年頭の御挨拶
年頭の御挨拶皆様、明けましておめでとうございます。covid19に悩まされ、振り回された1年がようやく終わりましたが、新型コロナウィルスとの戦いは、いままさに決戦の時の雰囲気ですね。医療関係や保健所関係の皆様は、正月どころではないフル回転の日々が続いていらっしゃるのでしょう。何もお手伝いできないのですが、大変なご苦労をおかけしていることを胸に刻み、暑く御礼申し上げます。思い起こせば、約100年前にも人類は似た経験をいたしました。1918年の第一次世界大戦末期から、翌年にかけて猛威を振ったスペイン風邪の大流行です。手元に米国の資料しかないのですが、第一次世界大戦の戦死者116,516人に対し、スペイン風邪の死者は675,000人と、約6倍となっています。大西洋を渡った米国ですら、この数字ですから、震源地の欧州各国の死者は、もっと多かっただろうことが推測できます。スペイン風邪のパンデミックを経た欧米世界は、互いに欲に駆られて植民地獲得競争に走ったことが神の怒りに触れて、パンデミックという天罰にあったことを重く受け止め、植民地獲得競争を棚上げして、1920年代は国際協調に舵を切りました。この時日本は、第一次大戦に参加はしても派遣兵士はごくわずかで実質被害はほとんどなく、スペイン風邪のパンデミックも遠方なるがゆえに軽度で済んでしまい、欧米世界の変化について行くことが出来ず、戦後の軍縮協議に立ち遅れて不利益を蒙ったり、対華21ヶ条要求が何故欧米諸国から総スカンを食らったのか理解できず、30年代の孤立への道をひた走り、遂には破滅的な戦争へ突っ走ってしまうことに繋がりました。100年後covid19でも、欧米に比べ日本の被害は軽微です。12月に入り、感染者は大きく膨らみ、政治の対応のまずさが非難の大合唱に晒されていますが、今日現在の死者は3500名を少々超えたラインに過ぎず、人口10万人辺りの死者は3.5人に留まっています。これは世界平均の22.6人を大きく下回り、欧米の数字と比べると格段に少ないのです。同じ人口10万人当りの死者は、英国で102.7人、米国は98.4人、フランスは92.3人、ヨーロッパの優等生ドイツですら33.8人と日本の10倍に近いのです。米国の死者は、先週末で322,765人を数えていますから、第2次世界大戦の戦死者405,399人を抜くのは確実でしょうし、スペイン風邪の死者数に迫ることもあり得るかもしれません。これだけの被害の出た欧米世界、さらに南米やアフリカ大陸、さらにはインドやアラビア世界のcovit19への思いと、比較的被害軽度のコロナ禍後の世界に対する思いは大きく違うように受け止めねば」ならないでしょう。日本では、コロナ禍後の世界は、元の世界に戻れるだろうという理解が一般的なように思えるのですが、欧米中心に世界の趨勢は、100年前と同じく、我々はもう元の世界には戻れないのだ。これから世界は新しい現実と向き合っていくしかない。こういう受け止めが主流になって動いていくでしょう。その新しい世界がどのような形になっていくのか? 世界的な潮流に乗り遅れないようにしてゆかないと、さらに世界との距離が開いてしまいかねず、経済的にも厳しい立場に追い込まれかねません。我々も、もう元の世界には戻れない。新しい社会の形を模索しなければならない、そんな現実を受け入れざるを得なくなる日が近いかもしれない。年頭にあたり、こんなことを考えています。本年もどうぞよろしく