南トルコ・アンタルヤの１２ヶ月*** 地中海は今日も青し

[トルコで子育て＆学校生活] カテゴリの記事

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  通学カバン。今年の流行は、コレだ！★２００６

  新学期のスタートする９月も目前。（※１年生は９月１１日から。２年生以上は１８日から）すでに新学期準備商戦が始まっている。昨年、上の娘エミには結局、ウィッチ（W.i.t.c.h.）のキャラクターの入ったマゼンダ色のリュックサックを、同じキャラクターのペンケースと揃えて新調してやったので、今年もそれらを続けて使わせるつもりだが、下の娘ナナには、新調しないといけないかなあ～と思っているところである。ナナは、ハズルルック・スヌフ（準備クラス）に入る際に買ってやったパワーパフ・ガールズ（POWERPUFF GIRLS）のキャラクター・リュックを、姉のエミのと色違いということもあって、２年間を通じて気に入って使っていたが、いかんせんファスナーの留め具が先に壊れてしまい、学期の最後の方では、開け閉めに苦労していたのである。実は、前回夫は、娘たちへのお土産として、ピンクとシルバーグレーの配色になるハローキティのキャリーバッグを買って帰っていた。夫は、それを通学用カバンとして使わせるつもりだったらしい。確かにキャリーバッグの流行は、最近、通学カバンの世界にまで波及して、まだ身の丈の小さい低学年児童が、大きなキャリーバックを引きずりながら登校する風景を、ここ数年父兄の立場として懸念しつつ眺めていた。後ろ手にキャリーバッグの持ち手を引きながら、肩を落として歩く姿勢を続けるうち、背骨が湾曲するのではないか？と、心配なのである。セルヴィス（通学バス）からの昇り降り、階段の昇り降りにも、いちいち持ち手を伸ばしたり縮めたりせねばならず、不便この上ない。なにより、一般的なリュックサックに比べると、キャリー・タイプは一回り大きいことが多く、キャスターなどの余計なパーツが付いている分、重量も重くなる。子供への負担と弊害が大きいのではと思うのだ。その上、我が家から学校まで、わずか５分の道のりではあるが、いまだアスファルトの敷かれていない砂利道で、そこをゴロゴロとバッグを引きずって行くのは、かなりの難業にあたる。学校に着くまでに、バッグは砂埃で鼠色になること間違いなし。学校の前の道が、池ほどの大きな水溜りになる豪雨の日、暴風雨の日は言わずもがなである。いつもながら、私や娘たちの意見と希望を一切聞かないで、スプリズ（サプライズ）的に買い物をしてくる夫。私は、夫に面と向かって「こんなの使えない」とはさすがに言えなかったが、これはこれで旅行用か物入れ用にでも残しておいて、普通のリュックサックを使わせるしかないなあ～と即座に判断した。エミもエミで、少女趣味からとうに脱却して、アディダスやナイキ、コンバースなどのスポーツブランドに関心のあるこの頃、一目見て私にだけ聞こえるように「ベベッキ・ギビ・デーィルミ？（赤ちゃんみたいじゃない？）」と気に入らないことを素直に打ち明けた。こんなわけで、「最低２年は続けて使用すること」を条件にカバンを新調してやっている我が家では、今年ナナの通学カバンのみ新調することになりそうである。さてさて、今年の流行はどうか？店頭にはどんなカバンが並んでいるか？事前調査のつもりで、先週のうちに近所のミグロス内にあるトイザラスに出掛けてみた。こちら↓が、２００６年度の通学カバンの主流らしい。まずは女子用。  上段は、左右とも今年の一番人気、ウィンクス・クラブ（Winx CLUB）。下段は、左が根強い人気を誇るバービー（Barbie）。右の白い仔馬ちゃんのキャラクターが、マイリトル・ポニー（my little Pony）、その左がウィッチ（W.i.t.c.h.）。しかし、今年も見事にピンク、ぴんく、pink！昨年のW.i.t.c.h.に使われていたような濃いマゼンタ色は姿を消し、シュガーピンクというのか甘いピンク色が主流。あとは赤みがかったピンクと紺色のデニム風。次に男子用は、こちら。  左上がスポンジ・ボブ。右上には昨年来のスパイダーマンと、忍者タートル。左下バットマン、右下スーパーマンと、映画のスーパーヒーロー達が勢揃い。気になる価格の方である。女子用の一番安いもので２６ＹＴＬ（約２０００円）というタグを見つけ、ホッと安心したら、その脇にはパール風のアクセサリー＆ハートのチャーム付きのシリーズがあって、なんと、９９ＹＴＬ（約８０００円）というタグが！！最近は、女子用のリュックは年々と派手になっていて、このように可愛いチャーム付きだのお財布・ポーチ付きだのと女の子の心をくすぐる仕掛けがタップリ。せがまれて、ついついお財布を開けてしまう親御さんも多いことだろう。もはや毎年の口癖になってしまったが、実に頭の痛い季節である。いつも応援ありがとうございます。通学カバンも自由に選べるいい時代ですね。娘たちと一緒に、ああでもないこうでもないとショッピングできるのも、女親の楽しみのひとつかもしれません。あとは安ければ文句ないのですが。。。ポチッとクリックお願いいたします♪人気blogランキングへ 

  2006/08/30

• 万事解決！？コーチ不在のサマースクール

  これまでの経緯をご存じない方は、まずこちらをお読みください。案の定！コーチ不在のサマースクール・その１案の定！コーチ不在のサマースクール・その２案の定！コーチ不在のサマースクール・その３今回もドキドキ・ハラハラを期待していらした方々。懲りずに闘い続けるturkuvaz像を思い描いてらした方、申し分けない。なんだか気が抜けてしまって。。。書けなかったのである。そう。４度目の正直！ようやくコーチがやってきたのであーる！（あらあ～、ガッカリ？）それも、私たちも知っているホジャ（先生・師匠）、ハサン・ベイ（氏）。エミの学校のバドミントンの練習にも何度か顔を出して指導してくれたことがあるし、大会にも必ず姿を見せている。大柄で頼りがいがあって、ユーモアに富み、子供たちを楽しませるのが得意。ほぼ理想的なコーチなのだ。実は私たちも、ハサン・ホジャだったらいいのになあ～と思っていたのだが、ハサン・ホジャが、青少年スポーツ局に登録された３人のコーチのうちの１人だとは知らなかったのである。願ったり、叶ったりではないか！過去３度、裏切られた身としては、こんなにすんなりコーチが登場して、ほんとうに大丈夫信じていいの？あとで、また裏切られるんじゃないのと不安がないでもないのだが。。。（奥さん、もうじき出産予定日だっていうし・・・）とりあえず、ホッ♪力が抜けてしまった。。。とりあえず皆様には、ここまでの慰めと励まし、本当にありがとうございました～。m(_ _)m

  2006/07/13

• 案の定！コーチ不在のサマースクール・その３

  まさか。その３を書くことになろうとは。。。月曜日。忘れちゃあいけない。今日は県青少年スポーツ局に出向き、支局長に直談判すること。そして、明日火曜日のレッスンには必ずコーチを派遣するよう約束してもらうこと。子供たちは家に残し、銀行に行く前に県青少年スポーツ局に立ち寄る。サマースクールの担当になるスポーツサービス課の扉を開けると、すでに何度も見たことのある女性職員がふたり。「支局長にお会いしたいんですが」と用を告げると、「今日はまだヨズガット（アンカラの東２００ｋｍに位置するヨズガット県の県庁所在地）で、いないんですよ」とのこと。「もう大会は終わったんじゃあないんですか？」と訊くと、「大会は終わって皆帰ってきたんですが、支局長はまだ残ってるんですよ。何ですか？バドミントンのことですか？」と問い返された。きっと、木曜日のあの電話の後、「怒りっぽい日本人」のことはこの部屋で話題になったことだろう。支局長と会うことは諦めた私は、「ええ。明日は必ずコーチに来てもらいたいので、直接お話したいのですが・・・・コーチの電話番号はこちらにはないとかおっしゃってましたよね？」女性職員は薄いファイルを取り出して２～３枚ページをめくり、「コーチの名前は、セライ・ババジャンというんですけどね。本人の番号はないんですが、ここにご主人のムラット・ババジャンのがありますから、こちらをお教えしますよ」そういって、サラサラッとコーチとそのご主人の名前、ご主人の携帯番号をメモ用紙に書いて、手渡してくれた。私は少しホッとしていた。ここトルコでは、直接押しかけると電話とでは、対応がしばしば違うのである。コーチの番号さえ手に入れば、あとはレッスンに来るにしても来ないにしても、電話でその都度確認することができる。とかくドタキャン件数の多いトルコでは、相手の携帯の番号を知らないのは致命傷。番号があって、それが正しいものなら、そのうち必ず連絡がつく。銀行から自宅に戻って落ち着いた私は、コーチのご主人ムラット氏に電話してセライ夫人の携帯番号を教えてもらった。早速セライ・コーチにかける。私は県青少年スポーツ局主催のバドミントン・スクールに登録した娘の親だと名乗った上で、単刀直入に訊いてみた。「先週は、大会があったそうでいらっしゃいませんでしたが、明日の火曜日にはいらっしゃるんですよね？」彼女は「ええ、ほら。火曜日に子供たちを教えたでしょう？その後で、ヨズガットに向けて出発したのよ。でも私はもうコーチは降りました。代わりにバシャックという友達にお願いしてありますから、明日は彼女が来ますよ」私は、意外な発言に混乱しながらも、忘れまいと訊き返した。「そのバシャックさんの携帯の番号をいただけませんか？」彼女は教えるつもりがないらしく、「私からちゃんと言ってありますから、明日は来るはずです」それ以上粘ることも出来ず仕方なく携帯を切った後で、私は落ち着いて頭を整理することにした。では、先週火曜日に偶然来たような素振りで娘たちにレッスンを授けて帰っていった夫婦のうち、奥さんが、娘たちの本来のコーチだった　というわけ？でも、ご主人は「僕たちはコーチじゃない。本当はスポーツ局の方がコーチを送ってこなくちゃいけない」と言ってなかった？そうだよ！あの会話になにか不自然なものを感じたのは、それだったんだ。スポーツ局なんて言葉が出るところが、裏を知っている証拠だ。あの火曜日の時点では、彼女はもうコーチを辞退していたということになる。そうだよね。支局長に電話した時、支局長は「コーチに連絡するのを忘れた」と言っていた。彼女が大会に出るからコーチを受けられないのを支局長は知りながら、代わりのコーチを手配するのを忘れてしまったに違いない。そりゃあ、そうだよね。大会のスケジュールなんて、随分前から分かってるはずなんだから！それにしても、あの夫婦！単なるボランティアだと思って、感謝して損した。「もともと私がコーチだったんですが、大会があって教えられないので、支局長に頼んで他の人をコーチとして派遣してもらうようになってるはず」くらいの説明、どうしてできないんだろう！？元々コーチの予定で支局長とは顔見知りなんだから、支局長にその場で電話して、確認するくらいのことはできたはず。私が支局長にクレームの電話をした後、「何だって？」と知らん顔して私に訊いてくる程度の無関心ぶりだった。。。ネイセ（とにかく）。終わりよければ全てよし、というではないか。明日、代わりのコーチがちゃんと来さえすればいいのだから。****そして、本日火曜日。今日も見学のオズレムと一緒に、アイギュル夫人の車でサバンジュ・スポル・サロンへ。今日は、果たしてコーチは来てるだろうか・・・？サロンにいたのは、先週２回とも参加していた小学生のムスタファ。それと、初参加の小学生の女の子。この子は第１回目のレッスンの時に参加していた高校生の男の子の妹らしい。と思ったら、高校生の男の子はセリムという名で、実はこの６月に大学も卒業したばかりという成人だと分かった！　（トルコ人も、時々は実年齢より若く見えるんだね・・・）そして、今日来るはずのコーチ、バシャックとも友達同士だという。（と言うことは、バシャックも、この青年セリムと同じくらい若いのか？もしや、第１回目の時に来ていた女の子のうちの一人？）その後、中学生のトゥーバも、従姉妹だという若い娘ベットゥルと一緒に到着した。が、９時半を過ぎても、バシャック「コーチ」は姿を見せない。この青年は、子供たちに柔軟体操やゲームを始めさせていたが、バシャックの番号を持っているというので、電話して訊いてもらうことにした。すると、「父親と喧嘩したから来れない」と言ったとか。なんだ！それはっ！？親子喧嘩がレッスンと何の関係があるのよ～っ！？来たくないがための、ただの言い訳！？そんな娘に、コーチの資格なんかないぞっ！自らも陸上競技を続けてきたというスポーツウーマンの従姉妹ベットゥルは、トゥーバから過去２回の困った状況を聞かされていたらしく、それを聞いてすぐに立ち上がり、青少年スポーツ局に行こう！あなたも一緒に、と言い出した。（さすが、スターティングが早い！）確かに。「３度目の正直」にも裏切られたのである。もうこうなったら、殴り込み乗り込んでいくしかないじゃないか！私たちは、子供たちのレッスンをセリム青年に託し、べットゥルの車で５分ほど離れた県青少年スポーツ局へ駆け込んだ。まずは勝手知ったスポーツサービス課に顔を出し、かくかくしかじかと説明すると、それならムドゥル（県局長）に直接話した方がいいでしょうという。ベットゥルは私の子供といってもいいくらいの若い娘であるが、身長も高くて押しがあるし、テキパキして切れ目なく話す。やはり、ヤバンジュ（ガイジン）の私が何度顔を出して文句を垂れたところで効果は薄いが、トルコ人と一緒に乗り込むと、物事は意外とすんなり展開するものである。ムドゥルの秘書室に入り、簡単に事情を説明し、ムドゥルと会いたい旨を告げて待たせてもらう。座ってすぐ職員たちの仕事振りが目に付いた。やっぱりメームル（公務員）、暇そうである。２人が新聞を読みふけり、１人は新聞のクロスワードパズルに集中している。およそ３０分ほど待っただろうか。前の来客が退出し、私たちは中に招き入れられた。ベットゥルは、私の方をちらっと見て、先に口火を切り、私が時々補足説明をする。・サマースクール開始以来、コーチが来ていないこと。・バドミントンの腕を伸ばしたくて申し込んだはずなのに、こういう状態が続いて子供たちがすっかりやる気を失ってきていること。・１回目はコーチの手配を忘れたと言われ、２回目は遊ばせとけと言われ、今日コーチとして来るはずのバシャックは喧嘩したから来れないという。とりあえず今日はセリムが子供たちに練習させているが、もともと正規のコーチでないバシャックやセリムでは、コーチとして十分でないこと。プロのコーチ不在で、バドミントンの上達は無理というもの。・２ヶ月間、きちんとレッスンを授けてくれる正規のコーチを望んでいるということ。ムドゥルはすぐに支局長に電話して問い質してくれた。「バドミントンのコーチは誰なんだ？今日は誰が来ることになってるんだ？」電話のやり取りの中で、「ムラット」という名前が出てくる。セライ・コーチのご主人だ。ムドゥルは支局長とスポーツサービス課の職員を部屋に呼び、横にかけさせた。私とベットゥルはもう一度、簡単に事情を説明し、不満を訴えた。「どうしてそういうことになるんだ。大会があるのは確かだが、代わりの者はいなかったのか？」とムドゥルが彼らを問い詰める。職員は、ムドゥルの前ではぐうの音も出ない。支局長も、大人しく座っているだけ。セライ・コーチが開始早々辞任していることは、どうやらムドゥルには全く伝わっていなかったらしい。青少年スポーツ局に登録してある人間でなければコーチの資格はないそうで、セライ・コーチが勝手に自分の判断で他の人間をアレンジしようとしたことにも、ムドゥルは腹を立てていた。「とにかく、大至急バドミントンのコーチを手配し、レッスンさせること！」ムドゥルが最後にこう厳命したことによって、ようやく片が付いた格好になった。私とベットゥルはムドゥルの部屋を出、ムドゥルに叱責された職員に「気を悪くしないでね」と声をかけた。「いいえ、あなたたちの言い分は正しいですよ」と、女性職員も返す。局の建物を出た私たちは互いに顔を見合わせて、「良かったね、上手くいったみたい」と喜んだ。さすがにムドゥルの命令では、今度こそ彼らも無視できまい。果たして。次回木曜日には正規のコーチが登場するのだろうか！？

  2006/07/11

• 案の定！コーチ不在のサマースクール・その２

  昨晩は、遅くなってから義妹セラップ親子５人が泊まりに来て、軽い食べ物を出したりオシャベリしたりで、就寝は１時。おまけに久しぶりの濃いチャイ（トルコ風紅茶）が効いたのか、それとも義妹夫婦の真ん中の娘スリアが私とナナが寝ているダブルベッドに潜りこんできて、途中寝ぼけてナナを平手打ちしたり、脚を乗せてきたりするのを阻むためにか、私は３時頃までなかなか寝付けなかったのである。７時過ぎにエミが私の枕元にやって来て目が覚めたが、頭は朦朧としていた。エミはとっくに着替えを済ませており、髪の毛を私にまとめてもらうためにやってきたのである。スリアと末娘ギュライは、１月の滞在時に比べると少しは落ち着いた様子が見えたが、相変わらず何時だろうが食べたいものを食べ（食べさせてもらい）、寝たい時が来るまで親に小言一つ言われないで遊び呆けている。なので、夏休みに入ってからも１０時には床につくエミとナナまでが、スリアとギュライに邪魔されて、昨夜は１１時過ぎるまで寝付けなかったのである。ナナはギリギリまで寝させてやろうとそっと起きたつもりが、興奮状態のスリアに先に目を覚まされ、やがてギュライまで起き出してくる始末。セラップも父親のエルカンも、長女のエスマも揃って寝坊だから、まだ当分は起きてこないだろう。彼らは後で朝食を自分たちで用意してもらうとして、私はエミとナナと一緒に先に朝食を済ませ、外出の支度を済ませた。今日木曜日は、バドミントンのレッスンのある日。予定通りなら、今日こそは正式なコーチが来て、ちゃんとレッスンをしてくれるはずである。エミの仲の良い遊び友達であるふたつ年上のコムシュクズ（隣人の娘）オズレムが、エミと一緒にスクールに通いたくなったらしく、今日は見学のつもりでレッスンに同行することになった。お母さんのアイギュル夫人は車を運転するので、ラッキーなことに今日はバスを待ったり歩く必要がない。８時５５分に出発し、９時ちょっと過ぎにサバンジュ・スポルサロンに到着。来ていたのは、エミと大体同い年くらいの男の子ひとりだけ。今回もまだラケットを用意していないらしく、手ぶらでポツンと彼だけが座っていた。それから３０分。誰一人やって来ない。３５分。中学生の女の子が、息せき切ってやってきた。ところが、またしてもコーチの陰も形もない。私はイライラしながら、県青少年スポーツセンターに電話してみた。すると職員は、「前回も話があったので、今日は来なくちゃいけないはずですが。もうじき来ると思います」という。その言葉に少々安心はしたものの、他の参加者は来ないのだろうか。コーチはいったいいつ来るのか。私は半信半疑で入り口付近で待ち続けていた。まもなく、警備員室の男性職員が私に近寄り、「今日はコーチは来ませんよ。大会があるので、子供たちは遊ばせときなさいと言ってきました」と言うではないか！なっに～！？なんだって！？私の頭は瞬時に沸騰。すぐにスポーツセンターに電話する。電話に出た女性職員に言い訳などさせまいとするように、私は一気にまくし立てた。「コーチは大会があるから来れない。子供たちは遊ばせとけって連絡があったようですが、コーチが来れないなら、代わりの人間を来させるべきでしょう？（私たちは）勝手に遊ぶために来てるんじゃないんですよ。レッスンを受けるために来てるんですよ。少ないにしてもお金だって払ってる。レッスンを受ける権利がある。中止にするなら、事前に連絡するべきでしょう？私たちは、前回も今日も無駄にここに来たっていうわけですか？」職員は私の話が終わるか終わらぬかのうちに、言葉を遮るようにして話し始めた。「あなたのお話は聞きましたから、今度は私たちの話を聞いてください。コーチから来れないという連絡もないのに、私たちがどうやってあなた方に連絡が出来ます？」私「連絡って・・・コーチの電話番号リストくらいあるでしょう？あなた方は前もって各コーチに連絡はつけないんですか？例えば前日までに、いつの何時から何時まで、どこでレッスンがありますからとか、コーチと連絡はとらないんですか？」職員「コーチのリストなんて、ここにはありません」私「ないですって！？信じられない！」職員「いや、支局長のところにはあります。コーチの手配は支局長がやってますから」私「じゃあ、支局長はいますか？」職員「今日はアンタルヤの外に出ています」私「では、支局長に訊いてください。代わりのコーチは今日は来るのか来ないのか」職員「支局長にどうやって訊けっていうんですか？」私「携帯がないんですか？あるでしょう？携帯に電話してください」職員「・・・では、電話番号を申し上げます・・・」私「ちょっと待って！それは私の仕事じゃあないでしょう！？あなた方のやる仕事でしょう？支局長に電話して、コーチに確認してもらってください。後でまたかけますから、それまでに訊いておいてくださいね！」職員「・・・・私たちの仕事まで教えていただき、ありがとうございました」ガッチャン！！なんだよ～、この言い草！頭にくる。皮肉まで言いやがって！どうなってるんだよ～一体！こんなシステムありうるかい！？日本だったら絶対ありえないぞ～！私はエネルギーをすっかり使い果たした気分になり、頭を振り振りサロンの中へ戻った。今日はもう代わりのコーチなんか来るわけないし、電話し直す気もすっかり失せていた。こいつらに何言っても無駄だ。後で支局長に直接電話してやろう。成り行きを気にしていたアイギュル夫人にも事の次第を説明し、諦めて適当に遊んで帰るしかないことを告げた。警備員室の職員が、ネットやシャトルなどの備品を出してくれ、ネットを一緒に張ってくれた。幸いにも、中学生の女の子がキャリア４年。基本は出来上がっていたから、お願いして引き止め、バドミントンが初めてのオズレムやナナ、男の子に手ほどきをしてもらうことになった。アイギュル夫人は１１時半に迎えに来るといって帰っていった。３０分ほど付き合って指導してくれた中学生の女の子が引き取ると、ラケットを彼女から借りていた男の子もすることがなくなり帰っていった。あとに残ったのは、エミとナナ、オズレムと私の４人。エミとオズレムは適当に打ち合いをはじめ、私はナナの「俄かコーチ」となるしかなかった。ナナには、前回の「借り物コーチ」から習ったバックハンド・サービスのおさらいをさせ、その後で、真正面から手で放ったシャトルをどれだけ打ち返せるか、簡単なレシーブの練習をさせてみた。最初は、１０個放ったうちの１～２個返せればいいくらいだったのに、そのうちどんどん上手になって、７～８個まで返せるようになった。正面が終わったら、今度はフォアハンド方向に放ってみる。それが終わったら正面とフォアハンドのミックスで。１０個中何個得点できるか、というゲーム形式にしたのがナナの心を捉えたようで、もっともっとと一向に終わりにさせてくれない。とうとう、私の方が先にギブアップ。睡眠不足もあってすっかり疲れきってしまった。１１時半になるのが待ち遠しく、早めにシャトルを集め、ネットを片付け、警備員室に返しに行き、アイギュル夫人の到着を待つ。ふと頭に浮かんで警備員室の職員に訊いてみると、朝「子供たちは遊ばせとけ」と連絡してきたのは支局長本人だという。電話番号もあるというのでもらってかけてみたが、繋がらなかった。大方、試合中か何かなんだろう。次回火曜日には、どんな言い訳も許さないぞ～！必ずコーチを送り込んでもらうんだから。前日の月曜日に念押しの電話をかけてやろう！こうして、スポーツセンター職員との議論といい、俄かコーチといい、エネルギーを消耗した半日だった。来週の火曜日。願わくば、「その３」を書かなくて済みますように。。。。

  2006/07/06

• 案の定！コーチ不在のサマースクール・その１

  今日から、エミとナナのバドミントンのレッスンが始まる。９時からのスタートだから、８時半頃には家を出ることになる。最近寝坊気味のところ、気になって７時前には目が覚めた私と、７時半に目を覚ますや否や、すぐにTシャツ＋ショーツというバドミントン用のスタイルに身を包んだエミ。昨日まで「私、バドミントン知らないよ～」とメソメソしていたナナも、８時には起きてきて、私に促されつつもお揃いのＴシャツとショーツに着替えてくれた。ふたりとも長い髪の毛はポニーテールにまとめてピンク系のシュシュでとめ、カルネ（通知表）のご褒美として買ってあったお揃いのスポーツシューズで、ピンク＆ホワイトのコーディネート完了である。（ふたりとも、コーディネートに異常にこだわるのだ）残っていた昨日のパンでフレンチトーストを焼き、あとはメロンという簡単な朝食。会場の近所にはバッカルはないので、冷蔵庫＆冷凍庫であらかじめキンキンに冷やしておいた水を合計４本と、待ってる間の私の暇つぶし用に新聞。これらを袋に詰めて、家を出る。会場となっているサバンジュ・スポル・サロンは、車だったら５分もかからない場所にあるが、徒歩なら１５～２０分はかかる。私たちは、運良くスポル・サロンのまん前を通るミニビュスを捕まえ、９時５分前には会場に到着した。しかし、案の定まだ誰も来ていなかった。５分ほどすると、エミの顔見知りの女の子がやって来た。その後、ひとりふたりと集まり、最終的にエミ、ナナを含めて７人が集まった。少ないなあ～。しかも、皆大きい子ばかり。３人が高校生。１人が中学生。そしてエミより一学年くらい大きい男の子。心配していたのはナナの同年輩の子供がいるかどうかだったが、結局初心者で学年の小さいのはナナひとりきりだった。トルコ人が時間ピッタリに来ることはないとは思ったが、９時半過ぎても、肝心のコーチが現れない。私は、入り口の掲示板に貼ってあったポスターの中に、県青少年スポーツセンターの電話番号を見つけ、問い合わせをしてみることにした。オペレーターがサマースクールの係に繋いでくれたが、電話に出た女性は「支局長がいないから、分からない。後でかけなおしてください」としか言わない。諦めて携帯を切ったところへ、タクシーで乗り付けた家族連れの姿が見えた。高校生の参加者たちはどうやら顔見知りらしく、すぐに近くに駆け寄り、「ホジャム（お師匠さん、先生）」と迎え入れている。なんだ、来たんじゃないの。この「コーチ」は夫婦で、横に小さい子供を二人連れている。子供連れで仕事場に行くこともよくあるトルコ人だが、さすがにスポーツのレッスンにまで子供連れとはすごいなあ～と感心する。まもなくランニングからトレーニングが開始された。ランニングと柔軟体操の後、すでにかなりの腕を持つ高校生たちは、男性コーチと一緒に試合形式でトレーニングを始める。一方、エミ、ナナ他２名は、女性コーチからラケットの持ち方に始まり、バックハンド・サービスの仕方までの基本をまずおさらい。やることなすこと初めてのナナだが、持続力があるところが彼女の良いところ。ラケットをきちんと握るのも今日が初めてだというのに、何度も何度も繰り返すうちに、７～８回に１回から３～４回に１回くらいの割合でサービスが入るようになった。その後、ナナには休憩が言い渡されたが、私のところに帰ってきたナナは、「チョ～ク・セヴィンディム！（すっごく気に入っちゃった！）」と嬉しさを隠しきれない様子。まだまだ遊び足りなさそうなナナに、それではと私が課題を与えることにした。よくある、シャトルを落とさずに何回まで打てるか、一人でできるトレーニング法である。最初ナナは、１回も続けることが出来なかったが、私が「座って少し休憩しなさい」というのも聞かず、飽きずに何十回も挑戦するうち、こちらも最高で７回まで打ち続けることができるようになった。案ずるより生むが易し。初回にしてナナはすっかりバドミントンの虜になってしまったようだ。１１時になり、ネットが片付けられ始めた。あれっ？１２時までじゃあなかったっけ？女性コーチのもとに寄って尋ねてみると、ご主人である男性コーチの方がこう答えた。「本当はスポーツセンターの方で（コーチを）送り込むはずなんだよね。僕たち、出掛けるところで、ちょっと汗を流そうかって寄ってみただけなんだ」ええーっ！？コーチじゃあなかったの～！？でも、ちゃんと教えてくれたよ！？いや、それは失礼いたしましたーっ！m(_ _)mしかし、てことは、結局コーチは来てないってことじゃないの！私は、途端に頭に血が上って、すぐにスポーツセンターに電話をかけた。オペレーターからサマースクール担当へ。担当は私の剣幕に慌てながらも、「少々お待ちください。支局長に代わりますから」といい、私を待たせた。やがて男性の声が。私は「今日はバドミントンのレッスンのため７人ほどが待ってましたが、結局コーチを送ってこられませんでしたね。志のあるご夫婦が来て、その方々からレッスンを受けましたけど、次の木曜日には、必ずやコーチを送っていただけるんでしょうね！？」男性は私の名前を訊いた。エミの名前や学校の名前まで覚えていたところをみると、おそらく大会で会ったことがある人だろう。「オズル・ディレリム（申し訳ありません）。こちらのミスです。コーチに連絡するのを忘れてしまったんです」なんとまあ、珍しい。言い訳せずにストレートに謝られたので、私もそれ以上拘るのをやめ、「では、木曜日の９時に、コーチをお待ちしていますからね」と念を押して携帯を切った。や～れやれ。やっぱりだね～。初日からそんなにすんなり行くわけがないと思ったけど。。。私は、ボランティアでレッスンを授けてくれたご夫婦に丁寧にお礼を言って、スポルサロンの外に出た。まあ、ナナもバドミントンが気に入ったことだし、１日で随分と進歩して上出来だったんじゃないかな。あの夫婦が来てくれたお陰で、無駄に時間を潰さないですんだんだし。ここまで念を押したんだから、次回は少なくとも正式なコーチが来ることだろうし。エミとナナのすっきりした顔を見比べながら、意外にも晴れ晴れとした気分で家路についた私であった。

  2006/07/04

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  夏期スポーツクラブ華々しく開幕！

  アンタルヤ県青少年スポーツ局主催の夏期スポーツクラブの開会式があり、エミとナナを連れてサバンジュ・スポル・サロンに出掛けた。７歳以上が基本条件のこのスポーツクラブに、エミとナナは今年初めて参加するのである。３ヶ月という長い夏休み。日本帰国の予定もなく、またどこにも遊びに行くあてのない娘たちにとって、きちんとしたスポーツのレッスンを受けるまたとないチャンスである。当初、昨年の夏に自力で泳ぎを覚えたエミにも、姉を見習って見よう見まねで泳ぎを体得しようとしているナナにも、今年こそはきちんとした水泳のレッスンを受けさせようと考えていた。しかし、昨年９月以来、学校のバドミントン・クラブで週３回放課後に練習を重ね、新生クラブながら地元の大会にも参加して本格的なスポーツ活動を経験したエミには、青少年スポーツ局主催のスポーツクラブにバドミントンのコースが出来ると聞いて、迷うことなくバドミントンのレッスンを受けさせることにしたのである。一方ナナは、学校の授業に週１回組み込まれているクラブ活動で、リトミック・ジムナスティック（リズム体操。新体操のこともこういう）＆モダンダンスに参加しているので、その系統でレッスンをと思っていた。同じ青少年スポーツ局のクラブでジムナスティック（体操）のコースがあり、ナナはそちらを希望していたのだが、曜日、場所の関係で泣く泣く諦めてもらい、その代わり、ナナにも姉と一緒にバドミントンを経験させてみることになった。夏休みが３ヶ月と長いので、この期間に子供たちにさまざまな経験をさせ、同時に親の面倒を軽減するため、どこでも有料のサマースクールが開校されている。チョジュッククルブ（子供クラブ、子供教室）、スポーツクラブ、サッカークラブ、プールやテニスコート付きの４～５つ星ホテル、ターティルキョユ（休暇村）から、各区主催のスポーツクラブまで。週５日。朝から夕方まで、朝食・昼食付きでさまざまなプログラムを用意しているヤズ・オクル（サマースクール）になると、月謝は３００～４００ＹＴＬ以上？になるらしい。が、当面緊縮財政を強いられている我が家にとっては、県青少年スポーツ局主催のスポーツクラブは有り難い存在だった。なにしろ、週２日行われるバドミントン・コースの参加費は、７月初め～８月末の２ヶ月間で、たったの３０ＹＴＬ（約２２００円）！人気コースの水泳やテニスでも、２ヶ月間で１００ＹＴＬ（約７２００円）と、普通のスポーツクラブのほぼ半額である。さらに、無料！のコースもたくさんある。陸上、自転車、ボクシング、登山、レスリング、民族舞踊、ハンドボール、卓球、アーチェリー、チェス、ヨット、野球＆ソフトボール、重量挙げなどなど。学校の体育施設・体育教育が貧困なトルコでは、スポーツは学校外で有料で教えてもらい、やらせてもらうもの。経済的な理由でスポーツ経験をなかなか持てない庶民・貧困層の子供にもスポーツを経験させ、青少年のスポーツ人口を増やし、未来のスポーツ選手を育成・発掘することを目的としている青少年スポーツ局ならでは政策であろう。ちなみに、すでにバドミントンのラケットを持っているエミ＆ナナであるが、夏休み前に開催されたバドミントン連盟主催のレッスンでは、ドイツ製のラケットが無料で配布されたほどである。スポーツへの梃入れが盛んなトルコなのだ。朝９時半から開催された開会式には、一部とはいえかなりの人数の父兄が集まってきた。（参加申し込み者は、最終的に３５部門で７５０人にのぼったという）マイクで案内があり、クラブに参加する子供たちだけが集合させられた。ほどなくして、エミが目を真っ赤にしてプンプン怒りながら観客席に戻ってきた。「バドミントンなんか、どこにもないじゃない！」どうやら、各部門ごとに子供たちが集められていたようなのだが、バドミントンがどうしても見つからなかったらしい。私は混雑を極める出入り口付近で、係りの人間らしい人にたらい回しにされながら、バドミントンはあるのかないのか、どこで集まっているのか訊き回った。こういうところがまったくトルコ的なのだが、インフォメーションも、会場整理をするスタッフも不在で、カユット（登録手続き）と書いてあるデスクに詰め寄っても要領を得ない無能が座っているだけ。最後に「バドミントン」と書かれたプラカードが見つかり、それをナナに持たせての入場となった。つまり、バドミントンは不人気だったのか、エミ＆ナナ以外に誰も、担当コーチさえも！来ていなかったのである。実は、トルコではバドミントンはまだまだ知られていないスポーツなのである。ラケットを持っていると「テニス？」と訊かれる。「バドミントンよ」と答えると「何それ？」という反応が返ってくる。羽のついたボール（シャトルのこと）があって、ネットを挟んでそれを落とさないようラケットで打ち合うのよと説明するのだが、ピンと来ない人が多い。大卒の学歴のある人々でもそれは同じである。ふたりきりの「選手団」はさも所在無さげ。プラカードを抱えてしゃんと立っているナナに比べ、エミなんか遠目にも不機嫌極まりない顔でそっぽを向いている。やがて大会などで顔見知りのふたりの女の子が後ろに並び、エミの顔にもようやく安心した表情が浮かんだ。会場にいる全員が起立、直立不動の姿勢で国歌斉唱を待つ静寂の時、ちょっとしたアクシデントが。水泳の選手団の先頭にいたわずか５歳の男の子が、静寂を突き破り突然泣き声で「チシム・ゲルディ～（オシッコ～）！チシム・ゲルディ～（オシッコ～）！ワアアーーー」といって泣き出してしまったのだ。会場には微笑み、苦笑が広がる。「ババ～（パパ～）！チシム・ゲルディ～！」泣きながら父親の元に男の子が駆け寄り、慌ててトイレに連れ去られると、待ってましたとばかりスピーカーから『イスティクラル・マルシュ（独立行進曲）』が流れ出した。そんな「事件」があって、この男の子は一躍開会式の人気者に。入れ替わり立ち替わり記者、カメラマンたちにマイクを突きつけられたりカメラを向けられたりしていた。その後、キックボクシングのデモンストレーションや民族舞踊の披露（練習着のままなのが残念）もあって、開会式はなかなか大掛かりなものに終わった。娘たちのバドミントン・コースは、来週火曜から始まる。火曜・木曜の週２回、１回が３時間というレッスンである。最初バドミントンに難色を示していたナナが、初回からレッスン拒否という態度に出るのではないかと少々心配ではあるが・・・・ナナがバドミントンを気に入ってくれれば、行く末は、「ジャポン・バドミントンジュ・カルデシレル（日本人バドミントン選手姉妹）」として注目を浴びたりして・・・・なんて、夢想しないでもない私であった。 

  2006/06/29

• 満を持してのミュジデ（吉報）に、安堵と喜びの涙

  娘たちの学校、コレジ（私立学校）が閉鎖の危機に立たされていることを、３回に渡って紹介したと思う。学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（前編）学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（中編）学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（後編）それから１週間。私はアンタルヤ在住の友人で、ふたりのお子さんをデブレット・オクル（国立学校）に通わせてらっしゃるmehtapさんのアドバイスを受け、カレイチから車で５分ほどのデヴレット・オクルも見学に行った。アンタルヤ市内のデヴレット・オクルの中でも評判の高いこの学校には、父兄の寄付によると思われるが、クリマ（エアコン）や学級文庫なども各クラスに備わっているし、一クラスあたりの生徒数が４０～４５人というのを聞いて、悪くない印象を抱いて帰った。もう一つ、この学校に関心を持った理由は、バドミントンがアンタルヤ一だということ。昨年バドミントンのクラブができたばかりのうちのコレジは、２度の試合を通じてコテンパンに打ち負かされてしまったのである。もし、デブレット・オクルに通わせるとしても、エミのバドミントンはどうにか続けさせてやりたい。コーチを外から呼んでクラブを開いてもらうなど、私に出来ることは何でもするつもりだったから、優秀なコーチがいて実績のあるこの学校には、それだけの魅力があった。もし、学区制がかなり厳密なもので、居住しているマハッレ（地区）に対応する学校しか選択できないなら、もう行き先は決まっている。なんらかの手立ての余地があれば、この学校は有力候補に思えた。しかし、ナキル（転入）のカユット（登録手続き）は７月中旬からと、他のどの学校よりも早かった。コレジの動向がはっきりするのをギリギリまで待ちながらも、今から必要な書類の準備や根回しをする必要があった。カレイチの建物のイスカン（居住許可）手続きに奔走しながらも、私の頭の中は学校のことで一杯だった。それこそ学校をテーマに夜な夜な夢を見るほど。それから、コレジがデブレット・オクルになるかもというガセネタがあった以外は、学校の売買に関する新しい確実情報はなく、父兄の不安と緊張感ばかりが高まっていった。他のコレジのカユット締め切りまで残すところわずか。顔を見合わせれば、話題は一つしかなかった。私の中では、デヴレット・オクルに行かせる覚悟ができあがりつつあった。私は娘たちに対しても、コレジに別れを告げ、デヴレット・オクルに移る覚悟をさせておくつもりだった。学期の終了まで１週間を切り、すでに学校に出てこない生徒や、私服で登校する生徒が多い中、娘たちには最後まで制服を着させ休まず登校させるつもりだった。「あと１週間で、先生とも友達とも離れ離れになるかもしれないんだよ。だから先生や友達と最後の日までなるべく一緒に過ごしましょうよ」「その制服を着るのも、もしかしたら最後かもしれないのよ。だから最後まで制服で行きましょう」と、そういって。しかし、そんなセンチメンタルなことを考えるのは、私たちくらいのものなのかもしれない。この木曜日に企画されていたターティル・キョイ（休暇村）へのピクニックは、エミのクラスは、参加希望者はたったエミだけ！ナナのクラスも、ナナを入れてたった２人しかおらず、１年生と３年生だけが学校居残りという残念な結果になってしまった。１週間前からこれを心待ちにしていたエミは、ヤケになってしまうほど失望。一方の私も、子供が行きたくないからと、もう学校は終わったようなものと、きちんと最終日まで学校に通わせない父兄に失望していた。学校が閉校になるかもしれないという時に、最後の日々を、慣れ親しんだ友達同士で思いっきり遊ばせてやれる機会を放棄してしまうとは。私はここ１週間、送り迎えの度に校舎を見上げ、花の終わってしまった蔓バラの棚の下をくぐりながら、校庭のそこここに植えられた緑の美しさに目を細め、思わず涙ぐんだりした。アンタルヤに引越しするや否やエミを５歳児クラスに入学させ、それ以来５年間毎日ナナと通い続けた学校である。日本人として見れば不満はあったが、あらためて客観的に見れば不自由の少ない素晴らしい学校だった。私は、この学校への愛着が娘たち以上に強かったことを発見して、我ながら驚いたのだった。****昨日、木曜日。朝、学校に娘たちを送って行くと、ナナの担任教師が私の元に近づき、満面の笑みで吉報を知らせてくれた。前日水曜日の午後、学校が売れた！こと。買ったのは、地中海地方全域で公共事業など大きな建設事業を手掛ける大手の建設会社。私も、コンクリート・ミキサー車の脇などに入っている赤いロゴで、その会社の名前は知っていた。建設会社だが、以前にもＡコレジが経営危機に陥った時、経営を立ち直らせるため援助した実績があるほど、資金が潤沢で慈善意識も高いらしい。つまり、学校はこのまま存続し、今まで以上に良くなる可能性が高いこと。すでに前日のうちにサインを済ませており、今日（木曜）はノーテル（公証人役場）で必要な手続きを済ませ、一両日中には完全に売買契約が完了するだろうこと。契約が済み次第、カンパニヤ（キャンペーン）を開始し、カユットも始まるだろうこと。失われた生徒を呼び戻すため、おそらく学費は昨年と同額程度になるだろうこと。学校の存続を信じ、このドタバタ劇の間もどっしりと構えていたナナの担任教師と、すでに涙目の私はひしと抱き合って喜びを分かち合った。学校の中は、喜びに満ち溢れていた。どの教師も、廊下のそこここで集まっては明るい会話を交わしていた。階段を下りて１階に行くと、ちょうどそこにエミのバドミントンの顧問である体育の先生がいて、すぐに私の元に駆け寄ってきた。彼女の顔も満開の花のように輝いている。彼女ともひしと抱き合って学校の存続を喜び合い、今日まで娘たちにどのように話して聞かせ、どのように一緒に覚悟を決めてきたか打ち明けるうち、私の目はみるみる涙で一杯になった。夫にもすぐにメールで報告。資金繰りが厳しいのは承知しているが、どうか娘たちをコレジに通わせて欲しいとお願いした。夫からも返事が届く。デブレット・オクルに決定したような素振りだった夫だが、コレジの存続を彼も素直に喜んでくれた。娘たちの幸せを一番に（妻の私より！）考える夫のこと、きっと何とかしてでも今のコレジに通わせてくれることだろう。エミは、「今日は、人生で一番幸せな日♪」といった。昨日午後、学校にて弁護士を挟んでの売買契約が無事成立したらしい。本日金曜日。新しいオーナーにより、学校の全教師を集めてのトプラントゥ（集まり）が開かれ、そこで正式に挨拶があったという。学校は今まで通り存続し、新しく生まれ変わること。今まで以上に良くなること。さらに、教師たちにお金の心配なく生徒の教育に専念してもらうよう、こんな言葉をかけたそうだ。「教育はあなたたちが。お金は私たちが」その言葉を伝え聞き、私は再び先生方と抱き合って喜びを分かち合った。もう２度と、学校が転売されたり競売にかけられたりしないことを。そして、コレジがかつての評判を取り戻し、生徒たちも父兄たちも、胸を張ってコレジの名前を言える日の近いことを心から祈りたい。

  2006/06/16

• 学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（後編）

  私たちは、過去に一度も見学に行ったことのないコレジの中で、自宅から今のコレジの次に近いコレジを見に行くことにした。目と鼻の先にコレジがあるというのに、我が家の近所からわざわざ通っている子供もいるくらいなので、それほど酷いものだろうとは予期していなかったのだが・・・車窓からその校舎が見えた時、そのまま引き返そうかと思ったくらい、ショックを受けた。これが・・・コレジ？普通の４階建てのアパルトマンほどしかないそこは、隣にある運動場も猫の額ほどしかなかった。まさにアパルトマンを改造して作られたことが歴然。夫に「入ってみないの？」と訊かれたが、私は近づくのも嫌で車に残った。夫に促されて仕方なしに門をくぐり中に入ったが、外から見るよりさらに印象は悪かった。薄暗くて狭い廊下。廊下の向こうに小さいトイレが丸見え。一階分が一ダイレ（フラット）の広さしかない狭い校内。地下に設けられたイェメッキハーネに至っては、天井近くに明かり取りの窓が一つあるきりで暗く、昼間から電灯の下で食事を取ることになる。校長は、開口一番「うちはビナー（建物）ではなく教育内容を重視してます」と先手を打とうとしたが、それこそが施設の悲惨さを自覚している証拠だった。家庭的な雰囲気？生徒一人一人の役割分担が大きい？それはひとつの理屈ではあるが、環境が子供の心理に及ぼす影響は大きいはず。日中から電灯を燈さなければいけない薄暗く狭い教室に、走り回ったりふざけることもできない狭い廊下。真っ暗なイェメッキハーネ。何も言う必要のないことだろう。それで学費の方は、私たちのコレジの今期のそれより１千ＹＴＬ安い程度である。「これならデヴレット・オクルに行かせた方がまだまし」その一言を口にした途端、そのアイデアが急に私たちの中で現実味を帯びてきたのである。私たちは、自宅の周辺地区と、カレイチの事業所周辺地区にあるデヴレット・オクルを、この金曜日に４つまとめて見学して廻った。カレイチ内にある唯一のデヴレット・オクルは、創立１９２９年と７７年の伝統を持つ古い学校だが、建物の方も相当古く、小さく狭い。最悪なのはトイレで、戸外にあり、頭をぶつけそうなくらい丈の低い古い木の扉で閉ざされた空間には、電灯すらなさそうだった。３つ並んだ扉の前を小蝿がプンプンと飛び回っている。日本でいえば昭和３０～４０年代の風景だろうか。４つのデヴレット・オクルの中では最も混雑度が低く、クラスあたりの生徒数４５人前後ではあるが、ここに娘たちを通わせることなど、到底考えられなかった。ふたつめに訪問したデヴレット・オクルは、カレイチから車で２～３分。徒歩なら１０分くらいの距離にある、比較的規模の大きい学校で、きちんと管理されている印象を受けた。しかし、クラスあたりの生徒数も大変なもので、平均５０～５５人。一番多いクラスになると、６８人！である。今のコレジでは、最大時３６人になったことはあるが、大体１５～２５人という少人数クラスを経験してきた娘たちが、長机ひとつに３人４人とすし詰めで座ることに果たして耐えられるであろうか。その点が大いに不安だった。３つめのデヴレット・オクルは、自宅とカレイチとの中間地点で閑静な住宅街に位置する。他の３つの学校は、午前・午後の２部制だが、ここは朝から午後３時までの１部制であるのがいい。ただし、生徒数はやはり５０～６０人となる。４つ目のデヴレット・オクルは、自宅の校区内にある学校で、市の中心からは遠ざかる方面にある。近年に建設されたらしく校舎は比較的新しい。生徒数は４５～５０人程度。ある程度は予想していたとはいえ、デヴレット・オクルの混雑振りは想像を超えるもので、正直ショックだった。県外や郡部からの人口流入の激しいアンタルヤの学校不足は顕著。建築ラッシュの続く新興住宅地に国の対策は追いつかず、我が地区をはじめ地区内に１校も存在していないところも少なくなく、近隣区の学校へと押し寄せる結果となるわけである。その結果、１部制の学校は激減し、多くの学校が２部制へ移行。そしてクラスあたりの生徒数も５０人前後かそれ以上というのが平均となってきたようだ。夫は、コレジが完全に閉鎖になるかどうか、まだ分からないというのに、娘たちをデヴレット・オクルに入れることを早々に決断してしまったようだ。４つ目の学校を一緒に見学に行き、父親の考えを聞かされたエミは、悲しそうな、憮然としたような、納得がいかないような複雑な表情を浮かべながら、「デヴレット・オクルなんて行きたくない。コレジに残りたい」と訴えた。娘に弱い夫は、「もちろんコレジが閉鎖にならなければ、そのまま残るだろうけど・・・」と最終決定でないことを匂わせた上で、「１年くらい、デヴレット・オクルも経験してみるのもいいんじゃないの？皆が通ってるんだから、悪いってことないでしょ。子供のうちに色んな経験をするのも大事なことだよ」と説得しにかかった。夫の考えにも一理ある。しかし、１年が決して１年では終わらないだろうことは分かっている。学費にお金をかけない状態に慣れてしまえば、余分な出費を何より嫌う夫のことである、年間１００～２００万円ものお金を新たに工面することが馬鹿らしくなるのではないだろうか。それよりなにより、私は娘たちの経験するであろうカルチャー・ショックの方が心配だった。コレジでの生活を通して、学校とはそういうもの、と学んでしまった娘たちが、デヴレット・オクルで出会う風景や人々をことごとく否定的に見て、溶け込もうとしないのではないか、疎外感を感じたりするのではないか、と。さらには、トイレに神経質なナナは、掃除の行き届いていない、トイレットペーパーの準備のないアラトゥルカ（トルコ式）のトイレに入れなくて、我慢し続けて失敗するかもしれない。人に邪魔されて集中力を失うのが大嫌いなエミが、ひとつの長机に３人４人とくっつきあって座ることに反発するのではないか。そんな余計な心配が、頭に浮かんでは消えた。子供の適応能力からすれば、あっというまに慣れて、案ずるより産むが易しとなるかもしれないが。そんな時、また新たな情報が耳に入った。ナナの担任教師、エミのバドミントンの顧問になる体育教師、リセ（高等部）の英語教師など何人かの教師が異句同音に言うことには、「学校はそんなに簡単には閉鎖できない。最低１年の猶予が与えられなければならないよう決まっている」というものだった。さらに、イスタンブールはバフチェリエヴレリにあるＡコレジと現在話し合いが行われていて、もしかしたらＡコレジが買い取って運営する可能性があるという。そしてさらに衝撃的なこんな話も。早々にＢコレジへのトランスフェルの決まった校長が、副校長やレフベルリッキ・オーレトメン（ガイダンス教師）を含む多数の教師をごっそり、Ｂコレジに引き連れて行くというのだ。しかも、毎夜毎夜さまざまな父兄を集めて食事会を開き、Ｂコレジへの勧誘までしているとか。父兄から「学費が高い」の声が出れば、３割の値引きまで約束して勧誘に努めているという。校長はじめトップ陣が、今やまったく職務を放棄し、必要な連絡事項すら教師に流してくれないので、教師が自分たちで学校を運営しているというのだ。いったい、校長のそんな職務怠慢、自己保身が許されるだろうか。自分の利益を最優先し、自分の下にいる何百人もの教師、生徒の保護を完全放棄するとは！今のコレジの存続も、私たちがそこに残れる可能性も、今やはかない夢のような、ぼんやりとした現実味しか帯びていないのを私は感じていた。イスタンブールのＡコレジ？もしＡコレジが買い取ったら、今のコレジは校舎や校庭だけ残して消滅し、まったく新たなコレジが生まれるだけである。教師数も生徒数も半減し、規模は縮小。一方、学費は今までのようなわけにはいかない。おそらくイスタンブールの相場に合わせ、またブランド校に習って一気に高くするはずである。現在のような良心的な学費では採算が取れなくなっているのが、最近のアンタルヤのコレジ事情なのだから。コレジ間の熾烈な競争は激化するばかり。全国展開を狙うブランド校が、トゥリズムを中心に発展を続け、富裕層が急激に拡大しているアンタルヤを、受け入れ土壌も十分と見て、今後も次々と進出してくることが考えられる。小さく名もないコレジは、次第に淘汰されていくことだろう。そして、より優秀な教師や生徒、より裕福な父兄の争奪合戦。同じアンタルヤ市内で、このような限られたパイの取り合いが行われているのである。教師は給与の高さに、父兄は豪華な施設に惹かれ、我も我もとブランド校へ流れていく。クオリティを保つために当然学費は跳ね上がる。しかし、高すぎては思ったほど生徒は集まらない。今になって、Ｂ校が学費を３割、Ａ校が２割下げたのも、すべて熾烈なレカーベット（競争）のためである。デヴレット・オクルへのナクリ（転入）手続きは、早い学校で８月下旬から、最も遅い学校で新学期の始まる直前である９月第１週、第２週あたりだという。それまでに、さらにアラシュトゥルマを重ねながら、コレジ間の動向にギリギリまで耳をそばだてていくしかない。猶予はまだある。ギリギリでもどうにかなるのがトルコだから。デヴレット・オクルであれば、クラスの人数がなるべく少なく、トイレをはじめとした施設が合格点を出せるもので、スポーツ活動や社会参加の機会の多い学校を選びたい。そのためには、もう少し走り回り、聞き込み調査を行わねばならないだろう。今年の夏も、私たちの日本行きは完璧に不可能となった。

  2006/06/10

• 学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（中編）

  実は、今のコレジは、２００２年にも経営者が変わっている。その時はすんなりと転売が行われた上に、新しく来た今の経営陣は、前の経営者時代に落ち込んだ学校を建て直し、若くやる気のある教師を積極採用したり、トイレや給食、セルヴィス（通学バス）の質を向上させたりして、なかなか検討していた。以前にそんな経験があったために、今回の件もすんなり新しい経営者が登場して一件落着となるような、淡い期待を抱いていたのである。しかし、なかなか決着せず、話が二転三転する状況を見て、さすがの私も強い不安に襲われるようになった。多くのトルコ人父兄のようには、それまで学校や教師に関してほとんどアラシュトゥルマ（調査）やデディコドゥ（噂話）をしたりしない私だったが、娘のクラス友達の母親と出会ったりした時、今回の件に関して思わず訊いてみるようになった。その多くは、「成り行きを待っている」という返事だったが、建前と本音の大きく違う、そしてまた土壇場で１８０度意見と態度を変えてしまうトルコ人のこと、裏で何を考えているか、どう行動しているかは窺い知れなかった。私は、４年生の娘を同じコレジに通わせている仲のいい友だちユリにどうするか訊いてみた。彼女だけは本音で話し合える数少ないトルコ人の友だちだった。彼女は、昨年開校した有名ブランド校Ｔコレジに転校させることを希望していたのだが、編入試験に落ちたのか、あるいは高い学費のためか断念し、今のコレジに留まり、昨年学校の近所に引越しまで済ませていた。ブランド好きの傾向がある彼女は、やはり今年９月に開校となるブランド校Ｂコレジに関心をかなり示していたが、学費が高いので難しい、「もし学校が閉鎖になれば」今のコレジと同様伝統のあるＡコレジにするだろうと言った。そんな話を電話でした３０分後、彼女から嬉しい一報が入った。例の、最初の競売でいったん購入を決めた実業家が、オルタック（共同経営）で買うことに決まったらしいと、友達から連絡が入ったというのだ。「これでほとんど決まりらしいわよ」彼女がきっぱりと明るい声でそう言うので、なにかと懐疑的な私も初めて安堵のため息をついたのだった。翌朝、副校長と校庭で出会った私は、この件について早速尋ねてみた。彼女も「今よりずっと良くなりますよ。１～２週間後には新聞にも発表されるでしょう」と太鼓判を押していたのだが・・・・。それから待てど暮らせど、公式発表はなかった。その間にも、エミはクラスの友達から聞いた噂話を自宅によく持ち帰ってくるようになった。「学校が閉鎖になるかもしれないって。そうなったら、誰々くんはデヴレット・オクル（国立学校）に行くんだって。誰々くんは、ベレキに新しく開校するコレジに行くって言うし」「売店のおばさんがやめたんだって。給料を３か月分もらってなかったんだって」などなど。恐ろしいことだが、父兄間のデディコドゥが子供の耳に入るのはあっという間なのである。中には、学校の事情を包み隠さず子供に説明している父兄もいるのだろう。それにしても、状況はいったいどうなっているのだろう？今週アンタルヤの自宅に戻った夫に、ムハセベジにきっちり訊いてもらったところ、衝撃的なことを言われたという。十中八九、学校は閉鎖されるだろうこと。今年はもうカユットも難しいから、諦めて他の学校を探した方がいいこと。そして、これまでの裏事情も・・・その裏事情とは、こうだ。現在のオーナー、実は購入予定の実業家から借金をしており、借金が返せないので学校をその人に売ることで借金を帳消しにしようとしていた。ところが、後になって借金先は自分だけではないことを知った実業家が、購入を断念する。その後、この実業家は再度オルタック（共同経営者）を見つけ売買契約の話合いに入ったが、現オーナーが、売っても借金返済で手元に残らないのが分かったか、もっと高く売れると欲を出したか、売り渋り出したというのだ。このような足踏み状態はまだ何ヶ月も続くだろうから、来期の開校はかなり難しい。少なくとも１年間は他の学校に通わせることを考えた方がいい。というのがムハセベジの意見だった。これを聞いて、私たちはすぐ上の娘エミの担任トゥーチェ先生に訊いてみることにした。エミともども、トゥーチェ先生を大いに慕っている私たちは、競売の話が公になって以来、彼女の動向も常に気にしていたのである。昨年Ｔコレジが開校した際には、トランスフェル（移籍）する先生を追いかけて（というより引っぱられて）クラス全員で転校していった例もあるので、もし本当に学校が閉鎖となるなら、彼女の行き先次第では一緒に転校するということも十分ありえる話だった。トゥーチェ先生の教えてくれた内容は、予想はついたが多少驚いた。今のコレジの小学部の校長は、もうすでに辞職を申し出ており、今年開校するＢコレジにトランスフェルすることが決まっていること。この校長が一緒に連れて行く教師を何人も集めており、その中にトゥーチェ先生も入っていること。そのためトゥーチェ先生もＢコレジとの面接を進めていること。そして、トゥーチェ先生の元には、私たち同様彼女の動向を気にして来ている父兄がいるので、近々外で集まりましょうという話だった。転校先として、Ｂコレジはとうに不可能と諦めている私たちは、ため息をつくしかなかった。昨年開校のＴコレジに並び、今年開校予定のＢコレジも、年間学費は給食費、セルヴィス（通学バス）含めて約１万３千ＹＴＬ（今のレートで約１００万円）だと聞いている。娘ふたりを通わせると、２００万円！現在のコレジには、娘ふたり分の年間学費として、給食費込みで約１万３千ＹＴＬ払っているが、建設資金のためにクレディ（信用貸付）まで受け、毎月の返済に追われている私たちには、学費が２倍になる学校になどとても通わせられない。Ａコレジとて、学費、セルヴィス、給食費を合わせると、約１万ＹＴＬ（約７５万円）だというので、今のコレジの５割増である。他の中小コレジを当たってみるか、さもなくば、思い切ってデヴレット・オクルに入れるか。夫は来週早々帰ってしまい、９月まで戻らない。夫の留守中、学校に関する情報収集と準備は、私に残された仕事となる。のんびりと構えた夫を急かせ、「もしも」の場合に備えて、私たちは遅まきながらアラシュトゥルマ（調査）を開始したのであった。（後編につづく）

  2006/06/09

• 学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情（前編）

  ここ２ヶ月近く、私たち家族の頭を悩ませている問題がある。現在、ふたりの娘が通っているコレジ（私立学校）が、いつ何どき閉校となってもおかしくない状況に陥っているのである。現在の経営者は、２００４年に私たちのコレジを買い取ったカイセリ出身の実業家であるが、学校経営を含む諸事業のために多額の借金を重ね、とうとう差し押さえ、競売という道を辿ることになってしまったのだ。予兆は４月半ばを過ぎてから、娘たちの口を突いて出た言葉に表れた。「今日、お昼ご飯何にもなかったんだよ～！」私はビックリして聞き返した。普段、チョルバ（スープ）、ピラフかマカルナ（パスタ類）、アナイェメッキ（主となるおかず、メインコース）の他に、イェメッキハーネ（食堂）の真ん中に設置された大きなテーブルにアチュックビュフェ（オープンバフェ）が用意されていて、何種類ものソークメゼ（冷菜）やサラダ類、デザートが並び、小学生には勿体ないほどの豪華な給食が提供されていたのだが、娘たちが言うには、チョルバとハンバーガーとフライドポテトだけで、サラダも何もなかったというのだ。私は、どうしたのだろう？と訝りながらも、なんとなく経営難の匂いを嗅ぎ取っていた。毎日の習慣として、娘たちが帰ってくると「今日はお昼に何が出たの？」と聞いていた私だが、それ以来、アチュックビュフェが復活することはなかった。チョルバ＋ピラフ＋クルファスリエ（白インゲンの煮物）などという簡素な食事で、新鮮な野菜や肉がほとんど登場しないのだ。いくらなんでも栄養のバランスに欠けている。ムハセベ（会計）に問い質しに行かねばならないなあ～と思っていた矢先だった。新聞のアクデニズ（地中海）版１面に、私たちのコレジが売却されたという記事が載ったのである。購入したのは、進学校アナドル・リセスィ（アナドル高校）のひとつに寄付によって家族の名前を冠した実業家で、私たち父兄の心配はすぐに期待感に変わった。この人物が、同じように亡くなった家族の名前を冠した小学校を欲しがっているという話で、彼が買い取ってくれれば、今以上に素晴らしい学校に生まれ変わるのではないかという期待が膨れていったのも当然だろう。彼が１０日以内に指定のお金を支払えば、学校は彼のものになり、噂どおりであれば、新たな経営陣が連れてこられて、学校は継続するはずだった。しかし、彼はお金を払うのを断念し、売却は無効となってしまった。私たち父兄は、再び不安の渦の中に突き落とされた。次の競売は５月の半ば過ぎだった。私は、毎日を不安の中で過ごし、競売の行われた日、すぐにムハセベに確認しに行った。しかし、誰も購入する人物は現れず、流れてしまったという。次の競売がいつなのか、それすらはっきりと分からない状態が続いた。もし。もし学校が、単に金儲け目的の人物の手に渡ったら、学校は閉校、校舎は解体され、約１ヘクタールの土地は、周辺同様、住宅建設用土地に転用されてしまうことだろう。閉校に至らず学校が無事継続したとしても、経営陣が変われば軌道に乗るまでなにかとガタつくことは必至だし、いつまた転売という話が起こるか分からない。中には、最初の競売の段階でさっさと子供を他の学校に転校させてしまった機敏すぎる父兄もいた。今期も残すところ１ヵ月半で、授業は６月１６日まで継続して行われるというのに。しかし実際、各コレジともすでにカユット（登録申し込み）の時期が始まろうとしていた。中には、４月中に面接・転入試験・クジ引きなどを経て来期の新入生・転入生を選び終えているコレジもある。今のコレジに未練のない、また子供の学費に糸目をつけない裕福な父兄は、早々に他のブランド・コレジへの転入手続きを始めていた。そんな中で、私たちもそうだが、今のコレジを気に入り、あるいは諸般の事情から今のコレジが最も都合がよく、ギリギリまで結果を待とうという父兄・教師ももちろんいる。娘たちの通うコレジは、創立２６年。アンタルヤでも最も伝統のあるコレジのひとつで、当初は本当に素晴らしい教育が行われていたと、今でも地元の人に聞かされる。つい数年前まで、CHP党首デニズ・バイカル（アンタルヤ出身）の孫が通っていたのをはじめ、地元の有力者の師弟が多く通っていた時代もあったのだ。その歴史を惜しむ者。ここの卒業生で、大学卒業後教師として母校に戻ってきた者。担任教師が気に入っている者。学校の規模や雰囲気、学費等さまざまな条件が合う者などである。２００１年秋にトルコに引っ越してすぐ、エミを５歳児（満４歳）クラスに入れた私たちにとって、とくに娘たちと私にとっては、５年間朝夕通い詰めた愛着ある学校である。自宅から徒歩３分。娘が忘れ物をすればすぐに届けてやり、学校からの手紙の内容が分からなかったり、子供たちに何かあればすぐに先生に聞きに行き、学校の雰囲気や設備の不備や変更など、些細な変化はすぐに目に入り、クラスの友達や他の生徒たちの様子が手に取るように分かり・・・・トルコの学校システムに不案内だったヤバンジュ（外国人）の私にとって、学校が自宅の近くにあるということは、この上ないアヴァンタージ（アドバンテージ）だった。今更、他の学校への転校を考えることは、なかなか受け入れがたかったのである。（中編につづく）

  2006/06/09

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  無事終了。オクマ・バイラムの舞台裏

    下の娘ナナのオクマ・バイラムが終わった。＊オクマ・バイラムとは：１年生になり、初めて読み書き（オクマ・ヤズマ）を習った生徒たちが、どこまでトルコ語や英語の読み（オクマ）や暗記（エズベル）ができるようになったか父兄に見てもらうための発表会で、毎学年同様の発表会をするのだが、１年生の発表会に限ってはオクマ・バイラム（読みの祭）と呼ぶらしい。昔はおそらく、舞台上で本を開き、実際に文章を読んでみせたりもしていたのだろうと思うが、今やオクマ（読み）とは名ばかり、実際はコーラス・劇・ダンスで構成されたいわゆる学芸会である。働く父兄が多いので、それに配慮したのだろうか。以前は午後２時頃からの開演が多かったが、最近では大抵４時半などという遅い時間だ。それまで、生徒は自宅待機。いま何時？あと何時間ある？と繰り返し訊くほどに暇をもてあまし、退屈で昼寝までしてしまったナナを無理やり起こし、例のＴシャツとスカートを着せ、近所の美容室に連れて行く。毎年のことで慣れているはずが、多分にあがってしまうのか、時間の調整にいつも失敗してしまう私。まだ早いなあと思っているうち、いつの間にかギリギリの時間になってしまう。ナナの薄い髪の毛をムースや電気ゴテ（正確な名前は？）を総動員して膨らましアップ状にし、造花の冠をしっかりつけもらう。昨日担任教師に聞いた話（プログラムの順について、事前に何の説明・案内もないし、何を着て来させてという連絡もないので、問いたださないといけない）では、最初はＴシャツ＆スカート姿でのコーラス。その後で花役の衣装に着替えるというので、脱ぎ着をしても落ちたりずれたりしないよう、しっかり留めてもらう必要があった。実は、「ハートゥラ・チチェイ（思い出の花）」という響きから清楚な野の花をイメージし、髪の毛を長いままフワフワに膨らませ、額の上から耳のあたりにかけ三つ編みにし、そこに造花を留めてもらうつもりだったのだが、「髪が少ないので無理。落ちてしまう」と、一見演歌歌手のようなアップ・スタイルにされてしまったのだ。学校のキュルトゥル・サロン（文化ホール）に開演の３０分前、４時に集合のはずが、美容室が終わったのがちょうど４時。いったん自宅に戻って衣装や花カゴを取り、キュルトゥル・サロンに着いたのは４時１５分になろうという頃だった。すでに舞台裏はゴチャゴチャ。なにしろ今回は、１年生３クラス合同なのである。それぞれ１０～１５人ほどしかいない小さいクラスばかりなので、３クラス合わせて４０人ほどなのだが、舞台裏はそれには狭すぎ、準備に追われる先生方に着替えの衣装を手渡したものの、衣装を置く場所すら点々バラバラ。脱いだ服等を入れるための名前を書いたビニール袋を用意、との指示だったが、それをまとめて置く場所すらはっきりしていない。よぎる不安。例によって、オーガナイズ皆無のトルコ式か。。。おまけに、わざわざ新調したサンダルは、すぐにピスィピスィ（簡易バレエシューズ）に履き替えさせられてしまい、結局舞台では最後まで日の目を見ることがなかった（涙）。 国歌斉唱および校歌斉唱に続いて、トルコ語と英語のコーラス。それが終わると、生徒たちは着替えのために舞台裏へ消え、その間、パソコンを使って編集された生徒たちの日々の授業風景がスクリーンに映し出される。舞台裏では、コーラス用の衣装から劇用の衣装への着替えが行われている。ちょっと心配になって舞台裏を覗きに行く。すでにほとんどの生徒の着替えが終わり、ナナも髪を崩されることなく、ちゃんと着替えさせてもらったようだ。花カゴも紛失することなく手に持っているのを確認し、安心して席に戻る。やがて２つ目のプログラム、トルコ語劇が始まった。女の子は全部で何人いるだろうか。２０人近い女の子全員が、何らかの花に扮している。バラ、チューリップ、カーネーション、スミレ、パパティヤ（マーガレット、カモミール類）、菊、ユリ、藤、ジャスミン、ミモザ、カルデレン（スノードロップ）・・・・。男の子たちが扮するのは、庭師、果樹、その他の木々。これから、庭にあるすべての花々による長い長いギュゼルリッキ・ヤルシュマス（美人コンテスト）が開かれるのである。女の子のほとんどがロング丈の、いわゆるゲリンリック（花嫁衣裳、または花嫁衣裳タイプのドレス）姿。１年に１度の「晴れの舞台」を飾るため、念入りに化粧を施してもらったり、綺麗に髪を結い上げてもらっている。毎回どの発表会でも同じ風景が繰り返されるので、こうなることはよく分かっていたが、今回、ナナの装いは地味を承知で控えめを心掛けた。なぜなら、庭の片隅に植えられた「思い出の花」は、ひっそりと咲くなかにも可憐な美しさで人を惹き付けるタイプの花と想定したから。借り物のワンピースは、そのイメージにピッタリだった。さんざん待って飽きたらしく、何度も大あくびをしていたナナの出番が一番最後にやってきた。ところが「思い出の花」は、ナナ以外にもふたりいた。そしてふたりとも、なんともドギツイ化粧と派手なドレスで、私の抱いた「思い出の花」のイメージをぶち壊しにしてくれた。ひとりなぞ、青に緑に黄色に赤にといった、まるでピエロの衣装のような色とりどりの継ぎ接ぎドレス。コンテストは結局、「思い出の花」が一番という結果で終わるのだが、隣の女の子の妙に派手な衣装に呆気にとられているうち、ナナの出番もあっというまに終わってしまっていた。おまけにあろうことか、あれほど悩んで用意した花カゴを、ナナは足元に置いたまま忘れてしまい、マイクの前に立つときは見事に手ぶらだった。なんとまあ。サンダルに続き花カゴも出番なく終わってしまったとは。。。。私も馬鹿だ。たかが５分、１０分の出番と知りつつも、娘の晴れ姿を思って真剣に用意したというのに、結局出番もないまま終わってしまった花カゴやサンダル・・・・。２度目の着替えが終わった。最後のプログラムはいつもダンスと決まっている。が、生徒たちが舞台に登場してビックリ。ダンスはダンスでも、リトミックダンスではなくハルク・ダンス（民族舞踊）用の民族衣装姿だったのだ。（え～？じゃあ、あのＴシャツとスカートも、もう出番なしなの～？）思わず、聞いてないぞ～、とムッとするが、それで初めて合点がいった。前日ナナが持ち帰ったメモに、持って来てもらうものとして「イェメニ（被りもの、ターバン）」とあったのだが、何に使うか合点が行かなかったのだ。４０人全員が一堂にとはいかず、最初のグループ、後からのグループと２グループに分けられ、同じ踊りを異なる衣装に身を包んで踊る。締めくくりとして、先生方への花束贈呈。そして一人一人生徒の名前が呼び上げられ、ディプロマの代わりとして学校や校長・教頭・担任教師の写真と、本人の大きな写真とがひとつにまとめられたアルバムが手渡された。自然にお開きになり、アルバムを持ったナナの写真を撮っていると、近くにいた男の子が見慣れた造花を手に握っているのに気付いた。「それ、どこで見つけたの！？」と問いただすと、「下に落ちてたよ」と言う。「ごめん。返してね」といって男の子の手から造花を取り戻すと、私は焦って舞台裏に駆け込んだ。案の定、あの苦心の花カゴが、花々が抜けた哀れな姿となって床の上に転がっていた。（うう。。。２５ＹＴＬもしたのに。。。）　しかし、無残な姿を晒していたのは、ナナの花カゴだけではなかった。生花が用いられた花カゴなどもっと哀れなことに、床に落ちた花々が靴に踏みしだかれてつぶれていたのだ。それから今度は脱いだ衣装探し。脱いだ服はそれぞれ名前を書いた袋に入れられるはずだったが、大混雑のあげく完全に無視されてしまったらしい。借りたワンピースは割りと簡単に見つかったものの、脱ぎ捨てられた状態で床の上で丸まり、あやうく靴で踏みにじられようとしていたし、Ｔシャツとスカートは、あっちこっちに散乱している上、私同様ほとんどの人が名前を書いておかなかったために、どれが誰のものか分からず、まるでバーゲン会場か宝探しゲーム状態。サイズだけ覚えていたので、それを手がかりに探し、最後の最後にナナのものと思われるものが手元に残った。（もう～焦ったよ～。５２ＹＴＬも出したんだから～）いつものごとく、「修羅場」という表現がピッタリのオクマ・バイラムであった。（しかし、２度とごめんだよ～、４０人の大所帯は。それに先生が何人もいるんだから、衣装の管理くらい、しっかりしてくれ～！）

  2006/04/07

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  バイラム前日。恐怖の衣装準備・第２弾

  下の娘ナナのオクマ・バイラム（１年生のスヌフ・ギュニュ）を明日に控え、ギリギリになってすべての準備が揃った。もっとも、ナナの場合は、上の娘エミに比べたらずっと簡単だったのだが・・・。第１弾でご報告したように、ダンス＆コーラス用の衣装は、スヌフ・アンネスィ側で決めてあったから、買いに行くだけでよかった。それに、今回ナナが扮する花役の衣装は、同じクラスのお母さんが余ってるからと持って来てくれたローラ・アシュレイのワンピースを喜んで借り受けることにしたので、新調する手間が省けた（ホッ♪）。私が今回新たに用意しなければいけないのは、花カゴと花をあしらった冠。そして、服に合わせてサンダル。花カゴと花冠についてはちょっと悩んだ。というのも、ナナの扮する花は「ハートゥラ・チチェイ（思い出の花）」。本当の名を誰も知らない花で、その昔、庭師が奥さんへのプレゼントとして庭の片隅に植えた「思い出の花」という設定なのだ。最初、ウェディングドレスを縫う仕立て屋を見て回り、コサージュ用の花を物色したが、置いてあるのは大抵バラやマーガレット。担任教師に相談したら、クル・チチェイ（野の花）みたいなのがいい。今が盛りだから生の花でもいいのよ、その方が安上がりだし（←我が家の経済状況を知ってるのか？）、と言う。といっても、まさか当日の午前中に野原で花摘みというわけにもいくまい。自分で綺麗にアレンジする自信もないし、第一髪にどうやって結び付けられる？そこで、出費は覚悟の上。昔から何度も花カゴをお願いしたことのある、花屋に注文して造花で作ってもらうことにした。カゴは自宅にあるものを持ち込みで。上の娘エミが５歳児クラスの時から、毎年毎年、発表会で女の子は花の役ばかりやらされ、やれ花カゴだ、やれ髪飾りだと、毎回違う注文をつけられ鍛えられてきたので、昔に比べれば慌てることはなくなったものの、同じ花が続くことがなく、毎年新しく用意する羽目になる。ざっと数えても、色とりどりの花カゴ、チューリップの花カゴ、カーネーションの花カゴ＆髪飾り、スミレの髪飾り・・・という具合。それでも、花の指定があれば楽なのだが、バラとかチューリップとかカーネーションのように、名前がはっきり分かる花は今回避けなければならないのが難しい。だって、ほとんど皆が知ってるような花は、女の子全員に割り当てられてしまったのだから。迷った挙句、なるべく野の花らしいものを何種類か選び、アレンジしてもらう。ローラ・アシュレイのワンピースが白地に紫色の花が散ったものなので、一応色を合わせ、髪飾りは白と紫色の２色に絞って。一方サンダルは、散々靴屋をはしごして見て回ったが、季節的にまだ早く選択肢がなかったので、適当なところで手を打った。今年はバベット（ベビーシューズ型の靴）が大流行のようで、どこの靴屋でもバベットなら種類を抱えていたが、春・秋が短く夏の長いアンタルヤでは、バベットは履ける期間が短く、すぐに小さくなってしまって勿体ない。なので、ちょっと早いのだが夏じゅう履けるサンダル一本で探したのである。こうして、明日の準備は完了。明日、ナナは学校に行かずに自宅待機となる。 花カゴと花の冠、合わせて２５ＹＴＬ（約２３００円）Polarisのサンダル、バービー人形付き３９ＹＴＬのところを、 人形なしで３０ＹＴＬ（約２７００円）にしてもらう

  2006/04/06

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  イタタタ・・！恐怖の衣装準備・第１弾

  週はじめに、ナナのクラスのスヌフ・アンネスィ（クラス・マザー/クラスの母親代表）からレターを受け取た。オクマ・バイラム（“読みの祭”/１年生のスヌフ・ギュニュのことを通常こう呼ぶ）のためのダンス＆コーラス用の衣装を、以下のお店でいついつまでに購入するように、とある。で、お店の名前を見て、ビクッとなった。女の子用のＴシャツ：ZARA女の子用のスカート：mothercareとある。え～～っ！ZARAやmothercareじゃあ、高いに決まってるじゃないの～。いったい、合計いくらになるんだろう・・・？私の心配はいつもの如く、スヌフ・ギュニュの準備にかかる総経費。ナナのこの上下だけならまだしも、ナナにはまだ「花」用の冠やらサンダルやらを買ってやらなければならないし、エミの方には、シンデレラの妖精用のドレスや魔法の杖、髪飾り、サンダル。ナナ同様にダンス＆コーラス用の上下。さらにソリスト用の衣装が必要だった。安ければ安いに越したことない。それが哀しいかな、私の「親心」なのである。指定された「週末」の今日。近所のミグロス・ショッピングセンター内にある両店を訪れた。まずは、ZARAから。カウンターで尋ねると、後ろのワードローブから取り出してくれる。濃いピンク色の半袖Ｔシャツ。チラッと値札に目を走らせる。１１．９５ＹＴＬ（約１０００円）。ZARAの安いカットソー類はバングラディシュ製なのである。私は思わず胸をなでおろした。次に、mothercare。要件を告げると、デポから取り出してくれた花柄のスカート。生成り色の地に、ピンク、明るいブルー、明るいグリーンなどの花が散りばめてあり、なかなか可愛い。試着してサイズの合うものを選び、同時に試着室を出る前に忘れず値札を確かめる。３９．９０ＹＴＬ（約３６００円）。ゲェッ～！！オトゥズドクス・ドクサン！？とほほほ・・・。夏物の一枚生地でこんな薄いのに、４０ＹＴＬも払うなんて・・・。私は、何食わぬ顔をしつつも、暗～い気持ちになって試着室を出た。ここ１～２年娘たちには、安くて質もそこそこの子供服の店で、サマードレスでも２０ＹＴＬもしない値段で可愛い服を見つけてやっていたので、このナナのスカート１着でふたり分買えるのになあ～と、少々恨めしくなった私。１年生全員が同じ上下を揃えることになっているので、素直に買い揃える以外、私に出来ることはないのだが、もう少し安いお店を足で調査してから決めてくれれば、と思わないではない。スヌフ・アンネスィの言では、「普段にも着られる服を」ということで、それに異論はないのだが。まあ、選ぶのがコレジ（私立校）のお母様方だから、チャルシュ（繁華街）の怪しげな店より、ショッピングセンターの有名ブランド店。値段なんか、オネムリ・デーィル（大事じゃない）ってところだろうけれど・・・。こちら↓が、合計５２ＹＴＬ（約４６００円）も出したナナのダンス＆コーラス用の上下。いかがですか？トルコでお子さんを（しかも複数）お持ちのお母様方。何かコメントお願い申し上げます。m(_ _)m

  2006/03/18

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  なぜに今どき、「アマ～ン・ペトロ～ル♪」

  トルコの小学校では、後期中に「スヌフ・ギュニュ」（学年/学級の日）という、いわば年に１度の発表会が催される。コレジ（私立学校）に通う娘たちの場合、演目の半分が英語やドイツ語の歌や劇に割かれることが多い。トルコ語のコーラスと並び、リトミック・ダンスも盛り込まれている他、ダンスやピアノ、ギターなどの出来る生徒の特技披露の場にもなっている。毎年、このスヌフ・ギュニュの日程や大体の演目が発表されると、私の頭は痛みだす。（↑毎年、性懲りもなく同じネタを繰り返してしまいますが・・・苦笑）役割が変わる関係で、毎年のように新調する羽目になるドレスや衣装、アクセサリー、小道具類・・・。コーラスやダンスの衣装は、普段にはほとんど着ていく場所のなさそうな派手なドレスやユニフォームが、お揃いでオーダーされる。役割毎の衣装は個々人で用意するのだが、市販品で見つからない場合は、テルズィ（仕立て屋）やゲリンリック（花嫁衣裳）専門店や花屋に特別オーダーすることになる。普段スニーカーばかり履いているうちの娘たちには、ドレスに合わせてサンダルやシューズも必要になる。それらの費用ときたら、もう・・・（タメ息）。今年もそろそろと思っていたら、やっぱり来たーーっ！先週の水曜と金曜、立て続けに父兄会が催され、いずれもスヌフ・ギュニュの演目や役割分担、衣装についての概略説明に半分以上の時間が割かれた。まずは、１年生のナナの場合。昨年のハズルルック・スヌフ（準備クラス）の時の演目とほとんど同じで、役割は花や木。衣装はコーラス、ダンスとも共通の衣装を揃いでオーダーするらしいが、花役のひとりとなったナナは、頭に花をかたどった冠をつけることになっていて、この冠は各自手配する。揃いの衣装は、生徒の母親代表スヌフ・アンネスィ（クラスマザー）たちが先生方と相談しながら手配してくれるのだが、出来上がった衣装を見て値段を聞くと、大抵ガックリ・ショボンとなる。昨年だって、ダンス用のレオタード＆スカートに３７ＹＴＬ出したのに、たった一度の試着で飾りのスパンコールが取れはじめ、発表会の後はせいぜい娘たちの「ファッションショー」用の衣装のひとつとして、自宅で箪笥の肥やしとなっているだけなのだ。あれこれ悩み、自分で走り回る必要がないだけでも、楽チンではあるのだが・・・・。一方、３年生のエミの場合。昨年のメイン・プログラム、ドイツ語劇「シンデレラ」では、シンデレラに選ばれたエミのために青いドレスを新調することになったが、今年もまた英語劇で「シンデレラ」が採択され、今度はペリ（妖精）の役柄のための白いドレスが必要だという。成長激しいエミにはすぐに小さくなってしまうだろうドレス。下の娘のナナにお下がりとしていくからまだいいものの、出費はバカにならない。お店を何軒もはしごして品揃えを吟味し、購入かオーダーか結論を出し、オーダーならデザインの打ち合わせや仮縫いに出かける。そんなプロセスが面倒くさいのだ。今年のスヌフ・ギュニュは５月末だというから、まだ焦る必要はないが、あ～あ、なんだか今から気が重い。しかも。。。エミには、今年、もうひとつ重要な課題があった。クラス全員によるコーラスをバックに、アジダ・ペッカン(AJDA PEKKAN)の『ペトロール(PETROL)』をソロ（！）で歌うのである。曲目と、エミをソリストに選んだのは、音楽の専任教師。最初にそれをエミから聞かされたときは、「エエ～～ッ！？」と驚いた。こんな私も立派な親バカ。エミは声の伸びがよくて歌が上手いことは認識していたので、ソロということ自体は「へえ～～」くらいで大して驚かなかったのだが、意外だったのは、なぜに小学校３年生の子供に、アジダ・ペッカン？ということ。何年住もうと、トルコミュージックにこれっぽっちの関心も知識も持てそうもない私だが、アジダ・ペッカンの名前くらいはさすがに聞いたことがある。「大御所」と形容されるほどの大ベテランで、まだ１０代であった６０年代初頭から歌い始め、なんと歌手生活４５年にもなろうというトルコ・ポップス界の大物らしい。（←ほんとに知識ゼロなので、慌てて調べた） 画像提供（左）：ARTIST direct （右）：Vikipedi彼女のこの『PETROL』は、１９８０年のユーロヴィジョン出場曲だそうだ。ポップソングのタイトルとしては、一風変わった『PETROL』とはもちろん石油のことで、おそらく１９７８～７９年にかけての第２次オイルショックの影響を受けて書かれた歌ではないかと思われる。あまりに変興味深いので、歌詞を訳してみた。　　　　　* * * *　　Pet'r Oil (PETROL)♪あなたが来る前は、どこも闇世界は人気なく、世界は無口だった、なぜか分からないけど至るところで探したの、優しい光を火を見つけ私の心を温めるためにあなたが来たら、まるで太陽が昇ったみたいだった明かるい昼、夜、もうとても素敵な生活まるですべてが一度にまったく別物になったようあなた無しにはなんて難しいの、まさか暮らしがこんなに難しいとはお願いペトロ～ル、私のペトロ～ルもうあなたが、あなたが必要なのペトロ～ル手元にペトロ～ル、結局はペトロ～ルもう私の手綱はあなたの手のうちペトロ～ルそんなに自惚れて、あなたの横には入れないわ入ったそうね、いったい何人の恋人の血にドルやマルク以外の話は出てこないのね、あなたの口からは何を、何を引き出そう、あなたの手からどれほど金持ちの美女が追いかけてるの、あなたを夢と現実は別もの、助けにはならないわ、あなたは私のたぶん行ってしまうでしょう、いつか本当にほら、あなたの後ろで泣いてるの、私今から♪　　　　* * * *どうやら、ペトロール（石油）を男性に擬人化して歌った恋（？）の歌のようである。オイルショックを背景に、石油がいつ消えてなくなるか、そんな心配を女心に例えているのだが・・・。歌詞がダサすぎ。ユーロヴィジョンでは得点が低くて入賞など覚束なかったらしいが、さもありなん。その一方、メロディーはそう悪くない。特にサビの、「アマ～ン・ペトロ～ル♪ジャヌ～ム・ペトロ～ル♪アルトゥック・サナ・サナ・サナ・・・」の部分は、すぐに私の耳にも馴染んでしまった。実は、どんな曲か知りたくて、カセットを早速購入してしまった親バカである（恥）。しかも、まだ２ヶ月もあるんだから、今から少しずつカセットで練習させれば、舞台は大成功？な～んていう魂胆もあり。１日１回は「歌って見せて」って、娘にリクエストしている気の入れよう。なんだかんだ言っても、結局親の方が一生懸命になったりするんだよねえ・・・こういう場合。でもね～。今さら、なぜに石油？なぜに８０年代歌謡？小学３年生には、やっぱり相応しくない気がするんだけどね～、私には。ただの、受け狙い？？変だと思いませんか？皆さま。

  2006/03/03

• 筆記体優先は子供のため？

  新学期が始まって、早１ヶ月近く。国民教育省の手によって、今年度から教育基本方針が大きく改変されたのは、ご存知の方も多いとは思うが、この改革の影響をモロにかぶっているのが、今年から１年生に進級した下の娘。さまざまな改革の中には、身体で体験させる学習方針（「体験学習」って、どこかで聞いたことあるぞ？）があるようで、我が校にも実験室やドラマ室が設けられ、専属の教師もつくようになったのは進歩だと思うが、一方で全く好ましくない改革が、筆記体学習を優先させる点。読み書きを始めて習う１年生から筆記体が義務付けられ、ブロック体を習うより先に筆記体でトルコ語を習うようになったのである。昨年まで、筆記体は３年生になってから習っていたので、新３年生である上の娘は今年から習い始めているが、すでに十分なトルコ語の読み書き能力があるので、すんなりと受け入れができている。それに比べて哀れなのが、下の娘。昨年の準備クラスでは、アルファベット（もちろん、ブロック体）を書く練習までは済ませていたのに、今年になっていきなり筆記体に切り替えられてしまったのである。ほぼ毎日出される宿題を見れば、なんとか真似して書いているし、なかなか上手に書けているようで、親としてあまり心配はしていなかったのだが、先日学校で先生に聞かされた話は、ちょっとガックリくるものだった。「ナナちゃんは・・・書くのは問題ないんですが・・・自分が書いている言葉の意味が分からないままに書いてるみたいなんです」トホホ。。。さすが、手仕事向きで、真似だけは上手なナナだ。先生も、言葉の意味を教えながら書かせているはずだろうに、人の話を集中して聞くのが苦手だから、右の耳から左の耳に通り抜けてるだけに違いない。私はこの日から、宿題に書かれてある単語の意味を、ナナに一つ一つ確認しながら、書き取りをさせていたのだが・・・・。今日出された宿題を見てやって、またもや愕然とした。いつも書き取りだけの宿題だったのが、今日は読み取りの宿題。少しは読めるだろうと思って、「さあ、じゃあ読んでみて」と一番上から順番に指さしていったのだが、トホホ。。。ほとんど読めないのだ。私が先に読んでやり、それを復唱させる。何回か繰り返したところで最初に戻ると、やっぱり覚えてないのだ。あ～あ。我が娘ながら、どうしたことだろう？上の娘の時にはあまり苦労した覚えがないので、やっぱりこれはナナの集中力不足に原因があるのだろうか？しかし・・・・娘をかばう親心（＝親バカ？）といわれてもしょうがないが、娘側の原因だけではない、やはり筆記体ならではの読みにくさにも原因があるような気がしてならない。宿題は、先生がすべて手書きで用意した筆記体の文章である。同じアルファベットを使って、似たような単語を組み合わせた、意味のよく分からない文章が並んでいて、しかも丁寧に書かれているとはいえ個人の書いたものなのだから、初めて読み書きを習う子供たちには、難しくても不思議ではなかろう。ちなみに、今日の宿題の文章はというと。El ele　（手に手をとって）Ela at elle　（エラ（名前）、投げて、手で）Ela atla　（エラ、飛び降りて）Ata et al　（アタ（名前）、肉とって）Ata lale al　（アタ、チューリップとって）Ata ala at al　（アタ、栗毛の馬つかまえて）Ela at al 　(エラ、馬つかまえて)Ela et al　（エラ、肉とってLale et al　（ラーレ（名前）、肉とって）Talat, ala at al　（タラット（名前）、栗毛の馬つかまえて）Al al et al　（とって、とって、肉とって）Al al at al　（つかまえて、つかまえて、馬つかまえて）Al Lale al　（つかまえて、ラーレ、つかまえて）Talat et al　（タラット、肉とって）Al Talat al　（つかまえて、タラット、つかまえて）Lale, lale al　（ラーレ、チューリップとって）Al Lale al　（つかまえて、ラーレ、つかまえて）Ela lale al　（エラ、チューリップとって）Lale al Ela　（ラーレ、つかまえてエラ）Al Ela al　（つかまえて、エラ、つかまえて）まるで父親、母親の子供時代、尋常高等小学校（←古い！）の１年生で習う「サイタ、サイタ、サクラガ、サイタ」のようではないか？自分が小学校低学年でどんな授業を受けていたか、今となっては何一つ思い出せない私だが、少なくともこのようなアプローチではなかったような気がする。ここでは、まず最初に４文字(a、e、l、t）のアルファベットだけを習い、その組み合わせから生まれる単語を覚えていく。それが一段落すると、次の何種類かのアルファベットに移る、というアプローチになっているようだ。しかし、ご覧のような紛らわしい文章を反復することには、どれほどの効果があるのだろうか？言語学の素養の全くない私には、正直言って疑問が先に立つ。それよりなにより、なんといっても筆記体である。あらゆる公文書、書籍、雑誌、新聞、もちろん教科書（トルコ語の一部は除く）・・・世間に出回っている出版物のほとんどがブロック体で書かれているのに、ブロック体の読み書きを先に教えないで、筆記体を強いて優先させる理由が、私には理解できない。まさか、eメールや携帯のショートメールにすっかり駆逐されてしまった手紙（しかも手書きの）を復権させたいなんていう、懐古主義者のたわ言から始まったものではあるまいなあ～。改良より改悪の感強し。２～３年もすればまた元に戻すんではないか、と思わずにはいられない。ちなみに、筆記体優先と同時に、アルファベットを教わる順番も、昨年までとは１８０度転換した。トルコでお子さんを学校に通わせてらっしゃる方はよくご存知のはずだが、昨年まではフィシ（短冊状の単語・文章カード）というものを使って、１年生はトルコ語の読み書きを習っていた。フィシを収納するためのフィシ・ドスィヤス（カード・ファイル）は、１年生の必須学用品だったのである。生徒たちがまず最初に目にするのは、abc(ｱｰﾍﾞｰｼﾞｪｰ)ではなく、こんな感じの文章から。Ali al.　（アリ（名前）、持って）Bu kalem.（このエンピツ）Su silgi.（その消しゴム）O defter.（あのノート）Zil caldi.　（ベルが鳴った）Okula kos.（学校に走れ）・・・・これらの短い文章がカードとなって生徒に１枚ずつ渡され、生徒はアルファベットの読みを覚える以前に、文章全体の読みと意味を習う。完全に覚えたところで、文節へ、音節へ、最後にアルファベットへと分解していくのである。言葉といえば、５０音やアルファベットから始まるアプローチしか知らなかった私には、初めてこの教授法に遭遇した上の娘の時には、ずいぶんと驚きいぶかしんだものだった。本当にこんなんで上手く習えるんだろうか？と。聞いたところでは、この教授法のほうが、文章を早く読めるようになるという利点があるとのことだったが、効果のほどはよく分からなかった。筆記体優先と、アルファベット優先。果たしてこの改革は、子供たちの読み書き能力にどのような影響を与えるのだろうか？母親としては、娘が挫折することなく、うまく授業についていってくれれば、それだけで十分という気がしないでもないのだが、やっぱり筆記体優先だけは、反対！だなあ～。こちらをご覧の皆様。最近の言語教育の流れは、どうなんでしょう？特にヨーロッパ（EU諸国）にお住まいの方々。この改革も、まさかアヴルパ・スタンダルト（ヨーロッパ基準）に合わせたものなんでしょうか・・・？ご意見をお寄せいただけると、助かります。

  2005/10/06

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  通学カバン（女子用）。今年の流行は、コレだ！

  このブログを始めて、そろそろ１年が経つ。最初の頃の話題が、新学期準備の話だったことを思い出して、しみじみ１年が経つのは早いなあと実感している。トルコもそろそろ新学期準備商戦に突入し、我が家の近くのスーパーマーケット・ミグロスやトイザラスでは、入り口前面の棚は早くも新学期用品に席巻されてしまった。学校側で用意される学用品・消耗品リストが揃うのは、どうせ新学期間際の夏休み最終週だろうが、新学期準備も５年目ともなると、大体必要なものは頭の中に入っている。どれどれ、先に買えそうなものがあったら、今のうちに買い込んどくか、と昨晩は娘ふたりとルナパルクの後でトイザラスに立ち寄った。上の娘にも、気に入ったものが見つかれば、今年は通学カバンを新調してやろうかと思っているのだ。娘が昨年まで使っていたのは、怪物を退治する３人のスーパーガールズをモチーフにしたアニメ・キャラクターPOWERPUFF GIRLSのもので、１年生になるときに購入したもの。カバン自体はまだ使えるのだが、「子供っぽくなったから」、できれば新しいのがほしいと娘は言う。私は古いタイプの人間だから、まだ使えるものは壊れるまで使い続けるべきと考えているし、私たちの世代がランドセルを６年間使い続けたように、学用品なんてずっと同じものを使うものだと思っていた。が、考えてみれば、私たち大人が服や靴に飽きがきたり流行に合わせて新調するのと同様、子供たちだって、成長するにつれ好みも流行も変わり新調したくなるわけで、気持ちは十分わかる。ここトルコでは、ランドセルとか学校指定の通学カバンというものが存在せず、生徒が思い思いのカバンを使っているので、ついつい流行などに影響されがちなのだ。さて、今年はどんなカバンが出回ってるかなあ～。娘の気に入るカバンがあるだろうか・・・・と、お店の中に一歩入って驚いた。女子用カバンの棚は一目で分かった。だって遠目にも鮮やかなピンク、薄いピンク、濃いピンク、紫がかったピンク、とにかくピンク、ピンク・・・・。うへ～、全部ピンクだ！娘は淡い水色も好きで、今まで使ってたPOWERPUFF GIRLSのだって、ベースは淡い水色。だから一目で気に入って購入したのだが、水色なんてひとつも置いてない。そして今年も見事にアニメ・キャラクターやキャラクラーものばかり。ここで、ちょっと画像で紹介してみよう。 左から、W.i.t.c.h.、Winx CLUB、Sindyそしてキャラクターの女王Barbie！女の子の根強い人気を反映してか、量・種類ともに約半分がバービーで占められている。おませな上の娘エミは、とっくに「バービーなんか子供っぽい」と、見向きもしない。かといって、ついこの間までW.i.t.c.h.が好きで、時々雑誌も買っていたほどなのに、すでに飽きてしまったのかどうか、それにも素直に飛びつけない様子。「この中で選ぶとすれば、W.i.t.c.h.のシリーズが一番お姉さんっぽいよ」と、私はエミにアドバイスしておいたが、とりあえず今日のところは保留にして自宅に戻った。それにしても、全体にまた値段が上がっていて、タメ息。昨年、下の娘ナナにエミと同じPOWERPUFF GIRLSの色違いでピンクを買ってやったのだが、確か３０ミリオン（＝３０YTL、約２５００円）くらいだった。今年は、どれも４５YTL（約３７００円）以上している。新学期準備のための出費、今年も去年を上回るんだろうなあ・・・・・。頭の痛くなる季節が、今年もそろそろやってきたようだ。

  2005/08/27

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  娘たちの「夜のお楽しみ」ルナパルク

  日中のカレイチ通いが続いている関係で、もう２週間以上も（上の娘は田舎に行ってたため、１ヶ月も！）海にさえ連れて行ってやれない。せめてもの罪ほろぼしではないが、体力・気力が残っている日には、夕食が終わって気持ち良い夜風の吹く頃に外に散歩に連れて行くようにしている。お決まりの行き先はというと、ルナパルク（遊園地）かミグロス・ショッピングセンター。どちらも道路を挟んで真向かいに位置しており、我が家からは歩いて５分ほどの距離にある。娘たちの大のお気に入りはルナパルクで、工事の始まらなかった昨年までは、１週間に２～３回はルナパルクに連れて行っていたものである。ところが、乗り物代も年々値上がりし、今年はジェトン１枚２．５ＹＴＬ（約２３０円）、１０枚入りが２０ＹＴＬ（約１８００円）。確か一昨年には１枚１．５ミリオン（＝１．５ＹＴＬ、約１３０円）、昨年は２ミリオン（＝２ＹＴＬ、約１８０円）だったから、毎年０．５ミリオンずつは値上がりしている勘定になる。日本の遊園地に比べれば、これでもまだ安いのかもしれないが、ここトルコの物価からすれば、週に何度も遊びに行けるほど安いわけではないし、私たちもそこまで裕福ではない。というわけで、娘たちの夏の夜の楽しみになっているルナパルクであるが、今年はそうそう連れて行くこともできなくなった。娘たちには大抵、乗り物はそれぞれ２回までと約束させてある。まだ幼い頃にはメリーゴーランドなんかに喜んで乗っていたものだが、今年の娘たちのお気に入りは、トゥルトゥル（芋虫）とズプラマ（トランポリン）で決まり。トゥルトゥルは、芋虫の形をした子供用のジェットコースターのこと。というわけで、本日はトルコの遊園地ルナパルク＠アンタルヤをご紹介。ただし、日本の遊園地を想像するとガッカリする。しばらく出掛けたことはないので記憶が怪しいが、浅草の花やしき遊園地くらいの規模を想像していただければ、と思う。 ルナパルクの夜景　遊園地といえば・・・観覧車（ドンメ・ドラプ）とメリーゴーラウンド（アトゥルカルンジャ） 娘たちのお気に入りトランポリン（ズプラマ）と芋虫コースター（通称トゥルトゥル）（↑娘たちも跳んでます）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

  2005/08/13

• 娘たちの留守番はじめ

  この暑いさなか、毎日のようにカレイチの工事現場に無理やり連れて行かれては、「近付くんじゃないよ！」「そこで遊んじゃダメ！」「喧嘩しないで、静かに遊んでなさい！」などなど、そんな小言ばかり聞かされ続けたからだろう。昨日はさすがに娘たちの方が音（ね）をあげて、「もうカレイチなんか、現場なんか絶対行かない！退屈だもん。家に残ってる」と宣言するに至った。私の方もそれは同様。慎重な職人仕事を続ける大理石職人のすぐ横まで、ふたりしてやってきては大声で喧嘩を始めたり、階段の上で押し合いへし合いの喧嘩をしたり、いまだ手摺の取り付けてない２階の開廊を小走りに駆け抜けたりするたびに、怒声を上げざるを得ない状況に、私だっていい加減疲れているのだ。しかし、だからといって、他に方法もない。エミは、遊び仲間のオズレムの家に行きたがって電話をかけたようだが、母親に掃除中だからダメと断られたらしい。他に気軽に遊びに行ける場所もなし、一緒に来るしかないでしょ？と私は娘を説得しようとしたのだが、それでもエミは私と一緒にカレイチに来ることは頑として拒否する。家で留守番してた方がマシだという。その気持ちは、私にだって痛いほど分かる。ゆったりと座る場所もない、オモチャもテレビもVCDもない、時々涼しい風が吹き抜けるとはいっても、暑いことには変わりない埃っぽい工事現場で、用事もないのに長時間待ち続けるなんて、大人だって辛いのだ。しかし、ふたりだけで２時間も３時間も留守番ができるだろうか？今までふたりきりで留守番させるといえば、１時間程度で戻れるパザールやミグロスに行ってる間だけのことだったし・・・。私に不安がないわけではなかったが、これからも工事や用事で家を空けなければならない状況は変わらない。上の娘のエミも、先月半ばには満８歳になり、少しは物事のあやが分かるようになってきた。このあたりで、少しずつ自分たちで自分たちの世話ができるよう、慣らしたほうが良いに決まってる。開けにくい自宅玄関の鍵も、ようやく開けるコツを覚えたようだし、ちょうどいい頃合である。ただし、鍵の扱いは慎重に、少しずつ任していくことにしよう。私は、ふたりを家に置いておくことにし、条件をつけた。「それなら仕方ないわね。ただし、家で留守番しててもいいけど、家の外に出ちゃだめよ。ひとつしかない鍵が失くなったら２度と家の中に入れなくなるから、鍵は私が持っていく。もし、オズレムが遊びに来れるようだったら、家に呼んでもいいけど、その前に散らかした居間や子供部屋はちゃんと片付けしておきなさい。片づけをして、それからオズレムに電話しなさい。オズレムが来ることが決まったら、私の携帯に電話して。あと、何かあったときも、すぐに電話して」私は、そう言い残して家を出ると、バスに乗る前に近所の鍵屋に立ち寄り、マンションの表玄関用の合鍵を作ってもらった。何色もある鍵用のプラスティック・カバーの中から、娘たちの好きなピンク色を選んでつけてもらうと、娘たち用の合鍵が出来上がった。これと、自宅に置いてある自宅玄関用の合鍵を一緒にキーホルダーにつけて、明日から早速、鍵の管理の練習もさせることにしよう。こうして昨日は、午後３時半から午後６時半までの３時間、家の中だけで留守番させることになった。その間、エミはオズレムにもう一度電話をかけたのだが、今度は別棟のエズギのところへ遊びに行ってしまったと言われたらしい。エミのことがちょっと可哀相になった私は、オズレムの母親アイギュル夫人に電話して事情を説明してみた。私は今現場にいて、子供たちはふたりだけで家にの残っていること。エミがオズレムを呼びたがっていること。アイギュル夫人も、それならと、すぐにエズギの家に電話してふたりを遊びに来させると言ってくれた。１時間ほどしてエミから電話がかかり、つまらなさそうな声で訊く。「ねえ、オズレムはいつになったら来るの？ナナも寝ちゃったし、つまんないよ～」結局、エズギとオズレムのふたりは来なかったのだ。娘たちはふたりで協力して片付けをし、テレビを見ながらじっと友達が来るのを待っていたらしい。私はちょっと哀れに思ったが、いつも友達がいるわけではなし、自分たちだけで時間をつぶすことも覚えなければいけないと心を鬼にし、私が来るまで大人しく待っててと言って電話を切ったのだった。・・・・そして、今日は朝から娘たちに新しく作った合鍵を見せてやった。合鍵がちゃんと機能するかどうか、練習として娘ふたりを下に行かせる。やがてチャイムが鳴って、ふたりが「開いたよ～」と言って戻ってきた。私は、エミのジーンズの飾りとして付いていた長いチェーンの先に合鍵をふたつつけてやり、エミに託す。今までだったら、「私が持つ～！私が持つ～！」と言って奪い合いをするナナも、物分りがよくなったのか、今日はやけに素直に見ているだけ。こうして私は、午前１１時から午後２時までの３時間、そして現場からトンボ帰りし昼食を食べさせて、再び現場に戻った後の午後３時半から午後６時までの２時間半、合計５時間半を、練習２日目にして満８歳と満５歳のふたりの娘だけで留守番させることに成功した（？）。アメリカだったら児童虐待で逮捕されるかもしれないが、今の私には他に方法がない。慎重な仕事を続けている大理石職人は、有難いことに、新しい箇所に移るたびに私に詳細を確認してくれる。ここの張り出しは３ｃｍでよかったか。下に何が来るか、石壁かセメントか。４５°で張り合わせるか、それとも単純にまっすぐ切ってもよいか。etcだから、私も気が抜けない。私が現場に着くと、すぐに質問がやってくる。ここはこうで良かったか。こうしたが、気に入らなかったら切るよ。じゃあ、いったん家に戻るからと言うと、今のうちに訊いておくよと、数箇所の仕様の確認が入る。大理石職人の仕事は、明日も明後日もその先も、まだ３日ほどは続く。それが終われば、４日間ほど乾かすための休憩に入る。インシャッラー、そうしたら娘たちを３週間ぶりに海に連れて行けるかもしれない。可哀相だが、娘たちには当分、留守番のプロになってもらうより他なさそうだ。

  2005/08/11

• 娘が初めて親元から離れる

  今夜９時半の夜行バスで、真ん中の妹ズベイデと甥のギュルセル、姪のラビアが郷里に戻った。そして今回初めて、上の娘エミが親元を離れて、父親の実家に遊びに行くことに。いつそんな気になったのかは知らない。ひょっとしたら、ズベイデたちに焚きつけられたのかもしれないが、調子が悪くて遠出のできなくなったババアンネ（父の母親、つまり父方の祖母）に会いたい。キョイ（村、ここではババアンネのヤズルック＝夏の家のある村）に行きたい。ロバに乗ったり、イチジクやブラックベリーをたっぷり食べたい。だからズベイデたちが帰るとき一緒に行きたい、と突然娘が言い出した。そして私がどうするべきか考えているうちに、たまたま電話をかけてきた父親から早くもオーケーの返事をもらってしまったのだった。一緒に行く分にはかまわない。でも、帰ってくるとき必ず誰かの付き添いが必要でしょ。面倒がかかるし、付き添いの人間の往復のチケット代もあるから、結構お金がかかる。それにピアノのレッスンを休んだら、また手が動かなくなるよ。そんなこんな理由をつけて、いったんは諦めさせようとしたが、考えてみれば娘も満８歳。この９月からは３年生に進級する。この旅は、親元から離れ、自分のことを自分で管理させるための第一歩になるかもしれないし、母親の私をウルサがったり、日頃妹のナナと喧嘩の絶えないエミにとって、家族のことを距離を置いて見るいい機会になるかもしれない。そう思い、結局のところオーケーを出すことにした。一昨日、４人分のチケットを買いに行って戻ってくると、娘は早くも自分でリュックサックに着替えの洋服を詰めはじめていた。キョイは涼しいから長袖が必要、とか、ズベイデたちのアドバイスを受けながら。今日、最後の点検としてリュックサックの中を確かめ、パーカとか靴下、半そでＴシャツなど何点かを追加してやり、財布に若干のお小遣いも入れてやった。娘には、いくつかのことを約束させた。・歯磨きは毎日必ずすること。（田舎じゃあ、誰も歯磨きしろってウルサク言わないからね・・・）・夜更かししないこと。（皆、夜更かし朝寝坊だからね・・・）・大人の言うことをよく聞くこと。（当たり前か）・毎日何をしたか、日記に書くこと。（無理だと思うけどね。一応）・何かあったら、私の携帯に電話しなさい。（電話してくるかな？）・帰りたくなったら、我慢しないで「家に帰りたい」って言いなさい。（娘は、結構言えないタチだからね・・・・）他にもまだあるだろうが、頭に浮かんでこないので後は諦めた。ズベイデは３週間くらいは居たらと言うが、一週間、１０日も居れば十分だろう。「寂しくなったり、つまらなくなったら、すぐ帰っておいで。気をつけて行ってらっしゃい」娘の両頬にキスをし、ズベイデ、ギュルセル、ラビアにもお別れの抱擁をして、一番下の妹セラップ、姪のエスラ、スリア、ギュライと、そしてナナと６人で家に戻った。と・・・居間のサイドテーブルの上に日記を置き忘れているのを発見。なんだ、もう約束のひとつがダメになったのか（苦笑）。キッチンの方では、早くも悪ガキ３人の間で怒鳴りあいの喧嘩が始まっている。２対１の喧嘩で勝ち目のないナナは、早くも「エミがいなくて寂しいよお～」と泣いている。やれやれ、これからしばらくは６人暮らし。寂しくなったのか、もっと煩くなったのか。なんだかよく分からない。エミがしばらく居ない間に、ナナが少しは成長してくれるのか、しないのか。私もナナのように、すぐに寂しくなるんだろうか・・・？娘は、いったいどんな顔をして帰ってくるだろう。なんて言いながら、帰ってくるだろう。そんなことが今から気になっている私であった。

  2005/07/22

• 他人の子育てをとやかく言う権利はないけれど・・・

  一番下の妹セラップが３人姉妹を連れて、同じアンタルヤに住むというご主人の親戚宅に移ってしまうと、や～れやれ、なんとも嬉しい静寂が訪れた。時々、うちの娘たちが喧嘩のあげく怒鳴りあったり、下の娘がダダをこねて騒ぐのだが、親の贔屓目にしてもまだまだ可愛いもんだし、その程度ではそう煩く感じなくなったのが不思議である。なにしろ、セラップのところの真ん中の娘スリア（満７歳）と末娘ギュライ（満５歳）の悪餓鬼っぷりは相当なもので、目を離すと何をしでかすか分からないし、大人の言うことをまったく聞かないで、ダメと言えばのたうちまわって火がついたように泣き喚くのだ。ことに言うことをきかず、大人をバカにしているのがスリアで、もう物心付いた頃からずっと同じ調子である。今年は１年生から２年生に進級するのに、本当に大丈夫なんだろうか、学校で先生にツバを吐きかけたり足蹴にしていないかと心配になってしまう。この１週間というもの、このふたりとうちの娘たちがいるところに展開する阿鼻叫喚の地獄絵を朝から晩まで見せられてきたので、今はもう天国である。セラップは温かい人柄で人懐っこく、私は好きなのだが、こと子育てに関してみると、ちょっと恐ろしくなることが多い。スリアとギュライという悪餓鬼ふたりを大人しくさせるのに、多少の脅しは必要なのかもしれないが、「こらあぁ、ぶん殴るぞ～！」「こらあぁ、ナイフで切ってやるぞ！」「殺してやるぞ！」なんて言葉を躊躇なく使うところがコワイ。その一方で、ふたりが泣き喚き始めると、途端に甘くなるところがトルコの親である。時間かまわず甘いものを食べたがったり、他の人の分まで横取りしてしまおうというふたりに、私は自分の娘たちに対すると同様、絶対に甘い顔を見せないが、セラップは私の方をちらっと申し訳なさそうに見て、「子供が欲しがってるから」「子供が泣いてるから」と言い訳しつつ、こそっと食べさせたりしている。この日曜日は上の娘の満８歳の誕生日だったのだが、こんなことがあった。簡単なパーティーが終わって、私がキッチンで後片付けをしていると、スリアがやってきて冷蔵庫を覗きだした。後からやってくる予定だった娘の友達のためにケーキを取っておいたのだが、スリアがそれをどうしても食べたくなってしまったらしい。私が「それはエミの友達が着いたら一緒に食べるんだから、ダメよ」と言うと、案の定、泣き喚きだす。そこに登場したのがセラップの一番上の娘エスラ（満１４歳）だが、スリアをなだめるのに「おばさんが許してくれないんだから」を何度も何度も繰り返すものだから、後ろで聞いている私はさすがに苦笑いせずにはいられなかった。私が見ていなかったら、きっとさっさと食べさせて泣き止ませてしまっただろう。「ひとのものまで欲しがらない」とか、「みんなが平等に」という道徳観念のもとに育った私には、この手の「ぬけがけ」は絶対許せない。子供がどんなに泣き喚こうが、ダメなものはダメ。自分の子供だったら、耳の穴を無理やり開いてでも、「これはあなたのじゃあないのよ」「あなたは食べたのだから、もう権利はないのよ」と言葉を変え品を変え、説明するところなのだが・・・・・。スリアもギュライも周りの人間に言うことをきかせるために泣き喚くことを覚えてしまったに違いない。でなければ、ふたりが朝から晩までこうまで激しく泣き喚き続ける理由が分からない。うちの下の娘ナナも似たところはあるが、ふたりのワガママと泣き喚きぶりは桁外れなのだ。トルコの母親はすぐに「子供だから」「小さいから」を言い訳にして、子供の欲しがるものを簡単に与えてしまいがちだが、セラップもその例に漏れない。哺乳ビンでミルクを飲むなんて、そろそろふたりとも卒業させてもいいと思うんだけどね。砂糖まで入れるの？と私が驚いて聞くと、「そうなのよ。ふたりともこうやって飲むのが好きで」って・・・いつまでも子ども扱いしない方がいいと思うのに。それと、歯磨きくらいはさせた方がいいよ。絶対に。例によって「歯ブラシ持ってくるの忘れた」というから、余っている歯ブラシを１本ずつ渡したのに、私が見ている限り、この子たちが歯を磨いたのは初日だけ。それも、私が横で見張っていたから。一週間も歯磨きさせないなんて、虫歯が怖くないのかなあ・・・・。

  2005/07/19

• 娘のシラミ疑惑に困惑

  一昨日の日暮れ、庭で遊んでいた娘たちに夕食が準備できたことを知らせて呼び戻すと、帰ってきた上の娘が開口一番こう言った。「アイギュル・テイゼ（小母さん）が、頭にシラミがいるから、薬局でシャンプーと櫛を買って使えって」またそんなこと言ってる！私は途端に気分が悪くなってきた。以前にも、オズレムの母親で６階に住む隣人のアイギュル夫人には、「エミの頭にはシラミがいる。あの髪についた白いのが卵。私はよく知ってるから、医者に行く必要はない。薬局でシラミ専用のシャンプーを買って使え」と言われたことがあった。子供時代の私に似て髪の量が驚くほど多く、またこれだけは私に似ず一本一本が絹糸のように細くて絡まりやすいエミの髪の毛は、シャンプーやドライヤーを使う時には一苦労する。特に、一人で頭を洗うことの出来るようになった最近は、途中でチェックしてやらないと、シャンプーやリンスが残って翌日にはひどいフケが出ることも多い。目に入るのを恐れてきちんと流さなかったりする額近くの生え際など、特にそうだった。だから、そうアイギュル夫人に言われた時も、私はどうせフケだからと相手にもしなかった。地元の大学の生物学のラボで働いているアイギュル夫人は、以前に頭皮や髪の健康に関する特別講義を受けたことがあるそうで、「私はよく知っているから、これは間違いなくシラミ」と言い切った。そんな彼女の自信満々の物言いが、かえって信用できなかったとも言えるが、なによりシラミと言われても、シラミらしき生物の影も形もないし、同じベッドにくっついて寝たり、同じブラシを使っている私やナナにそれらしい症状が何も出ていないということは移っていないんだから、アホらしいと思ったのが正直なところだ。しかし、それにしてもしつこい。また同じことを言い出したとは。私はエミを傍らに呼んで、頭髪をよくあらためてみた。前の夜にシャンプーしたばかりだったが、ドライヤーの途中で疲れたといって、私に完全に乾かさせなかったから、細かいフケがたくさん出ているのが見えた。ほんのわずかだが、髪の毛に張り付いた１ｍｍほどの白い帯も見える。アイギュル夫人にとっては、これが「間違いなくシラミの卵」だそうだが、私にはどうしても信じられなかった。丸くない、髪に薄く巻きついた帯のようなものが、本当に卵だというのだろうか？ほどなくして、アイギュル夫人からはご丁寧にも電話が入った。「ナナの髪にはほとんどないけれど、エミの髪には結構シラミがついてるから、薬局でシャンプーと目の細かい櫛を買って、それを使いなさい。今、この地域の子供たちの間でシラミが流行っているらしいから、エミだけじゃなくてファトマ（カプジュの娘）にもたくさんついてるのよ」なんとももっともらしい話である。そこまで言われて少し心配になった私は、エミを連れて近所の薬局に出掛けてみたが、すでに店じまいした後だった。シラミだったら必ず増えるはずだし、第一、虫が発生しなければおかしい。もう一度よくシャンプーして様子を見てみよう。前回もよく洗ったら、白い帯のようなものはほとんどなくなったし・・・。そう思って、昨夜は私が手伝って丁寧に洗い流してやると、フケはもちろん白い帯もほとんど見えなくなった。それでも、朝学校に送っていく途中、気になって薬局に立ち寄り、そこの薬剤師さんにエミの頭を見せてみた。まだ若い彼女は、「シラミではなく、フケのように見えますが・・」とだけ言ったが、私にはそれで十分、「ほらね、やっぱり」とホッとして娘たちを学校に送り届けたのだった。学校から帰って１時間ほどすると、ナナと同じクラスに通う記子ちゃんの母親、波江さんから電話が入った。こんな時間に何の用だろうと思えば、早くも見舞い（！）の電話だった。「まあ、ゲチミッシュ・オルスン（お大事にしてね）！エミとナナにシラミが付いたって聞いてもう・・・・」私は唖然とするよりなかった。あのアイギュル夫人も口が軽すぎる。まだシラミだともなんとも分らないのに、自分ひとりの勝手な判断でシラミだと言いふらしているんだろうか？第一、昨日の今日で早すぎるし、偶然会って立ち話をするような話題でもなかろう。さては、わざわざ電話でもかけて教えたんだろうか？私は心のうちで憤慨しながらも、冷静に彼女に伝えた。「アイギュル夫人はそう言うんだけど、薬局で見せたらフケだって。今度、一応医者に連れて行くつもりだから」と、まだシラミと決まったわけではないということを強調したつもりだった。しかし、噂はここで留まっていたわけではなかった。午後４時、娘たちを学校に迎えに行った私は、ナナのクラスの前で記子ちゃんの言葉を聞いて愕然とした。「ねえ、ナナ。エミには近付かないようにしようね～。私とナナにはシラミがないけれど、エミの頭にはシラミがあるんだって～」私は、相手がナナと同じ幼い子供であることを承知しながらも、厳しい表情で記子ちゃんを戒めた。「あのね。シラミじゃあなくてフケなのよ。だから、そういう言い方は２度としないように」ナナを引き取り、エミのクラスに向かった私たちの後ろから、記子ちゃんはまだ付いて来ていた。そして、教室から出てきたエミの顔を見て、またもやこう言ったのだ。「ほら、エミから離れようね～。エミの頭にはシラミがいるから」と。私はすぐにエミの反応が気になったが、エミはちょっと怒ったような素振りを見せはしたものの、後は無視してくれたので、少し気が楽になった。それにしても、記子ちゃんがあんなことを言うとは・・・・。アイギュル夫人が、記子ちゃんがすぐ横にいる場所で波江さんにしゃべったか、波江さんが記子ちゃんに、「エミの頭にはシラミがいるから、近付かないようにね」と言い含めたかの、どちらかしか考えられなかった。まだはっきりしないうちからシラミと断定され心外という気持ちと、エミの心のうちをいたわる気持ちと、小さい子供にこのような言葉を言わせた大人の態度を嘆く気持ちとで、私の心はもやもやと揺れていた。アイギュル夫人にも波江さんにも何か言おうかとも思ったが、その気はすぐに失せた。一度アイギュル夫人の中で凝り固まってしまった考えは簡単に翻せないし、波江さんに伝えられた言葉も記子ちゃんが口にした言葉も口の中に押し戻すことはできないのだ。私はただ、エミに噂なんかに惑わされず心を強く持っていて欲しいと、彼女を傍らに呼び、「あなたの髪についてるこの白いのはフケだから、誰がなんと言おうと気にしちゃあダメよ」と励ました。一夜明けた今日、同じ薬局の前を通りかかったので、念を入れてもう一度訊いてみることにした。昨日と違う、年配の女性が丹念に見ていく。普通シラミは耳の後ろとか首の後ろの生え際などに卵を産みつけ、その辺りが痒くてたまらないはずだが、エミの頭は耳の後ろも首の後ろも全くきれいなものだった。が、髪の毛の何本かにわずかに残る白い帯を見つけると、「ああ、これは卵ね」と言うではないか。そして、抗生物質の入ったシラミ駆除専用のシャンプーを出してきた。私は、たくさんのシラミを見てきただろう年配の女性が言うんなら、もしかしたら本当かもしれないと、半信半疑ながら、念のためにそのシャンプーを試してみることにした。それからは、シャンプーは必ずシラミ専用シャンプーを使っているが、白い帯は、消えたり復活したりである。一方、アイギュル夫人も波江さんも記子ちゃんも、その後は何も言わなくなった。一度だけ、学校に娘を送っていった帰り、バッタリ波江さんと一緒になったとき、「医者には連れて行った？」と訊かれたが、「まだよ」と答えて終わりになった。・・・・その後ずいぶん経って、インターネットで「シラミ」を一度も検索してみなかったことにハタと気付いた。隣人たちの言動に振り回されるなんて馬鹿げている。さっさと医者に行ってもよかったのだが、まずはインターネットで調べてみるという手を、私はすっかり忘れていた。早速調べてみると、エミの髪の毛に見られる白い帯は、シラミの卵なんかじゃなく「ヘアーキャスト」というフケと脂肪の混ざって固まったものだということが分った。毛髪の根元に溜まった脂肪分などが、毛髪の成長とともに毛の表面に固着したもので、髪の毛をひっつめたりすることが多い人によく見られるとか。ポニーテールにしていることの多いエミに、ピッタリ該当する症状であった。これでもうアイギュル夫人になんと言われようと、薬剤師がなんと言おうと、フケだと胸を張って弁明できる。私は、パソコンの前にエミを呼んで、目の前に並んだ写真を見せて説明した。「これがあなたの髪に付いているもので、フケの一種なのよ」と。一騒動起こった娘のシラミ疑惑は、こうして一件落着した。

  2005/05/11

• 「母の日」発表会で涙したもの

  ５月８日の「母の日」、アンネレル・ギュニュを前に、下の娘の通う準備クラスでは一足早く発表会が催された。今回、娘の与えられた役は妖精で、他４～５人の女の子たちと一緒に、背中に蜉蝣のような薄い羽根をつけ杖を持つことになっている。衣装は火曜日に直しから帰ってきた、シャンパン色のドレス。細いストラップ付きの繊細で上品なデザインで、胸元、腰、一番上がチュールになっているスカートの何箇所かに淡いピンク色のバラの蕾が付けられている。一度も着たことのないファスナーが壊れ、接着剤で貼り付けただけの蕾が２箇所も取れて失くなっていたので、同じお針子さんを探して託したのだが、何度も足を運ばせて悪かったといって、残っているバラの蕾を一緒に添えてくれたのが嬉しかった。これでカチューシャか、頭の上に軽く載せられるよう花の冠でも作ろうかと思ったが、美容室に相談したら、編んだ上からそのまま挿せばいいと言われ、敢えて手を加えないことにした。発表会は午後２時からだが、午前中に予行練習があるというので、普段通り８時半には登校しなければならない。行きつけの美容室には昨日のうちに話をしておき、朝８時からセットをしてもらいに出掛けた。娘の薄い髪の毛を苦労しながら編み込みにし、編んだ部分に上手に蕾を刺して止めていく。生え際のあたりに等間隔に挿された６つのバラの蕾はカチューシャのようで、幼い娘の顔を可憐に見せてくれた。今まで発表会だ、ダンスパーティーだといっても、髪の毛はいつも適当にアレンジしてやっていただけに、初めて美容室でセットしてもらった娘は、鏡を見ながら満足そう。普段から変身願望の強い下の娘のこと。５ＹＴＬ（約４００円）を払い美容室を出るときも、首をまっすぐに立て、髪形が崩れないよう、しゃなりしゃなりと歩いていくところが微笑ましい。・・・発表会の演目は、私には馴染みといってよい。なにしろ、上の娘だけでも５歳児クラス、準備クラスと経験しているので、都合３回目くらいにはなる。何曲かのコーラスの後、劇があり、その後ＰＣを使ってスクリーンに母子の写真を順番に映し出しながら、母親に感謝の言葉を述べるという時間が設けられている。スクリーンに写真が映し出されると、子供が中央に進み出て、マイク越しに母親に語りかける。「アンネ（お母さん）、立っていただけますか？」母親が座席から立ち上がると、各自があらかじめ用意した言葉を贈る。「いつも美味しい料理を作ってくれて、美味しいボレキやドーナツを作ってくれて、きれいな服や靴を買ってくれてありがとう」という具合に。お母さん方の中には、立ち上がった時からすでに感無量で、頬の涙をしきりにぬぐいながら子供の言葉を受け止めている方もいる。一方私はというと、この趣向も初めて経験するものではないし、どうも他の子供の真似をして、事実から反れたようなことを言う娘の言葉にガックリきて、感激するというまでには至らなかった。娘は後で「アンネ～。なんでアンネは泣かなかったの？」と不思議そうに訊いてきたが、本当のことじゃないし、自分で一生懸命考えた心のこもった言葉じゃないと、心は動かないんだよ、と説明した。きっと娘には理解できなかったと思うが。そんな冷めた私だが、唯一グッときて涙が溢れたシーンがあった。自閉症児の涼ちゃんの番。言葉の不自由な涼ちゃんがマイクの前に進み出て、「アン、アヤウン、アン、アヤウン、アヤウン・・・」と一生懸命繰り返している姿を見て、思わず目頭が熱くなった。私だけではない。涼ちゃんのご両親はもちろんのこと、日頃クールな表情を崩さない音楽教師のセルカン先生までが、涼ちゃんの舞台に男泣きしたのであった。皆と同じ行動を取るどころか、一箇所にじっとしていることさえできない涼ちゃんが、ここまで参加できるようになったのも、普通児と同じクラスで学ばせることを決断したご両親と、その意思を尊重し、涼ちゃんの授業や行事への参加を最大限にサポートしてきた担任のベットゥル先生のお陰だろう。この日の発表会で最も感謝の言葉に値するのが、涼ちゃんのお母さんとベットゥル先生なのかもしれないと、涙ながらに思わずにはいられなかった。

  2005/05/06

• 「小さな紳士」響くんの来訪

  下の娘ナナのクラスにいる響くん。色白に額縁メガネ、育ちの良さを滲ませた笑顔に、行儀の良い立ち居振る舞い。ハリーポッターを幼くして、優等生にしたようなタイプである。私は、響くんのことを密かに「小さな紳士」と呼んでいる。この響くんは、学校から我が家までの道の途中にあるスィテ（共有の庭やプール、駐車場などを持つマンション）に住んでいるのだが、毎日一番にベビーシッターに連れられて帰ると、しばらくの間、庭で遊びつつ、私たちの通りかかるのを待っている。私たちが見えると、響くんは塀まで近付き、フェンス越しに娘のナナに庭で摘み取った花を手渡してくれるのだ。響くんが近付いてくると、上の娘や、一緒に下校することの多いオズレムは、すぐに顔を見合わせてニヤニヤとする。響くんはナナのことが好きなんではないか、というのが私たちの一致した意見だが、同じマンションの隣人で、ナナと同じクラスの記子ちゃんにも手渡しているところを見ると、単に女の子に優しくしたいだけなのかもしれない。いずれにせよ、娘の下校が遅れない限り、ほぼ毎日のように繰り返される響くんのプレゼントに、ナナも照れつつもまんざらでもない様子。「で、ナナは響くんのこと、好きなの？」そう振ってみるが、笑いながら「ハ～ユル（ううん）」と首を横に振るだけ。好きになった男の子には、結構積極的にアプローチしたり、ああしたこうしたと報告するナナのことだから、やっぱり響くんのことは、ミツグ君（古い！）程度にしか考えてないのかもしれない。ところが、響くんが記子ちゃんのお家に招待されたと聞いた日から、「うちにはどうしてこないの？」「響くん、うちに来てもいいでしょ？」とおねだりするようになったのだ。客人を招待するのが苦手な私は、「そのうちにね」「まずは響くんのお母さんに都合のいい日を聞いてからでないと」と言って、うまく逃げおおせたつもりだった。・・・今日、娘たちを学校に迎えに行くと、上階から下りてきたオズレムが私に報告した。「ナナが今晩、響くんを招待したんだって」私は思わず「ええっ～！」と顔をしかめる。また、ナナってヤツは～！私に聞かないで勝手にそんなことを！どうしよう？本当にやってくるのかなあ・・・？私は、響くんに会ったら、なんと言われるかとビクビクしていたが、この日は響くんはとっくに連れて帰られたらしく、顔を見ることもなかった。「ねえ、ナナ。響くんを招待したって、本当？」ナナに真偽を確かめると、無邪気に「うん！来るって」と言う。が、考えてみれば、向こうは子供。一人で来られるわけもなし、ご両親に報告したら、きっと日を改めてと諭されるに違いない。少なくとも、「息子がこんなことを言ってるんですが、どうしましょう？」と相談の電話くらい入るだろう。私はそう楽観的に構えながらも、家に戻ると居間と玄関周りだけは大急ぎで掃除と片付けを済ませておいた。果たしてそれから、夕食の時間になっても響くんのご両親からは何の連絡もなかった。夕食も終わり、私はすっかり寛いで、この一件もほとんど忘れていたのだが・・・。午後８時半。チャイムが鳴った。インターフォンで「キモ～？（誰？）」と聞くと、なんと響くんのお母さんの声。ゲゲッ～！直接来てしまったの～？とりあえず表玄関ドアを開けるボタンを押しながら、子供たちに大声で指示を飛ばす。「お～い！響くんが来たぞ～！早く片付けて～！」例によって、子供部屋はおもちゃ、学用品、脱いだ洋服類が渾然一体となった惨憺たる有様。日頃どんなに叱ってもなかなか自分たちで片付けをしない娘たちも、この時ばかりは大慌て。床やソファーの上に散らかったおもちゃや服を、手当たり次第にソファーの後ろに突っ込んでいる。私はスリッパの用意をする一方で、見苦しい部分を少しでも隠すよう努めた。エレベーターが止まり、響くんがご両親と一緒に現れた。学校でお会いする時のご両親はいつもキリッとした現代的な装いだが、意外にも今夜は気を遣わない服装で、特にお父様の方はＴシャツに短パンという軽装だったので、私の気もかなり楽になった。「こんな時間から申し訳ありません。今日はプールに出掛けてたんですよ。夕食を済ませて、さあ帰ろうという時、響がナナちゃんのところに行くといってきかなくて・・・。ナナちゃんに約束したから、それを破るわけにはいかないって言うんですよ」ご両親は、申し訳なさそうな顔で、響くんだけ３０分ほど置かせてもらって、後で迎えに来ましょうかという。私は、「とんでもない。どうぞどうぞ」と中へ招きいれ、ネジャットの寝室と化しているサロンではなく、居間に案内した。ご両親は、もう一度事情を説明して、突然の来訪のわけを話した。「もう遅いから、別の日にしましょうって言ったんですが、響がこう言うんですよ。ナナちゃんはクラスで一番礼儀正しい女の子だって。その彼女にした約束を破るのは、礼儀に反することだって。そう言われたら、私たちもそれ以上反対できなくて」さすが真面目でひときわ賢い響くんのこと、言うことも立派だなあと驚きながら、一方でナナのことが過大評価されていることに、苦笑を禁じえなかった。家に帰れば悪魔か怪物並みに暴れまわる甘えん坊で我が儘なナナだが、一歩外にでれば天使かプリンセスのような淑女ぶりを見せることは、私たち家族が一番よく知っている。ナナの二面性には舌を巻くこともしばしばだが、それにしても響くんに「クラスで一番礼儀正しく上品」と思われているとは、ナナも罪深いことよ。どうりで、「小さな紳士」響くんが花を贈ろうという気にもなるはずだ。私が、揃ってお医者さまであるご両親と世間話を交わしている頃、子供部屋では、どうやら上の娘エミが響くんを問い詰めていたらしい。いわく「ナナと記子ちゃんと、どっちが好きか？」と。やっぱり子供。ストレートによく訊けるわ。で、響くんは「ナナちゃんの方が好き。記子ちゃんはコミック」と答えたらしい。やれやれ。やっぱりナナ、少しは思われているのか。響くんのことを、父兄の中には、「学者」と呼ぶ人もいる。ご両親の情操教育が素晴らしいのだろうが、６歳児（日本でいえば、満５歳）とは思えぬ言葉遣いと知識に驚かされることもある。例えば、「“土”と聞いた時、何を連想するか？」というブレインストーミングで、ナナをはじめ他の子供たちが、草とか花、木なんて答えているのに、響くんときたら、「植物を育てるのに必要な物質のひとつで・・・ウンヌン」なんて答えるんだからスゴイ。ちょっと見、カッコイイ男の子に弱くて、日頃「今日は、丈夫くんのホッペに４回もキスしちゃったあ～」とか「強くんには２回キスしちゃった」なんて無邪気に告白するナナだが、アンネ（お母さん）としては響くんみたいな男の子の方が将来的に頼もしく思えてしまうなあ～。丈夫くんや強くんなんかどうでもいい、アンネは響くんの方を大切にして欲しい・・・なんて。いざとなると姑根性まるだしで男の子を眺めている自分を発見してしまった一夜であった。

  2005/05/04

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  シンデレラのドレスを購入！

  学校が休みの今日は、娘ふたりを連れて繁華街へ。第一の目的は、上の娘のドレスを試着し、よければ購入すること。下の娘のドレスの直しも、出来上がってたら引き取る。まっすぐ向かったＭベビー。いつも相手をしてくれる若い売り子さんに言って、娘のサイズを出してもらう。すぐに試着してみると・・・・娘にピッタリで、私の方がわけもなく興奮。（ただの親バカ？）鏡の前に立ってみる娘も、もちろん満足そう。で、値段はいかほどに？５９（ＹＴＬ）だから５０（ＹＴＬ）にまで下がるが、馴染み客なので４５（ＹＴＬ、約３５００円）にするという。５０でもオーケーと考えていたので、４５と聞けば即決。いざ会計をしようと階下に下りると、シーズン物のキレイな服がたくさん揃っているではないか。娘ふたりともスパンコールやキラキラ光る石を縫い付けたものが大好き。これからの季節に一番活躍する半袖Ｔシャツの中から、蝶や星、ハートなどが光る石でデザインされたものを１枚ずつ選び出した。Ｔシャツは１枚１９（ＹＴＬ）のところを、１０（ＹＴＬ、約８００円）まで下げてくれる。品物は後で引き取りに来ることにして、下の娘のドレスがどうなったか聞きにいく。残念ながら、まだアトリエから来ていないという。来週月曜日にもう一度来店することにして店を出たが、下の娘はお姉ちゃんのドレスがあるのに、どうして私のがないの、とダダをこねた。ハンバーガー・ショップで昼食を食べさせ、カレイチの工事現場に立ち寄って状況を確認した後、店に戻って品物を引き取り自宅に戻った。・・・で、これがドレスを娘に試着させてみたところ。画像では結構鮮やかだけど、実際はもう少し淡い色合いです。身頃には水玉の地模様が入り、胸元の花と同じものがドレープの根元に縫い付けられています。こんなドレスが３５００円で手に入るところは、トルコの有り難いところかな？ドレス自体、出番が結構あるのも、トルコならではだけれど・・・（苦笑）。我が家のタンスにも、娘たちのドレスが何着しまわれていることか。日本でもそうだろうけれど、トルコでも女の子には本当にお金がかかります（涙）。

  2005/04/30

• シンデレラのドレスを見つけた！

  上の娘のスヌフ・ギュニュ（学年/学級の日）が２週間後に迫った。もしドレスを仕立てに出すとすれば、そろそろ決断する時。私は、仕立て屋探しのことも考えて、友達のユリに電話し、ドレスの下見を手伝ってもらうことにした。朝一番に電話で都合を聞き、１０時半に繁華街にあるチャルシュ（小さいショッピングセンター）で待ち合わせをした。まず、真っ先に向かったのが、このチャルシュの中にある子供服の店、Ｍベビー。娘たち好みのジーンズ製品からドレスまで手頃な値段で揃えていて、私もよくここで買い物をする。顔馴染みだし、現金だとかなりの割引をしてくれるのも有り難い。２週間前にこの店にドレスを探しに来た時は、上下セパレートになっているアービエ（光る素材などを使った夜用の上下）できれいなデザインのものがあったのだが、１１５ＹＴＬ（約９０００円）、値下げしても８０ＹＴＬ台（約６０００円）と言われてすごすご帰ってきたのだった。その後ユリから、ここで友達が娘さんに素敵なドレスを手頃な値段で買ったと聞いて、もしや新しいドレスが入荷したのかもしれないと、念のためユリも誘って来てみたのである。さてさて、その素敵なドレスとはどれかな～と、見てみると、うん。まさしくシンデレラの雰囲気にピッタリ。薄い水色で襟元は大きく開き、チュールのフリルの上から同色の花が縫いつけられている。丈はつま先まですっぽりと隠れる長さで、左右２箇所でたくし上げられてドレープがつくられ、そこにも花が縫いつけられている。中には（なんというのか）輪状の芯が２段に入れてあるので、スカートが丸く大きく膨らむようになっている。一目で、「これでいける」と思った。しかも値段だが、５９ＹＴＬ（約４７００円）のところ、５０ＹＴＬ（約４０００円）までは下がります、という。値段の方も、願ったりかなったり。次回、娘本人を連れてきて試着させることにして店を出ると、早々にドレスが見つかったことで肩の荷がぐっと軽くなる。次に、下の娘のドレスの直し。もう１年も前になるが、幼稚園に通っていた頃、発表会のためにクラス全員同じデザインでオーダーした白いシンプルなドレス。発表会直前に風邪を引いて本番を欠席したため、一度も着たことがなかったのである。風邪が治ってから園にドレスの引き取りに行くと、なぜかファスナーが壊れてしまっていて、「園の方で直してお渡ししてもいいが、店はチャルシュにあるので、ご存知ならそこに持っていって直してください」と言われ、園にまた取りに来るのも面倒だったので、そのままドレスを持ち帰り、それから丸１年というもの、結局そのままタンスの中に眠っていたのである。これを取り出して下の娘に着せてみると、まだまだ丁度いいくらい。来週、６日はアンネレル・ギュニュ（母の日）の発表会で、妖精の役をすることになっているので、これを直して着せることにした。このドレスを作った店も同じチャルシュの中にあることは覚えていた。記憶を頼りにある店に顔を出すと、ドレスを見て、これは誰それの仕事だ、と分ったらしい。すでに１年も経っているので、その時のお針子さんは他の店に移ってしまっていたが、まだ同じチャルシュの中の店で働いていたので、運良く預かってもらうことが出来た。こうして、あっというまにふたりの娘のドレスの手配がつき、晴れ晴れした気分でユリとカレイチまで散歩し、現場の近くで分かれたのだった。

  2005/04/27

• 娘ふたり・出費続きで頭が痛い。。。

  学年末まで、残すところ２ヶ月。毎年のように頭を悩ませる季節がやってきた。まずは、４月２３日の「子供の祭典」。正確には、「国民主権と子供の祭典」。１９２０年４月２３日のトルコ大国民議会の開催を記念して制定された国民の祝日である。この日は、海外からも民族舞踊や音楽を披露する青少年のグループが参加したりして、全国各地で子供を主役とする様々な催しが開催される。娘たちの通うコレジ（私立学校）の低学年クラスでは、市の主催するパレードなどには参加しないのだが、今年はチョジュック・バロス（子供舞踏会）が企画されていて、参加費はなんと、ひとり１５ＹＴＬ（約１２００円）。ハンバーガーなどの食事に、さまざまなアトラクション付きだが、ふたりとも参加すると３０ＹＴＬになる。それに、もちろん普段着というわけにはいかない。幸い、手持ちのドレスがあるから、新しいドレスを用意する必要はないが、はたと気付くと、靴がない。昨年、ドレスに合わせて買ったサンダルは、ひと夏で履き潰したし、サイズも合わなくなっている。さらにクアフォル（美容室）で髪の毛をセットしてもらうと、ふたりで１０ＹＴＬくらいだろうか。娘たちは、クラスの友達も参加するから絶対行きたいと、ダダをこねる。私は、「ババ（＝パパ）が帰ってきたら、相談して決めましょう」と、遠まわしにその話題から逃げていたのだが、夫が帰国すると、娘たちはまずこの件を持ち出して、「ルートゥフェン！ルートゥフェン！（お願い！お願い！）」と父親に詰め寄った。娘たちに甘い夫は、簡単にＯＫを出し、結局参加させることに決まってしまった。バロまで１週間となった今日。子ハムたちをペットショップに引き渡した後、前からの約束通り、子供たちのサンダルを捜しに靴屋めぐりをすることにした。まず１軒目。よく行くチャルシュ（小さいショッピングセンター）の中にある子供用シューズの店。サンダルじゃなく、ストラップ付きのベビーシューズで、デザインはまあまあ。試しに値段を聞いてみると、なんと！７２ＹＴＬ（約５７００円）と聞いて、さすがに目の玉が飛び出そうになった。さっさと、その店を退散すると、２軒目はチャルシュのすぐ外にあるお店。以前オシャレなブーツをまあまあのお値段で買ったので、その後も必ず覗く店のひとつである。やっぱりベビーシューズ（これが今年の流行？）で、下の娘にピッタリの花のワンポイントのあるシューズが３０ＹＴＬと、いい感じ。でも、できれば夏中履けるサンダルが欲しい。一方、上の娘に合いそうなシューズがない。編み上げ紐付きのベビーシューズがあったが、窮屈なものの嫌いな娘の気には入らなかったようだ。３軒目。隣のチャルシュの中にあって、やはり何度か買い物したことがあるお店。お値段がやや高めだが、質がよく、なによりオシャレなデザインが豊富。ここで、上の娘は、ラインストーン入りの大人っぽいサンダルを。下の娘は、ピンクラメのハートと花がデザインされた、スカラップ入りの可愛いサンダルを見つけ出した。が、お値段を聞いて、しばし沈黙。上の娘用が５３．５ＹＴＬ、下の娘用が４９．５ＹＴＬという。「た、高い・・・」少し考えますといって、さらに他の店を回ることを考えたが、娘たちはすっかりその気で、特に下の娘などスキップでもしそうな勢いで、履きまわしている。私も、上の娘用のサンダルがあまりにドレスの雰囲気にピッタリなので、次第にその気になってきた。で、結局・・・・。２０ＹＴＬをデポジットとして払い、品物をキープしてもらっておき、夫が帰ってきたら、相談して購入するかどうか最終決定することに。続いて、衣料品、とくにゲリンリック（花嫁衣裳）の店の集まるそのチャルシュの中を、今度はドレスの下見のためにはしご。学期末には、１年間の成果を披露する目的で「スヌフ・ギュニュ（学年/学級の日）」という名で発表会が催されるのだが、上の娘のそれが１ヵ月後の５月１２日に予定されている。そのドイツ語プログラムの中で、上の娘はキュル・ケディスィ（シンデレラ）の役を演じることになったので、その役柄に相応しいドレスが必要なのだ。先日、アニマスィヨン（パーティーの余興、ゲーム、仮装、催しなど）用品の店でレンタルドレスを見たのだが、生憎シンデレラの衣装もシンデレラとして使えそうな衣装も見つからなかったので、こうなったら買うか、オーダーするか、どちらかだ。となったのである。ちなみにオーダーなんて、日本ならウエディングドレスや着物くらいしか機会がないだろうし、きっと恐ろしく高いことだろうが、トルコでは、ことドレスに関しては既製品と代わらぬ値段でできるか、場合によっては既製品を買うより安い。２年前、上の娘がハズルルック（小学校準備クラス）の時にも、当時で既製品とほとんど変わらぬ３０ミリオンＴＬ（現在は、約２４００円）で縫ってもらったことがある。以前、ピアノの演奏で出演予定のあった「ムズィック・ゲジェスィ（音楽の夕べ）」に合わせて、上の娘用のアービエ（光る素材などを使った夜用の一揃い）を買った他、ことあるごとに立ち寄る子供服の店で、鮮やかなスカイブルーと白を使ったドレスを見つけて試着した。ビスチェになっている上半身には、たくさんのビーズを使って全面に花が散らしてある。スカートは、片方にドレープを寄せながらたくし上げられて、そこに花のコサージュが縫い付けられている。同じスカイブルーのシフォンでショールもあって、これを首に巻いたり、肩から掛けたりすることができる。今までフォーマル・ドレスといえば、白や淡いピンクくらいしか着せたことがなかった上の娘だが、いざ着せて鏡に映してみると、ブルーがいとも華やかで見栄えがする。娘もほとんど気に入りかけていたが、値段を聞いて後すざりした。なんと、１１５ＹＴＬ（約９２００円）！それを、顔馴染みなので、現金なら８０ＹＴＬ（約６４００円）台まで下げるという。それでも、正直「高っかいな～！」と、手が出せない。靴も同様で驚かされたのだが、昨年の相場に対し、１５～３０％増しに値上がりしているのだ。私たちは、少し考えてみるから、と言って店を出ると、ゲリンリック専門のテルズィ（仕立て屋）を３軒ほど回り、オーダーした場合の値段の相場を確かめた。今見たばかりのスカーブルーのドレス。これと同様のものがいくらでできるか。縫い子たちの腕やセンスがそれぞれ違うので、私の説明した形で１００％実現できる保証はないが、大体５０～６０ＹＴＬ台でやると約束してくれた。これでもまだ少々高いが、８０ＹＴＬ台で買うことを思えば、手間と時間がかかっても仕方ない。今日のところはとりあえず下見に留めるが、来週には決定を出さねばならないだろう。実を言うと、下の娘の方だって、６月２日にスヌフ・ギュニュがあり、こちらの方はバレエ兼用の衣装として全員一緒のドレスがすでに発注されている。個々人で手配する必要はないが、後々あまり着れそうもないチュチュ風のドレスが３７ＹＴＬである。さらに、いくらになるか分らないが、花をあしらった髪飾りも、後から発注されているという。やれ靴だ、やれドレスだと、この時期はとかくお金ばかりかかってしょうがない。ハァーーー。ついつい、大きなため息ばかり出るこの頃である。

  2005/04/16

• 春の訪問客（３）お母さんの登場で・・・いよいよ核心に？

  居間は、子供たちに占領されて、ＤＶＤ鑑賞のために真っ暗にされてしまったので、テーブルの上にまだお皿が散らかっているダイニングに案内。一応礼儀として「食事は済ませました？」と訊いてみた。「ええ。それがね。マントゥ（トルコ風のミニ水餃子でヨーグルトソースをかけて食べる）でも食べようと思ったんだけど、閉まっちゃって・・・」そう言われたら、食事を出さないわけにはいかない。よかった。さっき娘の残した皿を平らげといて。「子供メニューで申し訳ないんだけど・・・マカルナが残ってるから、それをどうぞ」そう言って、鍋の底に残っていたスパゲッティをふたつの皿に分けると、どうにかふたり分が出来上がった。一方、サラダはたっぷり残っているから大丈夫だろう。私は、「こっちで仕事しててもいいかしら？」と断りを入れて、汚れた皿の片付けに精を出す。一体何の話があるんだろう？何を話したらいいのかなあ？私は、なんとなく面と向かうのがためらわれて、下を向いて黙々と作業する。気がつくと、また偏頭痛が始まっていた。「こっちに来て。お話しましょうよ～」とうとう元気くんのお母さんに呼ばれてしまった。「そ、そうね、オーケー。これは後に回すわ・・・」私は、お母さんの向かいに腰掛けた。最初は何ということもない世間話だったのに、いつのまにか、話は当然のように「その話題」に・・・。「元気がエミちゃんの話を始めたのは、２学期に入ってからなのよ～。ほら。マナヴガットのコレジ（私立学校）に居たでしょう？そこで好きな女の子が居て、こっちに来てからもしばらくその子のことばかり言ってたのに・・・」私は、ふ～ん。へえ。とただ相槌を打つだけ。「で、エミちゃん。元気のこと、本当に何か言ってない？」もう～。また同じこと言ってるよ～。私は、変な期待を持たれても・・・と、正直に答える。「全然聞いてないわ。エミには、今のところクラスに好きな男の子は居ないみたいだし・・・」お母さんは、意外そうな顔で苦笑する。「元気もダメなの～！？」自分の息子はモテると思っているのか知らないが、なんでよ～？という顔つきである。「エミちゃんのこと好きな子は、少なくとも数人は居るらしいわよ」エミだって、好きな子のひとりやふたり居てもおかしくないが、今のところ勉強やリトミック＆モダン・ダンスのクラブの方に夢中という感じである。それに準備クラスの時には、クラスの男の子のひとりを除く全員がエミが好きと言ってると聞いたことがある。エミだって、その頃はふたりの男の子の間で「どうしよう～。決められないよ～」なんて、オマセな悩みを披露してたことがあるくらいだ。「とにかく、エミは、今のところ誰が好きとか、何も言ってないわ。小さい時は、もっとオープンだったけどね」「元気はねえ～。いつでもオープンよ。何でも隠さずすぐ口にするの」お母さんの口からは息子の自慢話が出て、会話は平行線を辿り始めた。お母さんは少し話題をずらし、クラスの父兄の集まりについて私の意見を聞いてきた。「毎週末、クラスの父兄と集まって、朝食を一緒にとったり、お喋りをしたり、もっとした方がいいと思うの。子供たちももっと仲良くなるし、子供たちの情報を交換したり、いいことでしょ？」私は、アンタルヤ・スタイルというのか、トルコのソスィエテ（上流階級）と言われる人たちの、このような派手な社交のスタイルには、今でもなかなか馴染めないでいた。ビーチパーク内のレストランとか、郊外の牧場レストランとか、１回の朝食に１人１０ＹＴＬ（約８００円）もかかる場所で、毎週のように集まっておしゃべりするなんて、私には退屈すぎるし、建築工事に神経を集中させている今は、時間もお金ももったいない。とはいえ、そんな本音は間違っても口にできないので、私は神妙に耳を傾けることしかできなかった。用事があるとかで、９時になり元気くんと友達を連れてお母さんが帰ると、こらえていたあくびが次々と出て、偏頭痛もますます酷くなっていった。エジェのご両親が迎えに現れたのは、１０時を回ってからだった。疲労困憊し、眠くて眠くて仕方ないのに、頭の芯が冴えていてなかなか熟睡に至らぬ一夜だった。・・・　今朝、朝食を摂っているとき、エミが驚くことを口にした。「ナナは元気くんが好きになったんだって」ええっ！？そうなの～？「そうなの？ナナ」するとナナは、にっこりと満面の笑みで「そうよ～。私、元気くんが好きになっちゃった！」なんともはや！さすが、ちょっと見のいい男の子に弱いナナなだけのことはある。「ねえ、エミ。それ、元気くんの耳元で教えてやったら？どんな顔するかなあ？」私は、ちょっとイジワルな気分になり、無性に可笑しくて仕方なかった。（おわり）

  2005/04/09

• 春の訪問客（２）いきなり、元気くん登場！？

  電話が鳴った。聞いたことのあるような、ないような声。「ベリルだけど・・・」「ハイ？ええっと・・？」名前を聞いても、すぐには誰か思い浮かばない。「○○の母だけど・・・」「ええっと・・・どなたの・・・？」まだよく聞き取れなかった私は、訊きかえす。「元気の母です」えっ！ゲゲッ！元気くんのお母さん？一体なんの用だろう？ちょっと不安になる私。元気くんといえば、つい先日も娘に指輪を持ってきた男の子。しかも、お母さんの後押しつき。（元気くんとの過去の経緯は、３月１３日の日記と４月１日の日記をご覧ください）お決まりの挨拶を交わしたあとで、元気くんのお母さんはさっそく本題に入った。「エジェが来るんですってねえ？」「ええ。もう来て、今庭で遊んでいるところだけど？」「でねえ。元気も来たいって言ってるの。都合はいかがかしら？」ええっ～！ここに来るのお～？元気くんが～？内心の戸惑いを隠し、朗らかに振舞う私。だって、現にエジェが遊びに来てるんだから、元気くんだけダメだなんて言えるわけがない。「皆んなお庭で遊んでるから、じゃあ、一緒に遊ばせたらどうかしら。それから、元気くんもここで一緒に夕食を食べたら？」「オーケー。じゃあ、私は元気を庭に置いていくから、後で迎えに来るわね」そう話がまとまって、電話が切れた。あ～あ。とうとうここまでやって来るのか～！せっかくホッとしたところだったのに、また落ちつかなくなった。とりあえず、庭で遊んでいる娘たちに、ひとこと言っておく必要があるかも。エレベーターで下におりた私は、娘を呼んで「元気くんが来るんだって」と伝えた。「ええっ？何よ～」元気くんのことを鼻にもかけていないらしい娘は、私同様「何で来るんだろう？」というような反応をしてる。私は、突然現れる元気くんがからかわれたりしないよう、念のためエジェやオズレムにも言っておいた。が、こちらのふたりの方が反応は敏感だった。子供ならでは反応で、頬をピンクに染めながら、くすくす笑いを始めるふたり。同じ学校の４年生であるオズレムが知ってるわけないと思ったのに、聞けば元気くんがエミのことを好きなことは、４年生にまで知られているらしいのだ。エミのことをからかうふたり。ふたりを追いかけるエミ。言いに来て良かったのか悪かったのか知らないけど、子供らしくていいわ、なんて暢気に眺める私だった。３０分ほどしてバルコンから庭を見下ろすと、いつのまにか元気くんがやってきていた。が、ポツンと立ち尽くして、なかなか遊びに入れてもらえない様子。一応、元気くんのことを説明しておくと、身長も高いし、鼻が高くて、平均的に見るとかなりハンサムな部類に入る。お母さんの趣味だろうが、ジーンズの上下に白いＴシャツで、一見爽やかジャニーズ系なんである。が、私の趣味じゃあないのだ。ツンと尖った鼻に、性格のキツそうな顔立ちで、私の嫌いなタイプなんだなあ。これが。娘にも「元気くんって、カッコイイ？」と聞いても、「超コミック！」というだけ。それに元気くんの学校での様子などを聞くと、先生にヤジを飛ばして泣かすは、遅刻魔だはで、意外にひねくれたタイプらしい。娘の今までに気に入った男の子のタイプを総合すると、顔は甘いハンサム系で、優等生。元気くんが娘のタイプからちょっと外れていることに、私は安心していた。ところで、食事の量は足りるんだろうか？元気くんが加わると、全部で子供が５人。家の娘たちは小食だからいいが、小学４年生で体重５０ｋｇにもなるオズレムは、極め付きの偏食ながら、マカルナだけはよく食べる。私は急遽、冷凍庫から鶏肉を引っ張り出し、解凍して、ポテトとのローストを追加することにした。夏時間になり、日が随分と長くなったので、子供たちが帰ってきたのは７時過ぎてからだった。ちょっと遠慮気味の元気くんは、なぜか下の娘ナナに引っ張られて子供部屋へ直行。どうやら、意中のエミより妹ナナの方に気に入られてしまったようだ。さて、食事の方は？少しでも栄養バランスよくと、玉ねぎ、人参、グリンピースを入れてたっぷりと作ったミートソースだが、家の娘ふたりを除き、味見もしてもらえない有様。トルコでマカルナ（パスタの総称）というと、茹で上がったものにバターを絡めただけが普通。せいぜいそれにヨーグルトをかけたり、ケチャップをかけたりして食べられる。レストランでも、どん、とケチャップが出て来るほどである。トマトソースやサルチャ（トマトや赤ピーマンのペースト）で炒めた挽肉が少量載れば、もう上等。なので、エジェはニンニク入りのヨーグルトをかけて２杯お代わり。オズレムもケチャップをかけて２杯お代わり。そして元気くんは？なんと。ケチャップとマヨネーズをかけるのだという。それらのお陰でようやく１杯平らげた。悪いけど、それを見て「元気くんはダメ！」って烙印押しちゃったよ。トルコではどこの子も似たり寄ったりだけど、彼もまた味覚音痴、偏食に育てられちゃってる典型。エジェもオズレムも元気くんも、甘～い人参サラダやミックスサラダ、ポテトのローストにさえ見向きもしない。煮野菜嫌いのナナでさえ、人参サラダや新鮮野菜のサラダは食べるのに・・・。子供たちが食事を始めたところで、元気くんのお母さんから「あと３０分で行くわ」と電話が入っていた。そして子供たちが食事を済ませ、今度は私の番とばかりに、やっと落ち着いて食べようと思ったところへチャイム。元気くんのお母さんが、友達だという女性を連れて登場した。（つづく）

  2005/04/09

• 春の訪問客（１）エジェの来訪で大掃除

  昨夜は、偏頭痛がひどかった。以前はなかったことだが、先月末の義兄一行の突然の訪問のときにも、同じような偏頭痛が起きたので、ストレス性のものかな、とも思う。来客があると、普段接待になれない私は、いろいろと心配したり気を回したりして、ストレスを溜めてしまうのだろう。・・・昨日は、上の娘エミの同じクラスの大の仲良し、エジェが我が家に初めて遊びにやって来た。２週間前の金曜日、エミがエジェのお家に遊びに行ったので、そのお返しである。子供の友達、それもたったひとりなので、気を遣う必要もないはずなのだが、普段から物を溜め込む上に、片付けの苦手な私のこと、ふと見ればやっぱり家中が酷い状態になっている。もちろん、私のささやかな努力をことごとく無駄に帰してしまうふたりの悪ガキ（娘たち）なしには、ここまで無残な状態にはならないのだが・・・。エジェの目とか、迎えに来たエジェのご両親の目を考えると、ついつい頑張らざるをえなくなる。で、もう３日も前から、徹底的な片付けを始めたのだ。まずは子供部屋から、ソファーの下から裏から棚の中から、子供たちが知らず知らず突っ込んだゴミ・ガラクタ・学用品・脱いだ服や靴下・使用済みの物どもを引っ張り出し、まだ使うもの・使えるもの、洗うもの、捨てるものを仕分ける。ゴミは大きなビニール袋で２袋分になった。それから、キッチンの一角、私のＰＣコーナー周辺にうず高く積まれた新聞の山。読んだあとクリッピングをする目的で溜めてあるのだが、ついつい積読になり、もう半年分もの新聞が溜まりに溜まっていたのだ。半ば変色しかかった新聞。ここまでくると手がつけられない。まだ読む気は十分あるのだが、時間が追いつかないのだ。結局、思い切ってゴミに出すことにした。それから、領収書の類。溜まったファックス用紙、学校からの連絡文など。これらも最近のものだけ残して捨てる。そしてサロンから居間からキッチンから、バスルーム、ベッドルームまで。すべての部屋に掃除機をかけ、雑巾がけをする。鏡を拭き清め、子供の汚した机やテーブルをジフで磨き、洗面台を洗い清める。窓ガラス拭きやカーテンの洗濯、バルコン洗いは間に合わなかったが、家の中はとりあえず来客があっても恥ずかしくない程度には片付いた。食事は、子供向けを考えればいいので、気が楽である。エミに言って、エジェの好みをあらかじめ訊いてもらったら、長いマカルナ（スパゲッティのこと）にソース、ニンニク入りのヨーグルトがあればいいと。それなら簡単、カンタン！じゃあ、それにニンジンをおろしたサラダと、普通のサラダでも添えれば十分。あとは、おやつとしてバナナ＆チョコレートチップ入りのケーキを焼けばオーケー。ケーキを焼き終わったあと、子供たちを迎えに学校へ。アンタルヤから車で４０分はかかるベレッキに住むエジェは、今日ばかりはセルビス（通学バス）には乗らず、徒歩で我が家へ。エジェのために、今日は、同じマンションの遊び仲間、４年生のオズレムも我が家で一緒に過ごすことになっている。服を着替え、おやつのケーキを食べ終えると、エミ、ナナ、エジェ、オズレムの４人は、早速マンションの庭へと下りていった。夕食の支度までは、少し間がある。エジェのお母さんに一報をした後、私はようやくホッと一息ついて、ＰＣの前に座り始めたところだった。　（つづく）

  2005/04/09

• ツヨシくんの内緒話＆指輪事件ふたたび

  もう１０日も前の話で恐縮だが、それはまだ、夫がアンタルヤに居た先週の火曜日のこと。学校に娘たちを迎えに行って戻った夫が、「まいったよ～」という顔で、私に報告した。夫「ほら、いただろ。朝食会の時、お父さんが息子はエミちゃんのことが好きで・・・って言ったり、お母さんがエミを抱っこしてた男の子」私「ツヨシくんのこと？」夫「そう、そのツヨシくんが、帰りがけに、“耳打ちしたいことがあるんだけど”って言うんだよ。“だけど、絶対にエミちゃんやミドリ小母さんには内緒だよ”って。それで、何を言うかと思ったら、“僕はエミちゃんに夢中なんだ”って。まったくビックリしたよ～」私も目を丸くする。よりによって、一番「危険」な父親にそんなこと言うなんて、まだまだ無邪気な子供だからこそできる芸当だわねえ・・・。大きな男の子だったら、ぶっ飛ばされたっておかしくないのに・・・。まあでも、耳打ちされるくらい可愛いものではないか。と、その時はそれで話が終わったのだ。・・・それから１週間。夫が日本へ発ち、またも私ひとりで娘たちを学校へ送り迎えする日々が始まった。そんな今週の火曜日。学校を出て家路を急ぐ私たちを、車の陰から出てきたツヨシくんが呼び止める。「ミドリ小母さん、耳打ちしたいことがあるんだけど・・・」私はそれを聞いたとたん、ゾクゾクっとして、慌てて両手を横に振った。「い、いいえっ。聞きたくないの」そう言い残すと、ずんずんと家路を急いだ私・・・。ごめんね、ツヨシくん。でも、疲れてたから、とてもあなたの「愛の告白」を聞く元気はなかったのよ。・・・その次の日・・・。エミと下の娘が喧嘩をしている。そのうち、エミが私のところへ訴えにやって来た。エミ「ナナ（下の娘、仮名）が指輪を取った～！」私「指輪ってなあに？」ナナの手を見ると、中指に見慣れない華奢な指輪がはまっていた。シルバー風で、間に白、トルコブルー、紺色のビーズが嵌め込まれている。私「なかなか素敵じゃない。でも、これどうしたの？誰かにもらったの？」エミは、「エジェにもらった」と言う。エジェは1年生の時からの友だちで、クラスに女の子がたった３人しかいない状況で、今では一番仲の良い友だちなのである。先週金曜日も、わざわざベレッキにあるエジェの家にお呼ばれに行ってきたばかり。本当にくれたのなら、まあいいかなあ。本物ではなさそうだし・・・。私はそう思うと、すぐにこの指輪のことは忘れてしまった。・・・5月に行われるスヌフ・ギュニュ（＝学年の日。つまり、一年の成果を披露する発表会）のことで、父兄の会合がもたれた今日。英語のプログラムについて英語教師から説明が行われている最中、一人おいて右隣に座っていた元気くんのお母さんと、なぜか突然目が合った。いや、もしかしたら、元気くんのお母さんが目配せしたからかもしれない。お母さん「エミちゃん、指輪あなたに見せた？」私「えっ？指輪って？」お母さん「あらっ！見せなかったの？持って帰ったはずだけど。この前、元気とミグロスに一緒に買いに行ったのよお～」ええっーー！指輪って、もしや、あの指輪！？お母さん「中に、白とかブルーのビーズがあってね・・・」そうだ！間違いない。私「エミは、エジェにもらったって言ってたんだけど・・・・。あなたたちからもらったのね？」お母さんは、そうよ～と満足げな顔で頷く。ふと気付くと、皆がこっちを注目しているではないか！英語教師も、私たちの方をチラリと見ながら、一層大きな声を張り上げて説明しているところだった。「ごめんなさーーい！！」ああーー！（恥）ついつい興奮して、大きな声を上げてしまったではないか。それに、反対側に座っているツヨシくんのお母さんが、心なしか睨んでいる。「はは～ん。妬いてるわねえ～」実は母親どうし結構仲がいいだけに、元気くんのお母さんは、ツヨシくんのお母さんに気軽な調子でそんなヤジまで飛ばす。（しかし、父兄会合の最中だぞ！）私は、もう！このふたり、何考えてるのよ～！と言いたい気分で一杯。なんとか娘の気に入られようと、片方が指輪を買ってくれば（前回の指輪事件参照）、もう片方も指輪を買ってくる。いい加減にせい～！とにかく、そう聞けば、あの指輪も放っておけない。月曜には必ず娘に指輪を返させないと。私は、娘たちが、特に下の娘の方が指輪を失くしてしまってなければいいがと、ちょっと不安だった。

  2005/04/01

• 娘が一枚上だった。。。【後日談】

  昨夜、ベッドで眠りにつく前に聞かせてくれた話。元気くんが、昨日娘にこう言ったそうだ。「ツヨシが、エミちゃんと結婚するって言うんだ。僕だって、エミちゃんと結婚するつもりだよ」娘は、それにこう答えたそうだ。「夢で見れるわよ」我が娘ながら、よく言った！と感心。私がこの年には、そんな浮いた話もなかったが、あったとしても、下を向いてモジモジするのが関の山だったろう。ふたりとも、娘の歓心を買おうと一生懸命なのだが、あいにく娘の心を掴むほどのハンサム・ボーイでも優等生でもないのが救いである。そうそう。これからも、その調子で軽くあしらっておくれ！娘よ。

  2005/03/17

• 朝食会で、またもやトルコ母の姑根性を見た!

  基礎工事が重要な局面にさしかかっている今、私としては、日曜の今日も現場に詰めていたかった。しかし、上の娘はもう絶対行きたくない、と愚痴る。野の花を摘んだり、てんとう虫を見つけては喜べる年頃の下の娘と違って、小２になる上の娘は、現場に足を踏み入れようとしては私に追い払われ、挙句は退屈だ～、早く家に帰ろうよ～と、ごねるごねる。おまけに今日は、上の娘のクラスの２度目の朝食会が予定されていた。「現場に行かなくちゃいけないから、朝食会は行けないよ」と告げると、ふて寝状態。「どうせ行けないんだったら、いいよ！もう。私はどこにも行かない！家で留守番してるから！」「でも、お昼ごはんはどうするの？ひとりで食べられないでしょう？」というと、「ご飯なんか、食べない！」と、こんな調子である。私は、せっかくの土日まで現場に連れて行かれる可哀相な娘たちのために、両方を同時にこなそうと考えた。朝一番、８時ごろに家を出て、まずは現場に顔を出す。現場までは、ミニバスで片道３０分、徒歩１０分あれば着けるから、現場に３０～４０分はいられる。昨日の進行状況を確かめ、現場監督と顔を合わせるには十分だ。そして、向こうを９時半に出れば、１０時１５分には自宅に戻れるし、１０時半の集合にも間に合わせることが出来る。朝食会が早く終わったら、それこそ子供たちを留守番させて、カレイチに出掛けてもいいじゃないか。「もし目が覚めたとき、私が居なくても心配しないでね。カレイチの現場に行ってるから。私が帰ってくるまで、服を着替えて、ちゃんと支度しといてね」夜寝る前、私は上の娘にそう言っておいた。・・・７時過ぎに目が覚めた私は、ベッドの中でどうしようかずっと考えていた。本当は、私なんか居ても居なくても同じ。工事はちゃんと進んでいる。私がひとりで気張って、立ち会っているだけじゃないか。現場の立会いを優先するばかりに、子供たちに悲しい思いをさせるのは、私の本望ではないのだし・・・。そして結局、カレイチに出掛けるのは中止し、学校の朝食会に出掛けることにした。朝食会の場所は、昨年１２月の前回と同じギョズレメジ。（※ギョズレメジとは、ギョズレメというトルコ風のクレープなどを食べさせる店。詳しくは、前回の朝食会の様子をご覧ください）１回目に比べると人数は減り、子供が７人、大人が９人のたった１６人である。テーブルを３つ横に並べて、和やかな調子で朝食が始まり、いろいろな話題に花が咲く。やがて、話題は上の娘のことに。母１「うちの子は、家でエミちゃん（娘のこと。もちろん仮名）の名前をよく出してくるわ」母２「うちは上の子がガールフレンドとか連れてくるでしょ？負けずに、僕にも外国人のガールフレンドがいるよって、張り合って・・・」先生「可愛いし、勉強家だから、男の子はみんな、エミちゃんのことが気になってるみたいよ」私は、苦笑いしながらお母さん方の話を聞いている。私「女の子が、たった３人だから・・・。先生、クラスにもっと女の子を入れてくださいよ」と、矛先を先生の方に振る。そのうち、ツヨシくん（仮名）のお母さんが、おもむろに私に質問してきた。「ねえ。エミちゃん、ツヨシのこと、何か言ってない？」私は、内心「来たか～」と身構えた。ツヨシくんが娘のことを好きなのは、今までも耳がタコになるほど聞かされている。なにより、お母さん自身が娘を気に入ってるみたいで、前回の朝食会でも、別れ際に娘を抱き上げてキスを雨のように降らせるのを見て、私たち夫婦はぶっ飛んだものだった。その後、ツヨシくんが学校に指輪を持ってきて娘に見せたという一件に至っては、いったい今から何を考えてるんだろう？と、お母さんの意図を怪しんでいたのである。私は、相手の反応を見ながら、控えめに答える。「何も言ってないけれど・・・・」「全然？」お母さんは、意外というか、少しガッカリしたような様子。「そう・・・もう少しスマートだったら、とは」「オーケー。分かったわ。ツヨシによ～く言っとかなくちゃ！」私？？すると、今度は元気くん（仮名）のお母さんが乗り出した。「元気のことは、何も言ってない？」「いいえ。何も」「本当に？元気ガッカリするわ。もうちょっとハッパかけとかなくちゃ！」私？？？そういえば・・・「今思い出したけど、前に文化ホールで発表会か何かがあったとき、隣に座った元気くんに手を握られたって言ってたわ」お母さんは、満足げに頷いている。すると、ツヨシくんのお母さんが、聞き捨てならないという風に身を乗り出す。私はお母さんに、今ならと、ツヨシくんの指輪事件のことを訊いてみた。「前に、ツヨシくんが学校に指輪を持ってきて、エミに見せたらしいけど、あれはエミに、って持ってきたの？」お母さんは頷きながら、「そうよ。どうして？」「いえね。私たち・・・いえ、父親がすごく怒ってね」「どうして？」そう問い返されて、私は言いよどむ。「いえね。まだ早いんじゃあ・・・と」二の句が告げなくなっている私を尻目に、またもや元気くんのお母さんが身を乗り出す。「なになに？何だって？じゃあ、こっちももっと頑張らなくちゃ！」私は、「このお母さんたち、いったい何考えてるんだろう～？？？」と訝しむばかり。まだ小学校２年生だというのに、今から将来のお嫁さん候補としてツバでもつけようというのだろうか？まさか、今から許婚（古い！）にでもしようっていうんじゃないだろうなあ・・・？トルコのお母さん方って恐ろしい・・・。外見はすっかり現代風のママなのに、どうかすると姑根性丸出しだったりして。南無阿弥陀仏。。。私は、どうかこれ以上関わりあいになりませんようにと、神仏に祈願でもしたくなってしまった。

  2005/03/13

• カルネ・ギュニュ（通知表の日）＆シュバット・ターティリ（２月休暇）

  昨日、１４日金曜日をもって前期の授業が終了し、カルネ（通知表）をもらった娘たち。下の娘にとっては、初めてもらう通知表でもある。トルコの小中学校、高校では、毎年１月の２０日頃から、前期と後期を隔てる２週間の休暇に入るが、これをシュバット・ターティリ（２月休暇）とかヤルユル・ターティリ（半年休暇）と呼んでいる。今年はクルバン・バイラム（犠牲祭）が２０日から始まるため、当初は１９日水曜日がカルネ・ギュニュと聞いていたのだが、週半ばで中途半端なことと、トルコ東部では厳しい寒さが続いていることなどに鑑み、国民教育省が休暇の開始を早めるよう急遽決断を下した。お陰で、今年はなんと２月６日まで丸々３週間の長期休暇となった。といっても、急に休暇の開始を宣言された親たちの方は、そうそう穏やかではいられないのではなかろうか？仕事を持たない私でさえ、休暇が始まる前に「子供抜きで」済ませておかねばならない用事がいくつかあったのだが、「カルネ・ギュニュが１４日になるかもしれない」と聞かされたのはつい前日のことで、正直戸惑った。３週間もの長い休暇、どうやって過ごそうか、どこに出掛けようか。どうやって子供たちの相手をしたりご機嫌を取ったり、勉強や手伝いをさせるか。用事がある時に子どもたちをどうするか、隣人に預けるか、親戚に来てもらうか、用事先にまで連れて行くか。共働き家庭ならば、どうやっても誰か面倒を見れる人間を探さなければならない。どの親御さんも、置かれた条件に多少の違いはあれ、そんな悩みを抱えているに違いない。毎年、父親が不在のため遠出もできず、なんとなく毎日を過ごして終わることの多い私たちだが、今年は幸いなことに２７日には夫が帰ってくるので、１０日ほどを一緒に過ごすことができそうだ。カレイチの地所での基礎工事が始まるので、遠出はしたくともできぬが、父親が居るというだけで、娘たちには「ハレ」の日々になる。それに、週末を使っての１泊温泉旅行くらいはできるかもしれないと、今から娘たちは期待している。とりあえず休暇第１日目の今日は、約束通り「ご褒美」を買いに、いつものミグロス・ショッピングセンターまで出掛けることにした。私の子供の頃など、良い成績を取って帰ったからといって、なにひとつ褒美などもらった覚えはないが、少なくともこの辺りでは、カルネをもらって帰ると「半年よく頑張ったね」という意味を込めてか、「ご褒美」をもらう子供たちが多いのだ。昨日だって、まだ授業が終わっていないのに、さっさとカルネだけもらって、その足でミグロスに行って欲しい物を買ってもらったり、映画を観させてもらったり、ハンバーガーを食べさせてもらったりという子供たちが結構居た。時代変われば、所変われば、である。「全部５だったら、ご褒美買ってもらえるんでしょ？」上の娘も、１週間ほど前から、そんな打診をし始めた。１年生の時は確かに５をもらってきていたが、２年になってから算数に結構苦労していたので、「算数は４、もしかしたら３かもよ」と娘に正直に言うと、娘もそうかもしれないと頷く。「まあね。全部５ならね」そう曖昧にほのめかしておいたのだが、意外にも全部５で、結局約束を果たさねばいけない羽目になった。上の娘に買ってやるなら、当然下の娘にも必要。記述式の通知表をもらっている下の娘も、思っていたより良い評価が書かれていたので、結局のところ、ふたり揃ってのご褒美である。つい木曜まで汗ばむような陽気の続いていたアンタルヤだが、今日は一転氷雨のそぼふる寒い１日となった。気温も１０℃も下がり、吐く息が白い。まずはトイザラスで、ふたりともオシャレ・グッズを選ぶ。ピンク＆ロマンティック大好きの下の娘はピンクのパーティーバッグ。カッコ付けるのが好きな上の娘はドゥーメ（刺青用シール）入りの化粧グッズである。その後で、前から上の娘には約束していた日記帳も買ってやる。最後に、マクドナルドのハンバーガーで終わり。プレゼント＆ハンバーガーのダブル・サービスは、今ではすっかり、こどもの日とか、こんな日の定番になってしまった。さて、来週は映画にでも連れて行くか。金曜からトルコでも『イナヌルマズ・アイレ（Ｍr.インクレディブル）』の公開が始まっていて、娘たちからせがまれているのだ。個人的には、どちらかというと『ポーラー・エクスプレス』の方が好みなのだが・・・。

  2005/01/15

• 

  乗馬センターで、今度こそ懇親会成立**画像あり

  結局、人数が集まらずにキャンセルになったという前回の懇親会から早３ヶ月。下の娘のクラスでは、発表会やら何やらで頻繁に親同士が顔を合わせているので、「今さら」の感がないではないものの、とかくおしゃべり好きなトルコ女性たち。学校という公の空間を離れた場所で、担任教師も含めて打ち解けてゆっくり話す機会を作ろうというのが、この集まりの目的。今週になって急に連絡が届いた。日時は、本日８日土曜日。学校前に１０時に集合。手紙には行き先は一切書いてなかったが、娘の話では牧場とのことだったので、以前スヌフ・アンネスィ（クラス・マザー）であるＳちゃんのお母さんが口にしていた、新しい乗馬センターのことだろうと分かった。娘たちの学校からなら、車で約１０分。オレンジ畑の間に、自家で肉を解体し、捌いた新鮮な肉をテーブルの端で焼いて食べさせてくれるオジャクバシュ・スタイルの大型ケバブ・レストランが数多く点在する地域がある。チャクルラルと呼ばれるその地域のボーア・チャイ（川）沿いに、目指す『エヴェレスト乗馬センター（EVEREST BINICILIK MERKEZI）』はある。アンタルヤ郊外とベレッキ、ケメルなどの周辺地域では、ここ１～２年の間に、一気に牧場トゥーリズム・ブームとでもいうべき新たなブームが湧き起こり、広大な土地を利用して、馬場と小さな動物園、レストランなどを組み合わせたレクリエーション施設が数多く作られるようになった。昨年末に朝食をと出掛けた『オルフェ・チフトゥリッキ（ORFE CIFTLIK）』もその一つだが、エヴェレスト乗馬センターは今日が始めて。 元々オレンジ畑であったところを切り開いて厩舎や馬場、レストランが作ってあるらしく、オレンジの木々の間に設けられたチャルダック（あずまや）やハンモックも気持ち良さそう。おまけに、そんなオレンジの木々の下をアヒルや鴨、鶏、七面鳥などが自由に駆け回っていて、子供たちの格好の遊び相手になる。（追いかけられているのは、可哀相だったが・・・）遥か遠くには雪を抱いた山々も見え、なぜかこの辺り一帯は、風も吹きつけず、晴れ渡った青空の下、日差しがジリジリと額を焼いて、暑いほどだった。ここで提供される朝食セットやハンバーガーなどは、ごく普通のものだったが、全体につけられている値段もお手頃で、なにより近いのが有り難い。ギョズレメ屋（ギョズレメを食べさせる場所）と、牧場レストランの良いところをミックスさせたようなアンタルヤの新スポットなのであった。

  2005/01/08

• 【第２弾】年の瀬もいろいろ有りて・・・・娘の恋模様

  昨日あった、ちょっと驚くエピソードから始めよう。夕方キッチンに居る私のところに上の娘がやってきて、少しばかり恥ずかしそうに笑いながら報告した。「ツヨシくん（仮名）って、私のこと好きでしょう？でしょう？」私は、今度は何を言い出すかと思って、わずかに身構える。「でねえ～、今日私に指輪を持ってきて見せたの」なに～い！？ゆ～び～わ～！？過去にも、クラスの男の子からほっぺにキスされたとか、手を握られたとか、いろいろ聞かされてきた私も、さすがにこれには驚いた。指輪だなんて、いったい何を考えてるんだ！？だいたい、親が知らないわけないだろうし、親も容認しているというのだろうか！？夫に聞かせたら、きっと真っ赤になって怒るだろうな・・・。いちどきに、さまざまな考えが浮かぶ。「それ、ババ（＝パパ）には言わない方がいいよ。きっとすごく怒るから」とりあえず、その場を収拾するために、そう言って娘の口を閉じさせた。ところが、夕食のテーブルを囲んでいる時、娘が「ババに言ってもいい？」と切り出した。私も、本当のところは夫に言いたくてムズムズしていたから、「話してごらん」と促す。案の定、夫はものすごく嫌そうな顔。「なにそれ～！？やめろよ！！何言ってんだよ！！まだ早すぎる！！」夫は、朝食会でツヨシくんのお父さんから言われたこととか、お母さんが帰りがけに娘を抱き上げて、まるで我が子のようにほっぺにキスの雨を降らすところを見て驚いた話を、また持ち出してきた。「お父さんまで言うんだよ、ボクに。ツヨシはエミちゃん（娘の仮名）が好きだって。言ったんだよ、困るって」「あれ、見たでしょ？お母さんが、ギュウって抱きしめて、一杯キスしたところ。エミのこと相当気に入ってるみたいだけど、気分悪いよ」娘は、そんな父親の様子を笑いながら見ている。「私が勉強家だし、美人だからだって」と、瞼を伏せながら、なぜか娘が言い訳をする。私は、話の方向を少し変えてみた。「で、あなたもツヨシくんのこと、好きなの？」娘は、ためらいもせず否定した。「ううん。だってシシマン（太っちょ）だから」私は、顔立ちはなかなか端正なのに、やや肉付きのいいツヨシくんの姿を思い浮かべながら、娘の言葉に少しは安堵していた。「ところで指輪って、どんな指輪なの？」「え～っと、４つに分かれてて、色が・・・う～ん。うまく説明できない」まさか本物ではあるまいが、オモチャといえども、男の子が女の子に贈る指輪には、相応の意味が込められることを知っていて、くれようとしているのだろうか？大体、いくらオモチャだからって、小学２年生が親に内緒でそんな買い物ができるはずがない。まさかとは思うが、親が「そうしなさい」なんて、仕向けてるんじゃないだろうなあ・・・・と、私はいつまでも気になって仕方なかった。こんな時、世の親御さんたちはどう子供に対処してらっしゃるのだろうか。「今度、また指輪を出してきても、要らないって言って、断ってね。もらってきちゃあダメよ」「それから、困った時は、先生に必ず報告しなさい」その程度の陳腐なアドバイスしかできない自分が情けなかったが、まさかまだ７歳の娘に、指輪を贈るだなんていう話が出てきたこと自体、まるきり予期しえぬことだったので、心の準備ができてなかったのが正直なところ。これから娘たちが成長するに連れ、戸惑うことが増えていくに違いない。親としては、その時になって慌てないよう、今から覚悟していかねばなと、思うことしきりだった。- * - * - * - * -この年の瀬、アンタルヤに居られるのも今日１日となった。昨夜、結局遅くまで日記にかかってしまったので、今日は朝一番にＯＳＹＭに送るディレクチェ（請願書）をつくる。それから、遠く離れた日本やドイツなどに住む友人たちに、新年の挨拶メールを送っておく。その中には、バリ島に家族や経営するコテージを持つ友人もいて、数日前に無事を確認して、ホッと安心したところである。大被害をもたらした今回の津波で、バリ島は地理的な関係から幸いにも被害が少なかったのだそうだ。夫の方も朝一番から、車の修理工場に出掛けている。わずかに開いたまま動かなくなった窓や、猛スピードで動き続けるワイパーを直してもらうためである。明日の目的地エスキシェヒルまでは、約４５０ｋｍ。我が家のオンボロワゴンでは、休憩をとりながら７～８時間のドライブとなる。途中で不具合が生じないよう、長距離ドライブの前には、念には念を入れて点検してもらわねば。オイル交換をし、ガソリンも満タンにして夫が帰ってくるのを待って、すでに出来上がっているディレクチェの文章をチェックしてもらい、ＦＡＸで送れば、ひと仕事終わり。すると、タイミングよくパンジュール屋もやって来た。まず先に、昨夜の強風で発覚した窓の不具合を直してもらい、最後に残された居間のパンジュールの取り付けを終えてもらうと、ようやく安心して家を留守にできる準備ができた。- * - * - * - * -簡単に残り物で昼食を済ませると、夫に送ってもらい、カレイチに出掛けた。今日は、アンタルヤ在住の日本人女性ふたりと、あるものの受け渡しのために待ち合わせがしてあるのである。その「あるもの」とは、トルコに長期滞在を希望する外国人に発行される滞在許可証の取得・更新時にかかる、不当なまでに高額な申請料金の是正を求める嘆願書である。トルコの滞在許可証申請料の高額振りは、過去の日記（９月１６日の日記、１１月８日の日記、１１月９日の日記）でも繰り返し取り上げてきたことだが、ここに至り、トルコ内務省に提出するための嘆願用紙を作成し、事実上署名活動を開始して下さった方が現れたのだ。私と友人とは、一もにもなくこの活動に賛同し、この１０日ほどの間に集めた約１５人分の署名を、この活動のアンタルヤにおける推進者となってくださっている女性に、本日引き渡すために出向いたのである。トルコ全体で最低２００名分の署名が必要と聞いているが、アンタルヤだけで約２０名の署名が集まるはずなので、イスタンブールやアンカラという大都市在住の日本人とそのトルコ人配偶者を合わせると、数字的には条件をクリアできることと思う。あとは、内務省がこれをどう判断するかだが、今回もし実現に至らなくても、諦めず何度も署名活動を繰り返していけば、いつか大きな山も動くのではないかと期待している。とりあえず、今回の大きな成果は、トルコに在住する日本人間のネットワークづくりの端緒が開かれたことにあるのではないだろうか。トルコ在住日本人、もしくは日本人妻メーリングリストが出来上がるのも、そう先のことではないような気がする。２００４年の仕事納めとしては、なかなかに有意義な１日であった。

  2004/12/30

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  こんな倹約教育、どこか間違ってない？

  今週１週間は、おそらくトルコ全国の学校で、「倹約・貯金とトルコの産物週間」として、さまざまな活動が行われていることと思う。倹約・貯金と、トルコの産物とがどう結びつくか、少なからず首を捻るところだが、「倹約・貯金」はお金・時間・物を大切に扱い、余計な出費を抑えましょうという趣旨、「トルコの産物」は、買い物をするなら外国製品、外国産のものではなく、トルコの製品、産物を買いましょう、それによってトルコ国内にお金を落とすようにしましょうという趣旨によるものである。今週、娘たちの学校でも、この週間を祝う催しとして、発表会とお茶会の結びついたような会合が、相次いで持たれた。火曜は上の娘のいる２年生のクラスで、木曜は下の娘のいる準備クラスで。生徒たちは、この日のために前もって予行練習を重ね、当日はそれぞれが果物に扮して、トルコ産の果物をひとつひとつ称える詩を暗唱したり、倹約を教える寸劇を見せたりしてくれるのである。そして、そんなささやかな発表会の次に待っているのが、山盛りに積み上げた果物、お菓子、ナッツ類を皆でたらふく食べること。これらのご馳走は、あらかじめ父兄に割り当てが決められたり、こんなものを持ってきてくださいとリストが配られたりして、「皆に十分行き渡る量の」提供が求められる。私は、今回２回ともクッキーを焼いて持参した。生徒が１５人だから、父兄と合わせて３０人くらいだなあ～と、ちょうど行き渡るくらいの量しか作らなかった。たっぷり余るのが目に見えているからである。トルコ人は、何につけても、少ないことをケチくさいといって嫌う。食事にしても、飲み物にしても、食べ切れずに残すくらいたっぷり盛り付け、コップの９分目くらいまで並々と注ぐのをよしとする。案の定、集まったご馳走の量ときたら、いったい何十人分なんだと思うほど。子供たちの食べ方もしかり。あれもこれもと、お皿にたっぷり盛り付けておいて、ひと口ふた口食べたらもう投げ出してしまっている。お代わりしておきながら、自分のものになったことに満足するのか、ひと口も食べないでご馳走さましている子供もいる。我が家では普段、お皿に自分で取り分けたものは、きれいに食べなさいと躾けているし、子供の食べられそうな量しか盛り付けないが、それでも食べきれなかったり、気に入らなくて残したりするのが子供。普段から、親が「ホラ食べなさい、ヤレ食べなさい」とばかりに、山ほど盛り付けた挙句、「無理して食べなくていいよ」と、簡単に残させる癖をつけてしまっていたら、どんな場合でも子供はそれが普通だと思ってしまうだろう。テーブルに山のように残っているフルーツやお菓子の数々、お皿に汚らしく残されたケーキやお菓子の山を見るにつけ、頭の中に疑問符が浮かぶ。忙しそうに立ち働く先生の姿を見なかったら、先生をとっ捕まえて、ひと言進言していたに違いない。倹約の価値を学ぶための機会であるはずなのに、まるで飽食を奨励するかのようなこんな催しは、はなから間違ってないだろうか？と。せめて、「お腹一杯食べなさい」「あれも食べなさい、これも食べなさい」ではなく、「食べ物を残さないよう、大切に味わって食べましょう」と教える必要があるのではないだろうか？トルコの子供たちが、あまりに豪快に食べ残しをするので、つい最近まで、トルコには「もったいない」という言葉が存在しないのかと思っていた。実はちゃんと存在しているのだが。「ギュナー（gunah）」というのがそれで、宗教的な罪にも使うことから、日本でいう「罰当たり」的な意味合いがあるのだと思う。それにもかかわらず、食べ残しをする子供を「ギュナー」といって叱る親に、私は今までほとんど出会ったことがない。せめて、この「倹約・貯金とトルコの産物週間」くらいは、食べ物の大切さ、食べ残しをしない習慣を教えればいいのにと思う。ほんと、豪華趣味で見栄っ張りで、何でも形ばかりのトルコ人らしい催しではあるが。集まったご馳走の数々（これで３分の２くらい）これぞ、飽食の証では？

  2004/12/17

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  続・私たち一家の『教師たちの日』**画像あり

  （※この文章は、昨日１１月２４日の日記の続きです）今日ばかりは、登校する生徒たちの様子も、なんとなくウキウキ、ドキドキと落ち着かないし、校舎全体に華やかな色彩が溢れている。花束を持っている子。プレゼントの包みを抱えている子。自分で作った工作をそろりそろりと運ぶ子・・・。バラの枝をそのまま裸で手に持つ子は、商魂たくましく校門の前で店開きをしている花屋から、１本１ミリオン（約７５円）で手に入れた子。昨夜遅くにイスタンブールへの日帰り出張から帰った夫も、そんな風景を見るのは今年が初めてのようだった。私とて、未だに慣れてはいない。上の娘がこの学校に通い出して１年目は、何ひとつ覚えてないし、２年目の一昨年だって、お向かいの子供から聞かされて初めてこの日の存在を知り、慌ててプレゼントを買いに走ったほど。そんな調子だから、校門をくぐり、小学部の女性教頭Ｈ先生の姿が目に入った途端、「あ、しまった！」と自分の迂闊さに気が付いたのだった。今年着任したＨ先生は、若い女性らしい細やかな気配りと几帳面さで、トイレや食堂など校舎の隅々にまで眼を行き届かせてくれている。話す言葉は明瞭で確信に満ち、私自身、とても好感を抱いている女性なのである。それから・・・上の娘の大好きな英語の授業を担当する、明るく元気なＯ先生。あとは、上の娘がダンスのクラブと体育の授業でお世話になってる上、下の娘の大・大・大好きな美人体育教師のＴ先生も居る。しまった～！彼女たちのお花も、せめてバラの花１本ずつでもいいから、用意しておくべきだった～！私は焦った。娘たちを教室まで送り、それぞれ担任の先生に自分たちの用意したプレゼントを手渡すところを見届けると、校門前の出張花屋に急いで戻ってみた。しかし、花屋の周りには、わずかに残った花の在庫を争って、２重にも３重にも人垣が出来ていた。「もう残ってないよ。しょうがない。それにしても・・・・どうして気付かなかったのかな～」私が諦めきれずに、自分の迂闊さを呪っていると、夫は、「じゃあ、ちょっと買ってくるよ」と、私の躊躇する姿もおそらく見ていないほどの素早さで車を出し、あっというまに居なくなってしまった。私は校門前に呆然と立ちつくした。私の後では、最後のバラの花が生徒の手に公平に分配されたところだった。まんまと完売し終えた花屋は、大急ぎで店を畳むと、砂煙を上げて、見る見るうちに学校を去っていった。それから５分ほど待っただろうか。夫は４本のバラの花を持って帰ってきた。赤いバラの花１本と少々のカスミ草がクレープペーパーで包まれ、リボンが掛けてある。近所の大きな花屋から、４つ１０ミリオンで買い求めたものだった。私たちは教室の娘を呼び出し、Ｏ先生とＴ先生にと言って、２本を渡した。１本はＨ先生に。そして最後の１本は、下の娘の担任のＢ先生に渡した。B先生には、母親たちから集めたお金で、例の白バラの盛花がスヌフ・アンネスィから渡されてあったが、彼女にはやっぱり、私たちの手から直接渡したいという気持ちが強かったのだ。４本の赤いバラがきれいになくなり、夫まで巻き込んで大騒ぎをした『教師たちの日』のイベントが、これにて終了した。 - * - * - * - * -Ｂ先生は、他の生徒たちから受け取った手紙や絵同様、娘の作った“ハートの巻本”もとても喜んでくれたらしい。黒板の右端には、愛すべき生徒たちからもらった「作品」の数々が飾られている。もちろん娘の「作品」も。毎年のように花束や品物を山のように受け取っているＢ先生だが、一番嬉しいプレゼントは、やっぱりこんな生徒手作りのプレゼントなのではないかと思う。「これでいいのにねえ」黒板に飾られた可愛らしい作品群を見ながら、夫がつぶやいた。私も、これが一番だなあと思いながら、今年もプレゼント騒ぎに翻弄されてしまった自分がちょっと恥ずかしかった。　　

  2004/11/25

• 私たち一家の『教師たちの日』

  トルコでは、今日１１月２４日は、『オーレトメンレル・ギュニュ（教師たちの日）』として知られる。日頃指導を受けている先生たちへの感謝を表す日である。昨年の１１月２４日は、ラマザン・バイラム（シェケル・バイラム）の連休中にあたっていたため、特に心配をする必要もなかったのだが、平日にあたる今年は、何かしないといけないだろうな～と、先々週あたりからぼんやりと考えていた。「今週末にでも、子供たちと一緒にプレゼントを買いに行くか」と、先週もふっと頭に浮かんだのだが、親子喧嘩だの娘の病気だので、すっかり忘れてしまっていた。昨日、娘たちを学校に送って行くと、下の娘のクラスのスヌフ・アンネスィ（クラス・マザー、つまり母親代表）二人が、教室の前で私を待っていた。「昨晩、電話をしたんだけど、留守でしたね」とそのうちの一人は言う。私は、「昨晩は停電だったんですよ」と説明した。ちょうど夕食の支度を始めたところで停電となり、途中３～４回、２～３分の間点いたりはしたが、結局食事が終わるまでの約３時間、真っ暗な中、ろうそくの明かりのもとで料理と食事を済ませたのだったが、ちょうどその時間帯に電話をくれたものに違いなかった。「明日、教師たちの日でしょう？皆でお金を出し合おうと、それで電話したのよ」私は彼女の言葉を聞いてようやく、今日がその日であることを思い出したわけだが、それはおくびにも出さないで答えた。「実は、個人個人でしようと思ってたんだけど・・・・構わないですよ。それで、いくらくらい？」「１０ミリオン（約７５０円）よ。集めたお金で、お花と・・・バラ１本でもいいのよ。それとミグロスで何か探すつもり」１０ミリオンなら順当な額だし、それならそれで、悩む手間が省けていい。反対する理由もなかった。が、普段学校の送り迎えにかばんなど持たない私のポケットに、その時入っていたのは、あいにく小銭だけ。「後でいいかしら？それから・・・私も一緒に行きましょうか？」上の娘の担任教師にも何か買わないといけないし、お金を渡す必要もある。それに、何だか悪いような気がして、私は二人の顔を見ながら、同行を申し出た。「あなたが良ければ。で、用事はないの？」私は、朝食の支度がそのままになっているテーブルや洗濯物のことを思い浮かべた。「まだ残ってるので、いったん帰ってもいいかしら？」「もちろん。いずれにせよミグロスは１０時にならないと開かないし」そして私たちは、学校の校門前で１０時に待ち合わせとした。約束の時間に学校に出向くと、学校のカフェテリアでオシャベリしながら時間が来るのを待っていた二人と、さらにもう一人のスヌフ・アンネスィである、自閉症児のＳちゃんのお母さんと合流、Ｓちゃんのお母さんの車に乗ってミグロスへ向かった。ミグロスの入り口手前で店を出している花屋に立ち寄ると、なかなか素敵な盛花が目に付いた。カゴの中央に白いバラを集め、周囲を松葉などグリーンで囲い、小さな鳥の人形が刺してある。これで１５ミリオン（約１１００円）。ガラス鉢を使った一回り大きなものが２５ミリオン（約１８００円）。私たちは１５ミリオンの方に目星をつけ、ミグロスの中に入った。待ち合わせがしてあったらしく、ミグロスの入り口で、もうひとりのお母さんと合流した。まっすぐ『ｂoyner』（衣料品やキッチン用品、ギフトグッズを扱う小さいデパート）に向かうと思いきや、まだ朝食が済んでないから、「まずは座ってお茶でも」と、４人はまるで打ち合わせたかのように、一番上階のカフェテリアへ向かった。私はお腹は空いてなかったし、上の娘の担任のためのプレゼントも見たいので、４人がお茶をしている間、先に見に行ってもいいかと申し出た。すかさず、４人の中で私の一番の顔馴染みのお母さんに引き止められた。「アルカダッシュム（“私の友だち”という呼びかけ）。一緒にお茶しましょう。その後で一緒にプレゼントを見ればいいじゃない？」その言葉に負けて、３０分ほど座って、オシャベリに付き合った。その後、予定通り『ｂoyner』に着くと、４人はこれまた迷わずカスタマー・サービスのカウンターに向かっていった。どうやら、私が（聞き逃したのか）知らない間に、１００ミリオン（約７５００円）分をヘディエ・チェキ（ギフト用小切手、つまり商品券にあたるもの）に交換することに決めていたようだった。確かに、相手の好みも分からないままに、高額な商品を選定するのは難しい。自分がいいと思っても、相手が気に入らないことの方が多いはず。御主人を早くに亡くし、今年大学１年生になる息子さんを一人で育て上げ、安い給料に不満をこぼしながらも、今日まで幼児教育に２０数年を捧げてきたＢ先生には、きっと重宝する贈り物になるだろう。おかげで、私はヘディエ・チェキというものが存在するのを今回初めて知ることになり、また商品選びの手間が省けて、拍子抜けするほどだった。そして、私が一緒に来る必要も、実は全然なかったことを知った。４人と別れると、私はｂoynerやMUDO CONCEPT(インテリア・ショップ)、ミグロスなどをはしごしながら、プレゼントを物色したが、予算内で納得いく品物はなかなか見つけられなかった。ミグロスで、クラフト紙の箱に入れられたドライフラワーのブーケが１４ミリオン（約１０００円）。品は悪くないのだが、なんといっても生花の美しさには及ばない。私の頭には、入り口の花屋で見た盛花が浮かんできた。白バラのものは、彼女たちが買って行ったに違いないが、他にも大きさ、組み合わせの異なるものが、確か４～５種類はあった。下手に置物や生活用品などを贈られるよりも、自分だったら生花の方が嬉しい。私は出口を出て、花屋に戻った。意外にも、１５ミリオンの白バラはまだ残っており、その手前にあった３～４色の花を組み合わせた盛花がなくなっていた。店員に「彼女たちはここにあったのを買っていったのかしら？」と聞くと、まだ来てないよ、と言う。さては、ｂoynerで分かれた後、彼女たちはウインドウ・ショッピングでも始めたか・・・。私は、しばし迷った。まさか、私がこれを買ってしまったら・・・？私は結局、１５ミリオンの白バラを除く４種類の中から、白、濃いピンク、黄色の菊と何種類かのグリーンを組み合わせ、白いリボンを結んだものを選び、ようやくプレゼントが買えたことにほっとして、自宅に戻った。 - * - * - * - * -娘たちは、学校から帰ると、私に言われるまでもなく、それぞれに先生へのプレゼントを用意し始めた。まず「これ見て～」と、下の娘が私のところへやって来た。十枚ほどの色紙を、それぞれ異なる色が隣り合うように、端を糊付けして作ったらしい巻紙上の本ができていた。表紙には、娘の好きなハート型が、３重に重ねられて貼られている。各ページには隅の方に控えめにシールが貼ってあった。私は、その大胆な色紙使いと色使いのセンスに、我が子ながら驚いていた。「すごく綺麗！」と褒めてやると、気をよくした娘は、もっと作るんだといって居間の方へ消えていった。再び「見て、見て～」と言いながら、私の前で巻きをほどいて披露してくれた「作品」は、最初の「作品」よりもっと出来が良かった。１作目同様、色の変化が映えるように、例えばピンクの次がグリーン、その次がイエロー、その次がブルーといった風に考えて繋いであるのだが、各ページの中央には、これまたコントラストが映えるような色合いのハートが貼られていたのだ。私は目を丸くしながら、最近下の娘が手仕事に見せるセンスと技術が大きく発達していることに、驚きを隠せなかった。「これもすごく綺麗！上手にできたね～！」と素直に褒めてやる。「で、どっちを先生にあげるの？」と聞くと、気分最高の娘は、元気に「両方！」と答える。「アンネ～（＝ママ）、あれちょうだい」娘が棚の上の方を指差す。よく見ると、娘が幼稚園から持ち帰った手作り写真立ての下に、それを包んでいたラメ入りのラッピングペーパーが敷かれたままになっていた。娘はそれでプレゼントの巻本を包むつもりだった。何度か四苦八苦しながら、巻本を包み終えると、最後に表と裏に、またまた色紙を切り貫いて作ったハートを貼って、私に見せにやってきた。片側はピンクのグラデーション、反対側はブルーとグリーンという色使いである。娘のリクエストで、ハートの中央に「Ｂ先生へ。○○」と書いてやり、「早くカバンにしまっときなさい」と娘を促した。一方、宿題が終わっってから取り掛かった上の娘は、私が下の娘の「作品」を褒める声を聞いては、イライラして私を責めた。「どうして私にはアドバイスしてくれないの！？」上の娘は、教室で机に座る先生の姿を絵に描こうとしていた。色鉛筆を使った繊細な画風なのだが、なんとなく色が少なく、間が開いて寂しい。「もっと色を使ってみたら？それから、こっちにも何か書いてみたら？」その後も、何度か私のアドバイスを受けながら、下の娘が切り抜いて残った色紙を部分的に貼ったり、試行錯誤しながら遅くまでかかって娘はプレゼントの絵を仕上げた。 - * - * - * - * -(長くなりすぎたので、続きは２５日の日記に掲載します）

  2004/11/24

• トルコの小学２年生向けテスト問題。あなただったら答えられますか？

  明日はテストがあると、学校から帰ると上の娘が言った。宿題は特になく、テストの出題部分だけを勉強してくるようにとのこと。「アンネ～！手伝って～！」と言われて、娘のもとへ行き、横に座って娘の読みあげる文章に耳を傾ける。私は娘の様子を横目に見ながら、軽い驚きを隠せない。う～ん。こんな難しいの、本当に娘は分かってるんだろうか？小学校２年生の生活情報。第２単元のテーマは「共和国記念日とアタテュルク」。テスト内容は文章題のみ。以下、娘のテスト問題集をそのまま訳してご紹介してみたいと思う。　　　 - * - * - * - * -Ａ．なぜバイラムを行うか？（第１問）共和国宣言の前、私たちの国は、どのように運営されていたか？（答え）共和国宣言の前、私たちの国の名前はオスマン帝国であった。オスマン帝国の王が運営していた。王制は父から息子へと受け継がれていた。王の望みのすべて、命令のすべてが、法律と見なされた。王たちは、最後の時代、国を上手く運営できなかった。こうして、オスマン帝国は衰え始めた。（第２問）第一次世界大戦は、いつ行われたか？（答え）オスマン帝国の衰えた時代に、第一次世界大戦が始まった。この戦争にオスマン帝国も加わった。戦争は１９１４年に始まった。４年続いた。１９１８年に終わった。（第３問）オスマン帝国は、第一次世界大戦に、どんな国々と並んで加わったか？（答え）オスマン帝国はこの戦争に、ドイツ、ハンガリー、オーストリアと共に加わった。（第４問）第一次世界大戦はどのようにして終わったか？（答え）オスマン帝国と共に戦争に加わった国々は、敗北した。敗北したために、敵が私たちの祖国を占領した。私たちの国土のほとんどを、自分たちの間で分け合った。兵士たちの手にあった武器は取り上げられた。軍隊は解散させられた。（第５問）祖国が占領されたことで、ムスタファ・ケマルは何をやろうとしたか？（答え）オスマン帝国の指導者は、敵のやることに対し、何ひとつ行えなかった。ムスタファ・ケマルと仲間たちは、祖国が占領されたことをひどく悲しんだ。祖国を救うための方法を探し始めた。計画を作った。ムスタファ・ケマルは、イスタンブールを離れ、市民に状況を説明することを望んだ。救国戦争を始め、祖国を敵から救うために出発した。（第６問）救国戦争は、いつどこで始まったか？（答え）アタテュルクが、１９１９年５月１９日にサムスンに向けて出発したことに始まった。（第７問）ムスタファ・ケマルは、祖国を敵から救うために、どの地方で集会を行ったか？（答え）ムスタファ・ケマルは、サムスンの後、アマスヤ、エルズルム、シワスに行った。この町々で、集会を行った。見出せる悪い状況を市民に説明した。集会では、祖国から敵を一掃することが決定された。各地方の代表者が選ばれることが決定された。（第８問）トルコ国会は、いつどこで開催されたか？（答え）集会の後で、国民が自らを代表する国会議員を選んだ。選ばれた国会議員は、１９２０年４月２３日に、アンカラでトルコ国会を開催した。（第９問）トルコ国会の開催によって、何が行われたか？（答え）トルコ国会の開催によって、ムスタファ・ケマルが議長に選ばれた。整った軍隊が成立させられた。敵を祖国から追い出すために、ムスタファ・ケマルの指導のもとに戦争が始められた。（第１０問）救国戦争は、どのようにして終わったか？（答え）ムスタファ・ケマルの指導で行われた戦争で、トルコ軍は大きな勝利を得た。敵の軍隊は敗北した。祖国から敵は一掃された。国の現在の境界線が引かれた。トルコ国家の独立を、全世界に認めさせた。（第１１問）共和国はいつ宣言されたか？（答え）１９２３年１０月２９日に共和国が宣言された。私たちの国家の名前は、トルコ共和国となった。このために、毎年１０月２９日を共和国記念日として祝うのである。　　　 - * - * - * - * -ハアハア・・・・息切れ。ここに至るまでに、とっくに途中で諦めた方のほうが多いと思う。私は自分の小学生時代を振り返ってみた。一生懸命思い出そうとしたが、何ひとつ覚えていない。しかし、私たちが国家の成立や第一次大戦、国会開催などの歴史を初めて習ったのは、確か中学に入ってからではなかったか？でなくとも、小学校高学年に上がってからだろう。選挙や国会議員の選出などという知識も同様。このような細かい年号など、小学校２年生の時に覚えていただろうか？トルコの小学生が、満７歳にして、世界史に連なる自国の歴史を暗唱できるようになるまで勉強させられることに、ただただ驚く。私や夫が質問を読み上げ、娘が答えを述べる。ときどき自分の言葉を使いながら、すらすらと答えていく娘を見ていると、哀れにも、同時に立派にも思える。このような刷り込み式の歴史教育の是非はさておいても、祝日の由来をきちんと教わることは、自国の歴史や伝統文化と実生活との繋がりを意識させる良い学習となる気はする。さて、実はまだ少々続きがある。娘たちに出題されているのは、このような問答ばかり〆て４ページ分。ここまでお付き合いいただいた方には、いっそのこと頑張って最後までお付き合いいただこうと思う。こんな問題が出題されたら、果たしてあなたは上手く答えられるだろうか？　　　 - * - * - * - * -Ｂ．共和制指導者がもたらした改革（第１問）共和制とは、どのような行政形態か？（答え）共和制は、最も良い行政形態である。共和制行政においては、国家を司る者は市民によって選ばれる。指導者たちは、選挙によって仕事を始めることができる。（第２問）王制は、なぜ廃止されたか？（答え）王の権利には限りがなかった。言ったことがすべて法律と見なされた。人権は縮められていた。この理由のために、王制は廃止された。その代わりに、国民が自分自身で監督するという基本に耐える共和制体制が組織された。（第３問）初代大統領は誰か？（答え）共和国の宣言の後、ムスタファ・ケマルが大統領に選ばれ、初代大統領となった。１５年間、大統領をやった。（第４問）共和国宣言後、行われた改革は何々か？（答え）共和国宣言後、ムスタファ・ケマルの指導で多くの改革が行われた。この改革の主なものはこれらである：　・教育、保健、交通、工業分野での仕事が始められた。　・学校、病院、工場、道路、橋が造られた。　・長さ、重さ、時間の尺度が変えられた。メートル、キログラムのような測量単位が認められた。　・読むのが難しいアラビア語のアルファベットは廃止された。現在のラテン・アルファベットが認められた。　・女性たちに選挙、被選挙権が認められた。　・氏姓法が承認された。すべての者が、ひとつの姓を持った。ムスタファ・ケマルもアタテュルクという姓を与えられた。　・人々は、さまざまな権利と自由が与えられた。　・独立した裁判所が設立された。すべての者は、法の前に平等と見なされた。　・宗教と政府の業務を分け、政教分離の国が認められた。　・衣服において革新が行われた。（第５問）共和制とともに、人々はどのような権利と自由に恵まれたか？（答え）共和制とともに、トルコ国民は多くの人権と自由に恵まれた。いまや国民は選挙・被選挙権の持ち主となった。信仰と思想においても自由であった。誰も信仰と思想の理由で罰せられない。誰もがその考えを出版の方法で社会に届けることができる。望んだとおりに旅行ができる。好きな学校で学ぶことができる。職業の持ち主になれる。財産と不動産を手に入れることができる。以上。

  2004/11/11

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  トルコの子供たちが受ける愛国教育とは**国歌試聴あり

  今日１０月２９日は、トルコ国民にとって非常に特別な日、ジュムフリイェット・バイラム（共和国記念日）である。１９２３年１０月２９日のトルコ共和国樹立から、今年で８１年の歳月が流れたことになる。小学２年生になる上の娘は、この日に向けて毎日のように共和国をテーマとした授業を受け続けてきた。共和国誕生までの経緯と、アタテュルクの成し遂げた仕事、民主主義の意義、自由と権利の意味・内容といった、一見２年生には難しいと思える内容を、しばしば記述式の問題集を使いながら繰り返し習わされるのだ。このような授業は、アタテュルクの命日である１１月１０日と、それからの１週間である「アタテュルク週間」にかけてクライマックスを迎えることになる。娘たちはその日まで引き続き、国旗と国歌について、またアタチュルクの生涯について、徹底的に習うことになる。おそらくトルコ全国の小学生が、レベルの違いはあれ、この時期同じテーマで授業を受けているに違いない。なにより、教科書の単元がそのように組まれているのだから。それはまた、小学校準備クラスに通う下の娘も同じである。６歳児（日本でいえば５歳児）の理解力に合わせた形で教科書が作られているし、さらにいえば幼稚園児向けにさえ、アタテュルクとその生涯について説明した教科書が用意されているほどだ。学齢前や小さな学齢の子供たちは、主に絵やドラマの形でそれらを習い覚え、１１月頃に催される発表会でアタテュルクの子供時代を再現して見せたりする。こうして、毎年毎年レベルを上げながら繰り返し習うおかげで、トルコの子供たちの頭の中には共和国の理念、その意義と恩恵、それを成し遂げたアタチュルクに対する尊敬と憧憬の念、国旗と国歌に対する尊重と敬意の心が、自然にまた完璧な形で育っていくのだと思う。まさに「共和国の子供」を作り上げるのが、トルコの初等教育なのだ。 私たちはトルコに来てすぐに娘を今の学校に入れたのだが、その頃毎週月曜にだけあった朝礼で斉唱する国歌をめぐって、私は少なからず驚いた。校庭での国歌斉唱が始まろうというとき校門を出た私の目に飛び込んできたのは、校庭から流れてくる前奏曲を耳にして、道の途中ですでに直立不動の姿勢をとっている何人かの遅れた生徒の姿だった。国歌を歌い聴くときには、両手を身体の脇にピタリとつけて、直立不動となるべし。国歌に対するそんな謹厳な姿勢を間近に見たのは、実はそれが初めてだった。驚くと同時に、とまどった。私にとって、トルコ国歌はまだ自分のものではなかったから、立ち止まることも、共に歌うこともできず、居心地の悪さを覚えながら、そそくさとその場を立ち去った覚えがある。あれから月日は流れた。２００２年のワールドカップで、トルコのミッリ・タクム（国民チーム）がテレビに映り、国歌の斉唱が始まった時には、涙が溢れそうになるほどの戦慄が身体を走り、その変化に自分自身驚いた。そして今では、前奏曲が流れれば、自然に身体がしゃんとし、時々つっかえながらも一緒に歌うことができるようにまでなった。トルコの子供たちが、学校の朝礼で、あるいは様々な式典で、必ず唱和する詩がある。この詩は、アタチュルクが生前に記したものだと聞いたような気もするが、詳しくは私は知らない。しかし、国歌斉唱の際に私の身体をかすかな戦慄が走るのと同様、この詩に唱和する時、外国人である私の心までが、なぜかしらぬ高揚感でかすかに満たされる。人々の心を鼓舞せずにはいられない、そんなフレーズに満ちているからなのか。「誓い」という言葉の魔力なのか。『ANDIMIZ』(我らの誓い)、あるいは『OGRENCI ANDI』（学生の誓い）としてトルコ国民に親しまれているこの詩を、拙いながら訳してみたので、ご紹介しようと思う。我らの誓い（学生の誓い）私はトルコ人である。正しく、働き者である。私の基本は、小さき者を守り、大きい者を敬い、祖国を、国民を心から愛すること。私の理想は向上すること、前進すること。ああ、偉大なるアタテュルクよ！貴方の切り開いた道を、貴方の指し示した目標に向かって留まることなく歩き続けることを私は誓います。私という存在が、トルコ人という存在への贈り物となるように。「なんという幸福！私はトルコ人であると言えることは」トルコの子供たちは、毎日毎朝、この詩を大きな声で復唱し、ここに表わされた言葉を自分のものとし、やがて自分の心の歌とするのかもしれない。自分の生まれ育つ祖国への誇りと愛国の心は、ここトルコではさまざまな形で養われていくのだ。私たち日本人に、これと同じ言葉が口に出せるだろうか。「私という存在が、日本人という存在への贈り物となるように」「私は日本人であると言えることは、なんという幸福！」と。 - * - * - * - * -トルコの国歌『ISTIKLAL MARSI』（独立行進曲）をお聴きになってみたい方は、こちらからどうぞ。

  2004/10/29

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  小さな誕生会と大きなバースデー・カード**画像追加

  無事、下の娘の誕生パーティーが終わった。なにしろ学校の食堂で、３時のおやつの時間にケーキを切ることで済ませようというのだから、自宅で何から何まで自分で支度するのに比べれば、難しいことはない。もう何ヶ月も前から誕生日の来る日を心待ちにしていた娘。自宅でやれば、誰しもプレゼントを持ってきてくれるだろうが、学校でやる場合、そうはいかない。しかし娘は、大好きな先生やクラスのお友だちが一緒に祝ってくれるというだけで、十分満足してくれ、心配性の私を安心させてくれた。　　- * - * - * - * - 今日は自宅を２時少し前に出ると、パスターネ（菓子屋）まで５分のところにある文房具屋にまず立ち寄った。上の娘の教室に飾るトルコ国旗が、まだ手に入っていなかったのだ。店の主人に聞くと、少し残ってるよ、という返事。ここにも置いてないかもな～と思っていたのでちょっと拍子抜けした。棚の上の方から出てきた国旗は、大中小、３種類の大きさがあり、一番大きな１０×１５ｃｍほどのものを選んだ。合計３０枚くらいが糸でひと繋がりにしてあって、教室の端から端へと満艦飾にするために便利なのだ。１．５ミリオンで１袋分けてもらい、あっというまに今日の仕事がひとつ片付いた。パスターネに顔を出し注文書の控えを見せると、店員はいくつもデコレーション・ケーキの並べられた冷蔵ケースからそれらしいケーキを取り出してきた。これです、という感じで店員がケーキを見せると、私は少なからずガッカリした。写真で見たときは、大小のバラの花がクリームできれいに拵えてあったのに、出来上がったケーキは、四隅に砂糖菓子の小さなバラが差し込んであるだけだった。それに、クリームも確かピンクで注文したんではなかったか？私は、文句を言おうか言うまいか一瞬迷ったが、結局何も口に出さず、ただ「タマム（オーケー）」と言って包んでもらうことにした。今から何を言ったとしても、変更がきくような時間ではなかった。ケーキを箱に入れると、端をセロテープで留めて終わりである。いつもながら、簡単すぎる。こんな時、つい日本だったら・・・・と比べてしまいたくなる。日本だったら、箱の上にきれいな包装紙が掛けられるし、手下げ袋にだって入れてくれるのに。私は袋くらい作った方がいいよ、とひと言残し、ケーキの箱をしっかりと両手で抱え、パスターネを後にした。足元の悪いトルコの道で、躓いて箱を落としたりしたら一大事だから。バスに乗ると、例によって、まだ席に着いてないのに動き出した。いつもならなんてことないのに、今日ばかりはそんなことがいちいち気に障る。揺れもひどいので、膝の上に乗せるのをやめて、両手でしっかりガードした。いったん自宅に戻ると、あらかじめドレスや紙製の王冠を入れて用意しておいた袋をピックアップして、すぐに学校に向かった。「３時頃」と言われていたが、習い性で、いつも５～１０分は早めに着かないと気が済まないのである。娘たちがビデオ・ルームでの英語の授業から戻ると、先生に言って他の子供たちには先に食堂に向かってもらい、すぐに娘の服を着替えさせた。もう娘は嬉しくてたまらない様子。髪の毛を梳かしなおして、お花のついたピンクのゴムで結ぼうとする間も、ちっともじっとしていない。「髪の毛が結べないから、じっとしてなさい」と言うと、「トイレ～！」だと。実はトイレを我慢していたらしい。着替えが終わり、最後に冠をかぶせると、娘は教室を跳ぶように出て、私が追いつくより先に食堂に向かった。食堂には、先に上の娘も来て待っていた。あらかじめ担任の先生には断っておいてあったのだ。娘が着くと、先生はさっそく、テーブルの一番先頭に椅子をふたつ重ねて一段と高くし、「お誕生日席」を用意してくれた。学校に着いてすぐに、暑さで崩れないよう仕舞っておいてもらった冷蔵庫からケーキを運んできてもらい、花火と６本のロウソク（トルコでは数え年が一般的なので、娘は６歳にあたる）を立てて火をつけた。「イ～キ・ド～ドゥン・○○～♪　イ～キ・ド～ドゥン・○○～♪」「ムトゥル・ユ～ルラ～ル・サ～ナ♪ムトゥル・ユ～ルラ～ル・サ～ナ♪」トルコのハッピー・バースデー・ソングが始まった。（ハッピー・バースデーのふしで。はじめのは日本語にすれば「よくぞ生まれてきたね」「生まれたのは幸いなり」、次のは「あなたに幸せな年が訪れるよう」とでも訳せるだろうか）娘の顔は、花火の向こうでキラキラと輝いていた。私がカメラを向けると、満面の笑みを湛えて何度もポーズをとるのだった。私が促すと、娘はロウソクを一度に吹き消し、先生の「拍手～！」の掛け声で、お友だち全員が拍手をしてくれた。「誕生日おめでとう！幸せな年を！」先生と、お友だち全員からのプレゼントも受け取った。授業時間中に、全員でハート型のカードに絵を描いたらしく、後で先生とふたりの実習生が手伝って、ひとりひとりメッセージと名前を添え、１枚の色画用紙にコラージュした巨大なバースデーカードである。先生はまた、忙しい中にもかかわらず、小さい絵本と幼児用教材をみつくろってプレゼントを用意してくれていて、先生の気遣いには心から感謝した。長さ３０ｃｍにもなる長いパン用ナイフが用意してあった。娘がそれを両手に持って、ケーキの中央に軽く切り目を入れて、ケーキカットも終了。ケーキが切り分けられ、そうしていつもより少々長くて楽しいおやつの時間が過ぎていった。ドレスのまま残りの時間を過ごした娘は、帰るときも本当に楽しそうにはしゃいでいた。廊下でくるくると回ってスカートを広げて見せたり、スカートをめくり上げてみせては私の失笑と叱責をかっていた。廊下ですれ違う先生たちや、上の娘の同級生たちも、娘のドレス姿を見てはホッペにキスしてくれたりする。こんなところがトルコだな～と、私の心は温かくなる。上の娘が出てくるのを教室の外で待っていると、下の娘のクラスのお友だちたちが、通学バスに乗るために、先生を先頭に出口の方へと向かって廊下を歩いてやってきた。「ほら、もう一度」先生の合図で、もう一度「イ～キ・ド～ドゥン～♪」の大合唱が始まり、それは皆んなが階段を降りるまで続いた。学校でやる誕生日パーティーも、こんな風なら素敵。娘のことをすれ違う皆んなが祝福してくれるようで、私はこの日、自分のことのように嬉しかった。

  2004/10/27

• 娘たちの熱き選挙戦

  今日もまたまた暑い一日だった。予報では最高気温３０℃と出ていたが、家の中でさえ身体が火照ってたまらないし、やけに喉が渇く。洗濯物を干しにバルコンに出たら、乾いた熱風が吹きつけていた。私は「こんなところにいたら、人間パストゥルマになっちゃうよ～」とぼやき、さっさと家の中に引き返してドアを閉めた。 * * * * * * * * * *この３日間、娘たちの学校では熱い選挙戦が繰り広げられていた。いったい何の選挙なのやら、それを私が理解したのは、つい昨日のことだった。３日前の下校時、上の娘が私の顔を見て真っ先に報告してきた。「私、アダイ（候補者）になったんだよ！」「アダイって、なんのアダイなの？」「あのねえ、私の他に、アイちゃんと青銅くんと元気くんもアダイになったの」「何なの？そのアダイって」娘は興奮しているせいか、私が何度繰り返し聞いても、いっこうに詳しい説明をしてくれようとはしなかった。「勝った３人か４人が、アンカラに行って、首相の椅子に座れるんだって！」何なんだ、そりゃあ。私はいっこうに訳が分からなかった。アンカラに表敬訪問に行く生徒を選挙で選ぶとか？そんなバカな。私は子供のたわ言のような気がして、ちっとも本気に受け取っていなかった。宿題の合間に、娘は私のところにやってきて言った。「白い紙をくれる？」「何に使うの？」「私に投票してって、書いて持っていくの」「へえ～、いいけど」まっさらのコピー用紙を渡すと、娘は紙の真ん中にバランスよく「BANA OY VERİN」（私に票をください）と書こうと四苦八苦していた。すぐに失敗してかんしゃくを起こそうとするところをなだめ、もう一枚渡すと同時に、私が見本を書いてやった。娘は見本の上に紙を重ね、なぞるようにして字を書き上げると、色鉛筆やラメで文字の周囲を綺麗に縁取り、空いているところにはハートやら星やら、好きなマークを描いた。最後に、写真を貼り付けるのだという。以前たくさん撮っておいた証明写真を１枚渡すと、それを空いたスペースに貼って、娘の選挙用ポスターは完成した。翌朝、学校に入ると、すでに廊下に面した壁、個人用ロッカーの扉などのあちこちに、各クラスの候補者たちの手作りポスターがペタペタと貼ってあった。どれどれ、と仔細に眺めてみると、娘のように手書きのものが多いが、中にはパソコンで作ったらしい顔写真やロゴマーク入りのなかなか美しいポスターまであるではないか。スローガン入りのもの、施策方針などが書いてあるものもある。はは～ん。私はようやく合点がいった。おそらく、児童会長や児童会の役員選挙なのだろう。このところ、民主主義だの、選挙・被選挙権だのといったテーマの宿題ばかり出ていたから、そのロールプレーなのかな～と軽く考えていたが、どうやら本当に選挙が行われるらしい。それにしても、目立ちたがり屋、前に出たがり屋のトルコ人である。どう見ても親が子供のために一生懸命作り上げたような、そんなポスターを見ていると、なんだか納得行かないような、複雑な気持ちだった。そこまでする必要があるのか？子供が自分で作るに任せたらどうなんだ？と。今も昔も役員だの会長だのにまったく縁も関心もない私には、娘が勝とうが敗れようが、関係なかった。敗れたとしても、娘は今までずっとクラスの人気者だったし、スポーツもできる、まじめな勉強家であることには変わりがなかった。その日の午後、娘たちを迎えに行くと、娘がまた興奮ぎみに私に報告した。「元気くんのお母さんがやって来て、山ほどポスターを貼って行ったんだよ！さあ、票は元気へ、さあ、票は元気へって。負けたらどうしよう！奴が好き勝手にやってしまうよ！」へえ～、親がわざわざポスターを貼りに来るのか。そりゃあ、すごい。私は、驚きはしたが、そこまでやるなんて笑わせる、と無視するつもりだった。しかし、実際はそうもいかなくなってきたのだ。娘は家に戻るなり、涙を溜めて私のところへやって来た。「アンネ～（お母さん）、どうしよう負けたら。だって、山ほどポスター貼って、さあ、票は元気へって。皆んなきっと、元気くんに投票するに決まってる」そういって、娘はめそめそと泣き出した。私は、仕方なくなり、夕食後にパソコンでポスターを作る手伝いをしてやることを約束した。ワードを立ち上げ、真ん中に一番大きなフォントサイズで文字を入れることにした。「なんて書けばいいの？」娘は、すっかり元気くんのポスターに影響を受けていた。「さあ、票は○○○へ、って」私は言われた通りに書いてやり、娘にそれぞれの文字の色を決めさせて、色だけつけてやった。その後、空いたスペースを飾るのは、自分でやらせた。学校でもパソコンの授業を受け、家でもペイントソフトを使って絵を描くのが大好きな娘は、実は私よりオートシェイプの使い方はよく心得ていた。最後にプリントアウトだけしてやると、娘はまだ残っていた証明写真を真ん中の一番上に糊で貼り、全部で１０枚ほどの新しい選挙用ポスターを完成させた。今朝、娘を送って行った時、娘の言ってた元気くんのポスターがすぐ目に付いた。全部で２０枚にもなる、パソコンで作ったポスターである。ご丁寧にも背広姿の写真まで読み込んである。なるほど力が入っているなあ、と感心した。前日にも増してポスターの数は増え、内容を見てみると、施政方針を前面に打ち出したものが随分数を増していた。「週に２回の体育」「毎週金曜日はシネマの日」「週に２日は自由服の日」「毎日が自由服」などなど、まことに生徒受けのしそうな甘い言葉ばかり連ねてある。そこは、やっぱり子供だな～と思う。まだ２年生３年生じゃあ、こんなものかもしれないが。午後、娘を迎えに行くと、娘は残念そうな顔で私に報告した。「ポスター、要らなかったの。持って帰ってって。もう今日投票しちゃったから」なんと、つい一昨日始まった選挙戦がもう終わってしまったのだった。昨夜、一生懸命親子で作ったポスターも、日の目を見ずに終わったというわけか。娘は手にビニール袋を持ち、誰にもらったのか、ローリーポップを舐めていた。「それで、誰が選ばれたの？」「青銅くん。１１人も投票したんだよ」「へ～、元気くんじゃなかったんだ。あなたは何票もらったの？」「２票。元気くんも２票、アイちゃんが１票」そうか。私はなぐさめようかと思ったが、その必要はなさそうだった。娘は意外とさっぱりした顔で、楽しそうにローリーポップを頬張っていた。私はちょっと気になって、袋のことを聞いてみた。「そのキャンディー、誰にもらったの？」「青銅くんだよ。皆んなに配ったの」袋の上には、「皆んなの票を待ってます。青銅」とあった。私は、アチャ～！とばかりに、思わず膝を打った。さすがトルコ！リュシュヴェット（賄賂）ありか～っ！？私は苦笑いをするより他なかった。こうして、涙と競争心と、少しの努力が費やされた、娘の短くも熱い選挙戦が終わった。この後、各クラスの代表候補間で、さらに選挙戦が続けられるのだという。最後に勝ち残った学校代表の３～４人は、本当にアンカラまで行って、エルドアン首相の椅子に座らせてもらえるのだろうか？これはいまもって謎である。

  2004/10/21

• 宿題が多すぎて、先生に抗議する

  朝７時。上の娘の身体を揺らし、目を覚まさせました。昨夜１０時までかかっても、まだ算数の練習ノートが１ページ残ってしまったので、朝食の前に残りを仕上げようと娘と約束してあったのです。娘が２年生に進級して、私にとっては前より楽になったことと難しくなったことの両方があります。楽になったのは、読み書きをマスターした娘が宿題のコツをつかんで、問題を読みあげてやらなくとも、自分でどんどん進められるようになったこと。難しくなったのは、もちろん問題内容と、なだめたり賺したり励ましたりしながら、いかに最後まできちんと終えさせるか。なかでも難しく感じられるのは、生活知識のＱ＆Ａ。授業で教科書を中心に習った内容を、２～３日後に練習ノートのなかで確認させることが多いのですが、宿題の出された教科書だけ、練習ノートだけしか家には持ち帰らないので、練習ノートをやるときに「教科書になんて書いてあるか、ちょっと見てみよう」というわけにいかないのが辛いところ。例えば、先日の宿題に出た設問では、「校長の職務にはどんなものがあるか？」これ、皆さんだったら、どう答えますか？校長と、教頭の役割分担だってよく知らない私には、日本語だって、ちょっと難しい。ましてや、トルコ語で・・・・？「初等教育の重要性について答えよ」なんていう設問もありました。私が小学校２年生の時に、こんな難しい問題出てたかなあ・・・と、遠い記憶を手繰り寄せつつ、教科書の内容を把握している娘と頭を突き合わせながら、格闘する毎日なのです。問題内容もこんななら、量も半端じゃない。この手の設問ばかり３ページも４ページも出た日には、取り掛かるやいなや娘はおいおい泣き出す有様。「わからないよ～！（涙）」「こんなのできないよ～！（涙）」「やりたくないよ～！（涙）」可哀相だとは思うけれど、そこは心を鬼にして、「泣いてたって始まらないよ。泣いてる暇があったら、頑張ってやろうよ。手伝ってあげるから」大抵そんな言葉をかけ、夕食の支度を中断しては、付き合ってやるというわけ。しかし、昨日の宿題は、ちょっと酷かった。トルコ語の授業で新しく習い始めたらしい斜体字の練習が、Ａ４サイズの練習ノートでビッシリ４ページ（しかも細罫）。算数の練習ノートが２ページ。動物愛護デーにちなんで、新聞から動物の写真を切り抜き、色画用紙に貼る他に、英語の宿題で時計づくり。水曜日は通常より下校時間が３０分遅いので、４時半に学校を出て、帰宅して着替え。途中で休憩したり、夕食を食べたりはしたけれど、とにかく継続、また継続。一向に終わらない斜体字の練習に、何度も泣き出しそうになる娘を、なぐさめ、励まし、横についててやる。動物の写真は下の娘も一緒になって新聞を片っ端からめくり、切って集め、貼る仕事だけ娘にやらせる。とうとう夜１０時になったけど、まだ算数の宿題が１ページ残り、これは翌朝に回して、すぐにベッドに入らせました。結局この日は、シャワーもさせず仕舞い。出された宿題は、どんなに難しくとも、多くともやっていかせるのが親の務めだとは思うけれど、これはいくらなんでも、ひとこと言うべきではなかろうか。朝、娘を送っていった後、担任が教室にやってくるのを廊下で待ちました。そこへ現れたＴ先生。「ギュナイドゥン。ナスルスヌス？」（おはよう、ごきげんいかがですか？）お決まりの挨拶の後、すぐに本題に。「昨日は宿題が多かったですね。娘は夜１０時までやったんですけど、それでも終わらなかったんですよ。シャワーすらできないほどで。今朝は７時に起こし、さらに５０分かけてようやく終えたんです」そういうと、Ｔ先生は「多いのは分かってるんです。でも、練習ノートの来るのが遅かったので、毎日あれくらいやらないと、終わらないんですよ。そうしないと、もうすぐ次のノートがやってきますし・・・」いつまでに、どこまで進めるという授業の進度計画に縛られて、子供の尻を叩かざるをえなくなるような、こんな授業の進め方、宿題の出し方、本当に子供のためにいいのかどうか・・・。まだまだ遊びたい盛りの子供にとって苦痛なことは教師も親も十分承知で、なおもそれを強いざるをえないなんて・・・・。まだ小学校２年生でこんなに大変なら、高学年になったら一体どうなるんだろう・・・。世の中の親御さんたちは、きっと皆おなじように悶々とした思いを抱えてらっしゃるのでしょう。鼠色のどんよりとした空模様の昨日今日、娘たちの今後の学校生活への漠然とした不安がぬぐえない私なのです。

  2004/10/07

• 時間割表。これでお願い最後にしてね！

  新学期が始まって、すでに２週間が経過。先日、下の娘の「最新の」時間割表を受け取ったのに続き、今日は３度目の正直、（インシャッラー）これが最終決定という、上の娘の時間割表が届きました。日本の小学校ではどうだったのか、まるきり覚えてないけれど、まさか２週間も確定した時間割表なしで授業が進められるなんてこと、ないに違いありません。始業日の１～２週間も前から、各教科担任間の調整が行われ、始業日には真新しい時間割表が生徒たちに手渡されるのではないでしょうか？娘の通う学校でも、２週間前から教師全員が学校に顔を揃えているはずなのに、いったい何をやっているのやら。教科の割り振りに関しては、学校が始まってから摺り合わせをする習慣のようで、一応内定済みの時間割表に従って毎日の授業が進められているようなのですが、摺り合わせが終わるまでは生徒にももちろん父兄にも、時間割表が手渡されることはないのです。各教科書は、ロッカーや机の下に置いておくようになっているので、通常の教科を受ける上での不便はないのですが、体育のある日がちょっと問題。下の娘のクラスでは、当初火曜日と金曜日だったのに、「最新」時間割表では月曜日と火曜日に二日続けて行われるよう変更になって、ビックリ。間に１日２日設けてあると、体操着を洗濯できていいのですが、このままではもう１着づつ買わないといけないかも。そんな不安を担任にこぼしたら、「また変わるから、大丈夫よ」ですって。一方、上の娘のクラスでは、木曜日は決まっているけれど、時間の割り振りがいかにもいいかげんで、父兄会で父兄たちが猛反発。だって、昼食前と昼食後に１時間づつだなんて。汗をかいた後に着替えもできず、おまけに消化が悪くなりそうですよね。皆でクレームをつけたおかげで、「最終」時間割表では昼食前の２時限が取られ、ホッと一安心。なかなか時間割が最終決定に至らないのも、実はこのような父兄からの反発もあるからでしょうね。父兄のクレームがすぐに反映されるのも、良し悪しですが、何か言われたらすぐ変更。言われなかったら、不自然でも合理的でなくてもそのまま、というのが、やっぱりトルコ的かな、と思います。ちなみに、上の娘（小学２年生）の時間割で、各教科に何時限(１時限は４０分）ずつ割いてあるか、ご紹介してみますと・・・・トルコ語　１１時限・生活知識　５時限・英語　９時限･算数　５時限・ドイツ語　２時限･体育　２時限･音楽　２時限･美術　２時限・コンピューター　１時限・ガイダンス　１時限以上、１日８時限、週５日で４０時限になります。まだ社会や理科は始まらないみたいなのですが、日本の小学校と比べてどうなんでしょうね・・・・？

  2004/09/29

• 自閉症児をクラスに迎える

  昨日、夫に連れられて学校から戻ると、下の娘はまっすぐ私のところへやってきて、腕に７～８cmほどにわたって走る引っかき傷を見せました。「Ｓちゃんが爪でこ～うやったの」「ほんとに？痛かった？」「痛くて泣いちゃったよ」たしか通学２日目の夜。下の娘が寝言でハッキリと「Ｓちゃん、やめてよ。そんなことしないでよ～」と訴えていたので、あの子がクラスの中でどういう行動をしているのか、親として少々不安を覚えていた矢先の出来事でした。始業式。校庭のいちばん端に並ぶ娘のクラスの列に、手を引かれて入ってきた、娘よりふたまわりも大きい女の子がＳちゃんでした。式の間娘の方ばかり見ていて気付かなかったのですが、教室に入り、先生の声掛けで生徒たちが次々に席についても、まるで周りの状況が見えないかのようにふらふらと歩き回っているこの子に、初めてどこか普通の子と違う雰囲気を感じました。定まらない視線。かすかに微笑んだまま動かない表情。誰かに手を引っ張られて席についたものの、先生、ついで生徒たちの自己紹介が始まっても、我関せずと下を向いて人形遊びに夢中になっているこの子の姿に、今度はハッキリと尋常ならぬものを感じ取ったのです。それから、ジロジロ見てはいけないとは思いながらも、どうしても彼女の行動が気にかかって仕方なくなりました。いったいこの子は･･･いったいこの子には・・・どんな障害があるのだろうか・・・？耳が聞こえないのだろうか、それとも・・・・？私の頭には、以前調べたことのあるいくつかの障害の名前が浮かびました。注意欠陥多動性障害、自閉症、精神遅滞・・・。彼女の自己紹介の順番がまわってきました。が、相変わらず声が聞こえてないのか、下を向いたまま人形付属のアクセサリーの入ったビニール袋を開けようと夢中です。先生は彼女の顔と他の生徒たちの顔を見比べながら、「Ｓちゃん。６歳・・でしたよね？ハイ、拍手～！」と彼女の紹介を済ませてしまいました。私は、彼女の親がなぜ何も助け舟を出さないのか、なぜ放ったらかしにしているのかが気にかかり、何気ない風を装って教室中を見回してみましたが、それらしい顔、つまり彼女に似ていて、彼女の方を心配そうに見つめたり、彼女に声を掛けようとしている人は一人も見つからず、不思議な思いで彼女の方を見やりました。この子がおかしく見える私がおかしいのか。それにしたって、周囲の状況についていけない子供がいたら、少なくとも親は傍に寄り添って、何らかの助け舟を出してやるのではなかろうか。しかも今日は通学初日。どんな子供だって、緊張したり怖気づいたりするのは当たり前。片方の手は親の手を離すまいと、もう片方の手はカバンを放すまいと握り締めて、教室の一番後ろで泣いている男の子もいるほど。我が子が、物怖じして同じ行動を取りたくても取れないとしたら、子供を慰めたり励ましたりしながら輪の中に溶け込めるよう計らうのが、親として普通ではないでしょうか。それなのに、この子の親は・・・？朝食の時間となり、全員が列を作って手を洗いに移動します。Sちゃんはふらふらと廊下に出ると、そのまま反対の方向に行こうとしたので、慌てて先生がSちゃんの手を握り、先頭に立って全員を誘導しました。朝食と父兄への説明会の間じゅう、親らしき人物がＳちゃんをサポートしている光景は、とうとう一度も見られませんでした。Sちゃんの奇矯な行動は、ほんの５分ほど教室にいた夫の目にもすぐに留まったようでした。私が居ない間、彼女は突然立ち上がって、あらぬ方向に歩いていったり、突然「ウォー」という大声を出したりしたというのです。私の頭には、彼女が授業についていけるのかどうか、あの分では先生への負担が相当なものになるのではないか、そんな心配が浮かびました。昼食の見学に食堂を訪れたとき。Sちゃんは食べるのに飽きたのか、席を立って窓の外を見に行ったり、ふらふらと歩き回ったりし始めました。そんな一見自分勝手な行動が何度か続いた後、はじめて彼女を制する女性の声が聞こえてきたのです。「Sちゃん！ちゃんと座って食べなさい」横の方を見ると、母親らしき若い女性が、テーブルに着いて他のお母さん方と談笑しながら、生徒と同じ給食を食べているところでした。たぶん、Sちゃんと似ても似つかぬ容貌のために、今まで母親だと気付かなかったのかも。しかし、Sちゃんがテーブルの上に置いてあったハンドソープの液を出して遊び始めても、キュウリを掴んで遊び出したりしても、再び見て見ぬ振り。これまで数えるほど注意しすぎて疲れてしまったのか、それとも少し放っておいた方がいいと考えているのか、Ｓちゃんにほとんど注意を向けない彼女の態度を見ると、ひょっとして、今日から学校に預けたんだから、もう私が注意したり世話したりしてやる必要はないと考えているのかもしれない。そう思えました。そんな始業日から３日目。学校から帰って来た下の娘に、今日学校でどんなことがあったか聞いてみると、「Sちゃんがねえ、皆んなの耳をひっぱたり、ぶったり、けったりしたんだよ。私、Sちゃんが怖い」と言い出したのです。そしてその翌日の、あの引っかき傷。夫は、「先生とあの子のことでちゃんと話をしなくちゃいけないな」と言い、私も、学校がSちゃんを受け入れることになった理由、親御さんがどう先生や学校側に説明したのか、先生自身はどう考えているのか、学校や先生はこれからどう対応していくつもりなのか、そんなことを確認したくなり、今日は娘たちを教室に送り届けた後、担任の先生が到着するのを待って、話を切り出したのです。待ってましたというように、先生の口からは堰を切ったように言葉が出てきました。「彼女はオティズムなんですよ。それはお母さんももちろん知っていて、少し社会生活でもさせようと連れて来たらしいんですが、何を聞いても説明が出来ないし、まったく何もしゃべれないんですよ。」オティズムというトルコ語はその時はじめて聞きましたが、oto(=auto)からくる言葉で、自閉症のことだろうという察しはつきました。「それで、授業についていけるんですか？授業が成立するんですか？」「無理ですよ。だって、彼女は何ひとつ理解できないんですから」「娘の腕を引っかいたり、他の子を叩いたりしたことは？」「もちろん、お母さんにも伝えましたし、教頭にも何回も報告しているんですが・・・」「先生の仕事がとても重くなりましたね」先生は「ええ・・」と、深く頷き、「目が離せないので、常に手をとってやらなければいけないんです」年齢の小さい子供たち全員に満遍なく目を届かせるため、絶対に１５人以上にはしない、１５人で打ち切ると宣言していて、ちょうど１５人で成立した今年の準備クラスです。２人の実習生が手伝うとはいえ、Sちゃん一人のために何人分もの労力が使われることは明らかでした。夫は教頭とも話をしていこうと、教頭室のドアをくぐりました。前年までの教頭が病気を理由に辞職し、今年新しく抜擢された教頭は、前任が幼稚園の園長だったという３０代半ばの女性Hさん。夫が「娘と同じ準備クラスにいるSちゃんのことで話をしに来ました」というと、彼女は目を少し見張るようにして「ええ、話は聞いていますが？」夫は、娘がSちゃんのことを怖がっていること、爪で引っかかれたこと、そんなここ数日の状況を述べ、「あの子がそのままクラスにいても、大丈夫なんですか？」と質問、私もその言葉を引き継いで、「彼女は授業についていけないのは明らかですし、あのままでは授業が成り立たないと思います」そう意見を述べました。Ｈ教頭は、少し目を伏せるようにしたあと、朗らかな顔で私たちの顔をじっと見つめ、「たぶん、あの子のような子供を見るのは初めてでらっしゃいますでしょ？」「あの子は、もちろん特別な施設での教育も受けているんですが、親御さんは少し社会生活を経験させることを希望しているんです」幼児教育のプロという自信に満ちたようなH教頭の口から出る言葉には、障害のある子供を受け入れる上での不安のかけらも混じってないようでした。「確かにSちゃんは年齢的には相応しいと思います。しかし、知能の発達度合いはどうなんでしょう？あのままでは、授業についていけないのは明らかだと思うのですが・・・」私は気にかけていたことを率直に聞いてみました。「医者のレポートでは何といっているんですか？」「医者のレポートでは・・・普通の学校生活に参加することが可能だといってます」それが確かで、学校側が大丈夫と判断したのなら、一父兄がとやかく言う問題ではないのかもしれませんが・・・。私たち、少なくとも私は、自分たちの娘可愛さのためだけに、この話を持ち出したつもりではありません。他の子供を傷つけたり、授業の妨害をしたり、先生がＳちゃんにかかりきりになることで授業が潤滑に進められないという事態がなければ、また親御さんやその代わりになるヘルパーがSちゃんの傍についていることで、先生がSちゃんから解放されて自由に授業を進めることが出来るのなら、受け入れできないわけではない、という考えでした。しかしH教頭は、私たちの娘が怖がっているということを問題視していると思ったのか、「分かりました。Nちゃん（私たちの娘）に聞いてみて、話をしてみましょう。他の子供たちにも聞いてみます」と回答してきました。「別に娘に聞かなくてもいいんですよ。まず教室に行ってみて、一日中観察してみてください。それで大丈夫と判断されるのでしたら構いません」「他の子供たちに怪我をさせたり、授業の障害になるのでなければ、Sちゃんが授業に参加しても構わないのです」「とにかく、もう少し配慮していただけると助かります」私たちはそれだけ言うと、教頭室を辞退しました。私は、なんだかすっきりしない気分でした。自分はこれまで、決して障害児を差別してきたつもりも、偏見を持ってきたつもりもないし、偏見を持ちたくはないと思っていたはずなのに、教頭のキッパリした態度に比べると、やはり私も不安を打ち消すことが出来ないのです。Ｓちゃんの存在や行動が問題なのではなく、彼女を自然に受け入れられない生徒や父兄に問題がある、そう言っているかのような教頭の返答を前にして、結局は私（たち）も心が狭いだけなのだろうか、自分の子供に迷惑や危害が加わるのを恐れているだけなのだろうか、そう自問自答せずにはいられませんでした。１０００人に１～２人くらいの割合で発症するという自閉症。このことを契機に少しインターネットで調べてみると、日本でも自閉症児をもつたくさんの親御さんが、苦悩しまた苦労しながら、お子さんに向き合ってられること、お子さんを育て上げるまでの軌跡をホームページに綴ってらしたり、自閉症児をもつ親たちの集まりもあるということを知りました。しかしその一方で、自閉症児を受け入れる学校側の取り組みや、自閉症児をクラスにもつ普通学級の子供や父兄たちの心の準備や具体的な対応策については、ほとんどページを見つけることができませんでした。私自身、間違った対応はとりたくない。なるべく正確な知識を得た上で、娘にもSちゃんのことをちゃんと説明できるようになりたい。今後、先生･父兄を含めた自閉症に関する勉強会をもつ必要があるのではないだろうか、今はそう前向きに考えるようになりました。もちろん、Sちゃんのお母さんの役割は重要。見て見ぬ振り、預けっぱなしでは困るのです。この日記をご覧の皆さまの中で、自閉症児を身近に見知っている方がいらっしゃいましたら、どんな些細な知識･情報でも構いません、教えていただけますでしょうか。Ｓちゃんの母親のように放っておくべきなのか、健常の子供に対するのと同じでいいのか、あるいは手取り足取り軌道修正してやるべきか、こんな行動に出たら、こうするといいよとか、なるべく具体的なお話をお聞きしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

  2004/09/17

• 自由服の日、バンザイ！

  今日水曜日は、娘たちの学校のセルベスト・クヤーフェット・ギュン（自由服の日）。一週間に１回、私服で通学することが許されている日です。公立学校でもこの習慣があるのかどうか、正確なところは知らないのですが、同じように私服姿で通学するご近所の子供たちを見かけることがあるので、おそらくあるのでしょうね。娘たちの通う私立学校の小学部の制服は、細い水色ストライプの入ったブラウスに、女子が赤、白、紺の混じったブルーのタータンチェックのプリーツスカート。男子がグレーのスラックスに同じタータンチェックのネクタイ。その上に赤いニット・ベストとカーディガン、という組み合わせ。トルコの公立学校で一律に決められている鮮やかなブルーのスモックの制服に比べれば、これだけでもなかなかオシャレな方だと思うのですが、規律に厳しい（？よく知らないのですが）日本の私立学校とたぶん大きく異なると思うのは、リュックや靴、靴下、コート、髪型、髪留め・・・などなど、何を身に着けても、ほとんど何も言われない自由度の高さ。上の娘が学校に通い始めた頃、まず驚いたのは、そんな自由すぎる面でした。リュックはキャラクター花盛り。靴はもう何でもあり。夏は暑いのでサンダル、冬は膝までのロングブーツや真っ赤なブーツにラメ入りブーツ。コートだって鮮やかなプリントあり、ピンクに真っ赤・・・と何でもあり。休日に美容室で細かい編みこみを入れてもらい、休み明けにはそのまま出てくる生徒もいますし、トップのところに小さい髪飾りをたくさん着けている生徒もいます。ちなみに、生徒がそんな「派手な」スタイルをしていても、先生方は怒るどころか、「とってもキレイ！」といって褒める（？）有様。ネクタイをちゃんと結ばないとか、ボタンを留めないで前をはだけているなど、制服を着崩すことには多少とも厳しいのですが、制服をきちんと身に着けている限り、制服姿をより美しく（？）見せることにはかなり寛容です。ここまで自由が許されているのに、さらに週１回は自由服の日が設けられていて、自分の個性を発揮した私服で通学できるのですから、子供たちにとっては申し分ない環境といえるかもしれません。いったん自由が許されれば、日本だったらブランド競争、オシャレ競争が始まりそうですが、ここではそんな心配はいりません。娘や他の子供たちを見ていても感じるのですが、その日一番着たい服を着る、自分の一番好きな服を着る、一番ラクな服を着る、自分に一番似合う服を着る・・・そんな風に気楽に自由に、この日を楽しんでいるようです。ちなみに上の娘のお気に入りは、大抵ピッチリしたジーンズ。その上におヘソの出るタンクトップﾟを着たいというんですが、さすがに「ヘソ出し」ばかりは私たちが許しません。下の娘は花、ピンクなどフェミニンなものが大好きなので、女の子らしい組み合わせを考えてあげると、もう満足。先生は先生で、精一杯キレイにしてきた子供たちに一人一人「なんてキレイに着ているの！」「あなたとってもシックよ！」「あなたに似合ってるわ」「ハンサムになったわね」なんていう褒め言葉をかけてくれたりします。自由服の日は、母親にとっても助かります。制服だろうがなんだろうがおかまいなしに、食べ物をこぼしたり、遊んで汚す子供のこと、週の半ばに洗濯日が設けられていると考えると、理に適っている気もします。日本人の目には、決して合理的とは言い難いトルコ式のシステムに、普段はイライラさせられてばかりの私ですが、「自由服の日」だけは、いろいろな点でいいアイデアだなあと思うことしきりです。

  2004/09/15

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  新学期スタート！（２）食堂＆文具店は大混雑

  文房具、消耗品の買いだしとしては、まずは近所の大型スーパーマーケットで手に入るだけ手に入れ、残りを町の文房具店で買い求めるつもりでした。しかし、午前中のうちに人と会う約束があった私たちは、いったん町の中心へ。１時間ほど打ち合わせをして過ごすと、１１時半をまわり、１２時から始まる給食の時間に間に合わないとばかり、買い物も後回しにしてまっすぐ学校に向かいました。朝はトルコ式にパン食で済ます私たちは、なんだかお腹がすいてきて、途中、パスターネ（菓子屋）でスィミット（ゴマ付きパン）とアイスティーを買い求め、車の中で空腹を満たしておきました。学校給食を目の前にして、お腹がグウグウ鳴り出さないようにと。１２時ちょうどに学校に到着すると、すでにどの教室ももぬけの殻。１１時５０分にチャイムが鳴るやいなや、全学年が一斉に食堂に下りていったのかもしれません。私たちが食堂へ向かう階段を途中まで下りた時、食堂から階段の下の方まで長～い列が出来ていて、しかもその列の一番最後に上の娘を含めた２年生の生徒たちが並んでいる光景が目に入りました。それに気が取られてしまった私は、足を滑らせて尻もちをついてしまい、その際に変に足で踏ん張ったのか、サンダルの紐が根元からブチッと切れてしまいました。ディスカウントの靴屋で１０ミリオン（約８００円）という安値で購入したのですが、デザインもシンプルで履いててラク。とにかく重宝していたサンダルがこれです。やれやれ、娘たちより舞い上がっているのは実は私の方だったりするのかもしれません。上の娘の担任は、イズミットのコレジからやってきた新任のＴ先生。若くて美人で、指導方針もなかなかしっかりしていて、そのくせ雰囲気が柔らかくて華やか。でも、初めての学校では、やっぱりオバチャン先生たちに一歩遅れをとってしまったようです。学年の小さいクラスから順番に食堂に引率しなかった、学校管理者の手落ちもあるでしょう。まあ、今日は初日なのだから、多少の混乱は仕方ないのですけれど。下の娘のいる準備クラスは、上級生とは別の小さい食堂で優先的に食事をとっているので、そちらの様子を先に見に行くことにしました。ドアを抜けて娘の座るテーブルの前に立つと、つまらなそうにトレーをフォークでつついていた娘の顔がパアッと明るくなりました。そして、まるで「よ～し！食べるぞ」という掛け声をかけたように、突然モリモリ食べ始めたのです。担任のB先生は、私の顔を見て「ときどきお母さんのことを思い浮かべてか、ボンヤリしていることがありましたよ」と耳打ちしてくれました。私はちょっとだけ胸がキュンとなり、娘の食べっぷりを呆れながら見つめていました。上の娘の順番もなかなか回ってこないので、この辺で給食のメニューのチェック。今日はドマテス・チョルバス（トマトスープ）、お米のピラフ、キョフテ（トルコ風ハンバーグ）、ヨーグルト、これらが、全員のトレーに必ずのります。あとは何種類にも及ぶソークメゼ（冷菜）とサラダのビュフェがあり、各自好きなものを自分で皿に取るようになっています。デザートも必ずついていて、今日はヤシュパスタ（クリーム使いのケーキ）。準備クラスの生徒たちには、これらがあらかじめセットされて、席まで運ばれます。野菜はトマト、キュウリ、ニンジンという、小さい子供でも食べやすいものが組み合わせてのせてありました。ビュッフェ用のテーブルには、始業日だけあって、バラの花がデザインされたシフォンのクロス（たぶんカーテン生地）がかけられ、生花まで盛られています。 普段だと、上級生になるほど、２階にあるカンティン（カフェテリア）で、ハンバーガーやトーストを自分で買って食べる生徒が多くなるのですが、始まったばかりということもあって、食堂で食べる生徒が一時的に増えているのかもしれません。上の娘たちの順番が回ってくるまでに、もう席は満杯。新任のT先生はちょっとうろうろして、なるべく自分の生徒たちがまとまって席につけるテーブルをさがしています。娘が好物の紫キャベツのサラダと、ピヤズ（白インゲン豆のサラダ）を取り、席を確保して準備クラスの時からのお友達と一緒に食べ始めると、私は安心して下の娘の方に取って返しました。娘のトレーを見れば、ピラフもヨーグルトもキョフテも残り少なくなっていて、目を見張りました。あまりに頑張って食べ過ぎたらしく、気持ち悪そうな顔付きです。普段から小食な娘は、先生の「全部食べなさい」の言葉に、いいところを見せようと張り切りすぎたのでしょう。そろそろ潮時と私たちは家に戻り、急いで昼食をとると、夫は町の中心に用事を済ませに、私は近くの大型スーパーマーケットに学用品の買出しに出かけました。受け取ったリストを見て頭が痛くなったほど、買うべきものは多種多様にわたっています。特に多いのは下の娘の方。ここで少し紹介してみますと・・・【文房具、工作用品】・色鉛筆（ファーバー・カステル、１２色入り）・クレヨン（モン・アミ、１２色入り）・水彩絵の具（ペリカン、１２色入り）・サインペン（１２色入り）・ペンケース（エンピツ、赤エンピツ、消しゴム、エンピツ削り）・ハサミ・穴付きクリアポケット（５枚）・クリアポケット用ファイル（赤、３枚）・コピー用紙（白、１包）・コピー用紙（カラー、１包）・色画用紙（１０枚）・工作紙（１０枚）・プリット（スティックのり、６本）・ウフウ（セメダイン、３個）・ウフウ・タック（ポスター用接着剤、１個）・書類整理ボックス・ラメ（カラー、３瓶）・粘土（プレイ・ドウ、３個）・そろばん【消耗品】・コロンヤ（コロン）・トイレットペーパー（４個）・ハンドソープ（１個）・ペーパータオル（３個）【着替え、個人資料】・着替え（外着１着、下着２着ずつ）・歯ブラシ、はみがき・証明書用写真（８枚）・身分証明書のコピー・予防接種カードのコピー一方、上の娘の方は・・・【文房具】・横罫入りノート（４０枚綴り、２冊）・横罫入りノート（８０枚綴り、２冊）・格子入りノート（８０枚綴り、１冊）・横罫入りノート（大判、４０枚綴り、１冊）・辞書・ことわざ辞典・慣用句辞典・接着剤・ものさし（２０ｃｍ）・ハサミ・穴付きクリアポケット（５枚）・書類整理ボックス・書類用ペーパー（白、２０枚）・書類用ペーパー（カラー、３０枚）･色画用紙（５束）【消耗品】・トイレットペーパー・ペーパータオル・ハンドソープ美術用品については、まだリストが出ていませんが、下の娘同様、水彩絵の具、クレヨン、色鉛筆などを購入することになるはず。それにしても･･･ペンケースなどは当然にしても、画用紙や粘土などは、日本だったら、購買部もしくは担当教師が生徒の人数分をまとめて業者に注文し、父兄は代金だけ生徒に持たせるだけで済むでしょうし、コピー用紙やトイレットペーパー、ハンドソープなどは、学校の経費として組み込まれていると思います。娘の学校が私立だから特別、というわけでもなく、公立学校でもこの辺りのシステムは同じということですから、トルコ全国で、この時期１００万人にも及ぶ子供とその父兄たちが、必要品の買出しで東奔西走するなんて、ものすごいエネルギーの浪費だという気がしてしょうがありません。まあ、このような一見無駄に見えるシステムのお陰で、トルコの新学期市場がこれほどにも栄えているのでしょうけれど・・・。スーパーマーケットで随分買い込み、夫と合流していったん娘たちをピックアップ。その足で今度は文具店へ車を走らせます。私たちが着いた時は、まだ客の数も７～８人だった小さな店内が、私たちが出る頃には２倍３倍に膨れ上がり、２重３重の人垣が出来上がっていました。日本のように、広い店内で自分で自由に商品を手にとって選べるようにはできていないトルコの一般文具店は、店員に商品の名前を告げて、ひとつひとつ出してきてもらう必要があります。それだけでも時間がかかる上に、皆私たちと似たり寄ったりなリストを手に握り締めているのですから、混雑するのも当然。辞書類や２～３点の足りない品物を除けば、ほとんどの物を半日で購入し、なかなかに疲れた始業日の一日が終わりました。あとは、夜、皆が寝静まってからの教科書のカバー掛けが残っているだけです。ツルツルのコート紙が表紙に使われている教科書にはカバーはいらないだろうと、私の判断でそのまま持たせたのですが、カバーがついてなければ、ロッカーに置くのは許可できない、ですって。古本屋に売る予定も、人様にあげる予定もないのに、それでもカバーが必要なのか、ちょっと理解に苦しみますが。そうそう、前々から適応できるかどうか心配していた下の娘。迎えに行ったとき、興奮ぎみに「楽しかった！」と言って、ほとんど飛び上がらんばかりにスキップする姿を見せ、私たちをすっかり安心させてくれましたよ。

  2004/09/14

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  新学期スタート！（１）娘たちの始業式

  本日１３日、トルコ全国の小中高校で新学期がスタートしました。先週一杯、朝寝坊の癖が抜けなかった私たちも、さすがに今日は早くから目が覚めてしまいました。６時半に起きた私がキッチンに立っていると、じきに子供たちも順々に起き出してきました。７時半には朝食のテーブルにつき、初日が肝心と歯を磨かせてから制服に着替えます。下の娘はお姉ちゃんのお下がりのブラウスと、サスペンダーで吊ったプリーツスカートを身につけると、「見てっ」と言いながら、嬉しそうにくるりくるりと回ってみせます。この１～２週間の間に、何度か学校に足を運び、教室を見学したり、担当の先生に会ったりしたことで、すっかり学校が好きになってしまった様子。「私も勉強したい。ノートが欲しい」なんていう言葉まで飛び出すほど。あのオテンバ、ワガママ娘に、いつのまに「学校に行くんだ」という自覚のようなものが芽生えていたのか。子供の成長って、ほんとうに不思議です。娘は、お姉ちゃんの水色のリュックと色違いの、パワーパフ・ガールズ（怪物を退治する３人娘のキャラクター）の鮮やかなピンクのリュックをさっさと背負い、靴下もお姉ちゃんのに似たものを選び、同じようにサンダルを履いて、すっかり良い気分。髪の毛も、お姉ちゃんを真似てポニーテールにしてくれとのこと。日頃ケンカの絶えない姉妹ですが、やっぱり妹はお姉ちゃんが大好き。お姉ちゃんと何でも同じじゃないと気が済まないのです。校庭は、式典に使われる時の常で、校章をあしらった小さい旗や国旗で満艦飾状態。始業式は、通例では８時半からなのですが、当然のように最低３０分は遅れて始まります。ピッタリになぞ始まらないことが分かっているので、門をくぐる様子を見ても、皆のんびりとしたものです。父兄たちも、久し振りに顔を合わせた他の父兄たちと挨拶を交わしたり、ひとしきりオシャベリに花を咲かせたりしながら、マイクで召集がかかるまで、日陰から一向に動こうとしません。三々五々、生徒たちが列を作り始めると、それに引きずられるようにして父兄も校庭へと移動。少しずつ列が形を成していきます。まだまだ門をくぐる父兄や生徒たちの続くなか、マイクの声が突然響きました。「２００４－２００５年度、○○コレジ(教育指導機関）へ皆さまようこそ！」そんな簡単な挨拶のあと、国歌イスティクラル・マルシュ(独立行進曲）の斉唱。下の娘の横に立っていた私は、聞こえてくる声の後を追うようにして唱和しながらも、娘の様子をチラリチラリと覗き見。門前の小僧なんとやら。お姉ちゃんが歌うのを聞いて、いつの間にか大体の歌詞を覚えてしまった娘も、口をしっかり開けて一人前に歌っています。イスティクラル・マルシュといえば、思い出すのは２年前の始業式。上の娘はちょうど今の下の娘と同じ歳で、その年から真新しい制服を身に着け、準備クラスに進級しました。やはり、始業式のためだけにアンタルヤに戻っていた夫。国歌斉唱のあと私の方を振り向くと、夫の目は真っ赤・・・。娘がイスティクラル・マルシュを最後まできちんと歌い上げたこと、よくぞここまで成長したと、感動屋の夫は思わず目頭を熱くしたのでした。さすがに始業式も３回目、ふたり目の子供ともなると、今年はさっぱりしたものですが。強い日差しの下で、年少の子供たちを長時間立たせ続けないよう、上級生たちを残し準備クラスの子供たちは早々に教室へ引き上げます。上の娘は夫に託し、私も下の娘について一緒に教室に上がりました。教室は、新学期に備えてドアも棚もきれいに塗装しなおされ、先生のセンスで可愛らしい子供用ソファーセットがしつらえられ、新しいオモチャの数々で埋め尽くされています。娘が、通いなれた幼稚園を諦めて、この学校に通う気になったのは、「お姉ちゃんと一緒の学校」という安心感だけでなく、この教室を見て気に入ったということもあるに違いありません。実際に幼稚園の部屋より広く、日光が燦燦と入って明るく、色使いが楽しく、ディスプレイが可愛い。さすがベテランB先生、子供たちの気持ちをつかむ術をよく知っています。 先生はアイランド状に並べた机の真ん中に、そして子供たちを周りに集まるようにして座らせると、すぐに自己紹介、続いて生徒たちにそれぞれ名前と年齢だけの自己紹介をさせます。年齢を間違えないか（日本では４歳、トルコでは５歳なので）少々心配したのですが、娘がちゃんと年齢と名前を言ったので、ホッと胸をなでおろしました。先生が「私の名前はなんだっけ？」と生徒たちに聞くと、もうずっと以前から顔見知りなだけに、娘が一番先に「B先生！」と答えます。幸先はなかなか順調なようです。その後、食堂に場所を移して、朝食の時間。ハズルルック(準備クラス）の生徒だけ、昼食以外に朝食、おやつの時間も設けられているのです。今日の朝食は、チーズとトマトののった小さいピデ(トルコ風ピザ）と牛乳。希望すれば、牛乳にネスクイック（ココア飲料）も混ぜてくれます。子供たちが食事をしている間、父兄にはこれから提出する必需品のリストが手渡され、生徒の個人情報や父兄の連絡先を用紙に記入。朝食を終えて教室に戻ると、初日ということもあり、自由遊びの時間。娘は最初、落ち着かないようにうろうろ。どれで遊ぼうか、どこに座ろうか決めかねている様子でした。ひとりの女の子が娘の好きなプレンセス(ディズニー・アニメのプリンセス）のオモチャで遊んでいるのを見つけ、「この子も一緒に遊んでいいかな？」と橋渡しをしてあげると、「タマム（オーケー）」の返事。娘はすぐにその子の隣に座り、積極的に話しかけはじめました。途中で交替した夫も、すっかり周囲に溶け込んで、遊びに熱中している娘の姿を見て満足。昼食の時間に、ふたたび様子を見にやってくる予定で、私たちはいったん学校を後にしました。これから数日中に提出しなければならない学用品、消耗品のリストは膨大なものでしたが、夫が車を運転してくれるので、なるべく今日中に揃えてしまいたいと気もそぞろだったのです。

  2004/09/13

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  新学期目前！驚きの教科書代

  毎年新学期が近づくと、新聞の生活関連版には半面ちかくを割いて、制服やリュック、文房具などに関する今年の相場、人気・傾向などが掲載されます。例えば、今年は価格はいずれも去年並み、リュックの人気キャラクターは、男の子がスパイダーマン、女の子がシンディ(バービーを真似た女の子キャラクター）だとか（ホントか？）。私はざっと斜め読みくらいしかしないのですが、ここまで詳しく記事に取り上げられるのは、トルコの新学期商戦がひじょうに派手で、大々的なものだからかも。スーパーマーケットなどでは、新学期用品の広告のトップに、「７５ミリオン（約６０００円）以上お買い上げには、学校用のリュックをプレゼント」なんていうキャンペーンが必ず掲載されていて、私などは「こんなのもらうために、７５ミリオン分も買うのだろうか？」と疑問に思うのですが、そう裕福でない家庭の親御さんたちにしてみれば、生活必需品(食用油や洗剤、砂糖など）をまとめ買いしてリュックが手に入れば、やっぱり嬉しいということなのかもしれません。いえ、実際、新学期の準備に頭を悩ませるのは、我が家も同様。幸いにして、リュックや文房具が買えないで、よそ様のお下がりをもらったり、キャンペーンに走るまでには至りませんが、買い物に出かけては「今日はいくらいくらもかかった・・・トホホ」とため息をつきながら帰ってくることが多くなりました。文房具(特に高いのは、絵画用品）もさることながら、頭にくるのが教科書の値段。トルコでは教科書はいまだ国から支給されてはなく、各家庭が負担しています。これが馬鹿にならないので、貧しい家庭の子供は教科書が買えないとか、そこまででなくとも近所・親戚からもらったり、古書屋を回って、中古の教科書を手に入れたりと、大変なのです。トルコでは、教科書をきれいなカバーですっぽり覆って使わせることが多くて、最初は不思議に思ったのですが、それも後で他の人にあげたり、古本屋に売ったりするので、汚さないための工夫に違いありません。昨年、１年生になる上の娘に教科書を買ってやった時、とにかくビックリしました。大体１２０ミリオン（約１００００円）くらいかかったのです。そのうち８０ミリオンくらいは英語の教科書代。英国からの輸入本で、１冊が２０ミリオン（約１６００円）前後するものです。英語の授業を売り物にしているコレジ（私立の小中高一貫校）なので、英語のテキストだけはハズルルック（準備クラス）の時もあったのですが、一度にまとめて買わされるので、結構な額に驚きました。おまけに昨年は、下の娘の幼稚園でも、１ヶ月に１冊というペースで使う幼児用テキストを購入するということで、１２冊分８０ミリオンも！払ったのです。まだ５歳児（日本式でいうと４歳）なのに。（ああっ、その残りを引き取るのも忘れていた！）そして、今年は・・・？おととい、学校の図書室に設けられた販売所に出かけました。２年生だと告げると、リストを確認しながら係りの人がいちいち集めてきてくれます。（あらかじめセットしてないのが、いかにもトルコ式）普通科目は、トルコ語に算数、生活知識、音楽の４冊。あとコンピューター（！）もあるけど、まだ来てないとか。これで〆て１５ミリオン。ちょっと安心。　 次に英語とドイツ語(娘の学校では２年生からドイツ語も始まるのです）のカウンターに進み、同様に揃えてもらうと・・・・なんと！全部で１３冊、カセットテープ（！）も含め、〆て２２５ミリオン（約１８０００円）なり！エ～ッ！！と開いた口が塞がらなくなりました。分割払いがきかないと聞いて、慌てて１００ミリオン分を現金で払い、残りをカード払いにして帰りましたが、動揺がしばらくおさまりませんでしたよ。昨日、同じアンタルヤ在で、大学生、高校生のお子さんを持つ日本人の方と電話で話をしているとき、この教科書代の話になったのですが、スペル・リセスィ（スーパー・リセ）ともなると、５００ミリオン（約４万円）！にものぼるところがあるとか。こうなると、もう何をか言わんや、です。教科書がなければ、授業についていけないわけで、生徒、親御さんたちの足元を見た教科書業界（？）の陰謀なのではないか、とまで思ってしまいます。なにはともあれ教科書は（インシャッラー）これで終わり。次は、担当教師の作った必要品リストに従って、絵画用品、文房具、消耗品（ハンドソープとか、トイレットペーパーとか）の買出しが待っています。これはリストが出来てからなので、来週一杯かかるでしょうね。新学期のスタートは、来週月曜、１３日です。

  2004/09/09

• 幼稚園にお別れ

  今日は、下の娘の幼稚園に挨拶に行ってきました。日本への２年振りの里帰りもあって、６月から約３ヶ月間、休園していたわけですが、この９月からもう来ないこと、それを伝えるためにです。１９９９年生まれの下の娘は、もうじき満５歳。当初は、この９月から幼稚園の６歳児（※トルコでは数え年が一般的）のクラスに進級することになっていました。一方、１９９７年生まれの上の娘は、現在、コレジ（小中高一貫教育の私立学校のこと）に通っていて、今度から２年生。小さい頃から何でも飲み込みが早く、すぐにトルコ語にも慣れて、成績もよい上の娘に比べると、下の娘の赤ちゃん振りは、いつも私の悩みの種。今でも、服が着れない、靴が履けない、お尻が拭けないと駄々はこねるは、上の娘と喧嘩すれば、叩く、蹴る、物を投げる、わめく、泣き叫ぶ・・・・とやりたい放題。幼稚園でもこうなのかと心配になり、一度担任の先生に聞いたこともありました。ところが「結構大人しいですよ。何か上手くできないことがあっても、涙を浮かべて我慢してるくらいで・・・」と意外な回答。知らない人の前ではネコっかぶりをする娘のこと、園で我慢している分、家でストレス発散をしているところもあるのかもしれません。いずれにせよ、この調子では来年９月から小学生だなんて、無理ではないか。あと１年幼稚園に通わせて、１年遅らせて来年、上の娘の通うコレジのハズルルック（小学校準備クラス）に入れ、小学校はさ来年からの方が、娘のためにもいいのではないか。・・・と、つい１ヶ月前までは、その考えでした。自分がクラスの友達より１年上だということで、後に娘がコンプレックスを抱くようなことはないだろうか・・・それが、日本人の親としては、唯一悩みでしたが。自分の考えに自信がもてない私は、仲のいい友達に意見を聞いてみました。「あなたの考えは正しいわ。私だって娘を１年遅らせればよかったって、今じゃあ後悔してるもの」そんな友達の言葉で、わずかな不安が吹っ切れたような気がしていました。(※トルコでは、生まれ月や発達を考慮して、子供の就学を１年遅らせたりするケースも多いのです）その一方で、この２週間の間に、２年間上の娘の担任だったB先生にも２度ほど会って相談する機会がありました。B先生は娘に簡単なテストをし、「ほら、こんな絵が描けてるわ。色の名前も数字も知っているし、やれるわよ」と、温かい言葉をかけてくれました。色の名前や数字がわかっても、学校生活に適応できるかどうか果たして疑問ですが、その言葉のお陰で、親が心配しているだけで、もしかしたら大丈夫なのかも・・・ようやく、そんな風に思えるようになったのです。国際電話で夫にも相談。「その方がいいと思ってた。そうして」夫は私の考えを尊重しながらも、やっぱり今年からハズルルックに入れるべきだと、常々考えていたようでした。昨日、上の娘の教科書を買いに学校に出かけ、ハズルルックの担当であるB先生に「通わせることにしました」と、私たちの意志を伝えたところです。そして、今日、幼稚園にも退園の意志を伝えに出かけたというわけです。もっとも、園長先生もお休みで、書類上の手続きも何もありませんし、経理担当に口頭で言っただけなのですけれど。ちなみに、電話で済まさず、直接出向いたのは、それがトルコ式ということもあるけれど、絵を描くための道具一式がまだ置いたままになっていたので、それを引き取る目的もあったのですが・・・「娘さんのものは何ひとつ残ってませんよ。名前も書いてありませんし、どれが娘さんのかわかりませんから」と簡単に言われてしまいました。やっぱりな～とため息。夏の間に大掃除をやったに違いなく、前の園児のものだろうとポイポイ捨ててしまったのでしょう。この手の例はいくつも見てるので、最初からあまり期待はしてなかったのですが・・・ラベルに名前を書いて貼ってある、２４色入りのクレヨンや１８色入りの色鉛筆、１８色入りの水彩絵の具・・・・まだまだ使えるはずだったのに、残念です。トルコは文房具が高いのです。日本と同じか、物によっては日本より高いくらいですから。さて、ようやく画像のアップにも慣れました。まだ当分は、チグハグなところも出てくると思いますが、どんどん画像入りの日記を更新していきたいと思っています。よろしかったら、これからもご覧になってみてくださいね。

  2004/09/08

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