NHKの「青海(せいかい)チベット鉄道」
きのう1月2日、NHK総合で『青海(せいかい)チベット鉄道 ~ 世界の屋根2000キロをゆく』を見た。大晦日に乳首を描いたボディースーツを着て女の子たちが踊ってくださったのには、退屈な辞書で粋な例文を見つけたときのような喜びにひたってしまったけれど、21世紀の満洲鉄道と言ってもよろしい、中国のチベット殖民地支配の象徴たる青海チベット鉄道の車輌疾走シーンに、こうもうきうきと軽やかな音楽を配してしまってよいのかね、NHKよ。NHK特集で昭和十年代の日本を描くときにも、同じく軽やかな音楽をぜひお願いしたいものだね。海外のテレビ局としては、青海チベット鉄道取材の一番乗りだったらしい。アナウンサーがこれを誇らしげに語っていたが、それって「NHKは畏れ多くも中国共産党さまから<名誉の別働隊>の認定を受けました!」と言っているようなものだがね。わたしを含め心ある日本国民たちが支払っている受信料によって、中国共産党のために制作されたプロパガンダ番組によれば、青海チベット鉄道は平成13年から18年にかけて4,500億円をかけて建設され、青海省西寧(せいねい)市からチベット・ラサ市まで2日に1本、定員900名の列車が26時間半をかけて走っている。2等寝台車料金が1人8,000円、2等座席車が3,500円。つまり、この鉄道でラサと西寧間を往復するのは、上り・下りを合わせて1日あたり900名。2等寝台車料金で計算しても、旅客収入は1日当り720万円。1年で26億2,800万円。100年で2,628億円。旅客料金以外に貨物運搬収入もあろうが、いずれにせよ建設費の4,500億円は、絶対にペイしない。「あら、それじゃぁ何のために鉄道なんか作っちゃったの?」と家内が訊くから、「よくぞ訊いてくれた。もちろん、これというときに、チベットへ迅速に大軍を送り込むためだよ」と答えた。五体投地(ごたいとうち)しながらラサをめざす、土埃(つちぼこり)まみれのチベット人の巡礼者らが鉄道車輌を眺める。鉄道を見てどう思いますか、というNHK取材班の問いに対して、困ったような、嘲笑するような、沈黙ののちにぼさ~~っと「わかりません」「面白いですね」「変な感じがします」と言わせた。この1分ほどの画像をまもりきるために、ぼくらはNHKの受信料を払っているのだと思った。それにしても、ラサ駅は巨大な伽藍だった。2日に1本しか出ない西寧行きの列車のために。