンライン部門を徘徊してみたのだが、日本語で読めるものといえば、飯尾都人氏の訳になる『ギリシア・ローマ世界地誌（全２巻）』（龍渓書舎）のみらしく、これがなんと３５０００円という高価（豪華？）本。では英語版でと思い、いろいろあたってみると、ハーヴァード大学出版会の『LOEB CLASSICAL LIBRARY』シリーズで７巻の分冊で出版されていることを知った。これなら１巻が２０ドル少々で、しかも私の読みたいアナトリアに関わる巻だけに絞って購入が可能。これだけは例外的に、日本の住所宛に宅配してもらおうかと考えていたところ、幸いにもこの分野での専門家artaxerxesさんから、トルコ語版を紹介していただくことができた。先週の金曜日。支払いの関係で繁華街まで出掛け、ついでに行きつけの書店を覗いて、早速この本のことを聞いてみた。すると、聞いたことがないという。ストラボンの名も知らないというので、古代の地理学者で著作は「古典」に相当すると説明すると、「世界の古典」という棚に案内してくれたのだが、そこにあるのはゲーテなどの文学作品のみだった。書名と出版社が分かれば取り寄せするよと言うが、手の届かない値段だったら困るので、とりあえず辞退する。その書店の階下にある大学書籍専門書店にも立ち寄って聞いてみるが、結果は同じ。地元アクデニズ大学の人文科学部には歴史学科もあるはずなのに、歴史を学ぼうという学生たちは一体何を読まされているのだろうと、書店のオヤジ相手にしらふで管を巻いた。自宅に戻るとすぐ、トルコ語の検索エンジンでその本『ANTIK ANADOLU COGRAFYASI』を探してみたところ、ヒットしたのが、今回利用したオンライン書店である。住所から察するに書籍問屋らしく、２０ＹＴＬ（約１５５０円）という値段も結構安く感じたが、それが３０％オフで１４ＹＴＬ（約１１００円）。配送料の４ＹＴＬを足しても１８ＹＴＬ（約１４００円）というお買い得価格。偶然といえば偶然だが、この注文を済ませた翌日の『Hurriyet』紙金曜版に、トルコのあるネットショップ創業者の物語が載っていた。この会社Ideefixeは、記事の中で“トルコのAmazon”と表現されていたが、書籍からスタートして現在はミュージックＣＤ、ＤＶＤ、パソコン関連用品、携帯電話、健康器具まで取り扱うトルコのネットショップ界の草分け的存在らしい。ただし、私が目を惹かれたのは、ネットショップ業界の裏話や創業者の成功譚なんかではなく、金曜版のトップに掲載されていた、この地図である。（２００５年１月２９日付『Hurriyet』金曜版より転載）この地図は、この会社の書籍販売実績を県（地方）別に表わした「読書成績表」なるものらしい。写真ではよく見えないかもしれないが、ブルーが「星付き優」、紫が「優」、淡い紫が「良」、クリーム色が「中」、オレンジが「可」、濃いオレンジが「不可」である。ご覧いただければ分かるように、経済格差地図にも見まごう、完全なる「西高東低」型の「読書地図」となっている。例えば、イスタンブールは「星付き優」県、アンカラが「優」県、アンタルヤはイズミールやブルサ、エディルネ、キュタヒヤ、エスキシェヒルなどと並ぶ「良」県に含まれる。一方アナトリア中東部は、ほとんど「可」県と「不可」県から成り立っている。この結果は、家庭でのインターネットの普及率やクレジットカードの保持率との関係にも左右されるだろうから、そのまま読書人口や読書量を表わすものではなかろうが、ひとつの興味深い統計ではある。まあ、トルコのことを少しでもご存知の方にとっては、とりたてて意外性はないかもしれないが。常日頃、アンタルヤを文化後進都市と断じている私は、アンタルヤの位置がクリーム色かオレンジ色にでも色塗られていたならば、快哉を叫んでいただろうに。「ほ～らね。やっぱり！（ザマアミロ？）」と。・・・・ちなみに、楽天ブックスでトルコの書籍は扱ってなかろうから、紹介しても楽天さんの不利益にはならないだろうと思う。私の利用したオンライン書店は、www.kitap-net.com“トルコのアマゾン”ことIdeefixeは、www.ideefixe.comである。とはいえ・・・・ちゃんと届けてもらえるか、クレジットカード・ナンバーが途中で盗まれたりしないか、それがちょっと心配。トルコのオンライン・ショップをよく利用しているという方、信用度はいかほどに？・・・・その２日後（火曜日）。朝メールを確認したら、当の会社から「発送しました」の連絡が来ていた。では明日ごろかな、と思っていたら、午後になってカーゴが到着。無事に受け取り！早速今日は外出にも持って出掛け、夫の用事が終わる間、あちらこちらのページを開いて拾い読み。原文が英語版なのかギリシャ語版なのか、それとも他の言語なのかは分からないが、私にもすらすら読める（もちろん、多少分からない単語はあるが、それは飛ばして）口語調の文体が意外。格調高い雰囲気があまりなく、庶民的とさえ思える言葉使いは、原文に忠実なのか、あるいは訳者の語彙不足からくるものか？古代の地名、都市名、人名ばかり（当たり前だが）なので、分からない名前が続くと少々辛い。訳者からの添付資料として、一部表紙に使われている古代アナトリアの地図を完全な形で載せてくれるとありがたいのだが、贅沢だろうか・・・。しかし、言語や政体などの他に、時おり植生や当時の栽培作物などにも触れてあるのが、地理好きな私には嬉しい。しばらくは、これで愉しめそうだ。

  2005/01/30

• アンタルヤで地震＆津波の恐怖！？

  日曜の深夜、例によってＶＣＤで映画を観ていたところへ、その揺れは始まった。私の目の前にあった鉢植えのグリーンや木製ブラインドが大きくゆらりゆらりと揺れ始め、いつもの地震より少しばかり大きい揺れだと分かる。地震になると、１０階（日本式でいうと１１階）にある我が家では、建物全体が大きくゆっくりと揺さぶられるような感じがする。この揺れがどこまで大きいものか。身じろぎもせず自分の身体で確かめる。真夜中とあって、子供たちはぐっすり眠っている。これ以上大きくなった時、どうするべきかと瞬時に考える。まもなく揺れはおさまり、ホッとして映画の画面に目を戻した。震度は２、ないし３くらいだろう。翌日、義妹からお見舞いの電話をもらった時、テレビでは２．５（アンタルヤ）と報道していたと聞いた。また、本日の新聞記事によれば、揺れたのは時間にしてたった２０秒のこと。震源地は、カシュ（アンタルヤの南西にある町。直線距離にして約１００ｋｍ）の３２ｋｍ沖の海底で、マグニチュードは５．５、地中海沿岸地方を震源地とする地震としては史上３番目に大きい地震であったという。実は、アンタルヤは小さい地震なら頻繁にある方だと思う。昨年も、アンタルヤ沖を震源地とするマグニチュード４．５くらいの地震があり、町の中心にある県庁の特別管理局の高層ビルの柱や大学付属専門学校の壁、アパルトマンの壁などに亀裂が生じたりして、大きな問題となった。小さな渓流の多く走る岩だらけの土地に、１５階建て以上の高い建物を建てること自体が、トルコの建築技術から言えば危険なことだが、実際には我がマンションも含めて１０階建て以上、１５～６階建てにもなるマンションがゴロゴロしているのだから。今回の地震はマグニチュード５．５とはいえ、日本と計測の機械や基準も異なるだろうから、実際にはもっと規模が小さい可能性は高い。が、スマトラ沖地震における津波の映像やその甚大な被害の記憶がまだ生々しいうちに起きただけに、周辺住民の間ではかなりのパニックが生じたのだそうだ。家を飛び出した住民たちの多くが、津波が来るのではという恐怖感から、後ろに控える山地へと車で逃げたという。山へ向かわなかった人々も、家屋倒壊の恐怖から、戸外や車の中で夜を明かしたりしたという。幸い、この地震による死傷者はひとりも無し。倒壊した建物もなかったようだ。他国で起きた災害とそれへの対応から学び、地震や津波への心の準備ができるようになったことは良いことだが、パニックに陥らないこと、そしてそれ以前に、耐震性の高い建築技術を導入することがトルコの場合は先決だろうとは思うが・・・。それにしても・・・・我が家もそろそろ本格的に避難袋を用意しておくべきだろうか。いざ大きな地震が襲えば、１０階から降りて逃げのびるまでに建物の方が倒壊してしまいそうではあるが・・・。建物の下敷きになることをあらかじめ想定して必要なものを用意するなんて、楽観的な私には、なかなか想像するのも難しい。こちらをご覧の皆さんは、避難する場合、被災した場合の準備、何かされてらっしゃるのだろうか・・・？

  2005/01/25

• クルバン・バイラム（犠牲祭）回想録・２

  ●３年目（２００４年）　夫とともに迎えるクルバン・バイラムは初めてのこと。といっても、実家に戻って親戚めぐりをするのでもなければ、クルバンを切るわけでもなく、まるで外国人のように周囲の浮き立つ様子を傍観しているだけの私たち。　天気も良く、朝から後ろのアパルトマンでクルバンを切る様子を見学させてもらった。　毎年のように羊やヤギを切っている彼らは、肉屋並みの器用さで皮を剥ぎ、解体していく。私は後でルポルタージュでも仕上げるようなつもりで、その様子を写真に収める。　その後で、近所に開設されているクルバンの販売所、兼屠殺場の見学に赴いた。　アンタルヤの各地区にひとつは、このような販売所兼屠殺場が設けられていて、クルバンを切るのはこのような指定の場所と決められている。　新興住宅地であるこの地区には、今年新設されたものらしい。　屋根付き市場のような仮設の建物が２棟続きで建てられており、建物の周囲には、囲いの中にクルバン用の羊やヤギが集められている。　申込所の方へと足を向けると、デジカメを手にした私の姿を見て、なぜか日本からの取材の人間と思ったらしく、この施設の責任者から挨拶され、色々と説明を受けることになってしまった。子供連れの取材もないだろうと思うのだが、日本人というだけでお客さま扱いである。（しかし、残念ながら、説明された内容については、まったく思い出せない）　まるで屋根付き市場だなあ、という第一印象は、そう間違ったものでもなかった。　ふた棟に分かれているのは、ふたつのチームに手際のよさや、技術などを競わせて、施設全体のモラル・アップを図るためのものらしく、まるでロンドンの証券取引場のように、ユニフォームの色分けがされているのである。　自動でゆっくりと動いていくフックに吊り下げられたクルバンたちが、熟練した肉屋たちの手によって、見る見るうちに裸にされていく。そこには断末魔の叫び声や、血の臭いはほとんど見られなかった。オープン・スタイルの食肉工場のようなものである。　私は、参考資料として何枚もの写真を撮りながら、裏手の方にも回ってみる。裏手には、剥がされた皮や角などが、それぞれ分別されて集められていた。　一周して戻ると、先ほど挨拶された屠殺場の責任者に、別の人物を紹介された。施設の裏に隣接して建っている学生寮の責任者だという。　精力的に写真を撮る私の姿に、こちらも取材して欲しいと思ったのか、「よろしければ案内しましょう」とおっしゃる。トルコの学生寮を見るチャンスも早々ないと思ったので、有り難く見学させていただいた。　ゆったりとしたエントランス周りには椰子の木が植えられ、まるでお役所のような立派な外観。　中に入ると、当番になっている学生がスリッパを出してくれ、私たちは父兄との面会室、自習室、図書室、トイレなど順番に部屋を案内された。これら共有の空間は、なかなか贅沢に作られていて、見事な絨毯まで敷かれているのに対し、最後に案内された学生の寝室は、まるで兵舎並み（といっても、実物は見たことはないのだが・・・）の簡素さなのに驚かされた。細長く薄暗い部屋に１０台ほどの２段ベッドが並んでいて、私物を入れるロッカーが申し訳程度に添えられている。勉強や宿題は、自習室で行うのだそうだ。　豪華なシャンデリアの下がる立派な会議室でお茶をいただきながら、日本について質問を受けたりした後、学生寮を辞退し、付属の庭などを見学させていただいてから、帰ることにした。　なんと、ここには自前のオレンジ畑や小さな動物園（ラクダやダチョウ、鹿などの飼育が行われている）まであった。動物園から更に階段を下りていくと、そこは公園になっていて、豊富な湧き水が川となって流れ出ている。小川には鴨や白鳥まで羽を休めている。我が家から目と鼻の先に、このような空間があることに私たちは驚いた。　それに、公園のあちこちに置かれたガーデン・テーブルでは、上の屠殺場で切り分けた肉を持ってきて、早速マンガル（バーベキュー）をしている家族連れの姿もある。　捌いたばかりの新鮮な肉でカヴルマ（細切れにした肉を塩やコショウなどで炒めたもの）でも作るのだろう、寮の関係者らしき人間が巨大な鍋を持って現れたのを合図に、私たちは帰途についた。　後で聞いたところによれば、この広大な土地を有する学生寮は、さるイスラム原理主義団体の運営になるものだとのこと。成績優秀ながら、貧しいために勉学の機会に恵まれない学生に、寮費と学費の面倒を見ることで機会を与え、同時に団体の幹部候補生を養成する狙いもあるのだろう。* * * * * *　　テレビでは毎年のように、各地の海、川が血に染まった様子、暴れる牛の角で傷ついたり、打ちどころが悪くて亡くなった人のニュース、逃げ出した牛の捕り物帳など、バイラム時期特有の光景が片や面白おかしく、片や嘆きの声と共に報道されている。　その一方で、現代的なクルバン屠殺、解体場では、まるでオートメーション工場のように、最初から最後まで自らの手を下さずとも、クルバンを屠ることができるようになっている。　一見、清潔でより簡単に思えるこのシステムであるが、ここまでくると、「神への生贄」という意味がその行為に介在しているのか、疑問に思えてくる。生贄を神に捧げる。それは本来、自らの手を血で汚すことで、自らの信仰を神の前で証明する行為ではなかったか？　私はクルバンを屠る伝統的習慣には賛成も反対もしない。しかし、ただ残酷で野蛮な伝統と非難する立場に対しては、疑問を呈したい。動物愛護派の人々にとっては、許しがたい動物虐待と映るかもしれないが、そんな人々の一体何％が、完全なるベジタリアンであろうか？自ら手を下すのは野蛮で受け入れ難くとも、プロの手で一から十まで処理してもらうならオーケーなのか？おすそ分けだけなら、大歓迎なのか？　私はむしろ、イスラム伝統のこの宗教祭事が、本来の宗教的意味を失って形骸化している、商業目的化していることの方を危ぶむ。　マーチャンダイズ化、オートメーション化が進むことで、クルバンとして屠られる動物の絶対数は年々増加しているに違いない。さらに、クルバン・バイラム時期だけの飽食状況はどうなっているのか？お祭り、祭事なのだから、気前よく、ケチなことは言わない方がよいのだろうか？ 　問題は、伝統そのものではない。それを継承する人々の意識や手段にあると思う。残酷で野蛮なのは、クルバンを切る行為そのものではない。倫理感と知識、熟練の手を失った人間が、お金と腕力にものを言わせて、本来の儀礼に則らない暴力的なかたちで動物を殺そうとするところにある。　かつては、五穀豊穣を神に感謝しながら餅をつき酒を造り、神に捧げていた日本人が、今では工場で作った餅は黴させ、残った酒は劣化させてゴミとしているのだから、人のことを言えた義理ではないのだが・・・。　　

  2005/01/21

• クルバン・バイラム（犠牲祭）回想録・１

  　 トルコへ移住して、４度目のクルバン・バイラムが巡ってきた。いまだかつてクルバン（犠牲動物）を屠ったことのない我が家では、幸か不幸か、地元住民ならではの生々しい経験を身をもってしたことがない。しかし、周囲の人間の、クルバン・バイラム時期ならではの行動や反応を見聞きするだけでも、毎年のように新たな発見があるものだ。　今日は、過去３年間のクルバン・バイラムを通して見聞きしたこと、感じたことを思い出しながら、書き綴ってみたい。●１年目（２００２年）　私たちの住むスィテ（専用の庭や子供用の遊び場、バスケットボール・コートなどを有するマンションの総称）の住人は、私たちを除くと、ほとんど医師や弁護士、教師、ホテル・オーナーなどなど、教育程度も高い（はずの）中～上流階級の人たちである。　一方、この辺りは新興住宅地で、次々建設される今風のスィテやアパルトマンと隣り合わせに、昔からこの地に住む農家が残っていたりする。庭には鶏が放し飼いにされ、家の前を通りかかると家畜の臭いが漂ってくる。　そして、この辺りのスィテ、アパルトマンのもともとの土地のオーナーは、そんな農民たちである。土地を提供する代わりに、数戸の家を譲り受け、親戚も呼んで今では優雅なマンション暮らしであるが、肌に染み付いた感覚や子供の頃から受け継いできた習慣は、一朝一夕に排除できるものではない。わがスィテの同じ棟の住人の約半分も、土地のオーナー一家とその親戚である。自ずと、住人同士の付き合いも、いつのまにか真っ二つに分かれるようになっていた。　わがスィテのすぐ後ろにあるアパルトマンの庭に、バイラム直前、合わせて３頭ほどの羊、ヤギが繋がれていた。バイラム初日、子供たちが垣根（といっても鉄製だが）越しに見守る中、クルバンたちは順々に、手馴れた人たちの手で大人しく屠られていった。私は初めてということもあって、怖いもの見たさ。途中から怖々見学に行ったが、すでに皮を剥がれるまでになったクルバンたちは、あくまで家畜としての運命をまっとうしているに過ぎず、哀れみは感じても、大抵の日本人の方が想像されるようなおぞましい恐怖感や残酷さは私は感じられなかった。　というのも、私自身、幼い頃から、家畜を食用にまわすという行為、家畜を捌く風景に見慣れていたせいもある。鶏と羊という違いはあろうが、この仕事はいつも母親が務めていたため、私はその横で、鶏が足を縛られて紐で逆さまに釣られ、首を切って血を抜かれ、次には羽をむしられ・・・・という一連の作業を経て食肉に変わるところを、つぶさに見てきた。最後には、頭や足、羽を除くあらゆる部位が、食用になった。首や骨はガラ・スープに。内臓は煮物に。　大小の違いはあれど、初めて見る気がせず、そしてほとんど衝撃を受けなかったと聞けば、ここを訪れてくださる方々に「信じられない」と愛想をつかれそうだが、それが正直なところである。　ところが、クルバンを捌く風景を見慣れているはずのトルコ人の中にも、この習慣を毛嫌いし、野蛮だと非難する人たちが結構いることを知って、私は驚いた。わが隣人。同じスィテに住む教育程度の高い（はずの）住人たちである。バイラムの挨拶に行った隣人宅に、ちょうど何組かの隣人が集まっていた。話題は自ずとクルバンの話へ。　「一体、この習慣はいつ始まったの？こんな野蛮な習慣、やめるべきなのに！」　「後ろのアパルトマンで切ってるでしょう？あの人たちは田舎者だからねえ」　「知ってる？４階のおばあさん。階段の踊り場で、クルバンの肉を焼いてたのよ。バルコンだと寒いからって」　「ひどいわねえ。ここのオーナーの親戚でしょう？田舎者だから」　その頃はまだ、隣人たちの話すトルコ語を完全に聞き取れたわけではなかったが、大体そんな会話が繰り広げられていた。当時は、ただ横に座って耳を傾けることしかできなかった私だが、イスラムの伝統で宗教的な意味を持つこの習慣を、ただ野蛮な田舎の習慣と片付けることには、さすがに反対したい気分だった。　イスラム的伝統・習慣を重視しない（したくない）、都会派を自認する人たちにとっては、自分を「田舎者」と切り離して見せるためにも、少なくとも「野蛮」とうそぶいて見せる必要があるのだろう。とりわけ、我が家のカルシュ・コムシュ（お向かいさん）である正義さん（仮名）夫妻は、その時の会話でも、さも嫌そうに眉をしかめつつ、クルバンを切る習慣と、アパルトマンの庭などでそれを行う人々を唾棄に付していたものだ。　それでもこの年には、さすがに我がスィテ共有の庭でクルバンを切るような住人がいないことを知って、私もホッとしていたのだが・・・。●２年目（２００３年）　クルバン・バイラム初日。まるで元旦の朝のようにひっそりとして、人の動きもまだない。連休になることから、親戚の家に出掛けたり、旅行に出かける人も多いので、駐車場の車も半分くらいに減っている。クルバン・バイラムになると、カプジュ（住み込み管理人）だって暇を取って郷里に帰ってしまうのだ。　前年同様、後ろのアパルトマンには２頭ほどのクルバンが繋がれていた。なんとなく気になってバルコンに出て、後ろの様子を見ていた。すると、我がスィテのバスケットボール・コートの入り口に３人の人影。よくよく目を凝らしてみると、コートの入り口に、クルバンらしきものがぶら下げてあるではないか！　「まさか！」こんな光景を目にすると放っておけない私は、デジカメを手にすると、すぐにエレベーターに乗り込んで階下へ。３人の男性のうちふたりは白い服をつけていて、すぐに肉屋だということが分かった。残るひとりは・・・振り向いて私の顔を見た彼は、一瞬「まずい人間に見られた」というようにばつの悪い顔をしていたが、すぐにいつもの偉そうな勿体つけた表情を取り戻し、ブツブツと言い訳とも独り言ともつかないような言葉をつぶやいた。　それは、前年、あれだけクルバンを切る人間を野蛮だ、田舎者だとけなしていたお向かいの正義さんだった！そしてクルバンの羊は、私たちの目の前、バスケットボール・コートの入り口を囲む鉄製の框からぶら下げてあり、とっくに皮を剥がれ、その下には血溜まりまでできていた。　開いた口が塞がらないとは、このこと。私はひとことも言えず、彼らの様子を見守った。肉屋は、バケツに水を汲んできて、コートのコンクリートの床に溜まった血を一応洗い流したが、ピンク色の染みは、それから数日して雨が完全に洗い流すまで、なかなか消えなかった。私は、後先のことは考えず、「証拠写真」として、クルバンの前でポーズを取る正義さんと肉屋をカメラに収め、自宅に戻った。　わがスィテの庭で、しかもバスケットボール・コートなどでクルバンを屠った隣人は、後にも先にも、田舎者が大嫌いで、弁護士という職にある自称「アンタルヤ育ちの都会人」正義氏だけだった。

  2005/01/20

• 主婦大学生への道（２）願書資料到着で、早くも落ち込み。。。

  昼間っからチャイムが鳴りドアを開けてみると、カプジュ（マンションの住み込み管理人）が郵便物を届けにきてくれたところだった。最近、郵便物の紛失が多いので、大事をとってすぐに届けに来てくれたのだろう。いつぞやも、買い物に出掛けるところで、我が家の郵便受けにミグロス・クラブカード会員宛の封筒が入っているのを確認したのだが、手荷物になるからとそのままにして出掛けたところ、４０分後に戻った時には見事紛失していたことがある。表玄関のドアが開けっぱなしになっていることが多いので、カプジュには郵便物に注意してくれるよう、また大きな郵便物は取り置いてくれるよう頼んでおいたのだった。封筒はＯＳＹＭ（学生選抜・配分センター）からのものだった。（→２００４年１２月１３日の日記参照）早速、封を開けてみる。ＹＯＳ（外国籍学生試験）の案内書と、マークシート式の願書用紙。案内書にざっと目を通し、巻末にある受け入れ大学一覧に目を走らせると、まず第１のハードルにぶつかった。私の第１希望である考古学科の「特殊条件」の欄に、ある数字が記載されている。その数字の意味するところはというと、「希望する学生には、定員内で１年間のドイツ語準備プログラムが適用される。準備プログラムの期間は教育期間には含まれない」というもの。通常入学した年は準備期間として、英語の授業ばかりを受けさせられると聞いているが、考古学科の学生にはドイツ語の選択も許されるという意味であろう。確かに、考古学徒たるもの、必ずやドイツ語の論文のお世話になることだろうから、「希望する学生には」とあるが、実質的には「必須」と考えた方が良さそうだ。迂闊にもこの問題が私の頭をよぎったことなど、今まで一度たりとなかった。実を言うと、私にとって、ドイツ語だけは勉強したくない、関わりたくない外国語の筆頭にあげられる。今だってトルコ語で四苦八苦している上に、トルコ語でドイツ語を、それこそまったくのゼロから（ちなみに、大学での第２外国語は中国語だった）習うなんて・・・。イヤだ～、イヤだ～、イヤだぁ～～！！さらに、その右の欄に目を向けると、「定数２」の文字が・・・。ええっ～～！？たった２名！？考古学科だけではない。人文科学部の受け入れ定員は、各科とも２名ずつ。第２希望の歴史学科も、もちろん同じである。ハァ～～ッ。。。。。（タメイキ）この２件だけでも、どよ～～んと暗くなった私。その後で、願書用紙の陰から試験問題のサンプルが出てきたことで、もう私の気分は真っ暗闇。一目見て、もう「お手上げ」である。いったい、この問題は何なんだ？？？知能テスト？それとも数学？？見たことのない記号。こんな数学記号、あったっけ？？それでも気を取り直して問題に取り組むと、５問のうち２問は、図形と数を認知する知能テストのようなもので、まもなく解けた。３問目。一見、数式のように見える。が、丸の中にプラス記号。これって、トルコ独自の数学記号？それとも、架空の記号だろうか？とにかく、与えられた３つの式を、当てはめやすいよう置き換えたり、代入したりしているうち、なんとか回答に行き着いた。４問目。ひゃあ～～！もう。こんなの、見たことないよお～。f(x)=In(cosx) 　　　　　　　　・・・・これ、なに？df 　 π 　 　　 l 　 π― （ ― ）= f 　( ― ） = ？　　・・・・ｆのl乗って、なに？dx 　 4 　　　　 　4５問目。ゲゲッ・・三角形の面積を求める問題？でも、なんだか違うような・・・。ＡＢＣを頂点とする三角形の、Ｂ角が６０℃、ＡＢの長さが６ｃｍ、ＢＣの長さが１０ｃｍ。で、Ａ（ＡＢＣ）＝？ｃｍ（２乗）平方ｃｍとあるからには、面積を求めているのだろうと思うが、Ａ（ＡＢＣ）なんていう書き方の意味が分からない。おまけに選択項には、すべて√３がつく。　・・・・・・・・（無言）・・・・・・・・こんなん、分っかんないよう～～！！（悲鳴）数学なんて、大学入試以来。もう２０ウン年も離れていれば、忘れもするだろうが、それにしても、こんな数式、あったっけ？トルコ・オリジナル？それとも、日本でも今じゃあこんな数式、普通に使ってるのかなあ・・・。一気に落ち込みのドン底。５問中、ギリギリ３問。こんな訳分かんない問題ばっかり２０問も３０問も出された日にゃあ、頭おかしくなりそう・・・（涙）。大体、知能テスト程度のものならいいけど、志望が理系でもないのに、なぜ数学的思考を見るような問題しか出されないんだろうか・・・？地理や歴史はなぜ出ない？泣きそう・・・。一応、言い訳しておくが、私は高校まで数学は得意だった。大学入試共通一時試験（古すぎ？）でも、自慢じゃないが数学は（自己採点）２００点満点だった。でも、今の私に、４問目、５問目はお手上げである。どなたか、分かる方、教えていただきたい。ちなみに、正答は、４問目が－１で、５問目が１５√３である。基礎学力テストがこれじゃあ、裏面のトルコ語がいくら全問正解でも、何の慰めにもならない。願書を提出する前から、もう落ちたような気分。もうやめとこうかなあ・・・・そんな弱気にもなる。願書提出の締め切りは３月１１日。それまでゆっくり考えるしかない。あ～あ。。。

  2005/01/12

• 

  画像追加**新トルコリラ（ＹＴＬ）の使い勝手はいかが？

  気が付くと、財布の中に６０ミリオンＴＬ（約４６００円）しか残っていない。というわけで、本日は町の中心にあるDOVIZ(両替商)に、手持ちのドルを両替しに出掛けた。２００５年１月１日をもって、トルコリラ（ＴＬ）の０（ゼロ）が６つ排除された新トルコリラ（ＹＴＬ）の流通が始まっているのは、トルコ在住の皆さんがすでに書いてらっしゃるので、ここでは詳しくは触れない。私の関心は、いったいいつ自分の手元に新トルコリラがやってくるかということだった。特に、旧札では２０ミリオンＴＬ札（新札では２０ＹＴＬ札）が最高券額であったが、今回新トルコリラへの切り替えに伴い、５０ＹＴＬ、１００ＹＴＬの２種類の高額紙幣が誕生したので、この新紙幣がいつ手に入るかが、ひそかな関心事だったのだ。そして、いよいよチャンス到来！３００ドルを出し、４０４．４ＹＴＬを受け取る。（本日のDOVIZレート、１USD=１．３４８ＹＴＬ）おおっ！これが新トルコリラかあ～。しかし、なんとも枚数が多くて、財布が閉まらない。それもそのはず。５０ＹＴＬ、１００ＹＴＬなど、アンタルヤでは流通量がもともと少ないのか、とっくに出払ってしまっていて、手元に来たのは１０ＹＴＬと旧１０ミリオンＴＬのミックスで４０枚、１ＹＴＬが４枚、計４４枚もの紙幣の束なのだから。なんだか、新トルコリラになって却って不便だなあ～と、ブツクサ言いながら、膨れて閉まらない財布を無理やりポーチの中に押し込んだ。というわけで、とりあえず手に入れた１０ＹＴＬ札と、１ＹＴＬ札をご紹介。現在流通している紙幣の画像を公開するのが、法に触れることがどうか分からないのだが・・・。（ご存知の方、どなたかご指摘くださいませ）いずれも、上の紙幣が新トルコリラ（ＹＴＬ）、下のヨレヨレ紙幣が従来のトルコリラ（ＴＬ）である。見比べてみて、どう思われるかは皆さまの自由。個人的には、言われているほど安っぽくは見えないと思っているが、数字の周囲にずいぶん空間が空いたので、そこをデザイン的にもう少し上手く処理した方が良かったのではないか、と思うだけである。数字の後に「ミリオン」をつける癖はそうそう直らないと思うが、デザインが同じだけに、支払い・受け取りに新旧が混じっても、そう大きな混乱はしなくて済みそうである。願わくば、高額紙幣の流通量を早く増やして欲しいところだが・・・。* * * * * *それから３日後・・・・支払いのために銀行に出掛け、ついに５０ＹＴＬ札と１００ＹＴＬ札を手にすることができた。それだって、全部２０ＹＴＬ札でくれようとしたところを、お願いして交換してもらったのである。ところが・・・５０ＹＴＬ札を、間違って支払いに使ってしまったのである。（バカ）今手元に残っているのは、１００ＹＴＬ札が２枚。５０ＹＴＬ札がないのは片手落ちだが、一応１００ＹＴＬ札だけでもご紹介しようと思う。表は、２０ＹＴＬ（旧札の２０ミリオンＴＬも同じ）以下に使われている写真よりおそらく若い頃のアタテュルク。裏はドウバヤズットにあるイサク・パシャ宮殿である。サイズだが、２０ＹＴＬ以下の紙幣より長さは５ｍｍ短く、幅は５ｍｍ長くなっている。手元にユーロ札がないので分からないが、ユーロのサイズに合わせたものだろうか？なお、ブルーが基調の１００ＹＴＬ札に対し、５０ＹＴＬ札の色は黄色になっている。

  2005/01/04

• 年の瀬もいろいろ有りて・・・

  ２００４年も、残すところ３日。今頃、日本に居たなら、やれ大掃除だのおせち料理つくりだの、てんてこ舞いの日々を送っているに違いない。しかしこちらでは、年に２度の宗教祭日前の大掃除と違って、「年末の大掃除」という話はあまり聞かない。それをいいことに、今年は大掃除は完全にパスすることにした。まあ、先週日本からやってきた友人夫婦を迎えるために、中くらい（？）の掃除をしたので、それでよしとするか、と怠惰を決め込んでいる。おせち料理も、今年は早めに夫にお餅だの数の子だのを運んできてもらったので、それで少しは正月らしい雰囲気を出せるかなあ～と期待していたところ、今年は大晦日から２日まで、エスキシェヒルに住む義妹の家に出掛けることになったので、先延ばし、もしかしたら出番がないままに終わりそうな懸念が出てきた。掃除や料理の支度こそないものの、ここに来て、なにやら気忙しくなってきた。年を越える前に出来ることは極力済ませておこうという、日本人ならではの「けじめ感覚」のせいか、あるいはギリギリまで決定や仕事を先送りしてしまう私の悪い癖のせいか（やっぱりこっちかな？）、今年中にやらねばならないこと、やっておきたいことが目白押しなのである。結局そのほとんどは、来年にそのまま持ち越されるような気はするが。- * - * - * - * -まずは朝一番に、懸念のYOS(外国籍学生試験）の願書提出の件（１２月１３日の日記参照）で、アンカラにあるＯＳＹＭ（学生選抜・配分センター）に電話をかけた。といっても、夫が居るときは、電話の類はちゃっかり夫に頼んでしまうので、横からあれも聞いて、これも聞いてと、私は口出しだけ。ＯＳＹＭのホームページで見る限り、「１月以降に願書提出用書類が配布される」とはあるが、正確にいつから願書を手に入れることができ、願書の受付期間はいつからいつまでなのか、願書提出に当たって、必要な添付書類があるかどうか、当の試験はいつなのか、といった詳細は明記されていない。夫には、それらの点を確認してもらった。意外だったのは、願書請求をＦＡＸでも受け付けている点。最近の日本の大学受験ではどうなっているのか知らないが、私たちの受験した時代には、大学まで直接願書請求の手紙を送ったものである。それも切手を張り、宛名を書いた返信用封筒まで、ご丁寧に同封したものだった。ＯＳＹＭのホームページでも、願書は直接アンカラの事務所で受け取るか、郵便で請求するようにとあったので、ああ、トルコも似たり寄ったりだなあ、郵便だと紛失や遅配が心配だが、他に方法もないし、と諦めていたのだが、ＦＡＸならずっと気が楽である。届いたＦＡＸが事務所内で紛失する危険性がないわけではないが・・・。ともかく、願書の提出は３月１１日までだというので、まだ時間はたっぷりある。今夜にでもディレクチェ（請願書）を書き上げ、明日朝一番にＦＡＸで送るとしよう。試験は４月１７日。夫は試験の日程に合わせてアンタルヤに戻り、家族揃ってアンカラに行く予定を今から立てている。かねてから、アヌットゥカビル（アタテュルク廟）を訪問したがっていた娘たちを、アンカラに連れて行くいい機会と考えているらしい。- * - * - * - * -今日は下の娘のクラスで「YENI YILA HOS GELDIN （新年にようこそ）」と題したパーティーが催される日。教室内で行われるささやかなパーティーではあるが、子供たちにとっては晴れの日であることには変わりがない。２日前から、教室には本物の松の木（トルコに樅の木はないので、松の木で代用する）のツリーが運び込まれ、この日のために娘たちはクリスマス・ソング（英語）やダンスを一生懸命覚えてきた。月曜日に学校から持ち帰った手紙には、例によって必要な材料や衣装の指定がされていた。コスチュームは子供たちの好きなもの。背中にはチュール製の妖精の羽（なるべく白）、星のついた妖精の杖、パーティー用の三角帽子、風船割り競争のための大きな風船、「お母さんの」ケーキやジュース・・・と、いつも通り注文が細かい。そのために昨日は、帽子やら風船やら羽と杖のセットやらを買いに走ることになった。前の週から教えてくれればいいのに、いつもながらギリギリになってから手紙が来るので、猶予は１日しかないのが辛いところである。コスチュームは、ロマンティック大好き、お姫様願望の強い娘のこと、最初からドレスに決まっている。上の娘が２年前に着ていた白のドレスを出して着せてみると、ピッタリ。娘も鏡の前でピョンピョンはねてみたり、回ってみたりと嬉しそう。靴も、お姉ちゃんのお下がりの白い靴がピッタリで安心する。ケーキだが、昨日まで、パスターネ（菓子屋）で出来合いのものを買って済まそうかと考えていたのだが、先日のパザールで買ったバナナが余っているのが目に付き、簡単なバナナケーキを作ることにした。クリームなし。焼くだけのドライケーキである。学校帰りにバッカルで板チョコレートを買ってきて、包丁で小さく刻み、潰してレモン汁をかけたバナナ、小さく砕いたクルミを入れて焼くだけ。出来上がりに粉砂糖を振れば、雰囲気が出る。あとは、脇に赤やグリーンのものがあればクリスマスらしい色合いになるのだが、生憎ないので、そのままにした。午後１時半。パーティーの開始。娘はこんなときの常で、私や父親、皆んなの視線を意識して、ニコニコと満面の笑みを湛えながらポーズをとる。多分に親の贔屓目だろうが、真っ白なドレスの背中に羽をつけ、晴れやかな笑顔を振りまいて、精一杯プリンセスを気取る娘は、クラスの中でもひときわ輝いて見えた。- * - * - * - * -学校から戻ると、これからパンジュール（鎧戸）屋が来ると夫が言う。先週採寸に来て、今週には取り付けに来るとの話だったが、３１日には留守をするので、どうなっているのか心配していたのだ。年末年始、留守にしている間にフルトゥナ（暴風雨）にでも襲われたら、どうなるか分かったものではないからである。職人たちは全部で５人もやってきた。一番大きいサロンの窓にパンジュールを取り付けるのは、なかなかの大仕事になるはずなので、さして驚きはしなかったが、意外にキビキビとした態度で、プロの仕事を見せてくれて安心した。一方、安心できないのは夫の方である。先週採寸に来た時に、ほとんど夫にまかせてしまったのがいけないのだが、時々、何を打ち合わせしていたのだろうと、不思議に思うことがある。北側の最も小さい部屋が冷えて困るので、今回パンジュールを取り付けることにしたのだが、すでに取り付けてあるベッドルームや子供部屋と同じように、融通がきくように２枚タイプにしたのかと思えば、横幅一杯の１枚タイプになっている。「どうして、決める時に私に聞かないの？」と問い詰めると、「僕は知らないよ」「彼が（採寸に来た人間）、上の階が１枚になってるから、そうしたんじゃない？」と、無関心、無責任この上ない。いつもこんな風に職人まかせなのだ。２枚の方が影や入る風の量を調整しやすいと思っているに過ぎないので、まあ、１枚だからって大きな問題は発生しないのだが・・・。サロンの方から夫が私を呼ぶ。窓から張り出している大理石部分が足りなくて、隙間が空くが、どうしようと職人が言っているという。私はまたもや、ふたつの意味で唖然としてしまった。サロンの窓の上部の壁が５ｃｍほど出っ張っているために、パンジュールを取り付ける際に下部に隙間が空くのは、前々から分かっていたことである。過去にやって来たパンジュール屋は、それを解決するためには、奥行きの深い大理石の板を上から貼り付けるか、箱を窓に密着するように取り付けるか（しかしこの場合は、窓の上部が２０ｃｍほどパンジュールを仕舞う箱で隠れてしまい、みっともない）のいずれかを選ばなければ、取り付けられないと言って帰っていったのだ。夫は、そのことをまるきり覚えていなかったのだろうか？採寸に来た人間は、そのことについて、夫に打診しなかったのだろうか？夫は、まるで何ひとつ覚えてないとでもいうような表情。「いったい、何のために打ち合わせしていたの？採寸している間、ただ座って見ているだけ？」私の詰問の調子もついついキツクなる。まあ、これ以上夫を追及しても仕方ない。夫は「付いていれば、それでいい」というタイプなんだから、職人がどうにかして付けてくれれば、それで万事オーケーと思っているのだ。そして実際、職人がいい解決法を見出してくれたので、前回のフルトゥナで私たちを怖がらせたサロンの大きな窓にも、無事にパンジュールが取り付けられた。ところが、夜１０時も回ってから・・・・海から吹き付ける強い風が、また不気味に窓を鳴らし始めた。その音は、どうやらサロンから聞こえてきている。私はビクビクしながらサロンの扉を開けて中に入り、窓に近づいた。前回のフルトゥナで壊れ、今回修理してもらったばかりの窓の上部が、風に押されて１～２ｃｍ浮き上がり、その隙間から風がピュウピュウ音を立てながら入り込んでいるのだ。風の音で目を覚ました夫にそれを告げると、夫は扉を開けたり閉めたりしながら、ロックの掛かり具合を確かめた。「あいつが壊していったんだよ」夫は苦々しそうに呟く。どうやら、今日ノブを交換した際に、金具の位置がずれて、上部が閉まらなくなってしまったようだ。「でも、パンジュールがあったから良かった。でなければ、今頃また開いてたよ、この窓」私は、その言葉で自分たちを慰めながら、間一髪で今日パンジュールがついた幸運に感謝した。一難去って、また一難。明日はまた職人を呼んで、窓を完全に直してもらわなければ。でなければ、安心して留守になんかできないし、新年なんか迎えられないよ・・・。

  2004/12/29

• 

  土曜と日曜～とんだ勘違いの週末・朝食計画**画像あり

  「明日は、またケズバン・アブラに行こうか？」夫が金曜の夜、こんな提案をした。ケズバン・アブラとは、２週間前にも学校の朝食会で訪れた、ギョズレメジ（ギョズレメを食べさせる場所）のこと。大勢で食事のテーブルを囲むと、決まって遠慮して小食になりがちの夫は、その時も思いっきり食べられなかったらしく、お腹一杯になって帰った私と違い、自宅に戻るなり「あ～あ、お腹が空いた」と言って私を驚かせたのだった。「あのパン（バズラマのこと）が思いっきり食べたいよ～」と、夫は遠い眼をしながら唸る。「いいわよ。私もまた食べたいし」天気予報では、土曜は晴れ。予定では、楽しい週末の朝になるはずだった。- * - * - * - * -暖かな日差しのもと、左右にオレンジ畑を見ながら車を進める。記憶を辿りながら、チャクルラルを過ぎ、ゲイックバユルへの２差路で左へと折れる。あれえ～？パザールやってないなあ・・・？この２差路では、毎週末パザールが開かれているはずなのだが、今日は空っぽの露台が寂しげに転がっているだけ。「ねえ、ひょっとして、いつもここに来るの、日曜だったっけ？」私は不安になり夫にそれとなく聞いてみる。アンタルヤのことは私以上に疎い夫が、もとより知っている訳もない。「さあ、このあいだ来たの、日曜だっけ？」と、頼りない返事。看板を目印に、ギョズレメジへの私道を入る。がら～んとした駐車場。人っ子一人いない庭。雨風よけの覆いのされたチャルダック（高床式の座敷）。ありゃ～、やっぱり休みだ～！なんと情けなや。日曜しか開いていないなんて、チラとも頭の中に浮かばなかった私たち。車をＵターンさせて、来た道を戻る。これから、どうしようか？時間はすでに１０時半。これから家に戻って、朝食の支度をするのも、情けなさ過ぎる。他に、朝食のとれる場所といえば、どこがあるかなあ・・・。ビーチパークは、先週末のフルトゥナ（暴風雨）で被害を受けてるはずだから、やっているかどうか分からないし・・・。と。ふと、私の口から「アトゥ・チフトゥリーイ（馬の牧場）はどう？」という言葉が出た。４月頃だったろうか、やはり遊び好きなヒロさん＆ユリさん夫妻に誘われて、アンタルヤの北１０ｋｍほどのイェシルバユルにあるオルフェ・チフトゥリッキ（チフトゥリッキは牧場の意）に朝食に出掛けたことがあった。松林を切り開いて造り上げた動物牧場には、馬以外にダチョウやハゲワシ、ウズラなど何種類もの鳥類と、庭にはアンゴラうさぎまで放し飼いにしてあり、小さい子供連れにはピッタリ。朝食のビュッフェも豊富で、いつかもう一度来たいと思いながら、半年以上も経ってしまっていた。子供たちはそれを聞いて、「ワ～イ！アトゥ・チフトゥリーイだって！」と大喜び。あんまり子供たちが喜ぶので、夫もさすがに反対する気が失せてしまったよう。もしかしたら、こちらも閉まっているかもしれないが、今日は特に用もないし、時間はタップリある。一応行ってみようということになった。アンタルヤからブルドゥル、アフィヨン方面に車を走らせる。コルクテリ、デニズリ方面に曲がる交差点を過ぎて、次の交差点で左に折れる。左手遠くに広い松林が見えてくる。その松林の袂に、目指すオルフェ・チフトゥリッキはある。到着してはみたが、さて・・・・車が１台しか停まってない。やっぱりここも閉まってるのだろうか？ちょうど門を出てきた従業員らしき人に訊くと、開いているという。良かった～。とりあえず閉まってはなくて。車を降り、中庭に入る。すぐに従業員が「ホッシュ・ゲルディニス！（いらっしゃいませ）」と声を掛けながら建物から出てきた。「朝食はやってるの？」夫が訊く。従業員は、ちょっと言い澱んでから、「やりましょう」と答える。ビュッフェではなく、お皿にセットした状態で出してくれるようだ。よくよく聞いてみれば、朝食のビュッフェは日曜しかやってないのだという。やっぱりここも、日曜だけなのか～！私はほとほと、自分たちの迂闊さを呪った。今まで、人に誘われてばかりだった私たちは、曜日まで意識したことがなかったのだ。休日ならいつも営業しているような、そんな錯覚までしていたような気がする。とにかく、今日はもうここまで来てしまったのだから、明日出直すまでもない。私たちは朝食のセットを注文し、他に一組の客もいない中庭のテーブルに陣取って、せっかくの週末の朝を愉しもうと努めた。子供たちは夫の手を引っぱって、馬やダチョウを見に行き、私は持参した文庫本を広げる。標高が少し高いせいか、強烈な日差しが顔をジリジリと焼く。やがて、朝食が運ばれ、私は夫と子供を手招きで呼んだ。２種類のチーズ、ハチミツ、バター、２種類のオリーブ、サラミ、ゆで卵がひとつの皿にセットされ、別の皿にはきれいに盛り付けられたトマトときゅうり。シガラ・ボレキ（ユフカという小麦粉を伸ばした皮を葉巻状に巻いて揚げたもの）と、中にハムとチーズの入った春巻き大のボレキも４人分添えてある。ビュッフェほどの豪華さはないが、十分な量の朝食である。それに、ハチミツは濃厚だし、ここで採れた卵は新鮮そのものだった。結果的に空振りばかりに終わった、週末の朝食計画。まあ、いいさ。またいつでも行けるんだし。「年が明けたら、さっそく行こうね」帰り道、私は夫をそう慰めた。- * - * - * - * -昨日同様、すっきりとした青空の広がった今朝。「今頃、ケズバンは混んでるんだろうなあ・・・・」と、ぼそりとつぶやく夫。やっぱり昨日、バズラマを食べられなかったことが、相当心残りだったのだろうか。日曜パザールで、焼きたてのウスパルタ・エキメイ（上にケシの実ののった、ウスパルタ地方の大型パン）を買って帰ったところ、ウマイ！ウマイ！と、長さ４０ｃｍ、幅だって１５ｃｍ以上もある巨大なパンを、一気に４分の３も平らげてしまった夫。確かに今日のは、外はパリパリ、中はモッチリ、シットリして、「タム・ターゼ（焼きたてそのもの）」だったけど、それにしても調子に乗って、ちいと食べすぎではないかい？きっとこれって、バズラマが食べられなかった反動なんだろうな・・・。面と向かっては指摘できないけど、プックリ膨れた夫のお腹をみて、ちょっと怖くなった私だった。

  2004/12/26

• ユルバシュ（ニューイヤー）のプランが決まって、ちょっとガックリ

  クリスマスを祝う習慣のないトルコでは、その代わりに大晦日に大騒ぎをする。社交的とはいえぬ我が家でも、１２月に入って以来、どこに行くの？どこに泊まるの？と友人・隣人から質問されてばかり。夫が、３年振りに正月をアンヤルヤで迎えることに決まってからというもの、今年こそは自宅以外のどこかで過ごそうと、ない知恵を廻らせていた私たち。折りしも今度の正月は、元旦が土曜日の関係で、１日・２日と２連休になっている。スキーに行こうか。温泉に行こうか。それともホテルの豪華なガラ・ディナーか。子供たちが「雪が見たい」といえば、「じゃあ、スキーのできるサクルケントかウスパルタにしよう」となる。しかし、「そこに温泉はあるの？」と、温泉好きな子供たちは続けて聞く。「温泉が良ければ、アフィヨンかパムッカレにするよ。私も温泉がいい」と、私が賛成票を入れる。そうして、いったんは温泉に決まりかけたのだが・・・毎年のように５ツ星の豪華リゾートホテルで、食べ放題、飲み放題、音楽・ダンス・イベント山盛りの賑やかな新年を迎える友人のヒロさん＆ユリさん（仮名）夫妻が、今年も懲りずに私たち一家を誘う。昨年の大晦日は、有名女性タレント、ヒュリア・アヴシャールが常宿にしているという、ベレキにあるリゾートホテルで新年を迎え、「素晴らしかったわよ～。来年はぜひ一緒に！」と言われ続けてきたのである。今年はクンドゥにある、やはり５ツ星ホテルを検討しているそうで、先週夕食に招待した時にも、案の定しっかりと誘われてしまった。一度くらいは、豪華５ツ星ホテルのニュー・イヤー・パーティーを経験してもいいかなあ～とは思ってはみるものの、なかなか勇気が出ないのだ。大音声で奏でられる生演奏、ひたすら繰り返されるダンス、人込みとオシャベリとタバコの煙・・・そんな情景を想像するだに、煩いのが大の苦手な私は腰が引けてしまうのである。前向きに考えてみましょうと返答しながらも、愉しむどころか早々に疲れきっている自分たちの姿が思い浮かぶようだった。二日ほど前に、とうとうヒロさんから返事の催促が来てしまった。予約の関係もあるので、そろそろ最終決断をせねばなるまい。私の方では、ここ数日の新聞の広告欄にくまなく目を走らせ、大晦日の夜のガラ・ディナー付き１泊料金の値段を調べていた。大晦日の夜となると、特別プログラムの関係で、１２月の通常料金の大体２倍前後に設定してある。高いところでは、３倍近く。子供ふたりは無料としても、大人ふたり分となると、結構な出費になる。平均的に価格の高いアフィヨンの５ツ星テルマル・リゾート・ホテルは諦めて、やっぱりパムッカレ（カラハユット温泉）の４ツ星テルマル・ホテルにしようかなあ。そうして、夫に料金と予約状況を確認してもらおうとしていた矢先のこと・・・。子供たちが、突然エスキシェヒルに住む従姉妹エレナ（仮名）のところに行きたいと言い出した。上の娘よりひとつ年上のエレナとは、およそ1年前のバイラム休暇以来会っていない。急に思い出したのか、それとも夫に炊きつけられたのか（きっと、そうだろう）、エスキシェヒルにも温泉があるよという言葉に乗せられて、遊びに行きたい気持ちが急速に膨らんだものに違いない。となると、３１日の学校は休ませて、午前中には出発する必要がある。３１日、１日の２晩泊まって、２日に帰ってこようか。夫が妹に電話をして打診してみると、どうやらオーケーのよう。こうして、家族だけで熱い温泉に浸かりながら、ゆったりと新年を迎えたいという私のささやかな願いは、あっけなく消えてしまった。しかし、気持ちの切り替えも早い私。すぐに頭には、妹や姪っ子へのユルバシュ・ヘディエスィ（ニュー・イヤー・プレゼント）をどうするか、その心配が浮かんだ。そうだ！ちょうどこの時期、ジャム・ピラミド（ガラスのピラミッド：見本市会場）で、ギフト・フェアが開催されているではないか。すぐに夫に車を出してもらい、ギフト・フェアに出向いた。小1時間ほどかけて品定めをしながら会場をゆっくりと一回りし、妹には、クリスマスらしいヒイラギの実がデザインされた大皿とおつまみ皿をセットにして、姪っ子にはバービー・デザインの帽子とマフラーのセットを買い求め、プレゼントの準備は完了した。妹のご主人へのプレゼントは、夫が普段からキープしているウイスキーにするから、あらためて買わなくてもいいという。午後にはユリさんにも電話を入れ、５ツ星ホテルの件はきちんと断った。やきもち焼きのユリさんも、行き先がパムッカレでは後々まで言われそうだったが、妹のところと聞いては、仕方ないわねと了解してくれた。やれやれ、とかく付き合いは大変である。それにしても・・・・元旦から親戚宅とは、来年は春から縁起がいい？のやら、どうなのやら・・・。

  2004/12/24

• 

  不通が普通のＡＤＳＬ（４日目）・・・と思ったら、突然復旧してホッとする

  ６日振りに空の晴れ渡った、爽やかな朝が訪れた。オズギュル夫妻は、今日はアンタルヤの南、約１００ｋｍに位置するオリンポスへと移動する。ここは、ヨーロッパのヒッピー風の若者に人気のリゾート地で、ヒッピー崩れのオズギュルもその例に漏れず、なぜかオリンポスを愛してやまない一人なのだった。オリンポスの海泊まる場所は、初めからカディール・ツリー・ハウスに決めてあるという。ここは、オリンポス周辺に多いツリー・ハウス（松の木などの幹を利用して、木の上に小屋が造られている）の元祖ともいうべきペンション。野鳥のためのバードハウスのような小屋が、松の木林のあちらこちらに造られていて、まるで映画セットのようだ。私たち家族も話の種にと、昨年夏に一泊したことがある。家族向けというよりは、完全に若者好みのペンションで、オズギュルもどうやらここがお気に入りのようだった。カディール・ツリー・ハウスふたりをファレズ・ホテルの向かい側にある、ケメル、クムルジャ、オリンポス方面行きのバス停まで送ると、そのままパンジュール（鎧戸）屋を探して回ることにした。実は過去にも、何回かパンジュール屋を呼んで見積もりしてもらったことがあるのだが、いまひとつ踏ん切りがつかず、今日の今日まで発注が延び延びになってしまっていたのだ。しかし、もうグズグズしてられなかった。夫が居たからなんとか収拾がついたが、今度フルトゥナ（暴風雨）に襲われた時、私ひとりであんな怖い目に遭いたくはなかった。２～３軒のパンジュール屋に声を掛け、午後に採寸と見積もりに来てもらうことにした。帰り道でパザールに立ち寄り、切らしている野菜や卵、チーズ、農家の手搾りのオリーブオイル、ザクロ酢などを購入。ついでに、百合子さんへのお土産として、トマトと赤ピーマン（唐辛子入り）のサルチャも１ｋｇほど購入。値段は安いものだが、彼女が日本に帰ってからのトルコ料理づくりの強い味方になってくれるだろう。- * - * - * - * -　　スパゲティの簡単な昼食後、夫が試しにＰＣのスイッチを入れると、あ～ら不思議。ＡＤＳＬが復旧しているではないか。テレコムの職員は、有り難くも「パソコンに問題あり」「ウイルスかも」と断定してくれたが、これはやっぱりパソコンではなく、ＡＤＳＬの問題ではないかという気がしてきた。何はともあれ、この調子では、いつまた不通になるか分からない。私は大急ぎで日記をアップしたり、メールの送受信を済ませたりしたくて、ＰＣの前に座った夫を押しのけんばかり。夫はそんな私の態度が気に入らず、「ボクにお礼を言ってくれなくちゃ」と、やたら恩を着せようとする。今日の午後にでも、パソコンの修理屋に持ち込むつもりで連絡をとっていたのだが、その必要もなくなり、とにかく助かった。それにしても、「ボクが触ったから治ったんだ」と、しつこく自分のお陰を強調する夫には参った。ＡＤＳＬが不調な原因は、私のＰＣが信号をうまく受け取れないせいではないか、インターネット・プロトコルの設定を変えると安定するよと、ときどき私の日記を訪問してくださるmehtapさんがアドバイスしてくださったので、早速やってみた。（mehtapさんに感謝！）これによって、復旧を待つイライラと、いつまた不通になるか分からない不安感と完全におさらばできれば、嬉しいのだが・・・。- * - * - * - * -　　午後からは、ガラス屋とパンジュール屋が順番にやって来た。４日前の嵐で外れたサロンの窓枠を見てもらうと、なんと！３ヶ月ほど前にガラスの交換をして帰っていったガラス屋の仕業だろうが、合わないところを無理やりに嵌め込むために、内部の金具とぶつかる箇所に切れ込みを入れ、いつ何時外れてもおかしくない状態にされていたという。さすが！トルコの職人の仕事である。見た目は完璧、豪華でも、蓋を開けてみれば、中身は貧弱そのもの。外からじゃあ誰も分からないと思って、簡単に済ませてしまったのだろうが、お陰でこちらは、怖い思いをすることになった。万が一ガラスが割れて、人が怪我するようなことになっても、きっとここでは損害賠償なんて成立しないんだろうなあ・・・。その後、キッチンに籠もって仕事をしていた私を呼ぶ夫の声が聞こえた。サロンに行くと、夫が新しい取っ手金具を手にしている。強風でガラス窓が開いたときに壊れたので、交換することになるのだが、見ればまったくデザインが違うではないか。「モデルが違うけど、これでいい？」と夫が訊く。聞けば、ひとつしか持ってきてないという。私は憮然とする。観音開きの窓の取っ手で、隣同士まったく違うデザインで良いとでも思ってるのだろうか？それに、交換したばかりの窓枠を見れば、これまた他の３辺と形がまったく違うではないか！「それしかないんだってさ」夫は、こともなげにそう言う。私は呆れるやら頭にくるやら。職人も職人だけど、夫も「デザインなんかどうでもいい。あればいい」といいタイプなのだから、困ったものだ。日本語は分からないながら、夫と言い合う私の様子から、相当怒っていると見たのだろう。職人は、今は在庫がないけれど、取り寄せて来週には再交換してくれると約束して帰っていった。

  2004/12/23

• 不通が普通のＡＤＳＬ（３日目）＆日土カップルの来訪

  昨日は、結局一日出ずっぱりで、掃除どころではなかった。今朝は朝食を済ませ、夫に子供たちを送っていってもらうと、コンロにチャイダンルック（２段重ねになったチャイ用のポット）をかけ、猛烈な勢いで掃除・片付けに取り掛かった。今日は、夫の弟分のような存在で、新婚ホヤホヤのオズギュル（仮名）が、新妻の百合子さん（仮名）と一緒に我が家にやってくる日なのである。彼らのアンタルヤ空港到着予定が９時。１０時前には自宅に着くはずだから、残された時間は約１時間。前々から、彼らが泊まりに来ることはもちろん聞かされていたのだが、やっぱりギリギリにならないと取り掛からないのが、私の悪い癖。ベッドルームや子供部屋は後で「スキを見て」ということで、サロン、居間、キッチンに掃除機をかけ、モップ拭きし、バスルームともうひとつのトイレを洗い清める。その後でバッカルにひとっ走りし、スジュック（香辛料を効かせたサラミ状の肉製品）やトマトを買って戻る。なんとか部屋も形になり、テーブルにトマトやキュウリのスライス、チーズ、３種のジャム、オリーブなどの朝食の支度が整えられた頃、迎えに行った夫に連れられて、ふたりが到着した。オズギュルは、以前にも我が家に泊まっていったことがある。１年振りくらいだろうか。頭を坊主にし、その代わりにたっぷりとヒゲを蓄えて、いかにもトルコ人という風体になっていた。夫の仕事を昔よく手伝ってもらい、今では名古屋のトルコ料理レストランで働いているという彼は、ヒゲがあった方が顔を覚えてもらいやすいからと、ヒゲを撫でながらまんざらでもなさそう。「彼の顔を目印にしてお客さんがくるんだよ」と、夫が言葉を添える。百合子さんには初めてお会いしたが、「良い子だよ」と夫から聞かされていたとおり、何でも気兼ねなく話せるさっぱりとした性格。私も、初対面の人にいいところを見せようと気張る必要もなく、おしゃべりも弾む。トルコに来るのは初めてという彼女は、トルコ風の朝食がどんなものなのかさえ、こちらに来て初めて知ったという。今までオズギュルから聞かされていたのは、「チーズとかオリーブとかトマトとか、とにかく色々並ぶんだよ」という簡単な表現だけだったので、実際目で見るまでは、なかなかイメージがつかめなかったのだそうだ。４人で朝食のテーブルを囲んでいると、玄関チャイムが鳴った。「誰ですか？」「テレコム！」昨日の約束通り、点検に来てくれたのだった。アタッシュケースを提げ、手に小さい箱状の器械を抱えて登場したテレコム職員は、意外に物腰も丁寧できちんとした人のようだった。「昨日も参りましたが、お留守でしたね」と聞かれたので、私は「済みません。ギュルルック（通り）のテレコムに支払いに行ってたんですよ。その後も用事があって・・・」と言い訳をする。職員はまず、現在使っている電話ケーブルを器械に繋いでみた。これは問題なし。次にルーターのケーブルを繋いでみる。こちらも問題なし。「つまり、パソコンに何らかの問題があるということですなあ」と、彼は簡単に結果を出した。私は、なんとなく承服しかねる思いだったが、「ウイルスのせいでロックされてしまったのかもしれませんよ」そう言われてみると、ひょっとしたらそうかもしれないという気になった。不通になる直前、ホットメールでエラーが出たりすることがあったのを思い返したのだ。ウイルスのせいだったら、またリカバリーが大変だなあと、私は途端に気が重くなった。　　　- * - * - * - * -　　　　　　朝食後、少し歓談したあとで、ふたりは夫に案内してもらい、小止みになった雨の中、カレイチの観光に出かけていった。せっかくの初のトルコ旅行、しかも新婚旅行なのに、イスタンブール入りした金曜から一日も太陽を見ていないという彼女。残念ながら、アンタルヤに来てもそれに変わりはなかった。私は同行を断り、キッチンの後片付けに続いて、残っていたベッドルームと子供部屋の片付けに専念することにした。その後、ミグロスに夕食のための買出しに出掛けた。百合子さんの話では、日本料理があまり得意でないオズギュルのために、今まで本などを見ながら、見よう見まねでトルコ料理を作っていきたという。しかし、どうしても一味足りないらしく、「これはトルコ料理じゃない」「ちょっと違う」と、言われてしまうのだとか。名古屋周辺には、けっこう日土カップルがいるらしいが、日本人妻の共通の悩みが料理づくりなのだそうだ。食に保守的なトルコ人が多いので、さもありなん、である。そんな彼女の話を聞く前は、イスタンブールでトルコ料理に飽きただろう彼女のために、夕食は和食にするつもりだったが、予定変更し、夕食には誰がやってもそこそこ美味しい魚のタヴァ（小麦粉をはたきフライパンで焼いたもの）にすることにした。ミグロスの魚屋で、あまり種類もない中からアルトゥンバシュ（腹に黄色い線の入った、おそらくタイの一種）を選び、１キロ強購入。以前グリルにした時は、ものすごく美味しかったのだが、タヴァが合うかどうかは、やってみないと分からない。　　　- * - * - * - * -　　　　　　メインが油を使う料理なので、ピラフの他にはさっぱりと、前菜も兼ねて全部で４種類のサラダをつくることにした。「見ていてもいいですか？」と言いながら、百合子さんがキッチンにやってきた。私はサラダの下ごしらえの手は休めずに、オシャベリに興じる。話題の中心は、やっぱり食事づくり。彼女は、トルコ料理に決して詳しい訳ではない私に、チョルバ（スープ）はどう作ったらいいか、煮物に何を入れたらいいかｅｔｃ、積極的に質問をしてきた。私も、少ない経験や知識を包み隠さず教える。チョルバには小麦粉や卵黄などでトロミや色を加えること。煮物には、とりあえずサルチャ（トマトや赤ピーマン、唐辛子などのペースト）を入れれば、簡単にトルコ料理らしくなること。などなど。ピラフが炊き上がり、４種のサラダが順々に出来上がっていった。紫キャベツのサラダ、大根のサラダ、ジャガイモのサラダ、ミックス・サラダである。ジャガイモとミックス・サラダは、油、レモン汁、塩をかける前の段階で置いておく。魚は切り目を入れ、小麦粉に塩を混ぜてはたき、少ない油で揚げる。黄金色の焼き目がつけばオーケーである。果たして、口うるさいオズギュルの口に合うだろうか。「これ何？ヨーグルトじゃないよねえ」と訝りながら、彼は大根サラダを口に放り込む。「なにこれ！なにこれ！」彼の変わった反応に、私はちょっと心配になって聞く。「味、へん？」「そうじゃなくて、オイシイですよ、これ。日本のダイコンとちょっと違うね。日本のみたいに辛くない」どうやら、気に入ってもらえたようだ。アルトゥンバシュはやや小振りだったせいもあるが、油で揚げると水分が抜けて、ちょっとパサッとする。「やっぱり焼いた方が美味しかったかなあ～」と気にすると、「十分美味しいですよ」と、百合子さんがフォローしてくれた。醤油をかけて、百合子さんは幸せそうに魚を突付く。オズギュルも、魚は嫌いじゃなさそうだ。結果、ひとり２尾の勘定で、全部で１２尾では少々足りないくらいだった。娘たちを寝かしつけた後は、ＤＶＤ鑑賞会。トルコ映画史における金字塔、ユルマズ・ギュネイの『YOL(道)』を観る。１９８２年のカンヌ映画祭で大賞パルム・ドール（黄金の棕櫚賞）を獲得した作品である。ところが、３０分も観ないうちに、画面が突然真っ暗になった。試しに他のＤＶＤもかけてみたが、画面が出ないで真っ暗なのは同じ。とうとう諦めてＴＶに切り替え、まもなく、移動ばかりで疲れている新婚カップルのために、早々に床に就くことにした。

  2004/12/22

• 不通が普通のＡＤＳＬ（２日目）＆落ち着かないバースデー

  昨夜９時頃、やはり例の電話がかかってきた。「現状に満足ならば１を、満足でなければ２を押してください」反射的に２を押したものの、ガッカリしたのはもちろんである。今朝、もういちど工事・点検担当者に電話し、窮状を訴えた。昨日とは異なる担当者が出、調べて連絡をくれるとのこと。しかし、今日は一日中家の中に籠もっている訳にはいかないのだ。まずは、電話代の支払いのため、連日のように続く雨の中、繁華街にあるテレコムまで出掛ける。その後、美容室に立ち寄って、カットとカラーリングをお願いする。実は今日は私の誕生日。月曜の朝からイスタンブールに用事で出掛けている夫も、今日の夜にはとんぼ返りしてくるはず。今夜は久し振りに落ち着いたレストランで食事をする予定になっているのだ。前回はあまりに黒々と染められてしまい、しばらく居心地が悪かったので、今回は「もう少し明るく」と注文すると、ヴァリアントにしようか？と聞く。所々に明るい色を差し込んで全体に変化をつけるものらしいが、仕上がりがあまり想像できぬまま、いつもと違うのも良いかもと、その気もなしにお願いしてしまった。そして３時間半後・・・ウスタ（師匠）の好みがずいぶん反映されているに違いないが、まるで雄鶏のしっぽのような頭になってしまった私・・・・。娘の学校の先生も、エレベーターに乗り合わせた隣人も、申し合わせたように「チョック・ギュゼル！（とってもキレイ）」と褒めてくれたが、どうにも落ち着かない。もともと眉も目の色も、栗色がかってはいるのだが、明るい茶色はどうも私には似合わないようだ。一方ＡＤＳＬの方は、午後４時になってもまだ不通状態が続いていた。再度テレコムに電話する。と、今日自宅まで点検に来てくれたとのこと。外出続きだったので、すれ違いになってしまったのだ。明日、再度訪問してくれること約束を取り付けて、電話を切った。６時頃から、娘も私も外出の支度をとっくに済ませ、夫の、父親の帰りを待った。夫の乗った長距離バスはなかなか到着しないらしく、結局帰り着いたのは夜７時半にもなってから。すぐに服を着替えてもらい、８時には家を出る。もともと、今夜くらいは、普段行かないホテルのレストランにしようと考えていたのだが、時間も遅くなったので予定を変更し、我が家に最も近い有名レストラン『７ＭEHMET(ｲｴﾃﾞｨ･ﾒﾌﾒｯﾄ)』にした。初めて行くレストランと違って、ここなら間違いないのは分かっているから安心だ。翌日も学校のある子供たちのため、長居はできなかったが、寛いだディナー・タイムを持つことができた。留守電のランプが点滅している。再生すると、例の自動音声テープがしつこく回り続けていた。どちらも選択されぬまま切れてしまったからだろう、以後この馬鹿げた電話がかかってくることはなかった。

  2004/12/21

• 不通が普通のＡＤＳＬと、不通が普通のカスタマー・サービス

  ここ数日、日記を更新するどころか、インターネットに繋ぐことが出来なかったのも、原因の半分はＡＤＳＬの不調にある。土曜、日曜の丸２日間、ＡＤＳＬがまったく通じなかったのだ。痺れを切らし、契約時に教えられた電話番号に掛けてみるが、誰も出ない。ＡＤＳＬの工事・点検担当者のはずなのに、しっかり土日は休んでいるようだ。今日もまだ繋がらなかったら、すぐに連絡しようとパソコンを立ち上げたら、あっけなく復旧しているではないか。そのおかげで溜まった日記をアップし、いつも訪問するお気に入りの日記ページを訪問したり、溜まったメールの整理をしたりしているうちに１日の大半が終わり、そして午後３時半を回った頃、再びＡＤＳＬが不通となった。例の電話番号にかけてみると、違う番号を教えられた。そちらにかけてみると、自動応答テープが回っているだけ。テンキーで自分の電話番号を知らせると、あとで折り返し連絡が入る仕組みになっているのだ。また、これかあ～と、ため息をつきながら、覚悟を決めて番号を入力する。また同じことの繰り返しかもしれないが、念のため試してみるか。ＡＤＳＬに変更するまで、我が家では、ＴＴネット（トゥルク・テレコムのインターネット・サービス部門）の１年契約用ＣＤを買って繋いでいたのだが、最初の頃、何かの問題があり、カスタマー・サポート・サービスという番号に電話をかけてみたことがあった。それは今回同様、電話番号を入力すれば後で連絡してくれるというシステムで、その翌日くらいに電話が鳴り、出てみると音声テープが回っているだけ。「現状に満足ならば１を、満足でなければ２を押してください」と、ふざけたメッセージが聞こえる。問題があるから電話してるのに、いったいどういう意味だ！とムッとしながら２を押した。「こちらからお電話差し上げます。受話器を置くのをお忘れなく」という音声が流れ、私は電話を切った。それから２～３日経ったろうか。また同じ電話がかかってきた。「現状に満足ならば１を、満足でなければ２を押してください」まったくふざけている！私はまた２を押し、電話を切る。それから１週間後、また同じ電話がかかった。「現状に満足ならば１を、満足でなければ２を押してください」アッラハッラ～！この調子で、こちらが諦めるまでテープだけが応答し続けるシステムなのか！？私はもう要らない！とばかりに１を押して、この無駄な時間の浪費に決着をつけた。さて、今度はどんな電話がかかってくるのか。ちょっとした見ものである。同じトゥルク・テレコムなんだから、やっぱり同じなんだろうなあ。オペレーターに繋げないで、馬鹿馬鹿しい質問をする音声テープだけが回り続けるトルコのカスタマー・サービス。それでも、一応番号を設定しているだけで、クレームが出にくくなる効果をもたらすのかもしれない。まあ、くだらない質問をするために、すぐに電話を掛ける人の多いトルコでは、ちょうどいいのかもしれないが。１～２日もすれば、いくら不調のＡＤＳＬも復旧するだろう。きっとその後で、自動音声テープの電話がかかってくるに違いない。

  2004/12/20

• 久々の来客で、大掃除！

  ふう～っ！ようやく終わった！さすがにちょっと疲れた。今日は一日ゆっくり休むとしよう。幸いに、食べ物はたっぷりと残っている。夕食までキッチンに立たなくて済みそうだ。夕食に人を招待するのは、本当に久し振り。今ではすっかり夫婦共通の友人となったヒロさん、ユリさん夫妻（仮名）を、昨夜は食事に招待していたのである。人を食事に招待するとなると、決まって私の頭を痛くする問題がある。掃除・整理整頓が大の苦手で、普段来客のないことをいいことに、思いっきり散らかし放題にしている家中の大掃除から、まず事を始めなければならないことである。お出しするメニューやテーブルセッティングを考えるのは、それに比べたらずっと楽しい。玄関ドアにリースを飾り、クリスマス・ツリーに電球をともしてサイドテーブルに置き、キャンドルも用意する。メニューは、和食を取り入れることも考えたが、食に保守的そうな夫妻の顔を思い浮かべて、私たちの好きなイタリア料理でまとめることにした。というわけで、一昨日は朝から掃除・片付け、パザールで野菜や果物の買い出し。午後からは学校で発表会を見学。昨日も朝から掃除・片付けの続き、ミグロスが開店するや、ワインや肉、花などの買出し。午後から半日かかって食事の準備をした。私にとっては、久し振りに忙殺された２日間だったので、日記すら更新できなかった。それにしても、こんな忙しい来客の時くらいは、お掃除の女性を呼びたいなあ～とつくづく思う。普段から掃除婦を雇ってない我が家では、急ぎの掃除を頼むとしたらカプジュの奥さんになるが、彼女にしても最近は仕事をたくさん請けているので、我が家にまでなかなかやってきてくれない。「あ～あ、こんな時、お掃除の女性がいたらなあ～。トルコの家は広すぎなんだから。自分で全部やるのは我が家くらいなもんだよ」夫が居るところで、わざと聞こえるようにつぶやいてみる。「僕はねえ、家の中に知らない人を入れたくないの」と、夫は絶対にいい顔をしない。私の最も苦手とするのが、レンジまわりの掃除。レンジ前方の壁とその周辺、レンジフードの油汚れ、棚の扉やオーブンの扉まで、洗剤を使い分けて磨き上げているうち、すっかり指先はボロボロになってしまった。まあ、日本なら大掃除の時期ではあるし、来週も来客があるので、グッドタイミングではあるのだが。きれいに片付いた状態がそう何日も続かないのが我が家でもある。早くも子供部屋は元通りになってしまったし・・・。あ～あ。掃除・整頓の得意な人が羨ましい・・・・。

  2004/12/18

• クレジットカード被害に、初めて遭った！

  夫からの電話。いきなり、「今月、何か大きい買い物でもした？」と聞いてきた。今週末が締めになる、銀行系カードの今月分の利用額がいくらになるか、確認に行った先から掛けてきたのだが、私にはまるきり心当たりがない。「ううん。特にないと思うけど。写真集は分割にしてあるし・・・」「いやあ、そんな小さい金額じゃあないんだよ。Ｘミリヤールあるんだよ、請求が」という。「ええっ！Ｘミリヤール！？」（※１ミリヤールは約７万５千円です）電話が切れたあとも、私はショックが消えなかった。Ｘミリヤールって・・・今の私たちにそんなお金ないよ～。大体、そんなに使ってるわけがないし・・・。航空券代にしても、最近夫はもっぱら安いアエロフロートばかり使ってるし・・・。３０分ほどして帰ってきた夫は、銀行からもらったという利用証跡リストを見せてくれた。「このふたつが、おかしいんだよ！」言われた箇所を見てみると、利用店舗名はふたつとも同じ見慣れない名前で、おそらく中国名。利用金額はＵＳドルにして、合わせて３３００ドル！である。その上に書いてあるのは、たぶん通貨名だ。ＣＮＹといえば、中国人民元ではないだろうか？とりあえず、夫はすぐに銀行に連絡し、私たちの利用したものではないことを訴えた。利用日にあたる日、両日とも私たちはアンタルヤに居たし、１回目にあたる日は警察に滞在許可証を取りに行ったり、刑事が家に来たりして、買い物なんかする余裕がなかったし、２回目に当たる日も上の娘の病気で、病院に連れて行ったりして、それどころではなかった。なにより、パスポートを見れば、その時期トルコに居ることは明白である。また、私たちは二人とも、インターネットで買い物をしたりする習慣もない。中国の会社から何かを買うという可能性はゼロである。銀行の係の話では、これはインターネット・ショッピングなどではなく、店舗での買い物・利用だという。それなら、間違いなく私たちはシロだ。夫も私も、いまだかつて中国には行ったこともないし、中国人の知り合いもない。最近中国に行ったというトルコ人の友人・知人もいない。第一、友人や知人だからといって、カードを貸したり見せたりするはずがない。中国人か、中国に行った人間の手によって、カードが偽造されたのだろうと思うが、いったいどこで、カード情報が漏れたり、コピーされたりしたのか、皆目見当がつかないのだ。夫は、もう１ヶ月も前に、銀行に当ててカード番号を記載したファックスとメールを送ったというが、その情報が盗まれでもしたのだろうか？あるいは、以前に商店やレストランでカードで支払いを行う際に、情報を盗まれてしまったのだろうか？今日午前中一杯をかけて、詳しく調査してもらったり、こちらの正当性を訴えたりしたおかげで、幸いにして、この２件の請求については、支払わなくてもよいという結論が出た。今持っている夫と私の２枚のカードを、ただちに利用停止にしたのはもちろんである。新しいカードは、１週間から１０日後に届くだろう。それにしても、今やどんなところでカード情報が漏れているか分かったものではないと、今日は我が身で思い知ることになった。ひとつの人生勉強である。再びカード犯罪の被害者となりたくなければ、現金決済主義に戻るしかないのだろうが、ほとんどの支払いをカードで済ませてしまっている今、それは現実からはほど遠い。カードを今まで通り最大限利用しながら、被害から我が身を守る方法なんて、いったいあるんだろうか・・・？

  2004/12/14

• 来年の目標～主婦大学生への道は遠し？

  私のプロフィール欄をご覧になった方が、どれくらいいらっしゃるか分からないが、そこに書いているように、私の２００５年の目標は「地元の大学で美術史か考古学を勉強すること」である。「大学生になりたい」というより、勉強がしたい。勉強できれば、どのような形でも構わないと思っている。とはいえ、正直なところ、２０年前に履修したような教養科目をいまさら一から勉強しなおす根気も時間もない。同じ勉強をするなら専門的な研究がしたいし、ここでは公表できないが、私の中で温めているテーマもいくつかある。しかしながら、私が大学を卒業して、とうに２０年（以上か、以下かは想像におまかせ）の歳月が流れてしまっている。現役の大学生、研究者であれば、交換留学制度を利用するとか、留学生試験を受けるとか、教授の推薦とか、さまざまなルートが考えられるのだろうが、現にトルコに住み、学問の現場から遠く離れ、コネも研究実績もない私のような人間が、どのような形であれ大学で勉強をしたいと思えば、どうもＹＯＳ（Yabanci Uyruklu Ogrenci Sinavi）外国籍学生試験という統一試験を受けて、一般学生にならねばならないらしい。（聴講生というようなシステムはないそうだ）以前から、この試験のことを含めた情報を得るために、大学に出向きたいと思っていたのだが、付き添ってくれる夫の都合がつかず、今日まで延び延びになってしまったのだった。今までに聞いているところでは、試験は４月頃だという。願書の申請は、その何ヶ月も前になるわけだから、ひょっとしたらそろそろ、いや、もう遅いくらいかもしれないと、少々焦りながら、広大な大学キャンパスの門をくぐった。人に聞きながら、向かった先は人文科学部の学生課である。学長職棟（本部棟）の中にある学生課本部か、自分の希望する学部の学生課で聞くといいと言われたからだが、結果的にこちらに先に顔を出してよかった。秘書と課長のたった２人ほどしかいない、小さな小さな学生課である。私たちの前には先客が３人いた。そのうちの一人は、私同様トルコ人と結婚しているイラン人女性で、ＹＯＳの経験者だった。以前受験したにかかわらず、ヴィザの関係で入学要件を満たさなかったらしい。今年再受験するつもりの彼女は、すでに準備を始めており、経験者ならではの得がたい情報を提供してくれた。彼女の話では、願書受理、試験等はすべてアンカラのＯＳＹＭ（Ogrenci Secme ve Yerlestirme Merkezi）学生選抜・配分センターで執り行うという。ＯＳＹＭの電話番号もくれた。２００５年度の願書提出は１月以降。３月か４月頃に試験があるだろうという。そして、気になる試験問題。彼女の「すごく簡単」という言葉に、私は少しだけ安心した。知能・知識程度をみる一般教養問題が２０問に、トルコ語の試験が４０問。６０問のうち４０問クリアできればいいとか。学生課の担当職員も、昨年度のものだが、ＹＯＳの要項をコピーして手渡してくれた。自宅に戻って後、そこに書かれてあるＵＲＬから、２００５年度の最新要項のページを開けて、変更点を確認した。手続き自体は、日本の大学入試システムとそう変わらないような印象を受ける。要は、まず２００５年度の願書提出用フォームを要項とともに、アンカラのセンターから郵便で送ってもらうか、直接出向いて手に入れること。郵便で送ってもらうためには、文書で要求すること。これらの書類は１月以降手に入れることができること。あとは、要項に書かれている期限に従って、受験費用１００ドルを払い、いくつかの添付書類と一緒に願書を提出すること。夫は、すべてアンカラとの間でやり取りしなければいけないことに、面倒くさいと少々難色を示したが、いつものように、私さえ決断すれば最大限の協力は惜しまないだろうと思う。一方私は、早くも試験のためにアンカラに行く日のことを考えて、子供たちの面倒をどうするか、想像をめぐらした。実家にお願いして、高校の卒業証明書や成績証明書も送ってもらわねばならない。あとはＹＯＳの受験者用件にはないが、大学の方からも証明書を入手することをいったん考えて、すぐに諦めた。大学のＨＰから各種証明書の申請方法を調べたところ、夫に直接申請に行ってもらう以外、方法がなさそうなことが分かったからである。他に方法としては、ＰＤＦファイルを開けてプリントアウトした申請書を郵送するとあるが、私のPCでは、そのＰＤＦファイルが開かなかったのである。さて、１２月もあと半月。大晦日と元旦のプログラムをどうするかなんて、悩んでいるどころではない。とりあえず、願書提出書類を送ってもらうための、手紙を書かねばならないのだが・・・本当に、私は大学生になる覚悟があるのか、いまひとつ確固たる自信がないのだ。２００５年は、もうひとつ、私たち家族にとって重要なプロジェクトが控えている。今現在進行中の建築プロジェクトが実現するまでには、一層私たちの時間が費やされるだろう。建物が完成した暁には、さらに忙しい日常が待ち受けているはずである。それでも、とりあえず試験は受けてみようか。受けないことには、なにひとつ始まらないのだから。２００５年１０月。運がよければ、私も夫も、この歳になって大学生になっているかもしれない。工業専門高校を卒業した夫だが、高校で履修した専門の延長に限り、ＯＳＳ（Ogrenci Secme Sinavi）学生選抜試験を受験することなく、大学付属の高等職業学校への入学資格が得られるのだ。実は今年度の申請もしていたのだが、私たちがこの夏日本に帰っている間に、志望校の提出期限が終わってしまい、チャンスを逃してしまったのだった。今まで映画館に行くたび、童顔とカジュアルな服装のためか学生に見られて、いつも学生料金を請求されてきた私だが、１～２年後には、もしかしたら正真正銘の学生になっているかも・・・？- * - * - * - * -こちらをご覧の皆さんの、来年への抱負、目標って何ですか？よろしかったら、お聞かせくださいませ。

  2004/12/13

• 

  ギョズレメジにて～ある朝食会の風景**画像多数あり

  すっきりと青空の晴れ渡った今日、日曜日。上の娘のクラスの朝食会がある。集合は、朝１０時半、学校前。担任教師と９組の家族が集まったところで、学校を出発。車を連ねながら、アンタルヤ郊外のギョズレメジに向かった。アンタルヤ市内をはずれるとすぐに、左右にはオレンジ畑が広がる。黄金色に色付き始めたばかりのオレンジが、暖かな日差しを浴びてまぶしいほどだ。ギョズレメジとは、ギョズレメ（中にひき肉やほうれん草、チーズなどの具を入れて焼いたトルコ風のクレープ）を焼いて食べさせる店のことだが、アンタルヤ郊外に多いギュズレメジは、ギョズレメ以外にもバズラマ（ギョズレメを厚手にしたパン）も焼き、卵、トマトやキュウリ、チーズ、オリーブ、ハチミツなどのトルコの典型的な朝食も提供してくれる場所で、ほとんどは地元の農家が自分の家の敷地を使って経営しているものである。今日向かったギョズレメジは、その中でも特に、アンタルヤのソスィエテ（上流階級）に人気の高い場所。山の麓にあるオレンジ畑に囲まれた広い敷地。木々の間にたくさんのテーブルやチャルダック（高床式の座敷）が据えられ、辺りをおん鶏、めん鶏が駆け回り、アヒルが寝そべり、手作りのブランコやハンモックなどの子供向け（とはいえ、大人も使う）遊具が備え付けてあり、子供たちがのびのびと遊べる空間が備わっている。今からちょうど１年前に、友人夫婦に連れられて初めて来たときのことを思い出す。左右に広がるオレンジ畑と、たわわに実をつけたザクロの木が軒先に植わった農家、住民のほとんどが農業を営むような小さい村々を通過しながら、アンタルヤから１５～２０分も行くと、このようなギョズレメジの看板が次々と登場する。そして、そんな農家のひとつに着いた時、田舎家と畑しかない周囲の風景にまるきりそぐわない、２０台を越すピカピカの高級車が列をなして駐車してあったのだから、驚いた。医師、経営者、企業の重役といったアンタルヤのアッパーミドルたちが、週末、休日のブランチをこういう場所で何時間も掛けてゆっくりと取る、そんな習慣があることさえ、その時初めて知ったのだった。- * - * - * -ところで、この朝食会。子供たち同士、親同士の懇親を目的としたもの。今週月曜日にもたれた父兄会で決まったものだが、授業に比重が置かれている学校生活の中では、子供たち同士が思いっきり遊ぶ機会がなかなかない。学校以外の場所で、子供たちが打ち解けて遊ぶ機会が必要だという意見が出たからである。他所の学校からやって来た子供たちが多く、おまけにクラスの大半を男子が占めるせいで、とかくクラスの中が分裂しそうになったり、喧嘩が始まりやすいと、男の子を持つお母さん方からの問題提起があったのだ。ちなみにこのギョズレメジは、父兄会の書記役と今回の会計役を務めるツヨシくん（仮名）のお母さんの推薦によって決まった。「エミちゃん（娘の仮名）は来れる？」と彼女に聞かれて、「夫が居るから、来れると思います」と答えると、にっこりと微笑んで「エミちゃんがいなかったら、何にもならないから」と、彼女は妙な言い方をした。後でふたりきりになった時、彼女は私も耳元でこう囁いた。「ツヨシは、エミちゃんに恋してるのよ」「そうなの？」と驚いた振りをしながら、夫に言ったらまた怒るだろうなあ～と、私は夫の反応を思い浮かべた。- * - * - * - 参加人数は、大人、子供合わせて２５人を超す大所帯。それでなくとも、サービスの順番が回ってくるのが遅いこのギョズレメジでは、なにもかも自分たちでやらなければ、いつまでたっても朝食にありつくことはできない。皿、フォーク、ペーパーナプキン、コップを持ってきて、一人一人に配る。トマト、キュウリ、玉葱（トルコの人は生でもよく食べるのである）を運び、スライスしてお皿に盛り付ける。チーズ、オリーブ、ハチミツも持ってくる。ガスボンベを持ってきて火をつけ、チャイダンルック（チャイ用の２段ポット）を火にかける。卵用の小さいフライパンにバターを入れて運び、チャイ同様ガスボンベに火をつけて、卵を割り、スクランブルエッグにする。焼きあがったギョズレメやバズラマを運ぶ。ここまでくると、キャンプ感覚であるが、常連の人たちは、勝手知ったりで、足りないものがあれば、台所までズカズカ入って取ってくるという具合。いかにもトルコ的なのは、一部の人だけ働き、残り大勢はゆったり座って歓談しているだけ。座っている人も、日本人のように「悪いわね」とか「お疲れさま」とか「手伝おうか」とかいう言葉はまず言わない。働いている人は、続けて働き、一度座った人は、タバコ片手にオシャベリに興じ、絶対に腰を上げない。中にはオリーブやらチーズやらをつまんでいる人もいる。どうしても日本人根性の抜けない私は、最初は様子を見ていたものの、居心地が悪くなって腰を上げ、積極的に動き始めた。野菜を切って盛り付けたり、足りない皿やコップを運んだり、子供たちに取り分けたりする世話にかかりきりになって、スクランブルエッグ係のお母さんと、幹事役のお母さんと一緒に、子供たちの食事が終わって一息つくまで、なかなか席に着くことが出来なかった。ここの朝食はたっぷりとして、滋味深いものである。オリーブの塩漬けも、白チーズもさっぱりと上品。トマトやキュウリは新鮮。卵は濃い黄色。これは自家製ではないはずだが、ハチミツだって、本物の味がしている。そして、ここの名物バズラマ。ハムル（パン生地）の中にほうれん草やチーズをはさんで、厚手のお好み焼き状に焼き上げたパンには、自家製のバターがたっぷりと載せられ、馥郁とした香りが漂っている。ﾊﾞｽﾞﾗﾏ(食べかけで失礼！)たっぷりとした朝食を済ませた子供たちは、とっくに遊びに戻っている。父兄会の時には、分裂しがちだと聞いた男の子たちも、皆んな一緒になって仲良く遊んでいる。やっぱり、子供は子供。心配することなどなさそうだ。一方母親同士、父親同士の会話もはずんだ。私はたいてい聞き役だけれど、居心地の悪い思いをすることもなく、暖かな日差しの中で、お母さん方の話に耳を傾けながら座っているだけで満ち足りた気分だった。話し好きの夫の方も、ときどき話題の中心になりながら、他のお父さん方との新たな親交を深めることができて、なかなか有意義な時間を過ごすことが出来たようだった。私たち一行は、１２時前から３時間くらいかけてゆっくりと朝食とおしゃべりを楽しみ、午後３時を回ってから、三々五々帰途についた。- * - * - * -そうそう。夫の話では、ツヨシくんのお父さんまで同じことを言ってたという。「ツヨシはエミちゃんが大好き」だって。「もうイヤんなっちゃうよ～」夫は苦笑いして、そう私に報告した。

  2004/12/12

• ババの日本みやげ

  昨夜遅くイスタンブールに着いた夫は、少しでも早く子供たちに会うために、夕方到着の飛行機でアンタルヤの我が家へ帰ってきた。いつものように、ドアが開くのももどかしく、父親の首っ玉に飛びつく娘たち。夫も夫で、靴とコートを脱ぎ捨てるが早いか、かばんから次々とお土産を取り出し、娘たちに披露する。夫が最初に取り出したのは、背丈５０ｃｍほどの小さいクリスマスツリー２本。電飾付き。ニットの帽子とマフラーを付けた、可愛い雪だるまのぬいぐるみ２個。倉庫に眠っていたサンタクロースの人形２体。自動演奏付き、バイオリンのオモチャ２本。シャープペンシル２本。お分かりのように、何でも２つずつ。同じものでないと、必ず喧嘩になることから、上の娘に買うときは下の娘にも、下に買う時は上にも・・・と、夫はいつのまにか２セットずつ買う習慣がついてしまった。ざっと見ながら、私はまたもや不安になる。「そのツリー・・・・どこで買ったの？イスタンブール？それとも・・・・もしかして日本？」「日本だよ」「う～ん。じゃあ変圧器が必要じゃない。どこで使うつもり？」「安くなってたから」と言って、日本からいろいろと電気製品を買ってくる夫。本来なら有り難がらねばならないのかもしれないが、我が家にある３台の変圧器はすでに一杯。タコ足配線で、大変なのである。次に出してきたのは、１１月に刊行したばかりの『ローマ人の物語１４・１５・１６―パクス・ロマーナ（上）（中）（下）』最後に、頼んでおいた食料品。「この中、全部食料品だから」と言って、キャスター付きのキャリーをポンポンと叩く。私の頭の中には、またもやチラッと不安がよぎる。今回頼んだ食料品は、全部で９種類。といっても、こんなに嵩張るだろうか・・・？キャリーのファスナーを開けて、中を覗いてビックリ。ありゃりゃあ～。これ冷凍食品じゃないの！？皮を剥いて、煮っ転がし用に裸にされた業務用冷凍里芋が４袋。キンピラ用に千切りにされた同じく業務用冷凍ごぼうが２袋。まだヒンヤリと冷たいが、とっくに解けてしまってる。それもこんな量。食堂じゃああるまいし、どうするんだ？再冷凍してもいいんだろうか？「一度解凍したものを再凍結させないで下さい。品質が変わることがあります」袋にはしっかりそう書いてある。そうだよなあ～普通。ＦＡＸに「野菜」と書いておいたので、ちゃんとスーパーの野菜コーナーで生（泥付き）の状態で買ってきてくれることを期待していたのだが、馴染みの食品問屋で買ったに違いない。仕方なく、とりあえず冷凍庫に放り込んだ。それと、お正月用に切りモチ２袋と塩蔵カズノコ・・・？ありゃりゃあ～。これまたシマッタ。塩抜きする前の状態のが欲しくて、ＦＡＸに「塩漬け」と書いておいたのだかが、これは塩抜き済みの魚コーナーで売られてるヤツではないか。賞味期限は１２月２４日とある。正月まで持たないじゃあないか。一瞬ためらったが、エイヤッっと、モチもカズノコも冷凍庫に放り込んだ。だしの素も、同じく業務用大箱が２箱。さつまいもが３袋。こちらはちゃんと「生」のまま。水煮タケノコが２袋。板海苔が４袋。そして、米が１０ｋｇ。重さを厭わず、いつも頼んだ量より多め多めに買ってきてくれる夫には感謝してもし足りないが、同じものばかり大量にあっても、食堂でもないし、毎日和食を食べているわけでもないから、なかなか減らない。そのうち海苔はしけり、タケノコにはカビが生えてしまう。今回も、アンタルヤに住む日本人の友人や、イスタンブールから友人がやって来た時に、おすそ分けすることになるに違いない。それでも、手元になにかしら日本の食品があるというのは、有り難いことである。特に、今回は忘れずにモチをリクエストしておいたので、新年には２年振りに雑煮で和風の正月を過ごせそう。それもこれも、夫のおかげである。お土産に文句を言ってはばちが当たるが・・・・いつもながら、多すぎだよ～、ババ。

  2004/12/05

• 魔の日

  昨日は、夫と私たち家族にとって、衝突が耐えない一日となった。せっかくの休日。雨もようやく止み、晴れ間が見えるようになった午前中、繁華街まで用事と買い物で出掛けたのだが・・・。まずは、飛行機のチケットなどを取り扱う旅行エージェントへ。来週火曜日にイスタンブルで用事のある夫は、予約してあるイスタンブルまでの国内線往復チケットを引き取る予定があった。エージェントのオフィスで、娘たちはメモ帳とエンピツを借り、用事が済むまで大人しくお絵かきに興じていてくれた。しかし、オフィスを出ようという段になっても、下の娘は一向にその場を離れようとしない。「あなたの服を買うのよ」という言葉も聞かず、頑固に椅子に座ったまま、お絵かきを続けようとする。ようやく立ち上がろうとしたら、今度は借りていたエンピツをもらって行こうとする。エージェントの女性は、「エンピツくらい、いくらでもどうぞ」とか「用事が済むまでここに（娘を）置いておいてもいいですよ」と言ってくれるのだが、そういうわけにもいかない。無理やり立ち上がらせ、連れて行こうとすると、案の定、娘は泣き出した。オフィスを出ると、夫は娘を叱った。「あなたは、ババ（＝パパ）の言うことを全然聞かないね。少しは言うことを聞きなさい」父親に腹を立てたらしい娘は、私たちの先を、怒りながらズンズン歩いていく。突き当たりで、右か、左か、キョロキョロと首を振っている。後から追いついた私は、娘の手を取り、買い物予定のショッピングセンターへと先へ向かった。夫と上の娘は、私たちの１０ｍくらい後を着いて来ている。前回、上の娘に秋冬物のコーデュロイ・パンツや新しい長袖Ｔシャツを買った時、下の娘の分はなぜか買わないで帰ってきた。下の娘の激しいやきもちを避けるため、上の娘を説得し、妹の分を買うまで新しい服はおろさないで我慢させていたのだ。下の娘にも同様のコーデュロイ・パンツと、トレーナーなどの上もの、それから二人ともに冬用の暖かいタイツなどを買ってやり、本当なら、昼食には子供たちの好きなハンバーガーでも食べさせるつもりだった。しかし、娘のどこまでも意固地な態度が、これらの予定をほとんどふいにしてしまった。ジーンズやパンツを買う時によく行く店で、上の娘のパンツを買った同じ店にまず立ち寄った。そこで、娘好みの濃いピンク色に、足の付け根と裾に花のアップリケとキラキラ光るビーズが縫いつけられたコーデュロイ・パンツを見つけ、迷うことなくそれを購入。後は、Ｔシャツかトレーナーでも、と思って私たちは店を出た。夫は娘に「ありがとうは？」とお礼の言葉を要求したのだが、下の娘は、さっきの件もあって、簡単に「ありがとう」を言わない。「ババは、いつも私に怒ってるから」とか、「私と手を繋いでないから」とか、次から次へと言い訳を考え出す。しまいには「ババが買ってくれたんじゃない。アンネ（＝ママ）が買ってくれたんだから」と言い出した。夫はじきに「もういいよ。もうあなたには何も買ってやらない。何でも当たり前だと思ってるんだから」と怒り出し、「もう、まっすぐ家に帰る！」と、上の娘の手を握ってズンズン先を行き始めた。下の娘は泣きながら、それでも頑として「ありがとう」は言わない。「ババが私に怒ってるから」「手を繋いでくれないから」「抱っこしてくれないから」「私のこと嫌いだから」云々。ひっきりなしに言い訳を繰り出してくる。要は、甘えと我がままである。二人の後ろを着いて行きながら、私は娘に耳うちする。「早くババに、ごめんさい。ありがとう、って言った方がいいよ。そうしないと、ほんとうに嫌われちゃうよ」「あなたがありがとうって言わないから、手を繋いでくれないの。ありがとうって言ってごらん」しかし、頑固な娘は同じ言い訳を繰り返す。結局、そのまままっすぐ駐車場に着き、夫は車のエンジンをかけた。あ～あ、買い物もハンバーガーも今日はもう中止。これで、お昼に何か作らなくちゃいけなくなった。私はため息をついた。「じゃあ、帰る途中で写真だけピックアップしたいから、こうこう、このルートを取って、その角を右に曲がったところで待っててくれる？」方向音痴のせいで、一方通行の多いアンタルヤの道が一向に覚えられない夫に、私は細かく道順を説明した。「そう、僕もそのつもりだったんだよ」と夫は、私の教えた道と頭の中の地図が一致したらしく上機嫌。しかし、大規模道路工事中のアンタルヤ市内の渋滞が、また夫を混乱に陥れた。車がなかなか流れないところを見た夫が、出るべき通りの手前で、横道に入ってしまったからだ。私はちょっと困ったなあ、と思う。ここから、あちら側の通りに出てしまうと、右しかいけないし、あの道はＵターンができない。私たちは左に行かなくちゃいけないのに・・・。私はつい愚痴を言う。「裏道なんか入らないで、少し我慢してくれればよかったのに。その道はＵターンできないんだよ。だから、最初からあっちの道に出てって、教えたのに」こういうときの夫もまた頑固だ。「俺は知ってる。間違ってはない」と言い張った。案じた通り、Ｕターンできない車は左折だけしてそのまま直進した。「だから言ったでしょ。私が説明したとき、ほんとは道が分かってなかったの？」夫は突然キレて、私に怒鳴り始めた。「写真を取りに行くのか、行かないのか！どっちなんだ！」売り言葉に買い言葉。私の声も大きくなる。「行くに決まってるでしょ！だから最初から道を教えたのに、あなたが間違っちゃったんじゃない。それとも、分かってないのに、分かった振りをしてたの？」夫は、うっかり横道に入って失敗したこと、道が分かってないことを絶対に認めようとしない。「俺は間違ってない。知ってるんだから。これが正しい道だ」本来行くべき道に戻ろうと、夫はまた横道に入る。狭い道を進み、狭い四辻で曲がろうとしたとき、ガガガッーーと車の左後方で音がした。興奮して注意のきかなくなった夫が、角に停まっていたトラックの角で車を擦ってしまったのだ。「アッラハッラー（なんてこった）！人が車を運転してる時に、なんでそんなにベラベラしゃべるんだ！」こうなると、何でもかんでも、人のせいである。私は押し黙って、車が本来出るべきだった道に出るまで待った。しかし、胸のうちはもうムシャクシャしてしょうがない。「なにが、正しい道だよ。まったく。間違いを認めようとしないんだから・・・」ようやく予定の交差点に来ると、「早く降りて」と、さっさと降ろされた。写真を引き取って戻ると、子供たちは私たちの剣幕に怖れをなしたのか、ワゴン車の一番後ろの荷物スペースに行ってしまっていた。「これからどこ行く？」夫は少し気分が落ち着いたのか、興奮しすぎたことを反省したのか、少し声音も優しくなって、私の方にやたらと話しかけてくる。一方、気分の晴れないのは私の方である。「ミグロス」と、一言だけ答えた。　　　- * - * - * - * -ミグロスへは、結局ひとりで買い物に行った。４つの買い物袋を提げて車に戻ると、夫は慌てて車から降り、「重いでしょう？」と妙に優しげ。私は「いつもと同じ」とそっけなく答える。それでも、夫の気分さえ戻れば、私たち家族は平穏に過ごせるのだが・・・。夕方、イズミールに居る夫の親戚から電話があった。子供たちに話を聞かれないように、サロンに行っていた夫の声が次第に大きくなっているのが聞こえる。とうとう夫は大声で怒鳴っていた。「俺にどうしろっていうんだ！いいかげんにしろ！」ダイニング・チェアにどっかと腰を下ろし、夫はまた涙声になっていた。「なんで俺はこんなに苦労しなくちゃいけないんだ・・・」「ババ、ちょっと、怒り過ぎたんじゃない？きっと今頃泣いてるよ」私は、なにかというと夫に頼りすぎる彼女のことが分からないではなかったが、彼女をそこまで甘えさせてしまったのは夫の責任でもあると思っている。その後、夫は怒りすぎたことを反省し、電話に出ようとしない彼女に連絡をつけるため、イズミールの知り合いに片っ端から電話をして手を尽くした。最後に連絡がつき、本人と直接話をし和解したことで、夫の心もいくらか落ち着いたが、昨夜の夜行バスで急遽イズミールに発たざるをえなくなった。夫は今日一日、彼女のためにできることをし、再び夜行バスでアンタルヤに戻ってくる。　　　- * - * - * - * -そして・・・夫の居ない時に決まって、家族が体調を崩す。深夜、上の娘がベッドから飛び起き、トイレに駆け込んだ。食べたものを戻している。じきに、下痢も始まった。とうとう昨夜は何度かベッドとトイレの間を行き来し、今朝までの間に、胃の中も腸の中も空っぽになってしまったようだ。顔色は黄色く、水分も欲しくないという。一昨夜から、ちょっと食べ過ぎではと思っていたが、急に空気が冷え込んだせいで、身体の中まで冷えてしまったのだろう。我が家でも、とうとう昨日、カロリーフェル（セントラル・ヒーティング）にスイッチを入れた。これからの寒い季節、せめて家庭の中くらいは暖かくして過ごしたいのに、人は時々自分の感情を抑えられなくなってしまう。うつ病の多くなるのも、ちょうどこれからの季節。心に春を運んでくるような、そんな出来事ばかりならいいのに・・・。昨日はまさに、私たち家族にとって、魔の一日となった。

  2004/11/21

• 工業団地での忘れ得ぬ出会い

  （※これは昨日、１１月１９日の日記の続きです）午前中、今日こそは工業団地の中にある、木材加工工場に出掛け、木材の下見をすることにした。私たちのプロジェが委員会の会合に諮られるのが１ヶ月延びたため、バイラム前の先週金曜日、建築家と打ち合わせをし、当座の対策として何をするべきかを話し合った。（私たち夫婦が建築家と進めているプロジェについては、９月１８日の日記に、委員会会合の経過報告としては１１月８日の日記に記載があります）建築家の話では、建物自体の建設には、そう時間はかからない。問題は、内装に何の素材を使うか、どんな物を取り付けるかを決定するのに時間がかかることだ、という。それは、私たちにもよく理解できた。少しでも時間を節約するため、今から材料の選定を少しずつ始めよう。まずは室内の床・壁・天井・扉等に使う木材について、素材と値段を勉強しておいてくれ、という話になったのだった。自宅から車で５分ほどのアクデニズ工業団地には、敷地内の約半分を車の修理工場が占め、残り半分には、木材加工業、内装業、家具製作工場、船工場などが集まっている。今までにも家具のオーダーなどで何度も足を運んでいるので、木材業者の集まっている地域も、大体は心得ていた。私たちが工場の構えを物色しながらゆっくり車を進めていくと、ちょうど右手に、大きな木材加工業者が見えた。看板にはドーラマ（建具）＆モビリヤ（家具）とある。うん、ここでまず聞いてみよう、と車を停めた。そこは、素人目にもかなり大きい部類にはいる業者だということがわかった。うずたかく積み上げられた角材の山があちこちに置かれている。すぐに３人の男性が顔を出した。その中でひときわ背の高く、まさに大男という形容の相応しい男性が、この工場の主ハジュ（メッカへの巡礼を済ませた男性の敬称）・ベイ（氏）だった。私たちが「いくつか木材のサンプルを拝見したいのですが」と申し出ると、ハジュ・ベイは次から次へと聞かれるがままに、木材の名前、生産地、価格、耐久性など、闊達に、なにひとつ包み隠す必要もない自信に満ちた態度で私たちに教えてくれた。角材の状態で常備されているものの種類はそう多くない。１０種類程度だろうか。ロシアやアフリカ産の木材も多い。ハジュ・ベイは、隣の部屋へ私たちを案内した。そちらの部屋は、すべて木材を薄くスライスしたカプラマ（表装）用素材の倉庫になっていた。全部で何十種類あるだろうか。いや、何十種どころか百種にも及ぶカプラマ材がびっしりと倉庫に眠っていた。この工場では、自ら仕入れた木材を専用の機械で薄くスライスしているので、ここにあるカプラマ材と同じ木材がすべて手に入ると請け負った。ハジュ・ベイは６０代に入ったばかりだろうか。この道なんと４６年。息子３人を今ではロシア・イタリア・アフリカへと赴任させ、直接買い付けさせているという。これだけの種類を誇る業者はトルコ中探してもそうはない。西はイスタンブル、エディルネから、アンカラももちろん、東はガズィアンテプまで、トルコ全国からカプラマの注文が来るのだと、決して嫌味でなく自信たっぷりに彼は語った。「お金じゃない。何かというと、木への関心なんだよ」工場をここまで発展させたのは、ひとえに自分の木への愛着からだと語るハジュ・ベイは、いまや自身の農場まで持つお金持ちだが、それを全く匂わせない正直で闊達な雰囲気に満ちた、いいオヤジさんだった。大きな体躯にニット帽、ロゴ・トレーナー、いい具合によれたジーンズ姿も決まっている、トルコには珍しいオシャレなオヤジさんなのである。１ヶ月間の断食月をメッカの友人宅で過ごし、昨日帰ったばかりだという彼。夫は、この出会いは神さまが引き合わせてくれたと言う。道に迷うこともなく、車はスーッと引き寄せられるようにこの工場の前にやってきた。買うんなら迷わず彼から買うよ、と夫は断言した。　　　 - * - * - * - * -さて、お腹も空いたし、家に戻るか。「今日もスパゲッティだったりして？」夫がからかうように聞いた。外出先から戻り、昼食の支度を短時間で済ませるとなると、ついつい麺類が多くなる。昨日の昼食にもトマトとツナのスパゲッティを作ったばかりだった。私「う～ん。じゃあ、うどんか焼きそばは？」夫「そう、焼きそばがいい」キャベツや人参、玉葱はある。あとはタンパク質があればなんとかなる。バッカルでソーセージでも買うかなあ・・・。あれこれ考えていると、夫が工業団地内にあるガソリン・スタンドに給油のため車を停めた。夫が外からガラスを叩いた。「ここにも食べるところがあるよ」見ると、ガソリン・スタンド内に、新しくロカンタが出来ていた。「へえ～。じゃあ、ちょっと見てみよう」車を下りて中を覗いてみると、チョルバ（スープ）にピラフ、茄子の煮物、そして何種類ものソーク・メゼ（冷菜）やサラダがあった。手前に発泡スチロール製のトレイ。実はここ、工業団地内で働く職人たちのための、定食屋なのだった。見た目にもなかなか美味しそうだし、ここで食べて行ってもいいなあと、一応値段を聞いてビックリ。なんと、一人前２．５ミリオン（約１９０円）。今時、学生食堂でも、この値段では食べれまい。娘の学校の給食だって、１日あたりに換算すると５ミリオンも払っているのだ。夫を手招きして、「ここで食べよう」と告げた。チョルバから順番にトレイに注いでもらう。チョルバは黄色のメルジメッキ・チョルバス（レンズ豆のスープ）。ピラフ、茄子の煮物と続き、メゼ類だけは自分で好きなものを取る。私はチキン・サラダ、根セロリのオリーブ油煮込み、ズッキーニのフライ（ヨーグルトがけ）を選んだ。場所柄に似合わず、見た目は上品。お味の方も、見た目通り、塩味控えめでさっぱりと美味しかった。パンも新しいものが用意されているし、ペーパー・ナプキンだって揃ってる。「これで、２．５ミリオンだなんて、信じられないね。この間のロカンタなんて、一皿５ミリオンもしたのに」私と夫は、先日の里帰りの途中で立ち寄ったロカンタの悪口をひとしきりしながら、「これなら毎日来たっていいね」なんて、冗談を交わした。レジでの会計の段になって、夫は不思議な計算を始めた。２人前５ミリオン。水が５０万で、合計５．５ミリオンのはずだったが、夫は全部で８ミリオンを払おうとしている。「３人分。後でＢという男がやってくるから、先に払っておくよ」私はＢの名前も心当たりがなかったし、夫の意図が咄嗟には理解できなかった。店を出ると、夫は言った。「ほら、修理屋がいるでしょ。いつもうちの車を直してくれる。彼、いつも一生懸命やってくれるからさ」そう言われて初めて、私にも合点がいった。「彼、店の２階で寝起きしてるんだよ」私は、夫のことをまた少し見直しながら、同時に、工業団地内で働く職人たちの貧しさを考えて、しんみりとしてしまった。「そうだよね。私たちには２．５ミリオンなんて安いけど、ここで働く人たちには２．５ミリオンでも精一杯かもしれないね」夫が愛車のポンコツワゴンをいつも預けている修理工場は、ロカンタのあるガソリン・スタンドからは目と鼻の先だった。車のブレーキをかけ、クラクションを鳴らすと、私にも確かに見覚えのある、全身を車の油で黒く汚した彼が、笑顔で車に近づいてきた。夫は窓を開け、笑いながら彼に言った。「ここに立ち寄らずには通り過ぎれないからね」「そこのガソリン・スタンドにロカンタがあるだろ？食事代を置いてきたから、後で食べに行って」彼は、済まなさそうな顔で夫を見た。夫はすぐに窓を閉め、車を発進させた。褒めるのは得意でない私が、今回の夫の小さい親切は、素直に褒めていた。「ババ（＝パパ）、善いことしたね」「彼、ほんとにうちの車のことが好きで、一生懸命やってくれてるからさ」「こんなことするのが、好きなんだよ。スモール・イズ・ビューティフルっていうだろ」夫は時々こんなクサイ台詞を吐く。私は苦笑いしながらも、なんとなく心が温かくなった。

  2004/11/20

• 学校売却問題＋ADSL、難産の末に本日ようやく開通！

  諸事情から、丸々１週間、日記を留守にしてしまいました。留守中に訪問してくださった方々、どうもありがとうございます。バイラム休暇明けの１７日の日記から順番にアップしていくつもりですので、よろしければご覧になってみてください。ＡＤＳＬですが、おかげさまで、今日の夕方無事が開通しました。これからは電話代を気にせず、ゆっくりとＰＣに向かうことができ、気分上々です。反面、今度は、これまで以上に時間のやりくりを上手にしないといけなくなりそう・・・。　　　 - * - * - * - * -夫のアンタルヤ滞在中は、子供たちの送り迎えはほとんど夫にお願いしている。しかし今日は、昨日聞いた学校売却の件を確かめたかったので、朝食が終わると私も手早く支度をして、一緒に学校に出掛けた。経理・事務室は、いつも以上にガランとして、奥の方に見慣れた経理担当者が２名いるのみだった。夫は、直接的な言い方を避け、遠回しに切り出した。「実は、昨日知ったばかりなんですが、学校は今問題を抱えていますよね。それについてお聞きしようかと・・・」経理担当者は、すでに何十人にも同じ説明をしたのだろう。答えをあらかじめ用意してあるかのように、すらすらと説明を始めた。私には彼の言ったことがよく聞き取れなかったので、帰り道、夫に聞くと、オーナーが共同経営者から借りたお金があり、そのために訴えられていること。学校売却の広告は、その共同経営者が勝手に出した嘘の広告であること。裁判に関してはここ１～２週間ではっきりすること。そんな風に説明したのだという。私たちは、同じ感想を持っていた。それは、きっと嘘だと。それを話す時の彼の顔は、何かを内に隠したような、硬い表情に覆われていた。夫の推測は、大方、銀行から借りたお金があって、返せなくなったのではないか、というものだ。広告が、他人が勝手に出したものだというのは、おそらく、まったくの方便に過ぎないだろう。家に戻る前に立ち寄ったバッカルで、娘たちと同じ学校に通う６階の０ちゃんのお母さんにちょうど出くわしたので、彼女にも意見を聞いてみた。彼女は、この問題について割り切った意見を持っていた。私立学校の経営者は、学校をビジネスの手段として運営しているだけなので、経営が上手くいかないと思えば、すぐに他人に売る。今までにも、マフィアに売られたこともあるし、売られたからといって、何も変わらなかった。先生がいて、教室があって、生徒たちがいて、きちんと授業が行われれば、なにも問題ない。第一、これは初等教育（義務教育）機関だから、これを途中で投げ出すということなど、新しい経営者もしたくともできない。他のコレジ（私立学校）も似たり寄ったりで、Ａコレジだって、経営者が変わってすでに２～３年経つ。中で働く人が入れ替わっても、学校はなくならないから、心配する必要はない、というものだった。上の娘が通い出して以来、私たちも実際、経営者が変わったことは経験していた。１年目は不安要素が多く、経営ももたついている感じだったが、２年目には挽回し、雰囲気もずっと良くなったと感じていた。しかし、このような経営者交代劇が頻繁に行われるようでは、子供への影響がないわけないのではないか？この調子で、リセ（高校）まで安心して行かせられるのだろうか？彼女は、そんな先のことは心配しなさんな、と笑い飛ばした。娘のクラスの女の子二人がさっさとＡコレジに転校したことを伝えると、彼女はそれについても、こういう考えを披露した。それは、親の都合。親が経営者の交代を言い訳にしているにすぎない。例えば、Ｏちゃんのクラスでも、コレジの授業についていけない生徒がいたのだが、それを学校や教師のせいにして、またもとの学校に戻っていった生徒がいると。それは、私にも頷けるところだった。娘の仲良しのひとりだったアイちゃんも、元はといえばＡコレジから２年前に移ってきたばかりだった。それについてお母さんは、「あそこは金、金ばかり」とか、「意見が合わなかった」と愚痴をこぼしていたというのに、今再びＡコレジに戻ったことになる。おそらく子供にとっては、良い教師、良い友だちにさえ恵まれれば、どんな学校でだってちゃんと学んでいけるものだと思う。大体、私立学校間で、それほどの差はないと私も聞いている。とすれば、慣れ親しんだ学校の雰囲気、教師、友だちから引き離すのは、親のエゴにすぎないのではないか・・・・？彼女は、最後にこう締めくくった。唯一の心配は、クラスの生徒が少なくなって、クラス自体がなくなることだと。そうしたら、私たちはどこに行くべきか？と。　　　 - * - * - * - * -※文章が長くなりすぎたので、この続きは１１月２０日の日記としてアップします。

  2004/11/19

• 滞在許可証受け取りと刑事の訪問

  カプジュ（マンションの清掃やメンテナンス、住人の御用聞きをする住み込み管理人）の話では、昨日外出していた間に、私の居住確認のため警察が来て、留守だと分かると、センターの方に連絡してくれと言い残して帰っていったという。受け取りは、本日１６時半の予定である。その前に確認が必要に違いない。で、朝一番に、まず警察本部の外国人課に確認の電話を入れた。すると、私の滞在許可証はもう来ているので、いつでも受け取れる。センターの方には連絡の必要はない、とのことだった。それなら、と車に乗り込み、いそいそと警察本部へ。引換証を提出し、パスポートで本人確認をすると、滞在許可証を引き渡してくれた。ページをめくってみると、「その他の記録」欄に、２００６年１１月２０日までの「延長」のスタンプ。それだけ。たった、これだけのために７４０ミリオン（約５万５千円）も払わされたというのに、手数料の記載すらない。他の書類と一緒にホチキスで留められていたので、針跡が痛々しい。せめて新しい許可証を発行するくらいしてもいいのでは、とブツクサ言いつつ、警察本部を後にした。帰りに、念のためテレコムに立ち寄ってみた。ＡＤＳＬがまだ開通しないことを伝えると、カスタマー・サービスの方に電話して聞いてみてくれという。自宅に戻ると、管轄の派出所から来たらしい一人の警察官が待ち受けていた。パスポートや身分証の提示を求められ、私が職についているか、夫の職業は何か、といった初歩的な質問を受けた。警察官が帰ると、教えられたテレコムのカスタマー・サービスに電話してみた。今工事をしているところで、開通は午後３時か４時頃になるという。　　　 - * - * - * - * -午後になると、今度は、センターから来たという二人の刑事の訪問を受けた。滞在許可証を受け取っても、このように、やはり警察の訪問は必ず受けなくてはいけないものなのだろう。午前中にやってきた制服の警察官とは明らかに異なる、眼光鋭い私服刑事たちである。手にファイルを抱えた一人が、早速、私の顔色を伺うかのように質問を始めた。「私たちのことは覚えておられますか？前回も私たちが来たんですが・・・。」私は首を横に振りながら、「生憎、覚えていません」と答えた。３年前にも、二人の警察官の訪問を受けたことは覚えている。が、制服を着ていた気がするし、私は人の顔を覚えるのが大の苦手だった。「ハヌム（奥さん）は、あの時に比べると、トルコ語が随分上手になられた。前回はほとんど話されなかったが・・・」刑事は、仕事柄だろう、私たちのことを恐ろしいほどによく覚えていて、夫が顔を出すと、夫に対しても同様の記憶力を働かせた。「御主人は、前はひげを生やしておいでだった。日本との間を行き来しておいででしたね」刑事は続いて、玄関から見て、突き当たり奥に見えているダイニング・コーナーを指差した。「前回は、あそこに座って、海を見ながらお話しましたね。バルコンを壊して広くしたという場所で。生憎、寒くて天気の悪い日だったが・・・」私は、３年前に来た二人が、警察官用の紺色のジャンパーを着ていたことを朧気ながら思い出し、刑事の記憶力に舌を巻いた。婚姻手帳の提示を求められ、手渡すと、それをパラパラとめくりながら、刑事は質問を始めた。まず、夫に対し、「こちらでは仕事はしていないのですか？仕事を始める予定はありますか？トルコに定住するつもりはありますか？」と立て続けに聞いた。夫は、ぶしつけな質問に少しイライラした様子で、「現に住んでいるじゃあありませんか。仕事は日本にあるので、行ったり来たりしていますが、住まいはここですよ」次に私に対し、「初めてトルコにいらした時期は？昨年ですか？」と聞いてきた。夫は「すでに３年住んでるじゃあありませんか」と、滞在許可証を示しながら反発した。「すると、初めていらしたのは？」私たちは、彼らが正確に何を知りたいのか掴めず、イライラした。「初めてというと？」「初めてトルコに足を踏み入れた時期です。（パスポートを指差して）そこにありませんか？」「これは２０００年以降のものですから、ここにはありませんが・・・」夫が私に代わって、「ガイドの仕事で来ているので、もう１０年ほど前のことです」ときっぱり答えると、この件はようやくお仕舞いになった。彼らの意味のない質問に嫌気が差しはじめた夫は、話題を変えるように質問し返した。「さっきお仲間が来たんですが、あなた方はまた別のところからいらしてるんですか？」「私たちはセンターの者です。主にテロリスト対策が仕事です」夫の兄は、以前ＰＫＫ（クルド労働者党）のテロリスト相手に戦った経験があり、今では郷里の警察署で警部補に納まっている。夫が「へえ～、兄もそうですよ」というと、「前回は、そんなことはおっしゃらなかったですね」としっかりチェックされた。もう一人の刑事の方が業を煮やしたように、同僚と夫を順々にたしなめた。「もう少し簡潔に早くやりなさい」「聞いていることだけにお答えください」もう一人の方が、何気ない風を装ってつぶやいた。「ここからは海がよく見えるんですねえ。ここまで眺めのいい住まいもそうないでしょうねえ」我が家からの眺望を褒めることで、おそらく家に入るきっかけを作ろうとしたのだろう。当初、家の中まで刑事たちを招き入れるつもりのなかった夫も、そう言われては、どうぞと言わざるをえなくなった。「さあ、どうぞ。どうぞ。こちらへ」と言って、お世辞を言った方の刑事をバルコンに案内した。その間、私は引き続き、子供の出生年と名前などの質問を受けていた。ふたりが近くの学校に通っていることまで話すと、彼は不思議なことを聞いてきた。「あそこは、閉鎖されるんでしょうか？」私は、いったい何のことを言ってるのだろうと首を捻った。「学校は開いてますし、子供たちは毎日通ってますけど・・・？」刑事は余計なことまで聞いたと言わんばかりに、弁解を始めた。「パソコンのデータが消えてしまったので、いろいろお聞きしてるんですよ。次回からはありませんから」まもなくもう一人の方が戻ると、ようやく尋問は終了した。二人が乗ったエレベーターのドアが完全に閉まるのを待たず、私たちはそうっと玄関ドアを閉め、大きな息をついた。いったい彼らは何者なんだ？大体、目付きが違う。あの話し方。あの質問。それに何から何まで、よく覚えてる。最近ウクライナ人とかモルドバ人とか多いから、と言い訳していたが、私たちがその手の職業についていないことぐらい、一目見れば分かるものを。外国人と見れば、テロリストかスパイか売春婦か麻薬密売人か、それらのいずれかの可能性の有無を見分けなくちゃいけない彼らの仕事も大変だろうが、不自然な尋問の連続に、とにかくふたりとも気分が悪くなった一件だった。　　　 - * - * - * - * -娘たちを学校に迎えに行って戻る道すがら、上の娘が驚くようなことを口にした。「学校が売られちゃうんだって。売られても、私たちはここで勉強するんだけど、○○○（現オーナーの名）は出て行くんだって」「誰がそんなことを言ったの！？」私は、初耳だというだけでなく、子供の口からそんな言葉が飛び出したことに心底驚いた。「クラスのお友だちが言ってたよ。誰々と、それから、誰々も・・・」それが事実だとしても、そんな大人の話を平気で子供の耳に入れるトルコ人が恨めしかった。しかし、それでようやく、バイラム前に、娘と仲の良かったクラスの女の子ふたりが突然、しかも同時に学校を替わったことの合点がいったのだった。新学期が始まって２ヶ月も発ってから、学校を変える親の気が知れないと思っていたが、そういうことだったのか。もともとクラスの女の子は５人と少なかったのに、今では３人に減り、娘は随分寂しがっているが、そうなると、今度もまだまだ転出する生徒が出るに違いない。娘たちの学校が経営難から別のオーナーの手に渡るのは、これで２度目。経営者が変わった初年度は、学校生活の様々な面で負の変化が如実に現れた。いったい、これからどうなるのだろうか。他の生徒たち、親御さんたちは、どうするのだろうか。私は少々憂鬱になった。自宅に戻ると、夫にさっそくこの件を伝えた。夫は、事の真偽を確かめようと、同じ学校に男の子を通わせている、隣人の一人に電話した。隣人の話では、バイラム前に、新聞に売却の広告が出されたのだという。日頃、新聞を丹念に読むほうの私だが、そんな広告には覚えがなかった。が、たぶん夫が帰ってから忙しく出歩いていたので、その時期に出たものだろう。溜まっている新聞を整理すれば、きっと出てくるに違いない。そうだ。あの刑事が「学校は閉鎖されるのか」と聞いたのも、このことを知っていたからだ。いずれにせよ、今日の今日まで知らなかったのは、例によって私たちくらいなものだろう。情けない。子供に教えられて初めて知るとは、いくらアンタルヤの情報に疎い私たちでも、世間知らずにもほどがあった。明日は、学校の経理に出向いて事情を確かめ、今後の運営について問いただしておく必要があった。　　　 - * - * - * - * -一方ＡＤＳＬは、午後４時を回っても、一向に繋がらなかった。ルーターのステイタス・サインはとっくに緑色が点灯しているので、ＡＤＳＬは開通しているはずなのだが、ということは、やはりセッティングに問題があるのではないだろうか。念のためにカスタマー・サービスに電話すると、もう工事は終了して開通しているはずだという。自分で設定内容を確認してみたが、いまひとつ分からないところが多い。結局、いつものボルギサヤール・ハスターネスィの“ドクトル”（ドクター）に電話して、明日見てもらうことにした。我が家のＡＤＳＬ開通は、こうしてまた一日伸びることとなった。

  2004/11/18

• 無事アンタルヤへ帰還＆ＡＤＳＬ本日開通！？

  昨夜１１時、夫の郷里から無事アンタルヤの我が家へ到着。とにかく、心身ともに疲れたバイラム休暇となった。それでなくとも、往復に丸二日、滞在二日の強行軍だから、初めから分かっていたことではあったが、それ以外に予期せぬ事件が起こったことで余計、ということもある。ここには詳しく書けないこともあるが、余裕ができたら後ほど遡って書き残せるかもしれない。出発前の慌しさからくる疲れ。アンタルヤと異なる気候、夜の冷え込み。母の家では、薄いフリースの上からダウンベストを着込み、腕組みし背中を丸めずにはいられなかった。いろいろな要因がたたって、少々喉をやられ、夜になると咳がついて眠れなかった。久し振りに我が家でゆっくりと睡眠をとり、一夜明けた今日。午前中は溜まった洗濯物を洗い、出発前に家の中に干していった洗濯物を畳む。その後で、これまたゆっく～りとシャワーをつかって、頭のてっぺんからつま先まで溜まった汚れを丹念に落とした。汚い話で恐縮だが、丸々４日間一度もシャワーできなかったのだ。母の家では、太陽熱温水器からのお湯は出るのだが、シャワーの設備はない。風呂場、兼洗濯場の蛇口からでるお湯を盥に溜めて、行水しようと思えばできるが、風邪を引くのが関の山。妹の家に居る間にシャワーを借りることが多いのだが、今回はいろいろあってその余裕もなかった。昼食にはほうれん草のおひたしを作り、うどんを茹で、掻き揚げを乗せて食べ、ほっと一息。すると、ちょうどそこへ、トゥルク・テレコムからの電話。ＡＤＳＬが開通したので、契約を交わしに来て下さいとのこと。窓口の職員が太鼓判を押した通り、１週間で開通の運びとなった。ＰＣを片付けて車に乗せ、テレコムで契約書にサインをした後、懇意にしているビルギサヤール・ハスタネスィ（“パソコンの病院”、つまりパソコンの修理・サービス業者）に持ち込んで、ＡＤＳＬ専用ルーターを購入、その場でＰＣの設定を済ませてもらった。テレコムの職員の話では、「早くて今晩」には使えるとの話だったが、果たしてどうか？夕食後、期待半分で接続してみたが、エラー。とりあえず明日までお預けとなった。先週金曜日。それも夕方になってから、突然インターネットに繋がらなくなったと思ったら、実は１年間のプロバイダー契約がちょうど切れたところだった。連休明けの今日は新しい接続用ＣＤを買う必要があったので、ＡＤＳＬ開通の知らせが奇跡的タイミングで来たことに喜んだが、ＡＤＳＬが使えるようになるまで、インターネットがまるきり使えないのは不便この上ない。この５日間、留守にしている間にも、訪問してくれる方がきっといらっしゃると思うと、気ばかり焦る。どうか明日には、使えるようになってますように！！

  2004/11/17

• アタ（父）を悼む日、アナ（母）へのプレゼントを買う。

  朝９時５分。テレビからサイレンの音が流れてきた。迂闊にも、その時バスルームにいた私は、慌ててその場で動きを止め、サイレンの鳴り響く１分の間、頭（こうべ）を垂れ、形ばかりの黙祷をささげた。夫はその時、もちろんテレビの前で黙祷をささげていたのだが、感極まって涙が出てしまったと、後で私に耳打ちした。今日１１月１０日は、トルコ建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルクの６６回目の命日にあたる。「トルコの父」という意味の姓を与えられ、祖国と国民のために、まさに一生を捧げたアタテュルクは、今から６６年前、１９３８年１１月１０日木曜日、イスタンブールにあるドルマバフチェ宮殿で息を引き取った。ドルマバフチェ宮殿内にあるすべての時計は、アタチュルクの死の瞬間、９時５分を指して止められている。トルコ国民として教育を受けてきた者は誰しも、今日という日を、アタテュルクの功績に思いを馳せ、アタテュルクのおかげで今日（こんにち）の自分があることを感謝する日として、迎えることだろうと思う。少なくとも、夫はそうだ。折りしも、アタチュルクの生涯を著した本を読んだばかり。宿題ではないにもかかわらず、上の娘に「アタへの手紙」を書くよう希望し、昨日はそれを学校に持って行かせたところだ。また、アタテュルクが生涯結婚せず、子孫を残さなかったということに関しても、感慨と共に語って聞かせる。戦争と改革に従事した、忙しい一生。結婚なんてする暇はなかったんだろうと。もし、結婚して子供ができていたら、ここまで祖国や国民のために尽くすことはできなかっただろうと。アタテュルクがここまで神格化され、トルコ国民の理想像として生きているのも、彼が一代限りで終わったからであろうと、私は思う。彼は個として全身全霊を費やし、まるでその使命を果たし終えたかのように逝った。世継ぎが存在しなかったこと。彼の地位、権威、栄光を受け継ぐ者が出現しなかったことは幸いである。おそらく、子孫を残すことの危険性さえ、アタテュルクは認識していたのだろうと思う。子供好きであったというアタテュルクは、養女を迎えることで、その寂しさを紛らわせた。彼の孤独な死によって、トルコは完全なる共和国としての旅路につくことができたのだ。　　　- * - * - * - * -バイラム休暇がやってくる。１ヶ月間続いたラマザン（断食月）も、今週土曜日、１３日で終わりを迎える。そして、ラマザンの終了を祝うラマザン・バイラム（別名シェケル・バイラム、日本語では砂糖祭と訳されている）が１４、１５、１６日と続き、１３日土曜日から事実上４連休のバイラム休暇となるのである。今年のバイラムは夫がアンタルヤに居るというので、実をいうと少々期待していた。２泊３日程度の国内小旅行ができればいいな、とひそかにプランを暖めていたのだ。前回夫が帰った時、カスタモヌ（アンカラの北２５０ｋｍ）で仕事があると言っていたので、それでは、娘たちが行きたがっていたアンカラを観光し、その後カスタモヌで用事を済ませ、時間が余れば私好みのマイナー遺跡に立ち寄りながらアンタルヤに戻ることを考えていた。夫が帰ってきた翌朝、皆で朝食のテーブルを囲んでいる時、夫にそれとなくバイラム休暇の予定を尋ねてみた。夫は「おばあちゃんのところに行く」という。それを聞いて娘たちは「わあ～い、おばあちゃんちに行くんだって！」と大喜び。おばあちゃん違いである。私が「日本のおばあちゃんじゃないのよ。ババアンネ（＝父の母、父方の祖母のこと）のところ」というと、「な～んだあ」とつまらなそう。娘たちは、夏の間じゅう日本のおばあちゃん、おじいちゃんと一緒に過ごしたために、すっかり“おばあちゃん子”になってしまっていた。おばあちゃんの作る刺身、焼肉、サラダが食べたいと、今でもしばしば口にするほど。ババアンネには可哀相だが、年に一度か二度、しかも２～３日しか一緒に過ごしたことがないので、なかなかババアンネには親近感が湧かないのも無理はなかった。私はといえば、旅行の計画がふいになって少々がっかりしたが、すぐに仕方ないと諦めた。夫は、もう２０年以上も遠く離れた日本で暮らしているのだ。たまにトルコに帰った時ぐらい、顔を見せて欲しいと義母が望むのも自然なことだった。また夫にしても、兄妹たちには含むところがあっても、母だけは別格。子供時代、全くといっていいほど母から大切にされなかったとこぼしはしても、やはり母は母なのだった。バイラムに家族のもとへ帰るとなると、なにかお土産の必要はないだろうか。夫は、要らないという。今までも、帰るたびにお土産の心配をしてきたのだが、その度に夫は「要らない」「買わなくていい」と、私が買おうというのまで拒否してきた。今まで散々援助し、なにかと協力してきたにもかかわらず、いざというとき家族が自分に無関心を装ったということが、夫の心を凍らせてしまったのだった。「アンネ（お母さん）のプレゼントだけ買うから。買い物に付き合って」夫はそう言った。７０歳を少し越えたくらいだろうか。トルコ女性の例に漏れず体格のいいアンネに合う服を、どこで探したらいいか、夫が知るわけもなかった。私とて、カパル（頭に被り物をした）の典型的田舎の老婦人向けの服を扱う店など、心当たりはなかったが、洋服屋の集まる地域は心得ていたので、大体の見当をつけて出掛けた。それらしい店を１０軒ほどはしごし、３軒目の店で、落ち着いたグレーの地に少しオシャレな感じのブレード飾りのあるカーディガンを購入。最後の店で、ブルーグレーの地にベージュ色の模様の入ったブラウスを購入して、それぞれプレゼント用に包んでもらった。品物を見定める夫の目は真剣で、見立ては私より正確である。兄妹のことを話す時の突き放したような態度とは打って変わって、母の服を選ぶ夫はひとりの親孝行な息子そのものである。私には、母だけは大切にしたいという夫の思いがよく分かる。近くに住む妹たちが、あまり母の面倒を見てくれないという歯がゆい思い。兄たちが自分の問題や商売に手一杯で、あまり母に援助してくれないという憤り。それだけが、夫を実家へ、母のもとへと駆り立てる理由であった。私たちは土曜日、１３日の朝にアンタルヤを発ち、母のもとで３泊した後、１６日の夜アンタルヤに戻る予定である。　　　　 - * - * - * - * -訂正！アタチュルクは結婚する暇がなかった、と書きましたが、これは私と夫の勉強不足、知識不足からくる単純な間違いであることが判明しました。実際には、生涯に１度だけ結婚し、３年ほどの結婚生活を送ったのだそうです。最終的には、子供も持たぬまま、その結婚は破綻したそうですが、結婚した事実は明白だということです。こちらをご覧の皆さま、どうも申し訳ありませんでした。また、この間違いを見つけて知らせてくださったmadamkaseさん、どうもありがとうございました。

  2004/11/10

• 滞在許可証（２）延長申請完了！＆　我が家にもＡＤＳＬが！？

  昨日から始まった、ぐずついた空模様。今日はさらに空は暗く、降ったり止んだりを繰り返している。海と空の色は刻々と変化している。一瞬、暗雲の隙間から太陽が顔をのぞかせ、海が銀色に輝いたかと思うと、その数分後には外が見えないほどの土砂降りになっているという具合。天気予報によると、影響の出そうなまとまった雨と嵐が今日から３日間は続き、来週火曜日頃までは降ったり止んだりを繰り返すだろうという。アンタルヤにも、いよいよ冬が訪れようとしているらしい。　　　 - * - * - * - * -朝一番に警察本部に出向く。まずは、門の目の前にあるバッカル（食料品、日用品などのよろず屋）に入る。ここには場所柄、申請書や請願書のタイプ打ちをしてくれるタイプ屋が何人かいて、手馴れた手つきで申請書を埋め、請願書を作り、必要書類のコピーを取り、欠けている書類がないか確認して、書類ファイルの中にセットしてくれるのだ。夫は「大丈夫。僕が書くよ」と、手書きでごく簡単な請願書を作ってくれていたが、完璧症の私は、「ついでにタイプ打ちしてもらったら？」と夫に勧めた。タイプ屋に目を通してもらうと、「どちらにせよ、欠けてる所がありますよ」と言いながら、形式にのっとったかたちで、すぐに請願書を作ってくれた。大体、夫はこの手の文章を書くのは苦手なのだから、最初からプロに任せておけばいいのである。すべての書類が揃い、タイプ料、コピー代含めて７．５ミリオン（約）を払い、私たちは警察本部の門をくぐった。ドイツ人と思しき５～６人の列の後ろにつき、３０分ほど待っただろうか。その間に、ひとりのアメリカ人のご婦人が、係官に質問をしているのが目に留まった。彼女が帰って行った後で、係官にアメリカ人の申請料のことを聞いてみると、日本人と同じ、２年間で７４０ミリオン（約５５，０００円）だとのこと。へえ～、アメリカ人もそうなのか。日本人だけじゃないんだな・・・と複雑な気持ちになる。私たちの番が来て、書類を提出すると、担当官は書類の不備や記載内容を仔細に点検した。担当官は、なかなかに細かい性格のようだった。請願書を丹念に読み、婚姻手帳の発行日を見て「結婚したばかりか？」と問い、パスポートの最新入国日を確認してそこに注を入れ、最後に用紙に支払い金額を記入し、出納係に行って支払ってくるよう言った。私たちは、結局２年間の延長で済ませることにした。どのような形になるか、まだ分からなかったが、夫にしてもこの状態を看過しているつもりはなく、アンタルヤ在住の日本人妻を持つトルコ人と相談しながら、陳情活動を行う考えであった。値下がりとまではいかなくとも、せめて現状のような大幅値上げに歯止めがかかれば、陳情の価値はあると思う。私たちは、２年間のあいだに、トルコ国籍取得の可能性を検討する一方で、申請料値下げもしくは維持の請願活動を進めていくつもりであった。夫は、２年間分として７４０ミリオンを出納係に支払いに行き、ひとり窓口の前で手持ち無沙汰になった私は、横にいたドイツ人に「あなたはいくら支払われたんですか？」と聞いてみた。すると、１年間で１００ユーロだという。すると昨日、担当官が８ユーロと言ったのは、年間ではなくひと月間の金額だったわけだ。よく聞かないで年間と勘違いして、昨日の日記にもそう書いてしまったので、私は焦った。あとで訂正しておかなければ。夫が領収証を持って戻り、担当官に提出すると、彼は再びすべての書類を点検し、トルコ人らしからぬ精密さで書類の角をきちんと揃え、一番上に領収証を重ねてホチキスで留めた。これで、申請手続きはすべて終了である。最後にパスポートの提示を求められた。別の係官が用紙に名前を写し、ファイル・ナンバーと受け渡し日時を書いてパスポートに挟んでくれた。「１１月１８日です」と。こうして、引き取り日時は、バイラム休暇明けの１１月１８日、午後４時半以降となった。警察本部をあとにし、肩の荷を降ろしたところで、あることに気付いた。申請料って、すべてユーロ建てを元に計算されているのだと。現在、１ユーロはほぼ１．８５ミリオン。ドイツ人の１年間の申請料が１００ユーロ（＝１８５ミリオン）。日本人はその２倍の２００ユーロ（＝３７０ミリオン）。日本人の２年間は４００ユーロ（＝７４０ミリオン）、３年間が６００ユーロ（＝１．１１ミリヤール）、５年間が１，０００ユーロ（＝１．８５ミリヤール）。これで、７４０ミリオンなどという中途半端な金額になるわけが分かった。もちろん分かったからといって、私たちにとって何の利益にもならないのだが・・・。すると、オランダ人の４２０ユーロって、どこから来たんだろう？もしかしたら、これまた私の聞き間違いか勘違いかもしれないと、少し青くなった。帰途、夫の用事でトゥルク・テレコムに立ち寄ると、私は車内で本を読みながら待つことにした。「ついでに、ＡＤＳＬのこと、もう一度聞いておいてくれる？いつ来ますか、って」本があるので、待つのは辛くはなかったが、それにしても夫はなかなか帰ってこなかった。携帯を鳴らすと、「すぐ来て」という。ＡＤＳＬがもうすぐ開通するので、今のうちに申し込みしておきなさいと言われて、用紙に記入しているところだという。私は慌てて窓口に駆けつけた。すでに用紙のほとんどは埋まり、最後にユーザー名と暗証番号の記入欄だけが空けてあった。そこに、私の使い勝手のいい名前と数字を記入して、手続きは終わった。開通した時点で、目の前の担当者が連絡をくれるという。私は狐につままれたような気分だった。半信半疑。ほんとうに、私たちの地区に、そんなに早くＡＤＳＬが開通するのだろうか？私は、「もうすぐといっても、１～２ヶ月は先のことでしょう？」と、まだ疑っていた。はたして担当者は、「そんなにはかかりませんよ」と太鼓判。「ほんとうに、繋ぎっぱなしでも、え～と５０ミリオン？なの？」「４９ミリオン（約３６００円）。限度なしですよ」こうして、前々から念頭にあったふたつの課題に、今日は一度に片が付いた日となった。一方、片が付かないのは洗濯物である。今日も、晴れ間を見て外に干したが、外出している間にやっぱり濡れてしまった。今、部屋の中には、２台の物干し一杯に、乾ききらない洗濯物が山ほど干してある。しかも、夫が帰ってきているので、洗濯物の量も多い。これから１週間は、この状態が続くことだろう。やれやれ、一難去ってまた一難とは、このこと？であろうか。

  2004/11/09

• 滞在許可証（１）延長申請スタート！**訂正あり

  夫が帰ってきたことで、私の身辺も急に忙しくなった。週が明けたら真っ先にしなければいけないことが、ふたつあった。ひとつは、建築家に電話して、委員会の決定がどうなったか聞くこと。決定の内容次第で、これからの私たちの動きが決まる。（私たちが建築家と進めている仕事に関しては、９月１８日の日記をご参照ください）当初聞いていた話では、委員会会合は１０月２７日に開かれるとのことだったが、１週間延期になったので、１１月４日には終わって結果が出ているはずであった。ところが建築家が言うには、申請件数が多すぎて、私たちの順番が回ってこなかったというのだ。すると、次回の会合は１１月末、２４～５日頃。そこで無事許可が下りたとしても、着工は１２月に入ってからということになる。この仕事のために２ヶ月間のアンタルヤ滞在を予定していた夫も、次のステージを前にした緊張感に満たされていた私にとっても、拍子抜けする報告であった。とかく建築の許可が無事に下りるまでには、相当の時間がかかるので覚悟して、と言われてはいたが、こういう理由で先延ばしにされるとは、実は予想していなかった。誰しも考えるところは同じ。１１月の建築シーズン開始と同時に、建設・修復・増改築に取り掛かろうというわけで、委員会は今まさに申請ラッシュを迎えていたのだ。こればかりは、委員会の事情にケチをつけるわけにもいかず、私たちは来月へと希望を繋ぐことになった。ふたつめは、私の滞在許可証の延長申請をすること。１１月２１日をもって期間が終了するので、バイラム休暇の前に手続きを済ませておく必要があった。申請に必要な書類の明細を、前回行った時には聞いておかなかったので、今回は一から確認する必要があった。警察本部の外国人課。夫は照会の窓口に顔見知りの担当官を見つけると、まっすぐ彼のところへ進み出た。担当官が渡してくれたコピーは、必要提出書類のリストになっていた。配偶者という理由と、今回は新規ではなく延長であるという理由で、提出書類は以下のように指示された。・申請書（大文字かつタイプライターで記載されること）・パスポートのオリジナルとコピー（写真と身分証のページ、一番最近の入国日の分かるページ）・写真２枚・紙製ファイルまたトルコ国民の配偶者に関しては、・婚姻手帳（国際家族手帳）と、そのコピー・（住民管理局発行）トルコ国民の住民登録証跡（戸籍謄本にあたるもの）・トルコ国民の身分証明証のコピーさらに・請願書（ヴィザ延長の理由と、希望年数を明記）この中で、引っかかったのは婚姻手帳である。日本で婚姻届を提出した私たちは、婚姻手帳は作っていなかったし、３年前の申請時にも要求されなかった旨を伝えたが、奥のほうに座っている上級官の言うには、本来作成すべきものであるし、所持すべきものであるとのこと。そして、住民管理局で作成してくるするよう申し渡された。なお、前回足を運んだ際、金額を聞いて大変に驚き呆れたその申請手数料の方であるが、２年間で７４０ミリオン（約５５，０００円）、３年間が１．１ミリヤール（約８２，０００円）、５年間が１．８ミリヤール（約１３万円）。前回聞いた通り、やはり間違いはなかった。夫は冗談半分に、交渉すれば下がるのかと聞くと、人の良さそうな担当官は、苦笑いしながら、「（日本）大使館の方におっしゃってください」と返してきた。大使館の方に陳情し、大使館さえ動いてくれれば、可能性はあるということだろうか？なお、この申請手数料は、年頭には改定（値上げ）されるとのこと。「ですから、手続きはお早目に」そう付け加えてくれたが、いずれにせよ私の滞在許可はもうじき切れるので、値上げの心配をする必要はなかった。私は、前々から気に掛っていた一点について、目の前の担当官に尋ねてみた。「日本人以外に、これほどのお金を払っている外国人は？」担当官は、ちょっと困ったような顔をした後、日本人は一番ではないが、最も高い部類に入ること。一番高いのがオランダ人で、年間４２０ユーロと教えてくれた。３年間で計算すれば、２．３ミリヤール（約１７万円）、５年間だと３．９ミリヤール（約２９万円）にもなる。反対に、一番優遇されているのがドイツ人で、年間にわずか８ユーロだという。とすると、５年間でも７４ミリオン（約５，５００円）程度のもの。担当官が言うには、これらは、各国に在住するトルコ人に課せられる滞在許可申請料に比例しているのだという。オランダに在住するトルコ人はそれだけ徴収されているというのだろうか？いずれにせよ、日本に住むトルコ人がそれだけ払わされているという話を聞かないところから、日本人は例外的に大幅に徴収されすぎているに違いない。申請書を受け取り、警察本部を後にすると、私たちはいったん家に戻り、撮りおきの証明写真やパスポート、身分証明書をピックアップして、県知事役所の中にある住民管理局に出向いた。まず婚姻手帳を発行してもらう必要がある。住民登録証跡を発行してもらう窓口には行列ができていて、私が列に並んでいる間、夫が申請用紙をもらってきてくれた。「これだけじゃ、ダメみたい。ムフタル（地区長）にサインをもらわなくちゃいけないんだって」ふたりが事実上一緒に住んでいることを証明するのが、地区住民のことを把握するムフタルになる。住民登録証跡を発行してもらった後、自宅に帰って申請書に該当事項を記入し、写真を添えて夫はムフタルのところへ出掛けていった。夫は、ムフタルが留守のため、すぐに帰ってきた。昼食に焼きそばを作って食べ、時間が来ると、夫は再びムフタルへ。そしてそのまま、住民管理局に婚姻手帳発行の手続きに行った。夕方５時になって戻った夫は、嬉しそうに私にそれを見せた。「取れたよ～。明日来いって言われたけど、ミュドゥル（局長）に訴えて、無理やり作ってもらったよ」婚姻手帳を見るのは、これが初めてだった。表紙には「国際家族手帳」と、トルコ語となぜかフランス語で書かれてあった。表紙の内側を見ると、「１９７４年９月１３日、パリにて調印された協定に従って発行されるものとする」とある。へえ～。ということは、トルコだけでなく、多くの国でこの手帳が通用しているんだ。また新しい知識がひとつ増えた。さて、婚姻手帳に、住民登録証跡、パスポートや身分証明書のコピーなど、大体のものが揃った。明日申請することができれば、あとはバイラム明けくらいに引取りができるだろう。ああしかし、申請年数を２年にするか、３年、５年にするか、まだ決められないでいるのを忘れていた。２年間にして、その間に大使館への陳情などの活動を行うか、いっそのことトルコ国籍を取ってしまうか・・・・。どうせ年々値上がりするのなら、５年間を申請した方が有利なのだが、なぜか二の足を踏んでいる私たち・・・。果たして決断はいかに。また明日のご報告をお楽しみに。 　　 - * - * - * - * -訂正！ドイツ人に課せられる申請料を年間８ユーロと書きましたが、これは１ヶ月間の間違いです。担当官が８ユーロと言った時、すぐに１年間だろうと解釈してしまったのですが、担当官は１ヶ月分に当たる金額を教えてくれたもののようです。翌日、隣に並んでいたドイツ人に聞いたところ、１年間で１００ユーロだとのこと。約１８５ミリオンですから、年間３７０ミリオンの日本人の半額ということになりますね。また、ちょうどアメリカ人が情報収集に来ていたところで、聞いてみると、２年間で７４０ミリオンと、日本人と同額でした。とすると・・・請願して多少は（ドイツ人並みに）安くなったとしても、日本とアメリカが同列ということでは、そう極端には下がらないかもしれません。他の外国人もそれだけ払ってるのだから、日本人に払えないわけがない、と言われてしまうでしょうね。実際、そのお金を出しているのは、トルコ人配偶者やトルコ企業だというケースの方が多いに違いないのですが・・・・。以上、訂正と追加報告でした。

  2004/11/08

• 静寂の午後

  大丈夫だろうか。時おり心配になってベッドルームを覗いてみる。大丈夫。寝息も聞こえないほど、熟睡しているのだ。昨夜２時に帰り着いた夫は、さすがの疲労からまだ回復できないでいる。金曜の夜、イスタンブールに着くと、翌土曜は終日仕事。そのまま夜行バスでイズミールへ。イズミールで用事を済ませた後、故障のため修理工場に預けっぱなしだった自家用車を引き取ると、夕方イズミールを発って、アンタルヤへと戻ってきたのだった。時差と、長時間の飛行機、夜行バス、ドライブの連続で、身体はガタガタ。朝１０時過ぎて起きてくると、案の定、頭が痛いと訴えた。頭が痛いというのは、夫の場合、血圧の上がっているしるし。以前高血圧で倒れたこともあり、薬を常用しなければならない身体なのに、いくら口を酸っぱくして言っても、忙しさと面倒臭さからか、飲んだり飲まなかったりを繰り返しているのだった。夫は、普段一緒に居られないことを苦にしてか、帰国の度にいろいろとお土産を買ってきてくれる。大抵、あらかじめＦＡＸなりメールなりで送っておいたリストに従って購入してくれるのだが、可愛いものが目に付くと、娘たちのために買わずにはいられなくなるらしい。今回のプレゼントは、ディズニーのリストウォッチ。上の娘にはライラック色のピーターパン。下の娘にはピンク色のリトルマーメイド。買ってきた後でいらないと言われないよう、買う前にわざわざ国際電話までしてくる念の入れようだ。それと、女の子らしい、ハートや花のステッカー。買い物のセンスがあまりあると思えない夫も、場数を踏んで、いつのまにか娘たちの気に入りそうなものが分かるようになってきたらしい。遅い朝食をとり、子供たちと少し遊んだり、宿題を見てやったりした後、夫は再びベッドへもぐり込んだ。退屈した子供たちは、各自の自転車とおままごと道具を携えて、庭へと降りていった。ひとり残された私は、静かに本の頁をめくる。私が夫に頼んだのは、数冊の本だった。９月と１０月に続けて新刊が出た文庫版『ローマ人の物語８～１３』（塩野七生、新潮文庫）と、artaxerxesさんの日記で知った『「王権と都市」を歩く―京都からコンスタンティノープルへ』（今西明、ＮＴＴ出版）の計７冊である。しだいに日暮れが早まり、長い夜を迎えるようになるこれからの季節、もてあます時間を本が紛らわしてくれるだろう。読み返すたびに新たな感動を覚える、そんな優れた本もいいが、ときには新しい本も読みたくなる。ＰＣを閉じ、久し振りにゆったりとした時の流れに身を任せる。静かな静かな午後のひとときであった。　　　　 - * - * - * - * -ちなみに・・・『ローマ人の物語』は、ハードカバーでも何冊か持っているのだが、文庫化をきっかけに、すべて文庫で揃えることにした。塩野さんらしいセンスと配慮で、スッキリと端正な表紙の中央に、その時代を最も的確に表現する１枚のコインがあしらってあるのが気が利いている。『王権と都市』の方は、さっそくトルコの都市について記述された部分を拾い読みしてみた。ざっと読んだ印象だが、残念ながら、少なくともトルコに関するページは、専門外（考古学、古代史、中世トルコ史の専門家ではないという意味で）の研究者の個人的旅行記の域を出てないような気がした。もちろん著作としては、旅行から戻られた後に既存の資料を十二分に調べられた上で書かれたわけであるが、いかんせん、駆け足でコースのあらかじめ決められた観光ツアーでは、調査旅行に匹敵するような広範な観察と掘り下げた考察は不可能だったろう。artaxerxesさんも“詰めが甘い”と書いてらしたが、同感である。トルコの城郭史として一定の見解を導き出すには、ご覧になったサンプル数が少なすぎるし、現存する遺構を目にしての印象と想像の域を出ていない。せめてご自身の門下生を集めた調査目的のオーガナイズ・ツアーでいらしたのなら、カギ穴から覗き込んで全貌を想像しようと試みたり、後で見ておけばよかったと後悔されるような事態には陥らなかったろうと思う。ちなみにその傾向は、アンタルヤの城壁に関する観察からも十分うかがえる。おそらく事前の資料研究なしにガイドブック・レベルの知識のみで町歩きをされたのであろうが、ハドリアヌス門の前に立ち、その脇に残るセルジュク時代の塔のうえに登りながら、そこから延々と続く、ベルガマ王国にはじまり、ローマ帝国、ビザンチン帝国、セルジューク王朝に至るまでに何度となく修復・増強されて今に至る城壁の存在は、ほとんど目に入らなかったらしい。“つまり、ここが旧市街の外縁で、往時はローマ時代の城壁が続いていたのであろう。”（P.138 L.7)“この町は、当然劇場や競技場等、ローマ式公共施設があったのだろうが、外城壁と共に破壊されたと思われる。”（P.138 L.15）このように、まるで城壁が現存していないかのような口振りである。その分では、ビザンチン時代には、外城壁の外側には水を満たした掘割が張り巡らされていたことさえ、想像もされなかったことだろうと思う。また、おそらく城壁内（カレイチ）をくまなく歩き回られれば、外城壁の中に、さらに入り組んだ内城壁がかろうじて残っているのを目にされたことだろうし、そこから関心が呼び起こされれば、これらの内城壁が城内に定住していたギリシャ人、アルメニア人、ユダヤ人、キリスト教徒、イスラム教徒の居住区を区切る役目を果たしていたことも調べられたはずである。ことアンタルヤだけに関して言えば、町をぐるりと取り囲む外城壁は立派に存在していたのだ。研究資料がほとんど手に入らなかったと思われる、トルコの他の都市に関する考察も、この調子では怪しく思われても仕方あるまい。・・・・ゆったりした気分で本を手に取ったはずが、いつのまにか熱くなってしまった私・・・・。今西先生、辛口の批評、どうぞお許しください。

  2004/11/07

• すわっ！また長時間停電！？＋トゥルシュ（ピクルス）作り

  ピッピッ。９時５分前。また電気が切れた。ええ～！またあ～？つい先日９時間停電があったばかりなのに、また今日もかな～と、嫌な気分になる。ちょうどＰＣを開けたばかりだったのに、私のＰＣはバッテリーが１～２分しか持たないので、すぐにブチッと音がして、画面が真っ暗になった。諦めて、今日は片付け物に専念することに。昨日の木曜パザールで、トゥルシュ（ピクルス）用のキュウリを買ってきたので、今日はこの仕込みもしなくちゃいけないし。色をキレイに仕上げたいので、アップル・ビネガーを買ってこなくちゃ。そう考えているうちに、すぐに電気が戻る。しかし、またいつ停電になるか分からないので、今日はしばらくＰＣから離れた時間を過ごすことにします。昨日の日記もアップしたいところなのですが・・・。ではまた、後ほど。 - * - * - * - * -その４時間後・・・やっぱり断ＰＣもそう長くは続かないみたい。トゥルシュの仕込みも終わった。とりあえず１ｋｇだけだから、ヘタと花の部分を取り、丹念にこすり洗いして泥を落としても、大した時間はかからなかった。ザルに上げて、乾く間にミグロスに買い物に出掛ける。油やらなにやら、切らしているものと一緒に、アップルビネガー２瓶と、安物の白ワインも購入する。トゥルシュは、実は昨年初めに一度漬けたきりで、そのときも適当だったから、調味液に入れる材料も分量も、なにひとつ覚えてはいない。大体こんな感じかな～と、目分量で加えていく。トルコ風のただ酸っぱくて唐辛子の効いたものは好きではないので、私好みに甘めに仕上げる。アップルビネガー１本半に、白ワインを適量。砂糖はかなり多めで、塩は少々。あとはニンニクと粒コショウと、ローリエとレモンスライス。そのとき家にあるものを加える、という感じ。これが上手くいったら、今度は冬野菜のトゥルシュも作る予定にしている。例えば、カリフラワーや人参、大根を入れたもの。昨年作ったトゥルシュも、ちょうどそんな感じだった。カリフラワー、人参、小タマネギ、大根、キュウリ・・・。２リットル瓶に一杯作って、食べきれるかな～と心配したのに、いつのまにか空になってしまったなあ・・・。なぜか、「作りたい気分」が急に湧いてきた・・・。

  2004/11/05

• 「片付け」にはならなかったけど・・・片が付いてスッキリ爽快な一日

  毎朝、窓の向こうに横たわる海を眺めながら、今日は何をすべきかと考える。そろそろ夫も帰ってくる頃だし、ＰＣの周りに自然に集まってくる新聞や本、辞書の類をまず片付けないとな～と思いながら、なかなか身体が動かない。昨夜も、子供に片付けを強要しながら、振り返ると自分専用スペースのこの惨憺たる有様はなんだ。娘にも「イ～レ～ンチ！」（イヤ～/気持ち悪い）と言われてしまう始末。今日はこの、溜まりに溜まった何ヶ月か分の新聞を片付けるとするか。と、一度重い腰をあげかけたのに、結局また下ろすことになってしまった。先週子供服のアウトレットで見た、「たぶん」下の娘好みの服。ディズニープリンセスのプリントがしてあり、袖全体はピンクのレース、前身ごろにもピンクのフリルがあしらってある。あまり私の好きなデザインではないが、やっぱりあれを買ってきてやればよかったかな、とずっと気にかかっていたのだ。ついでに近くのハーブ専門店に、マジョラムを探しに行ってみようか。ミラノにお住まいのキアーレさんの日記で拝見した、クルミ入りのフジッリを作ってみたいのだが、近所ではマジョラムなんか見たこともない。たぶんトルコにはマジョラムはないだろうと、よく調べもしないで諦めていたが、英土辞典を開いてみたら、ちゃんと載っていた。マジョラム（Marjoram）は、トルコ語でメルジャンキョシュク（Mercanköşk）あるいはメルゼングシュ（Merzenguş）というそうだ。忘れるといけないので、しっかりメモに書き留める。そう、それなら、ついでにあそこの写真屋にも寄ってみよう。ここ数日、日記でも書いているように、画像がＰＣに取り込みされないのは、きっとメモリーが大きすぎるせいだと踏んでいた。プリントに出す必要から、およそ５０枚近くも入ったままだったのだ。必要な分をプリントして削除すれば、軽くなって取り込みできるようになるに違いない。これらの用事が全部終わったら、最後に木曜パザールに立ち寄って、切らしている野菜や果物を調達してこよう。昨夜、上の娘がエビが食べたいと言ってたので、あればエビも。さて、そうと決まれば始動開始。シャンプーをし、先日髪を染めた時の薬剤をよ～く洗い流した。いつもの色―私の自然な髪色である濃い栗色―より一段と濃い、黒に近い色にされてしまったので、鏡を見るたび、なんとなく落ち着かない思いをしていた。まめにシャンプーをして、早く色を落としてしまいたかった。　　　 - * - * - * - * -バスに乗って、まずは写真屋へ。今まで２回ほど証明写真で使った店だが、メモリーカードからのプリントは初めてだった。「プリントして欲しいんだけど、全部じゃないの。１枚ずつ選べるかしら」まず、そう聞いた。いつも用事のついでに使う写真屋は、よくあるF○JICOLORのチェーン店で、ラボにそのまま送られるため、目の前で選ぶことができなかったのだ。できる、との返事。すぐ横に置いてあるＰＣで、画面を見ながら、プリントする分を指定する。合計３０枚。「１枚おいくら？」ついで値段をたずねる。２０万（約１５円）と聞いて私は喜んだ。いつものF○JICOLORチェーンだと、３０万もとるのだ。この１０万の違いは大きい。「じゃあ、明日取りに来ればいい？」そう聞くと、今出るから待って、と言う。やはりこれも、F○JICOLORチェーンだったら翌日で、おまけにこの間なんか、出来ていなくて１時間半も待たされた。（きっと忘れてたに違いない。混んでるからとかなんとか理由つけてたけど）値段に続いてこれも嬉しい驚きだったが、今といってもどうせ３０分、１時間はかかるだろうと踏んで、１時間ほど買い物をして戻るから、と言った。すると担当は、ほんとに今すぐ出ますから、と私を引き止めた。見ていると、ＰＣに接続してある大型プリンターから、確かに１枚、また１枚と写真が排出されていた。なんだ。安くて早くて、いいじゃない、このお店！知ってたら、最初からここに来てたのに。６ミリオンを払い、私は意気揚々と店を出た。次は子供服のアウトレット。目当ての服はもうなくなっていた。毎週のように品揃えが変わるので、仕方ないのだが、ちょっと残念。娘の喜ぶ顔が見たかったのだが・・・。めげずに、娘たちに必要となりそうな服を物色。まだまだ暑いくらいのアンタルヤでは、長袖Ｔシャツくらいがちょうどいいのだが、あいにく店内はすでに冬服一色だった。いろいろ見比べた挙句、ちょっと気が早い気もするが、フード付きのカーディガンをお揃いで買うことにした。上の娘には濃いピンク。下の娘にはベビーピンク。２枚で４６ミリオンのところ、４０にしてもらおうと値切った。元々が安いので仕方ないが、結局４３ミリオン（約３３００円）で妥協。次いでハーブ専門店へ。「メルジャンキョシュクはあります？」と聞くと、棚にビッシリ並べられた密封瓶の中から、ひとつを取り出して、匂いを嗅がせてくれた。色も褪せているし、香りも随分飛んでしまっているような感じ。瓶の底にわずかに残っているところを見ると、きっと古いんだろうな、と思う。一瞬迷うが、トルコの乾燥ハーブは大抵この程度だし、まあないよりいいかと、１ミリオン分（２０ｇ）だけ、袋に入れてもらった。そこから再びバスに乗って、木曜パザールへ。まあまあ活きのいいエビがキロ６ミリオン（約４５０円）で出ていたので、５００ｇ購入。その他に、デザート用のカボチャを１ｋｇ、また買っておく。夫のために冷蔵庫に作り置きしておくのだ。（今度は失敗しないぞ～）トゥルシュ（ピクルス）用の小さいキュウリの、いいものが出ていたので、それも１ｋｇ購入。上の娘がピクルスが大好きなので、手作りしてやるつもり。りんご、トマト、カリフラワー、ほうれん草・・・・と、合わせて６ｋｇ分くらいの買い物を済ませて自宅へ戻った。カボチャは汚れを落とし、大きさを揃え、今度は最初から砂糖をきちんと測って入れる。１ｋｇに対し約５００ｇ。前回は十分に水分が出る前に火にかけてしまったので、今回は一晩置くことにした。最低でも６～７時間くらい置いた方がいいと、レストランの人に聞いてあったのだ。それからデジカメのスイッチを入れ、プリント済みで要らなくなった画像を削除した後、ＰＣに繋いでみた。すると、すぐにウィザードが立ち上がって、取り込み成功。やっぱり思った通りであった。と・・・・そんなわけで、相変わらずＰＣの周りは大混乱で、見る度に「なんとかせねば」と気が焦るけれど、いろいろ気になっていたことの片が付いて、なんだか爽やかな気分の一日になったのだった。　　　 - * - * - * - * -なお、撮りおいていた画像のいくつかは、過去の日記に追加しておきました。バースデー・ケーキ＋銀行＋子供服＋国旗探し＝用事を一度に片付けようとした一日**画像追加 小さな誕生会と大きなバースデー・カード**画像追加 トルコの子供たちが受ける愛国教育とは**国歌試聴あり**画像追加

  2004/11/04

• またもや！今度は９時間停電で、ダラダラな１日

  ３連休明けの今日、月曜日。冬時間スタート、２日目。昨夜は眠気に負け、１１時半にはベッドに入ったおかげで、今朝も６時には目が覚めたからまだ良かった。というのも、８時過ぎにはピッピッと音がして、またもやいつ戻るとも知れぬ停電に突入したのだから。ちょうど学校の支度もすべて済ませたところ。ひょっとしたらエレベーターも止まってるかも？と見れば、予感的中。１０階（日本式に数えれば１１階）から階段で降りるとなると、いつもより５分は余裕を持たないと。子供たちは後から来る私を尻目に、どんどん先を行く。すでに慣れっことはいえ、登りのことを考えると私は憂鬱になる。今日は、後で出掛ける予定なのに、このままエレベーターが止まったままだと、今日は階段を３往復することになるのかな～とぼんやりと考える。学校から戻ると幸いにエレベーターは再開していた。自家発電機のおかげである。一方、家の方はというと、発電機の恩恵には与っていないので、当然電気はなかった。ＰＣも掃除機も洗濯機も電話も、もちろんコーヒーメーカーも使えない。今日１日をどうやって始めようかと思案した。そういえば、このところ髪のカラーが抜けてみっともなくなっていた。２～３週間前に髪をカットしてもらった際、時間が惜しくてカラーリングだけはしてもらわなかったのだ。そうだ、太陽熱温水器からのお湯は出るはず。バスルームに行き、念のため蛇口を捻ってみると、お湯が出てくる出てくる。シャワーとシャンプーを済ませ、新聞を携えて、いつものように濡れた頭のままで行きつけの美容室に出かけた。いつものウスタ（親方/チーフ）も、前回カットをしてくれた新入りもまだ来ていなかった。ネイル係の女性が電話でウスタを起こしている。ソファーに腰掛け新聞を読んでいると、近所のバス会社の代理店の女性係員が店内に入ってきた。「電気は午後４時まで止まってるんだってさ」やっぱりか～。それじゃあ、きょうもまた８時間停電に？「パソコンも使えないし、何もできないわね」私がそう声を掛けると、「だから、こうして散歩してるのよ」「私だって、家で何もすることがないからここに来たのよ。お湯は出るんでしょ？」念のため、ネイル係の女性に聞いてみた。後で薬剤を落とすのに、冷たい水はごめんだから。「出てます」と言われ安心する。ウスタは１０分ほどして、寝ぐせ頭で彼女を連れてやってきた。椅子に移り、カラーリング剤を塗ってもらう。チャイ（トルコ風紅茶）を淹れてもらい、新聞に隅から隅まで目を通す。１時間ほどして洗い流してもらうが、電気が切れているのでドラーヤーなしである。新入りの方が、スタイリング剤を髪全体に伸ばして、終わりとなった。「４時過ぎたら来てよ。ドラーヤーかけてあげるから」その必要はないと、私が笑って答えると、「じゃあ、あとは太陽の下で乾かして」確かに。店を出ると、今日もまた強い日差しが照りつけていた。きっと、すぐに乾いてしまうに違いない。自宅に戻り、早めの昼食をとってから、バスに乗った。バスは規定のルートからはずれた道を行く。今アンタルヤでは、市内４箇所で同時に始まった立体交差点の大規模工事のために、大通りの何箇所かが通行止めになっているのである。交差点近くの中央分離帯は軒並み、植わっていた椰子の木々も引っこ抜かれ、すでに１０ｍほど掘り下げられており、トルコにしては工事の進み具合が早い。さすがにエルドアン首相の肝入りなだけはある。先月２４日に、エルドアン首相と、文化観光大臣エルカン・ムムジュが直々にアンタルヤ入りし、ララ-クンドゥ間観光道路のオープニングと合わせて、派手な起工式を執り行ったばかりなのだ。バスを降り、目指すチャルシュ（小さいショッピングセンター）に向かう道すがら、例のカボチャとカボチャのデザートの写真を撮る。チャルシュでは、上の娘用に子供服の店でコーデュロイのパンツとスウェットパンツを、靴下専門店で靴下を２足買い求めた。その後、子供用の靴屋を何軒か回り、ブーツを物色したが、なにも収穫は得られなかった。２時間半ほどして自宅に戻りついたが、電気がないととにかく手持ち無沙汰である。こんな時ぐらい、窓拭きやバルコン掃除、棚の内外の拭き掃除など、掃除機を必要としない掃除・片づけをすればいいのだが、怠け者の私にはそれらが一番億劫な仕事なのだ。結局また後回しにしてしまう。雑誌でも読もうかと思ったが、短い外出なのに疲れたらしく、またベッドで横になることにした。１時間ほどうとうとしていると、携帯が鳴った。夫からの電話だった。「どこに居るの？」自宅の電話に何度かけても応答がないので、痺れを切らして携帯の方にかけたらしい。夫は４日のフライトでイスタンブールに着くと、イスタンブールやイズミールで用事を済ませてから、アンタルヤに戻ってくると言った。「お土産買えるのはそろそろ最後だから、他に欲しいものはないの？」帰国のたび、日本食や子供の欲しいもの、書籍など、リクエスト通りに買ってきてくれる夫にはいつも感謝していた。以前送ったリストに書いたものは、すべて買い揃えてくれたらしい。「特にないわ」夫は、１２月の仕事がキャンセルになったので、今回は２ヶ月間ゆっくり休みを取る予定だと言った。久し振りに、私の誕生日もお正月も、家族一緒に過ごせそうだった。子供を学校に迎えにいき、帰りにバッカルに立ち寄った。電気がないので、店内はひどく薄暗い。「どうして、こんなにしょっちゅう電気が止まるのか知ってる？」店の主人に聞いてみると、「ほら、後ろの方に変電所があるだろ。それでだよ」近くに変電所があるなんて、初めて知る事実だった。私たちの住む地区が、隣近所の地区に比べても停電が多いような気がしてたのは、その関係だったのか。結局、電気が完全に戻ったのは５時５分前だった。ゆうに９時間近くの停電・・・。おかげで、今日は断食ならぬ断ＰＣを味わって、少しはいい薬になったかも。このところ暇があれば繋げているので、電話代が恐ろしいことになっているに違いないのだ。それにしても・・・ダラダラと過ごした日の日記は、文章もダラダラしてしまうのは何故だろう・・・？

  2004/11/01

• 

  バースデー・ケーキ＋銀行＋子供服＋国旗探し＝用事を一度に片付けようとした一日**画像追加

  体調不良のせいで先週末から溜まっていた様々な用事を、今日は一気に済ませてしまうつもりだった。娘たちを学校に送っていった後、３０分ほどＰＣの前に座り、シャワーを済ませて外出の支度をした。その間に友人のユリさん（Ｙちゃん、あらため美雨ちゃんのお母さん）から電話も入った。土曜日に外出に誘われたのを、調子が悪くて断ったのだが、その後調子はどうかと心配して電話してくれたのだった。「ありがとう。随分よくなったわ。そっちはどう？」「昨日も、その前もイフタル・イェメイ（断食開けの夕食）の準備で疲れちゃったわ。昨日も義父母たち含めて１０人も来たの」「それは可哀相。お疲れさま。あなたはいつも大変ね」「今日も伯父さんたちが来るのよ。母も招いてるし。でもこれで終わり」近くに両親の家があり、ご主人の家族もアンタルヤ郊外に住む以外に、日頃なにかと人付き合いの多い彼女の家庭では、ラマザンが始まっていっそう客人の出入りが激しくなっているようだった。「ケンディネ・イイ・バク！（身体に気をつけてね）」私たちは、ジュムフリイェット・バイラム（共和国記念日）の連休が終わったら会おうね、そう約束して電話を切った。 　 - * - * - * - * - 今月２９日は、トルコの共和制樹立を記念したジュムフリイェット・バイラムで、国民の祝日である。学校は前日２８日の午後から休みに入るので、今年は３日半の連休となっている。またこの日２９日は、下の娘の満５歳の誕生日でもある。誕生日パーティーをどうしようか、少々悩んだが、昨年幼稚園のクラス内で簡単に済ませたと同様、休みに入る前に学校の食堂でクラスのお友だちと済ませてしまうことに決めたのだった。バースデー・ケーキはここ２年ほど同じパスターネ（菓子屋）に注文していたが、今回は念のため他の店にも当たってみようと、ミグロス・ショッピングセンターの中に入っている『Motta』(ｲﾀﾘｱの大手ｶﾌｪ･ﾁｪｰﾝだが、トルコのは名前だけで中身は全く別物)にも一応聞いてみることにした。子供、しかも女の子向けのバースデー・ケーキのサンプルは大して揃えてないのに、値段を聞いてビックリした。５２ミリオン（約４０００円）だというのだ。サイズは１サイズのみ。さっさと退散し、バスに乗っていつものパスターネに向かった。ここでは子供用のデザインも様々なバースデー・ケーキのサンプル写真が３０～４０種類も用意してあって、値段は、サイズが小さくデザインの簡単なものだと３０ミリオン（約２４００円）くらいから。お姫さま願望が強く、ディズニー・プリンセスたちに憧れている下の娘のために、シンデレラか、リトル・マーメイドか、バービーかで悩んだ。娘は「眠れる森の美女」のオーロラ姫が一番のお気に入りだが、ないので、今回はリトルマーメイドのデザインを選んだ。ピンクの好きな娘のために、クリームはピンク色にしてもらうよう注文。商標使用料の分少し割高で、お値段の方は３７ミリオン（約３０００円）となった。明日、午後３時のおやつの時間に間に合うよう、２時半の引取りとして店を出た。 　 - * - * - * - * - 再びバスに乗って、カレカプスにある銀行へ。月末の学校への支払いがあるので、まとまったドルを引き出すためである。ドル口座から引き出すのは半年くらい振りだが、手数料が１５ミリオン（約１２００円）かかると言われて驚いた。今までドルを引き出して、手数料を請求されたことなどなかったからである。よくよく聞くと、半年ほど前から適用されているそうで、海外からの送金を引き出す際、５０００ドルまでは一律１５ミリオンかかるのだという。一方、トルコリラの形で受け取れば手数料は取られない。当然むっとしたが、頭の中ですばやく考えた。確か、外に並んでいるDÖVİZ（両替商）だと、いくらいくらだから・・・・・と。しまった。レートをよく見てくればよかった。結局、両替した場合、外の方がほんの少し手元に多くくるだろうと判断して、素直に１５ミリオンを払った。　 - * - * - * - * - 銀行を後にすると、行きつけの子供服のファクトリー・アウトレットの店に行った。ファクトリー・アウトレットといってもブランド物ではない。主に輸出用に安く作られた子供服の集められた店である。同じ品物がパザールで売られていることがあるが、値段も１～２ミリオン程度しか変わらないし、なによりサイズと種類が豊富で、毎週のように新しい品物も入荷するので、今では真っ先にここを覗くようになった。今まで２０着以上買っているが、まれに『mothercare』などの子供用品ブランドのタグがついたままになっているくらいである。質もブランドものと大した遜色はない。それで値段の方は、Ｔシャツ類が５～７ミリオン（４～５００円前後）、ボトムスが７～１０ミリオン（６～８００円）である。けっこう時間をかけて見たのだが、今日は娘たちの気に入りそうなものは見つからなかった。このところの流行なのか、前面にイラストや英語が大きく入ったようなスポーティー＆カジュアルなデザインが多く、娘たちの好む中央にハートや星、蝶や花のワンポイントの入るシンプルなものや、ビーズやスパンコールをあしらった女の子らしいデザインがなかったのだ。　　　- * - * - * - * - その足で、今度はトゥルク・テレコムに行って電話代をカード払いし、向かいのチャルシュ（小さいショッピングセンター）の本屋に再び立ち寄った。ちょうど３週間前に『王の道』という写真集を買ったところ。ここは文具店も併設しているので、小さいトルコ国旗を置いてないか、聞いてみた。共和国記念日の祝日を祝うために、教室中を飾るための国旗や（国旗入り）風船を持ってくるよう先生に言われたのだと、昨日娘から聞かされたばかりだった。残念ながら、ここには大きい国旗しか置いてないとのこと。手持ち無沙汰な私は、ついつい食指に引っかかりそうな本を物色し始めた。新学期シーズンがようやく終わったばかりで、書棚にはほとんどジャンルも関係なしに本が詰め込まれていた。ようやくガイドブック関係の集められた棚に、１冊のブックレットを見つけた。『ANADOLU EVLERİ DİZİSİ -1/BODRUM EVLERİ』 　　　　　　　　　　 (アナトリアの家々シリーズ-１/ボドルムの家々)というタイトルの建築文化関係の小冊子である。―民衆建築芸術の一例―という副題がある通り、一般市民が長年の生活の中で次第に確立していったその地方独特の建築スタイルを分析・考察した作品である。　私の手にしたものが４版で今年５月の発売というから、以前から流通していたに違いないが、アンタルヤでこのシリーズを目にしたのはこれが初めて。“シリーズ-１”とあるのだから、他の地方についての考察もあるはずなのだが・・・。できれば全巻揃えてみたいシリーズである。・・・と、この小冊子を手に立ち上がると、私の名を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、なんと。朝電話でオシャベリしたばかりのユリさんが、いつも一緒に出歩くことの多いコムシュ（隣人）の愛花さんとそこに立っていた。自宅から歩いて来れる距離のこのチャルシュに、ウィンドウ・ショッピングに来ていたのだった。私たちはトルコ式に両頬を交互に触れ合わせる挨拶を交わすと、しばらく立ち話をした後、別れた。　　- * - * - * - * - 町中からの帰りに、明日の誕生日パーティーに使う小道具を仕入れるために、再度ミグロスに立ち寄った。『トイザラス』のパーティー用品コーナーで、娘の頭に被せる紙製の王冠と、お友達ひとりひとりに持たせることのできるよう風船か、ピロ～と音の出る伸び縮みする笛（名前は知らないが・・・）を買うことにした。ついでにトルコ国旗のことも聞いたが、ここでも見つけられなかった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　国旗を探しにスーパーマーケットの方も覗いてみたが、７０ｃｍか１０５ｃｍという本格的な国旗しか置いてなかった。国旗入りの風船だけ１パック購入し、自宅に戻ると、さすがにぐったりと疲れて、遅い昼食もそこそこに、ベッドに再び横になった。今日の新聞の地中海版を手に取ると、こんな記事が目に入った。「地中海を国旗で飾ろうコール」アンタルヤ知事アラアッディン・ユクセルが、地中海地方の全家庭、仕事場などあらゆる場所を、２８、２９日の両日に渡り栄えある国旗で飾ろうと呼びかけた、という。飾らなかったからといって、何のお咎めもないだろうが、遅かれ早かれ、我が家にも１枚は国旗が必要になるだろう。前回のワールドカップの際に夫が買った国旗が、確かどこかにあったはずなのだが・・・・。この分では、明日もう一度国旗を買いに出掛けることになるだろうな～。明日もまた疲れそうな予感・・・・。

  2004/10/26

• クンドゥ村訪問で・・・待ち合わせはハラハラ・ドキドキ**更新

  今日は朝からお出掛け、しかもちょっとした遠出をした。アンタルヤの中心部から車で３０分はかかるクンドゥ村の花卉栽培業者で働く日本人女性がいると、前々からmihriさんの日記で拝見していたのだが、今回あらためて紹介を受け、何回かのメールでのやり取りの末に、彼女Ｈさんの仕事場に会いに行くことになったのだ。クンドゥ村に初めて足を伸ばす私はすっかり遠足気分。で、どちらかというと普段は出不精の友人を誘って一緒に行くことにした。１人より２人。おしゃべりするなら３人の方がずっと楽しい。アンタルヤの東に位置する小さい村々―アクス、ゲビス、ベレッキ、そしてクンドゥ方面の小型バスが出発するのは、メイダン交差点、地元の人には単に「メイダン」（広場、の意）と呼ばれている大きなロータリー型の交差点の近くであったから、友人には「メイダン」での待ち合わせを提案した。メイダンから空港方面に向かう大通り、アスペンドス大通りに入ったあたりにバスが並んでいるはずだからといって。あらかじめ、先方からバスの出発時間も教わっていた。毎時ちょうど、９時、１０時、１１時・・・といった具合に。１０時のバスに乗るために、遅くとも１０分前の９時５０分には集合とした。遅れれば、殺風景な交差点の脇で１時間も待たなければいけなくなる。問題の種は、それをメールで伝えただけで、直接電話で確認を取らなかったことにあった。メールを打った後で、「もしかしたら、彼女の最寄のバス停で待ち合わせて、一緒に行った方がいいかなあ～」と思いはしたが、その時点では行き違いの可能性はあまりなさそうな気がしていた。ふたりとも携帯を持っているのだし、メイダンまで来れば、あとはお互いを見つけるのは簡単だと思い込んでいたのだ。子供たちを学校に送っていき、戻って洗濯物を干した後、Ｈさんへの手土産も袋に詰めて、少し早めに家を出た。家から歩いて５分ほどのところに出来ているオシャレなパスターネ（カフェを併設したお菓子屋）で、Ｈ産の会社への手土産になにかお菓子を買うつもりだったのだ。あらかじめメールで、会社の中で断食をしている人はほとんどいないことは聞いてあった。季節感のあるところで、マロングラッセを乗せたお菓子を箱に詰めてもらうと、私はミニビュス（小型乗り合いバス）に飛び乗った。メイダン交差点へは、９時４５分頃に差し掛かった。私は念のためミニビュスの運転手に聞いてみた。「クンドゥ村行きのバスは、確かこの辺でしたよね」運転手はもうちょっと先だという。私はちょっと不安になった。交差点を過ぎて、なおもミニビュスは前進していた。再度尋ねてみても、もうちょっと待てのゼスチャー。やがて運転手がバスを止めた。「ここで降りて、まっすぐ歩いて行きなさい」なんだか、訳が分からず下りた私は、すぐ横にあったバッカルに飛び込んでもう一度聞いてみた。「クンドゥ村行きのバスはどこから出るんですか？」「この道をまっすぐ２００mほど行って左側だよ」「前は、メイダン交差点のところじゃあありませんでしたか？」「こっちに移ってきたんだよ」アッラハッラー！（なんてこった）それじゃあ、彼女との待ち合わせはどうなるんだ！？私はすぐに友人の携帯に掛けてみた。バスに乗っていて切ってあるのか、なかなか応答せず、３度目くらいでようやく繋がった。「今どこに居るの？」「メイダンのもうちょっと手前で、そっちに向かって歩いているところ」私はなぜ彼女がメイダンを通るバスに乗らなかったのか、そしてメイダンでバスを降りなかったのか一瞬不思議に思ったが、続けて聞いた。「ドーｳ・ガラージュのあたり？」「いや、もっと手前だけど？」彼女がいったいどこでバスを降りたのか、私は訳が分からなかったが、いろいろ追求している時間の余裕はなかった。すでに９時５０分になっていた。「実はバスの乗り場が変わってて、メイダンよりずっと先になったのよ。悪いけどもう一度バスに乗ってくれる？クンドゥ村行きのバス乗り場の近くを通るかどうか、運転手に聞いてみて」そういって、携帯を切った。私は先にバス乗り場に向かい、彼女が遅くなってもいいように、運転手にあらかじめ告げておくつもりだった。心配したほど遠くなく、それから５分ほどで着いた。そこは、ミニビュスやアンタルヤ東部の村々に向かう小型バス専用の小さいターミナルになっている場所だった。彼女がメイダン近くから乗っていれば、そこから５分ほどでターミナルに着くはずだった。私はバスの横に立ちながら、彼女に電話した。「今乗り場に着いたから。とにかく来るの待ってるね」彼女の方もバスに乗っているところだという。よし、じゃあ、もうすぐ着くだろう。バスの後ろの方で煙草を吸っていた運転手が私に声を掛けてきた。「まだ、友達でも来るのか？」「今こちらに向かっているから。５分で着くと思う。少し待っててくれる？」しかし、１０時になっても、まだバスの姿も彼女の姿も見えなかった。運転手は運転席に座ると、エンジンを掛けた。「それじゃあ、ヨルクオール交差点で待つように言ってくれないか。これはぐるっと回ってそこを通るからさ」私はすぐに彼女に電話した。「どこまで来てる？」彼女は運転手にひとことふたこと聞いていた。「ええ～、メイダン過ぎちゃったって言ってるよ」「メイダンよりずっと先だけど、クンドゥ行きのバス乗り場は。それも過ぎちゃったの？」彼女は運転手や乗客と過ぎた、過ぎてないの確認をしているようだった。「今バスを降りちゃった。いや、運転手が呼んでる。乗りなさいって？」「じゃあ、そのまま乗ってて。運転手にヨルクオール交差点で降ろしてくれって言ってくれる？」「ヨルクオール交差点、オッケー分かった」バスは私を入れて３人の乗客を乗せ、２～３分遅れて出発した。ターミナルを出た後、バスはなんと一旦メイダン交差点の方角に戻り、交差点からわき道に入ると、そこに乗り場が設けられていて、ぞろぞろと乗客が乗ってきた。なんだ、やっぱりメイダンも通るんじゃないか。それならここから乗った方がよかったのに。運転手に聞くと、一旦取り上げられた後、新たにそこにバス停が作られたとのことだった。今更恨み言を言っても仕方ない。問題はヨルクオール交差点だ。彼女からの電話が鳴った。「今、ヨルクオール交差点でバスを降りたよ」「乳製品の店があるよね？そのままそこで待っててくれる？バスがそこを通りかかった時に、私の方から見つけるから」田舎道をくねくねと走り、田舎びた青空パザールの間をバスは通り抜けていった。見覚えのある交差点が前方に見えてきた。私はすぐに彼女に電話した。「もうすぐ交差点だから、向かいの家具屋の方に渡ってくれる？」「あ、見えた見えた！」見慣れた彼女のすらりとした姿が私の目にも入った。角で運転手はバスを止め、彼女の辿り着くのを待ってくれた。「あ～あ、良かった！」「お疲れさま～！とにかく良かったね～乗れて」私たちは並んでシートに座ると、このハラハラ・ドキドキの待ち合わせ劇が、どうして起きたのか、互いに説明を始めた。「ごめんね。前はメイダン交差点のすぐ先のほうから出てたから、メイダンで待ち合わせにしちゃったのよ。そういえばメイダンのバス停が無くされたって、前に新聞で読んだことがあったのに、覚えてなくって。Ｈさんの方も、バスで通ってるわけじゃないから、移ったこと知らなかったんだと思う」友人は、ちょっと自信なさそうに私に告げた。「メイダンって、ジュムフュリエット・メイダン（共和国広場）のことじゃあないのね。ジュムヒュリエット・メイダンにバス停がないといけないと思って、ギュルルック（通り）で降りて歩いてたところに電話が鳴ったのよ。で、ドーｳ・ガラージュかとか、まだそんなところなのとか聞かれて訳が分からなくて・・・」私は目を丸くした。メイダンと、ジュムフュリエット広場とを間違えていたとは。道理で５分で着かなかったわけだ。私が９時５０分頃に電話した時、彼女はまだメイダンより２ｋｍ以上手前、バスターミナルより３ｋｍは手前のところにいたのだ。「ええ～、メイダンって、ほら、丸い大きな交差点があったでしょ？真ん中に銅像のある。そこがメイダン。アンタルヤでメイダンって言ったらあそこだから、てっきり・・・」彼女はきまりが悪そうだった。「彼（ご主人のこと）にアスペンドス大通りだって言ったら、そこは空港に行く道だろうって。だから私も頭の中がこんがらがって。ジュムヒュリエット広場と空港に行く道じゃあ全然違うから、頭の中で折り合いがつかなくって・・・」「昨日帰ってきたのが遅かったから、今朝起きたら電話しようと思ったのに、目が覚めたら９時７分で。２０分で支度して出たの。だから電話できなくって」私は、前もって電話でよく摺り合わせをしなかったこと後悔した。私の方こそ、朝出る前に確認の電話を入れるべきかも、という考えが頭の中をよぎったのだが、支度で忙しい時間帯で邪魔になるだろう、メイダンまではとにかく来れるはずだから、と油断していたのだ。それに、彼女の頭を混乱させる原因を作ったのは、私でもあった。前日にちょうど、電話で「ジュムヒュリエット・メイダン」の話をしたばかりだったのだ。私から「メイダン」と告げられた時、彼女の頭には真っ先に、この広場が浮かんだに違いない。かくも、コミュニケーションとは難しいものである。メールは相手の都合を気にせずとも、好きな時に送受信できる長所があるが、こんなときはやっぱり、相手の反応を探りながら話の出来る電話にはかなわない。とにもかくにも、私たちは無事花卉栽培業者に着き、そこで日本のクライアントに対する営業・輸出担当窓口としてまじめに働くＨさんとの楽しい歓談の時を過ごした後、お土産に素晴らしいバラの花束までいただき、会社の人に車で途中まで送ってもらって帰ってきたのだった。 * * * * * * * * * ちなみにクンドゥ村は、アクス川流域の茫々と広がった平野のあちこちに野菜や花卉のセラ（ハウス）が立ち並ぶ、さして特徴もない農村である。しかし近年、クンドゥ村の先端、地中海に面した一帯に、個性的なデザインを誇る５ツ星のリゾートホテルが次々と建設され、アンタルヤのラスベガス的様相を呈し始めている。例えば、イスタンブールのトプカプ宮殿を模した「トプカプ・パラス」、モスクワはクレムリン宮殿を模した「クレムリン・パラス」、ヴェネツィアはサンマルコ広場やドゥカーレ宮殿を模した「ヴェネツィア・パラス」、映画「タイタニック」公開後には、タイタニック号を模した、その名も「ティタニック」が誕生している。アンタルヤ市は、この地域一帯をトゥリズム地区として総合再開発する予定で、すでに大きなビーチのあるララ地区との間を短時間で結ぶ立派な観光道路も完成している。現アンタルヤ市長は、「アンタルヤをトルコのドゥバイに」と望んでおり、今はのどかな農村風景の広がるこの地が、買収されて観光地区になるのもそう遠い先のことではないような気がした。ひとしきりオシャベリに興じた後、セラを見るために私たちは連れ立って散歩に出かけた。あたり一帯は、夏の一時期だけバラも作るというが、ほとんどがカーネーションの栽培農家のようだった。散歩からの帰り道、「やがてここもなくなっちゃうのかな～」と、Ｈさんはぽつりと呟いた。

  2004/10/20

• 今月３度目の誕生日パーティーで・・・トルコの贈答文化を考えた

  子供同士の付き合い、というより、子供を仲立ちとした付き合いもなかなか大変である。今月誕生日パーティーに招待されるのは、これで３度目。普段「お茶にいらっしゃい」などと気軽に招待されるのと違って、誕生日パーティーに手ぶらで顔を出すわけもいかず、毎度のごとくプレゼントの用意にあたふたすることになる。１度目は、同じマンションの遊び仲間だが、親同士はほとんど付き合っていないので、上の娘だけお祝いに行かせた。急な話だったので、プレゼントを買いに行く時間もなく、上の娘が手作りしたビーズのアクセサリーを封筒に入れて持たせた。２度目は、先日紹介したビーチパークのカフェレストランでの豪華（？）パーティーである。普段なにかと気を遣って、手土産を持たせてくれたり、どこかへ連れ出してくれる友人夫婦だし、その娘でお姫様気質のＹちゃんはなかなか好みもうるさいので、品物・予算ともにピタリとくる物を探すのが難しい。結局最後には、無難に「バービー」グッズに落ち着いてしまう。しかし、「バービー」のキャラクター製品はお値段の方も少々お高い。財布が２１ミリオン（約１６００円）、B６サイズくらいの小さい手帳でも１０ミリオン（約７８０円）くらいはする。今回買った小さいパーティーバッグは２０ミリオン。もちろん娘たちにはこんな「贅沢品」、買い与えたことはない。そして、今日は同じマンションに住むOちゃんの誕生パーティー。娘たちと同じ私立学校に通うOちゃんのところには、よくお世話になっている。つい先日も、夕方から始まった強い眩暈のためにキッチンに立てず、娘たちに夕食を食べさせてもらったばかりだ。昨日のうちにプレゼントは買っておいた。娘たちがひとりひとり別々に渡したいというので、予算の２０ミリオンで２種類のものを用意する必要があった。boyner(以前はcarsiという名だった）という小型のデパートで、鮮やかなピンク系のソックス２足と、フローラル・ブーケの香りのする子供用のオー・ド・トワレを買い求め、ギリギリ予算内に収まった。それにしても、入れ替わり立ち替わり、毎月のように誕生日パーティーに招待される方はたまったものじゃない。年間で最低１０回は誕生日パーティーに招待され、その度になにがしかのプレゼントを買い求めているわけだから、プレゼント代だけでもバカにならない額だ。おまけに、プレゼントを買いに行く度に、娘たちから「私たちだって欲しい」と泣き付かれないかと冷や冷やする始末。幸いにも、最低限必要な服や学用品には惜しまないが、オモチャや子供雑誌、お菓子の類はそうそうは買ってやらない私の「ケチ振り」を知っている娘たちは、先日Yちゃんへのパーティーバッグを買った時も、自分たちは１０万（約８円）のボールガムで満足してくれて助かった。子供の年齢が上がっていくと、その辺で売られている安オモチャの類では満足しなくなってくるのも、頭が痛くなる原因である。日本の同じ年頃の女の子たちはどうか知らないが、ご近所や娘の同級生の女の子たちの多くは、可愛い動物のぬいぐるみよりキレイなオシャレ小物を、「偽もの」の化粧品より、本物のマニキュアだのコロンだのを喜ぶ。今日で満９歳になったOちゃんの部屋にもオシャレ・コーナーが作ってあり、髪飾りの一杯詰まった箱の横には、およそ７～８本のマニキュアが並べてあるほどだ。ここにやって来たばかりの頃、急な招待なら、仕方なく家に置いてある物の中から適当に見繕ったりしたこともあったが、それで何度か恥ずかしい思いをし、以後気を遣うようになった。なにしろ、中にはブランド物の服を贈る人もいるくらいだ。家族・親戚でもないのに、そこまで大盤振る舞いをする必要はないと私は思っているが、年々予算の額を上げていかざるを得ないのが恨めしい。 * * * * * * * * * * 日本が、世界でも類を見ない贈答文化の発達した国だということは疑いないと思うが、トルコだってなかなかどうして、贈答の習慣には負けないものがある。「誰かに何かを贈る」行動の最も発揮されるのが、客人に対してではないかと私は思っている。自宅に珍しい客人を迎えた際に、客人に何かひとつでもハトゥラ（思い出の品、記念品）を持って帰ってもらおうと、涙ぐましいほどの気遣いを見せるのがトルコ人だ。私はあまり他所様のお宅を訪問しない方だが、それでも今までに何度か珍しいものをいただいている。それは、家族の証明用写真だったり、黒いブカブカの（パンティという言い方が似合いの）女性用下着３枚だったり、（当時は独身だったが）赤ちゃん用のニット製品だったり、自分の使っているピアス（私の耳にはピアス穴は開いていない）だったりした。「これはどう思う？」と見せられて、うっかり褒めようものなら、「じゃあ、これを記念にあげる」と無理やり手渡されてしまうのだ。家族、親戚、友人間で行き来する場合だと、もっと実用的で相手に喜ばれそうなものが選ばれるのは日本もトルコも同じである。畑で獲れた野菜や果物。アンネ（お母さん）手作りのジャムやサルチャ（トマトや赤ピーマンのペースト）やトゥルシュ（ピクルス）。手編みのセーターや手作りのリネン類。近所だったら料理や手作りのお菓子まで。これらはプレゼントというより「手土産」といった方が相応しいかもしれない。誕生日や何かの記念、お祝いには、一見豪華な品物が選ばれることも多い。トルコには意外にギフトショップが多いのだが、その手の店を覗いて見ると、サロンに置いて「見栄え」のするようなキンキン・ピカピカの花瓶やら飾り皿、置物、写真立て、用途の知れない箱、造花・・・などなど、これでもかと豪華な品揃えである。最近は、こじんまりしたデパートやインテリア・ショップがあちこちにできて、シックでオシャレな品揃えでギフト商戦を勝ち抜いている。他の都市ではどうか知らないが、アンタルヤでは年に何回かギフトショーや手工芸品の展示即売会が開かれる。日本の大規模なギフトショーとは比べ物にならないほど小規模だが、出かけてみるといつも大変な混雑振りである。出展してあるのは、布製品、タオル製品、陶製品、ガラス製品、カゴ類、皮製品、木製品、造花、アクセサリー、絵画、エスニック小物など。会場の熱気から伺うに、皆こういうチャンスを逃すまいと、誰かへのプレゼント、あるいは、いざ誰かが来たときのためのプレゼントを買い求めているに違いないと、しみじみ納得するのだった。日本のようにお中元・お歳暮の心配はないが、トルコに来てからというもの、１年中そんな調子でちょっとしたプレゼントをあげたりもらったりすることが多い。近年、トルコでも、ニュー・イヤー・プレゼント（クリスマス・プレゼントの代わり）だのバレンタイン・デーだの、父の日だのと、デパート、小売業界の仕掛ける新たなプレゼント商戦が花盛りである。トルコ人はもともと贈り物好き、新らし物好きの国民性だから、仕掛けに乗るのも早い。トルコが日本に匹敵するのも、時間の問題かもしれない。

  2004/10/19

• 古着の嫁入り先

  衣替えの季節。アンタルヤは昨日も気温は３０℃近くまで上がり、今日もまだまだ上がりそうな予感。それでも、朝晩はめっきり涼しくなって、ようやく秋の趣が漂い出しました。今日はお昼前の空き時間に、夏物と秋物の入れ替えを行い、着られなくなった古着を手提げ袋ふたつに一杯に。半袖はまだ必要なので残し、ノースリーブやタンクトップ、サマードレスのみ仕舞い、厚手のトレーナーやコーデュロイのパンツ、スカート類を出しました。衣替えをするたびに驚くのは、やはり子供の成長の早さ。昨年のこの時期に上の娘が来ていた服は、自動的に下の娘へ。下の娘の服は、古着となって嫁に行くことになります。夫の一番下の妹の娘たちが、うちの娘たちより１～２歳ずつ小さいので、以前はイスケンデルンまで送ったり、夫が郷里に帰るついでに持って行ってもらってました。物が簡単に捨てられない私の性分もあるのですが、やはり少しでも家計の足しにと思ってのこと。帰ってくると夫は、「喜んでたよ」と言って、「いつも古着ばかりで申し訳ないな」と気に病む私を安心させてくれていたのですが、人の本音は実際のところ分からないもの。私たちも、トルコ人の友人からしばしば女の子用の古着を貰い受けることがあります。そんな時に感じるのは、有難いというより、わずかばかりの困惑。娘たちが乳児だった頃は、とにかく数で勝負とばかり、どんな古着でも有り難く頂戴していたのですが、ここまでに成長し、それぞれの趣味･嗜好がはっきりできはじめると、「これはどう見てもあの娘たちの趣味じゃないな」と、見た途端に分かることが多くなりました。で、持ち帰って見せても、案の定気に入らず、結局そのシーズン中一度も袖を通さず、衣替えの際にそのまま衣装箱の中へ。先月も、子供連れで友人の家に遊びに行った時、「これは着れるかしら。こっちはどう・・？」と次々に私たちの前に出された古着。中には、サスペンダーの金具がなくなって留まらなくなっているようなサロペットもあって、さすがにそれを勧める友人の気が知れなかったのですが、「これ、素敵なのにな～。ここ、縫ったら着れるんじゃない？」なんて言われて、仕方なくそれも頂戴して帰ったことがあります。悪いとは思いながら、それはすぐにゴミ箱行きに。そんなことを繰り返すうち、今では、古着はいっさい親戚の子供にあげることはやめました。もちろん、知り合いやご近所にも。他に喜んでもらってくれる人たちがいることに、あらためて気付いたからです。トルコの中小以上の都市では、どこでも見られる風景なのかもしれません。少なくともアンタルヤでは、馬車でゴミ集めをするチンゲネ（ジプシー）と呼ばれる人たちの姿は一般的なもの。彼らの狙うのは、ダンボールや古紙、空き缶、金属片、空き瓶などのお金に変えられるものですが、古い家具や古着でもあれば、放ってはおきません。それに、パンだって。日々のパン代にも困っている貧困層が、どれくらいの数でアンタルヤとその周辺に暮らしているのか、皆目見当はつきませんが、食べ残しのパンだって喜んで持ち帰ってくれる人たちがいるのは確かなのです。下の娘がまだ幼稚園に通っていた頃、マンションの下でセルビス（通園バス）を待っていると、ゴミ箱をあさりに来る人を必ず見かけました。その中には、セルビスの運転手も。セルビスを停め、下りてきたかと思ったら、ゴミ箱の周辺に出してある古パンを集めて、その辺に捨ててあったビニール袋にしまい込み、さっさと行ってしまいました。それを目撃して以来、１～２日経って硬くなったパンは、ゴミ箱の横にブラ下げておくようにしているのです。ときどきゴミ箱周辺を覗いて見ていると、早くて１～２時間、遅くても半日以内に持ち去られているというわけ。そして、古着、古カバン、古靴も同様。今までに、使わなくなったオモチャ、汚れて飽きられたぬいぐるみ、成長して用のなくなったオマルや補助便座など、さまざまな古道具をゴミ箱の横に、見えやすい形で出してきました。一時は、親に見離されたりして身寄りのなくなった子供の養護施設に届けようかと考えたこともありましたが、手垢に汚れたような古いオモチャやぬいぐるみを寄付するのは、先方に対しやはり失礼にあたるに違いなく、寄付先を変えたというわけです。先日の日曜パザールからの帰り道。我がマンションの下のゴミ箱の上に腰掛けて、一人の少女が一生懸命に服を物色している姿を目撃しました。１０歳くらいかと思われるこの少女が、それほど貧しい身なりをしているわけではないことに、まずは驚いたのですが、私たちが横を通りかかっても、恥じるでも気にするでもなく、夢中になって服を広げる姿に胸が痛み、私は思わず目を背けていました。こんな少女が、こんな子供たちがいるかぎり、古着処分といいながら、せっせと服をゴミ箱まで運ぶことをきっと私は止めないでしょう。午後３時。ゴミ箱の横に置いたはずのふたつの手提げ袋は、跡形もなく消え去っていました。あの子供服は、今頃どこのどんな子供たちの手に渡っていることやら・・・・。娘たちも着た子供服を、嬉しそうに着てくれる子供がどこかにいるかと思うと、まだ使える服をゴミに出す罪悪感もなんとなく消えていくような気がするのです。

  2004/10/13

• 

  休日の朝食はのんびりと**画像あり**

  今日の日記を書いている途中で、タウシャン･ポポさんの日記を覗いてみたら、偶然にもトルコの伝統的朝食のお話が・・・。というわけで、初めてトラックバックにしてみました。　******************************平日は毎朝６時代には起きて、ＰＣを開けたり、前夜に残した片付け物をしたりし、遅くとも７時には朝食の支度をはじめる。パンを買いにバッカル（食料品･日用品を扱う小さいマーケット/よろずや）に行って戻り、トマトやキュウリを切り、冷蔵庫からジャムやクリームチーズを出し、最後に卵を焼いて、簡単なトルコ風朝食が出来上がる。私も夫もコーヒー党なので、普段チャイは淹れたことがない。チャイを淹れるのは、客人があるときだけ。子供たちには牛乳。夏は冷たくして、ときにネスクイック（ココア飲料）を混ぜたり、冬はホットミルクにして。オリーブはあれば食べるが、普段子供との３人暮らしなので、買っておいてもいつのまにかカビていることが多い。我が家では朝食に卵は欠かせないが、平日は忙しいので、もっぱらスクランブルエッグか目玉焼き。ソーセージやスジュック（香辛料の効いたソーセージ）を焼いて、残った油で卵を焼くこともあるが。その代わり休日には、中にジャガイモ、玉葱、マッシュルーム、ハム、トマトなど、様々な具を入れたトルティージャ（スペイン風オムレツ）を作ったり、前夜のご飯が残っている時はオムライスにしたり、今日のようにボレキ（トルコ風パイ）を焼いたりする。冬野菜の話をしていて「ボレキ」と書いたら、そろそろボレキもいいかなあ、という気になるから不思議。夏が長く厳しいアンタルヤでは、さすがに夏の間はボレキなど食べたいとも思わないのだが、こうして朝晩が肌寒くなってくると、お腹にしっかりたまるボレキもなんだか懐かしい。で、ギョズレメ（中に具を挟んだトルコ風クレープ）に使った残りのユフカ（小麦粉を練って薄く延ばしたパイ用の生地）がちょうど４枚残っているので、ほうれん草と白チーズを入れたボレキを作ることにした。ボレキを作るのは半年振りくらいだろうか。毎度、目分量で適当にやるので、うまくいったり今ひとつだったりするし、レシピがないので思い出しながらだが、気にしないでとにかく始めた。まずザク切りにしたほうれん草を炒め（茹でてからの方がアクが抜けていいのだが、今日は面倒くさくて、いきなり炒めることに）、塩コショウをしておく。なんと呼べばいいのかわからないが、卵液（？）を用意する。私は大抵ヨーグルト、牛乳、サラダ油（または溶かしバター）、卵１～２個を適当に混ぜる。オーブン用の皿に、まず１枚ユフカを敷き、卵液を塗る。次の１枚をプリーツを寄せながら、皿一杯に敷き詰め、卵液を塗る。そこにほうれん草、砕いた白チーズをまんべんなく散らせ、さらに１枚、ユフカをプリーツを寄せながら敷いていく。卵液を塗り、ほうれん草と白チーズ。最後の１枚は、しわを寄せないよう皿の大きさに合わせてまっすぐ敷き、皿の外にはみ出したユフカを端からきれいに皿の中へ畳んでいく。最後に、卵をもう一個卵液に加え、上からまんべんなく掛ける。今日は仕上げにチョレキ・オトゥ（クロタネソウ/黒ゴマに似ている）を振る。これがあると香ばしいし、色合いもぐっと引き立つ。２００～２２０℃のオーブンで約３０分。（焼き加減を見ながら）で、このように出来上がりました。　 今日はトマトもキュウリも切らず、ボレキと飲み物、フルーツだけ。本当は、ボレキにはチャイが合うんだけどな。タウシャンさ～ん、よろしかったらチャイをご馳走して！お返しに、私からはボレキをどうぞ。

  2004/10/10

• 懇親会をすっぽかした一日

  雨雲が去り、急速に青空の戻り始めた今日、土曜日。下の娘のクラスのタヌシュマ・イェメイ（父兄同士が互いに知り合うための食事会/懇親会）がお昼１２時から開かれる予定なのですが、どうも参加する気になれない私・・・。上の娘が現在の私立学校に通い始めてから、このような懇親会のお誘いは何度も受けているのですが、今まで一度として参加したことがないのです。私とて、他の父兄（母親）と知り合うチャンスとあれば、喜んで参加したいのはやまやまなのですが、日頃から節約と堅実を心掛け、贅沢を自らに禁じている私には、「会場」と「参加費」がどうにも納得行かないのです。今回の会場は、海岸沿いにある肉料理＆魚料理の専門店。庭には子供用の遊び場が設けられているということで、クラスの母親代表に選ばれた一父兄がアレンジしたもの。参加費は、大人が１２ミリオン（約９４０円）、子供が８ミリオン（約６３０円）。食事会としては標準的な費用なのだと、理解はできるのですが・・・・。私の納得できないことのひとつは、父兄同士が互いによく知り合うために、食事を介する必要があるのかということ。そしてまた、会場がレストランとかホテルの一室（借り切って）である必要があるのかということ。例えば、学校のカフェテリアを借りるとか、チャイバフチェ（ティーガーデン）でお茶の会という形ではどうしていけないのか？寛げない、落ち着かない、懇親会といえば、こういうもの・・・それがこちらの習慣といわれれば、私は口をつぐんで、ただ参加するかしないかの決断をするしかないのですが・・・。コレジといわれる私立学校に子供を通わせている家庭といえば、やはり裕福で、親御さんの職種の関係もあるのか社交好き、あるいは社交慣れしている親御さんたちが多い。なにかというと食事に誘ったり誘われたり、それも自宅だけでなく、外のレストランに招待したりすることも。週末ともなれば、朝食から外のレストランに出かけたり、一日中家の外で過ごす。子供の誕生会もレストランやホテルで行うし、バイラム（祝日）のお祝いや新年会もレストランやホテルの特別プランに参加する。一方我が家ときたら、夫の留守中はもちろん、夫が帰ってきている時も外食することは極めてまれ。夫は、アンタルヤに居る時くらいなるべく家でゆっくり過ごしたいというタイプだし、第一レストランで食事しても、あまり美味しいと感じることがない。とにかく、納得のいかないものに無駄なお金を払いたくない。親子３人で参加すれば２８ミリオン（約２２００円）にのぼる上に、車のない私たちには、さらにタクシー代もかかる。で、下の娘には少しゴネられたけれど、結局参加しないことに決めたのです。朝はゆっくり起き出して遅めの朝食を取り、昼からは、下の娘のクラスで使うこまごました材料を買いにバスで町中に出掛けました。毎度の例にもれず、「来週月曜までに」提出して欲しい材料リストというのが、金曜日の下校時になってから渡されたので、休日のうちに子供たちを引き連れて、町中まで買いだしに行くしかないのです。前々から、平日でも買いに行けるように、早め早めに渡してくださいとお願いはしてあるのですが、前日か、せいぜい２日前に届くのが常。新興住宅地である自宅周辺には専門店がほとんどないので、毎度のごとくバスに乗ってのお出掛けです。ボタン屋で、大小色とりどりのボタンを買い求め、次に行きつけのボンジュク（ビーズ）屋で、子供にも扱いやすそうな大き目のビーズを色々取り混ぜて選ぶことにしました。娘たちは、目についたクリスタル風のビーズが気に入って、少し欲しいというので値段も聞かず、自分たちで小さいビニール袋に５０gくらいずつ詰めさせて、細手のゴム糸も１ｍずつ一緒に入れてもらって値段を聞くと、「１６ミリオン（約１３００円）です」とのこと。思わず目を丸くしてしまいました。あのクリスタル風のビーズがきっと高かったに違いありません。あ～あ、参加費が浮いたと思ったら、こんなところで思わぬ出費。こんなことなら最初に値段を聞いておけば良かった！痛い出費にガックリしながらも、今日は昼食は外でという約束を子供たちとしてしまっていたので、行きつけのカフェテリアに行き、サンドイッチやハンバーガーの昼食を済ませ、あとはまっすぐ自宅に帰ってきました。疲れてか下の娘はお昼寝。上の娘は買ったばかりのビーズで、ネックレスとブレスレットと指輪をお揃いで作りご満悦。そして私は・・・学校に提出するために、あることをせっせとしていました。それは、ペーパータオルを剥いで、中の芯を取り出すこと。トイレットペーパーの紙芯３本、ペーパータオルの紙芯２本も、必要材料の中に入っているのです。思えば、上の娘が同じ準備クラスだった時も、何度か紙芯を提出したことがあったっけ。最初の頃は、「なんでこんなことをしなくちゃいけないんだ！」と頭に来ながら、芯をせっせと取り出したものだけれど、そのうちこちらも手回しが良くなって、いつ提出を命じられてもいいように、袋一杯に何十本も集めて置くようになったのです。「あれが、まだあったかも・・・」戸棚を開けてみると、まだ１０本ばかり残っていました。おかげで、今回の仕事はペーパータオルだけ。窓の外に広がるのは、すっかり澄み渡った空に輝くような青い海。海岸沿いのレストランでの懇親会は、もうとっくにお開きになったことでしょう。行った方がよかったのかどうか・・・今頃になって気にし始めているのです。

  2004/10/09

• 

  事故多発道路～久し振りの恵みの雨で（画像あり）

  すっかり日が短くなり、朝が明けるのが日増しに遅くなる季節がやってきました。おまけに今日は早朝から暗雲が垂れ込め、薄暗い空模様の中、遠くの方に稲光も見えはじめました。７時になり、近所のバッカルにお決まりのパンと新聞を買いに出かけると、顔にパラッと雨の滴が。急いでバッカルで用事を済ませ、慌てて家に駆け戻ると、裏のバルコンに干しっぱなしだった洗濯物を取り込みました。（一応言い訳しておきたいのですが、アンタルヤでは夏の間は、夜間でも洗濯物を干しっぱなしの家はたくさんあります。私が取り込むときも、他のお家ではまだ干しっぱなしでした。夜露で濡れる心配のない土地なのです）朝食を終えた頃、下の大通りの方から少し騒がしいクラクションの音が聞こえるのに気付きました。窓の外に目をやると、すっかり濡れて黒々と光る道路をいく車の流れもなんだか滞りがち。「これは・・・」表通りに面したバルコンに出てみると、やっぱり。５０ｍほど先の方で事故が起こったようです。目を凝らしてみると、なんと。ミニビュス（小さい乗り合いバス。ドルムシュともいう）が見事に仰向けにひっくり返り、中央分離帯の上に乗りかかるようにして停まっているのです。急な雨でスリップしたのか？周囲に同様の事故車がないところを見ると、衝突したわけでもなさそうなので、スリップしてバランスを崩し、１８０度回転してピタリと止まったのでしょうか。すでに警察の車も来ていましたが、救急車の姿は見えず、事故車の周辺にあまり人だかりがないところを見ると、早朝とあって乗客もまだ居なかったのかも。やれやれ、とりあえず大事故というほどでもなさそう。念のため証拠写真を撮って・・・・と。後で、夫に「こんなのあったよ」と教えてやるつもりなのです。　　　　　　　　　　　　　 それにしても、我が家の前のこの大通りは、事故多発道路。窓を大きく開け放って、のんびり日曜の朝を過ごしているとき、「キキーーッ！ガシャーン！」なんて聞こえてくることもしばしば。「どれどれ」とバルコンに出て通りを見下ろせば、右から左まで５００ｍは見渡せる大通りのどこかで必ず事故が起こっているというわけ。この大通り、イスタンブールやアンカラ方面からやってきて、ケメル～フィニケ～カシュ方面へと繋がる幹線道路のひとつであるのに加えて、道路沿いにはミグロス・ショッピングセンターやルナパークがあり、季節には巡回のサーカスまで設置されるために、シーズンや週末ともなると、大変な混みようをみせる道路なのです。一応、片側３車線はある見通しのいい道路なんですけれどね。それだけに皆飛ばすというわけ。もちろん、先を譲らない、我先精神の強いトルコ人だから、余計なのでしょうが。車で走るときも注意が必要ですが、歩行者にとってはまさに死の危険性をはらんだ道路。片側３車線、合わせて６車線の道路なのに、歩行者用信号ときたら、１ｋｍ先まで歩かないとないし、歩道橋も地下道もまだ作られてないのです。形ばかりの横断歩道が２００ｍおきくらいに作られていて、道路に白いストライプも入れてあるし、横断歩道を示す看板も立てられているのですが、やっぱりここはトルコ、そんなものを気に留める運転手は誰もいないのです。もちろん、歩道の端に立ち、車の切れるのを待っている子連れの外国人を見てもスピードを緩めるわけでもないし、むしろ人が渡ろうとしているところをわざわざ遮るかのように、目の前で車を寄せてくる奴もいるし、渡ろうとした瞬間に右からバックで突進してくる車もいるほど。こちらは左にばかり目を凝らしているのですから、右から突然やってこられたら、どうしようもありません。休日。ふたりの娘を連れてミグロスに買い物にでも行く時は、本当に心臓が縮まる思いです。ひとりなら小走りに駆け抜けることもできますが、３つ４つの買い物袋を片手に提げ、下の娘の手を握り、上の娘は私の肘につかまらせて渡るとなると、車との十分な間隔が開いてなければ、渡りきれません。５分以上待つこともざらです。安全が第一ですから、危ない真似はしたくともできません。幸いにして、いまだ大きな人身事故は起きていませんが、いつ起きても不思議ではない、この道路。私たちが最初の犠牲者にならないよう、それだけは気をつけたいと、日頃から肝に銘じているのです。

  2004/10/06

• こんな割り込み、真っ平御免！

  いつまでも病気だ、体調不良だと言ってられないのが、母親の辛さ。何ひとつ食べたくなくても、子供の食事は用意しないといけないし、横になっていたくとも、宿題の面倒や洗濯や買い物くらいはせねばならぬ。で、今日は重い腰を上げて、近所のショッピングセンターに食料品の買い物に出かけました。ついでに、子供たちにはハンバーガーを食べさせて、と。何を作っても自分では食べれなくて、フルーツばかり食べているのだし、子供も喜んで、一石二鳥。スーパーマーケットで牛乳だのジュースだの、肉だのをカートに入れてレジに並びました。係りの女の子がどこかにいなくなっていて、ちょっと待たされていますが、これもいつものこと。ようやく自分の番というとき、後から声を掛けられました。「バヤン(奥さん）、ちょっとごめんなさい」後ろを振り向くと、私と年の頃も同じくらいの女性が、カートをピタリと私たちの後ろにつけて、指を下に向けるような仕草で「私の順番よ」と言ったのです。私はとっさに、自分の順番がここかと聞いたのだと思って、「ええ。係がいなくなって、ちょっと時間がかかってますけど」といって、前の方に向き直ったのですが、再び後から「バヤン！」と呼びかけてきました。この女性、懲りずに「私の順番なのよ」といって、私の前の方を指差すのです。「この人、いったい何を言ってるんだろう」一瞬、分けが分からず、理解に達するまでに少し時間がかかりました。彼女のカートの中身がちらりと目に入って、ようやく「はは～ん」と気付いたのです。このカート、私がレジに並んだ時に、レジの２ｍくらい後方の柱の陰に置いてあったカートです。きっと、いったんレジに並んだのに、まだ買い物が残ってたので、そこに置いて品物を取りに行ってたのでしょう。でも、それって列に並んでいることにはならないのでは？そんなことで、いつでも列に戻れると思う方がどうかしてる。しかも、前の人を押しのけて？私は「あなた、列に並んでませんでしたよね。自分の順番を放棄したんではないんですか？」そう言って、前を向こうとしたのですが、無理やりカートを横から押し付けてこようとしたので、私は闘う元気もなく、不本意ながらカートを後に後退させ、彼女を先に入れてやりました。私は、彼女の後姿に向かって、「こんなことが認められるのは、トルコくらいのものよ。世界じゃあそうはいかないわ」と捨てゼリフを吐くと、心身ともに気分が悪くなって下を向いてしまいました。彼女の方も「理解できなければ・・・」とかなんとか、私に向かって言ってたようですが、その後は耳に入らなくなったので、何と言ったか分かりません。たぶん、国に帰れとか、トルコには住めないわね、とかの捨てゼリフだったのでしょう。私の後ろに並んだ家族が「どうしたの？あなたの順番じゃなかったの？」と聞いてくれたので、経緯を説明すると、「不作法な人だね」と同情してくれたのですが、気分は回復しませんでした。それでなくても、扁桃腺炎に伴う全身の倦怠感が取れないのに、帰り道、身体がもっと重く感じられました。レジの直前で、手に２～３品の品物を抱えた人に割り込まれることはしょっちゅうですし、目の前の人が会計の途中で「あれも忘れた」といって買いに行っているあいだ待たされることも日常茶飯ですが、レジの近くにカートを置いて買い物に行き、戻ってきたら真っ先にレジに入れる、なんて一体誰が考え付くでしょう？後ろの人に、ちょっと抜けますがすぐ戻ります、と断っていなくなるのとは、訳が違うのです。あ～あ。それにしても、こんな時、言った後にもっとスカ～ッとする捨てゼリフが言えるようになりたいもの。トルコ修行が、まだまだ足りないなあ～と思う私でした。

  2004/09/26

• 久々の９時間停電で・・・

  同じ学校に子供を通わせているコムシュ（隣人）に、上の娘を送っていってもらうことにしました。今日もまだ熱のある下の娘は、外出禁止。用事のないではない私も、今日は一日外出できません。朝９時少し前ごろのこと。今日はまず掃除でもしようと、掃除機のコードをコンセントまで引っ張っていったちょうどその時、ピッピッとＦＡＸの音が聞こえ、停電になったのが分かりました。このところ、工事の関係か、電気が切れたり付いたり、短時間(１～２時間）の停電になることが多いので、「またか」と呆れて、掃除機は廊下に放ったまま、娘の様子を見に行きました。娘はソファーの上に寝そべってＴＶを見ていたところなので、電気が止まってガッカリ。そのうち戻るからと慰めてキッチンに戻り、洗いものをしようと蛇口をひねると、水が細～くなり、やがて止まってしまいました。「あ～あ、水も止まっちゃったか」マンションとその周辺だけの停電の時は、水まで止まることはないので、たぶん、地域全体が停電になっているに違いありません。送水モーターの関係か、あるいは電気工事と水道工事を一緒にしている関係なのか、なぜ一緒に止まる必要があるのか分からないのですが、とにかく一緒に止まってしまうことがあるのです。幸い、屋上に備え付けの太陽熱温水器から下りてくるお湯を使うことができるので、料理や最低限の洗いものには困りません。熱くてやけどしそうにはなりますが。エレベーター・ホールを覗き見れば、エレベーターも止まっています。すると、娘が帰ってくる時、階段で上がるのかなあ･･･可哀相に。いつ頃電気が戻るか、インターホンでカプジュ（マンション全体の清掃・管理、および住民の御用聞きをする管理人）に聞こうと思えど、インターホンもやっぱり止まっているのです。これが始めてではありませんが、１０階に缶詰状態になるのは、やはり気持ちのいいものではありません。私の方は掃除もできない、洗濯もできない、ＰＣも使えない。娘の方はＴＶ、ビデオ、ＶＣＤも見れない。仕方がないので、日頃なかなか読んでやれない、長めのお話の本を読んでやることにしました。実家の本棚で眠ったままになっていた、私の子供時代の本です。先の日本帰国の際、「そういえば、あれ。まだあるかも」と思い出して見てみると、見覚えのある懐かしい装丁が目につきました。３０年以上も前の本ですが、薄暗い本棚の奥で忘れ去られていたお陰で、色褪せることもなく、幸い虫にも食われることなく、私たちの目の前に当時そのままの姿を現したのです。グリム童話やアンデルセン童話、当時の創作童話、ロシアの民話、日本の昔話など、子供時代、ほとんど本を買ってもらった記憶のない私ですが、全部で８冊ほどの本が見つかりました。これをふたりの娘の本として持ち帰っていたのです。ところで、この時代の童話、絵本の挿絵は、今見ても、とても美しく味があります。余白を生かしたスタイルで、油彩や水彩で描かれた外国のお姫様、王子様やお城、森、田園などの風景は、子供に媚びるかのようなマンガ・タッチの挿絵の多い現代の童話集、昔話集に比べて、大人の鑑賞にも堪えるものです。私は、３０年以上も前に読んだこれらの本のストーリー、挿絵を思い出しながら、ときどき娘たちに寝物語を聞かせてやることがありましたが、よほど強く記憶に残っていたのでしょう。中を開き、挿絵を見て、「ああ、覚えていた通りだ」と嬉しくなりました。眠り姫の波打つ金髪に、透き通ったばら色の頬。お菓子の家は本当に美味しそうにできています。娘が疲れてしまわないよう、休憩しながら２つ３つお話しを読んであげ、昼食にチョルバ（スープ）にパンを浸して食べさせると、娘はまた眠りに落ちていきました。さて、それにしても、一向に電気が戻らない。私は何をやればいいんだろう・・・。しばらく、ああでもない、こうでもないとうろうろした挙句、前々から溜まりに溜まっていた新聞を整理しなくちゃいけなかったことに気付きました。やれやれ、これでよし、と。やることがあるのは、幸いかな。午後３時をまわると、カプジュが自家発電のスイッチを入れたらしく、エレベーターだけ動き始めました。午後４時をまわると、上の娘はコムシュに連れられて学校から戻り、「電気が止まったから、クリマ（エアコン）が使えなくて、暑かったよ～」と愚痴を言い、しばらくすると水も出るようになりました。そして、午後６時まであと１０分というところで、ピッピッと音がして、電気が戻ってきたのです。予告なし（トルコでは、大抵予告なしだけど）に始まった、優に９時間の停電は本当に久し振りのこと。おかげで、静かな平日を過ごすことができたけれど、やっぱり停電はコリゴリ。暇でしょうがないのに、ＰＣが使えなかったので、今頃何日分も慌ててアップしているところなのでした。

  2004/09/21

• 滞在許可証の更新手数料に怒る！

  夫の滞在中にあれもこれもと欲張って、毎日のように出かけている私たち。今日は、前々から気にかかっていたふたつのことを確かめに行くことにしました。まずは、トゥルク・テレコム（日本でいえばNTT）へ。イスタンブールにはとうの昔にADSLが入っており、パムッカレにも来たと聞けば、アンタルヤにもそろそろ来る頃ではないかと、ずっと気にかかっていたのです。テレコムのドアを押して中に入ると、中扉のガラスに１枚のポスターが貼ってあり、そこに「ADSL」の文字が！「ほら見て！やっぱり来たんじゃない？」興奮しながら、カウンターに進み、早速聞いてみると、「どの地区にお住まい？」「○○地区ですが・・・」「ああ、そこは、まだポルト（ポート）が来ていませんので、ダメです」「そうなんですか・・・で、いつ来るんですか？」「分かりません」そう、あっさり言われておしまいです。次に、エムニイェット・ムドゥルルウ（警察本部）へ、滞在許可証の更新にかかる手数料を確認しに行きました。３年間の滞在許可がこの１１月で切れるので、３年間とか５年間の延長をしなければならないのですが、１ミリヤール（約８万円）もするという噂もあり、その真偽を確かめるためにです。前にも、夫に「１ミリヤールもするって話だよ」と教えたことがあったのですが、「嘘だろう」と取り合ってはくれませんでした。３年前に３年間の滞在許可を取ったときは２４０ミリオン（現在約２万円）で、これでも高かかったわけだから、「いくら上がっても１ミリヤールはしないだろう」というのが夫の言い分。警察本部の、外国人向けのヴィザ申請・発行オフィス。夫が私の滞在許可証を見せて、５年間はいくらか聞くと、係員はちょっと資料に目を走らせ、「１ミリヤール８００（約１５万円）です」夫は驚いて、思わず大きな声を出しました。「ビールーミーリーヤール８００！！」噂に聞いていた私もさすがに額に驚いて、一瞬口が開いてしまいましたが、夫には冷静なところを見せ、「ほ～らね、やっぱり」夫は「こんなことはあってはいけないだろう」とか「日本ではたった６０００円なのに、このトルコで、何故１ミリヤールもとるのか」「世界でこんな国はトルコだけ」とか、係員をつかまえて不満の丈を述べ、私は私で「そしたら、私は日本に帰りますよ。ここでは住めません」と冗談ながらキッパリ言って見せると、係員は「それは無理でしょう？」と私たちの顔を見比べて、ニヤリ。「タマム、分かった。それじゃあ、この人がアイシェと名前をつけてトルコ人になればいいんだ。そうしよう」夫は本気とも冗談ともつかぬ表情でそう言うと、口から出たついでとばかり、帰化申請はどうすればいいのか、今度は本気で聞き始めました。係員は、住民管理局に窓口があるから、そこで受け付けていること、しかし、まず３年間の滞在許可を更新して、それからでなければ手続きを始められないこと、などを夫に説明してくれました。「で、３年間はいくらなの？」「１ミリヤール１００（約９万円）です」少しは安いといっても、やっぱり１ミリヤールはするのです。いずれにせよ、日本が二重国籍を認めていない以上、現段階でトルコ国籍を取得するなど、日本国籍を捨てる覚悟がなければできないことですが、一瞬その考えが頭に浮かんだのは私も同じ。なぜなら、３年後にまた更新する際に、いったいいくらに跳ね上がっているのか、分かったものではないから。この３年間で５倍近くも上がったのなら、ひょっとして３年後に５ミリヤール（約４０万円）になっていることだって、このトルコなら十分ありえるのです。この手数料というのは、実は該当する外国人の国籍によって異なるもの。もう１年くらい前の新聞で、アンタルヤ県に多く住みついている外国人として、オランダ人が８００ミリオン、ドイツ人が６００ミリオンにのぼる高額の滞在許可手数料に抗議している、という記事を読んだことがあるのですが、おそらく現時点で一番高いのが日本人かも・・・。トルコ人と結婚し、トルコに住むことを余儀なく（自分の意思で選んだとしても）され、かといってトルコ国籍を取ることの利点も感じられない、そんな国籍を持つ外国人の足元を見ているとしか思えません。「それにしても、ひどい国だよ。こんな国世界中探したってどこにもない」夫は、いまだに同じ文句を繰り返しています。ため息が出るのは私だって同じ。結局は、文句を言いながらも、滞在許可を更新していくしかないのでしょうけれど・・・。

  2004/09/16

• 夏帰る、ババ帰る。

  朝の６時半に夫が帰りつきました。途中たった３０分横になっただけで、エスキシェヒルの妹の家に顔を出し、あとは夜中じゅうひたすら走り続けたとのこと。可愛いふたりの娘に一刻も早く会いたくて、いつも飛ぶようにして帰ってくるのですが、着いてまず最初にすることは決まって、かばんを開け、娘たちへのお土産を取り出すこと。出発前にあまり時間がなかったと見えて、今回は、キティちゃんのチョコレートとクアラルンプールの空港で買った『カユップ・バルック・ネモ』(『FINDING NEMO』です。邦題はなんだろう？）のDVD(ただし英語版）のみ。頼んでおいた食料品や、お世話になっている人へのお土産すら買う時間がない時でも、娘たちへのお土産だけは、どうにかしてでも手に入れてくる親バカぶり。そのお土産を、娘たちの枕元にそっと置いておき、目が覚めたときに大喜びする顔を見るのが、夫の最大の楽しみなのです。夫は、娘たちのベッドの端に添い寝するようにして横たわると、そのまま娘たちが目を覚ますのを待ちました。やがて、上の娘が先に目を覚まし、夫の懐に飛び込んでいきます。しっかりと抱き合った後で、娘はまだぐっすりと眠っている妹に「ババ（パパ）が帰ってきたよ～」と声を掛けます。下の娘はまだ眠気の覚めやらない顔で、姉の身体の上を飛び越え、夫の胸に飛び込んでいきました。こうして、１ヶ月ぶりの父娘の対面は無事終了しました。２時間ほど横になった夫が目を覚ますのを待って遅い朝食をとると、午前中は家の中でゆっくり過ごしました。私ひとりでは持ちきれないで夫のもとに残した書籍類や、新たに頼んだ食料品で、今回も大変な重量の荷物を夫は持ち帰ってくれていました。１０数時間に及ぶ長い南回りのフライトの後、すぐまた１２～３時間はかかるドライブを続けたせいで、夫の肩、背中、腰は、どこもパンパンに張っていました。ゆっくりと時間をかけてマッサージを施してあげると、夫はくつろいで「我が家がいちばんだ」とつぶやきました。風が止んだ今日は、３～４日前までの残暑が戻ってきたようです。軽い昼食後、夫は娘たちに頼まれて車に自転車を積み、海岸縁のプロムナードまで遊びに出かけていきました。ここトルコでは、少なくともアンタルヤでは、子供が安心して自転車を転がせる場所がないのです。海岸沿いの遊歩道なら、少なくとも車だけは入ってくることが出来ませんから。夫はただ今お昼寝中。時差と不眠不休の長旅の疲れもあいまって、圧倒的な睡眠不足を解消しているところです。今日の夕飯は何にしましょうか。思い目をして夫が持ち帰ってくれたお米を炊いて、夫の好きな焼き茄子でもしましょうか。それとも・・・。今回の夫の滞在は１週間きり。その次の帰国は１１月の予定だとか。今週は、目の回るような１週間になるかもしれません。日記が更新されていなくても、どうぞご心配されませんように・・・。

  2004/09/12

• 

  よしっ！気合を入れて大掃除＆準備！

  ここ２～３日、ホームページの立ち上げと改造にかかりっきりで、荒れ放題になっている我が家。うちの子供が特別なのか、私が特別なのか。きれいに片付いているのはほんの一瞬。みるまに無残な状態に逆戻り。めったに来客のない我が家だから、緊張感が足りないのかもしれませんが、トルコのお宅のように、「いつ見ても片付いていて、どこもピカピカ」でなく、「いつ見ても散らかっていて、どこもベタベタ、ザラザラ」なのです。時々見違えるほどキレイにすることがあるのですが、そんな時は来客があると分かっている時。「ときどきはお客さんがあった方がいいみたいね」よほど耐えられなくなるまで、めったに文句を言わない夫ですが、こんな風にチクッと皮肉をいうことがあります。私は苦笑いしながら、ほんとにその通りだから、何も言い返せません。明日の夜か、明後日の夜までには（ハッキリ分かってないのも、いい加減な話ですが）夫がアンタルヤに帰ってきます。今日出発のマレーシア航空に乗っているはずですが、出発前に連絡をとるのを忘れたので、よく分かってないのです。とにかく、明日の朝イスタンブールに着いたら、連絡が来るでしょう。いつものようにイスタンブールで仕事を済ませてから来るので、やっぱり明後日の夕方くらいにはなるかも。ということで、今日明日は家中の大掃除、片付けと買い物に集中することにします。昨日のパザールで、夫の好きなイチジク（イチジクは、生でも乾燥でも加工品でも、なんでも好きなのです）を買ったので、これでコンポスト（コンポート）でも作るとします。（もしキレイに出来上がったら、写真をアップするかも）頑張るぞ～！・・・・その後・・・・片付け＆掃除の手をいったん休めて、学校へ。 火曜日にまだ来ていなかったコンピューターの教科書を買って、次にショッピングセンターに行き、子供たちにハンバーガーを食べさせ、スーパーマーケットで食料品や文房具を買って家に戻ってきました。ちょっと休憩してPCでも開けようかとした時、電話が鳴り、受話器をとると夫の声が聞こえてきました。「えっ。今日だったの？」「そうだよ。何かあるの？」夫は少々不服そう。当たり前ですよね。夫の帰ってくる日を間違えるなんて。「１０日に帰る」というのを「１０日の便で帰る」と早合点していたのです。掃除・片付けが途中の私は、動揺しつつ「それで、こっちにはいつ着くの？」「明日もイスタンブールでやらなくちゃいけないことがあるから、まだ分からない。後で電話するから」そう聞いて、ホッと一安心。それでも、こうしちゃいられないと、さすがにお尻に火がつきましたよ。とりあえず、一番汚れているキッチンと一番散らかっている子供部屋だけは明日に回すとして、本日のところは終了。イチジクのコンポストも、あまりいい出来上がりではないのですが、一応完成。（超簡単なので、ものぐさな私にも出来る一品） あとは、明日。もうちょっと頑張らなくちゃ！

  2004/09/10

全143件 (143件中 101-143件目)

< 1 2 3