『最初の一突きはソフトがおすすめ』
『最初の一突きはソフトがおすすめ』週末の23時過ぎ、男三人でファミレスに入った。「ボチボチ、あれじゃないのか?」柿田が井上に尋ねた。井上はニヤリとしながらもこう答えた。「お前には関係ないだろう。」素っ気無い返事だった。ウェートレスが注文を取りに来たので、皆それぞれメニューを見渡す。結局、柿田以外は珈琲を頼んだ。「YOSSYさん、珈琲だけで腹減りませんか?」柿田は、夜だというのに、ステーキセットに生ビールを注文した。「大丈夫だよ。柿ちゃん、夜、食べると太るよ。」僕がそう言うと、「いや、精のつくもの食べとかないと体が持ちませんからね。」大きな太い声で、自信たっぷりに彼はこう答えた。「井上、さっきの話しなんだが、どうでもいい話だけどさ、お前最初の一突きはどうしてる?」柿田が先程の話の続きを始めた。「どうって、突き方とかあるのかよ?」井上はタバコに火をつけながら、少し周りを見渡した。「バカ!最初がどうかで、そいつの性格がわかるんだぞ、ねっYOSSYさん。」「そんな話聞いたことないけど・・。(笑)」僕は、また下らない話が始まったと思って、軽くかわした。「俺は、こだわるね。最初の一突きは、人差し指でそ~~っと行かなきゃ。そして、それからズバズバ連続攻撃!これだろ、やっぱり。」僕の背後から、クスクス笑いが聞こえた。ウェートレスが珈琲を持って立っていたのだ。彼女は、お決まりのセールストークを終えて、直立不動で店内を見渡している同僚の元へ、イソイソと立ち去った。「そう言えば、井上の実家は○○だったよな?」柿田は、話の腰を折ろうとする僕の意図が見抜けるような、気の利いた男ではなかった。「で、いつやるんだよ、井上!」そう言ったかと思ったら、先程のウェートレスに向かって叫んだ。「お姉さん、生のおかわり!」僕と井上が仕事の事を少し話し出したら、上機嫌の柿田は執拗に、食い下がってきた。「YOSSYさんはどんな感じなんですか?」「何が?」とぼけて、素知らぬ振りをすると、「もしかして、YOSSYさん指使わないとか?」こうなると、こ奴はいつも手がつけられなくなる。女性に会った時、最初に何処を見るかという事で、延々と話を続けられる人がいるが、彼がまさにそういうタイプの男だったのだ。「もういいじゃないか、そんな事。」井上が助け舟を出した。「まっ、そうだけどさ。」少しは、観念したのかと思いきや、そんなはずはなかった。「そうそう井上、今度やる時、俺も行くからさ。」「なぜ、お前が来るんだよ。」面倒くさそうに彼が答えると、さもありなんという答えが返って来た。「決まってんじゃないか。」「・・・・・」「俺もやるんだよ、障子破り。」