「定額給付金」 の台湾版の智慧
11月26日の夜、「定額給付金」についてコラムを書いて夜中に配信した。冒頭に≪「あれは、早期の総選挙実施が かなわなかったことに不満な創価学会政治部に手向(たむ)けた、麻生首相からの“おわび代=みかじめ料” だろう」という説が流れだしたころから 「定額給付金」 関連の報道がメディアから すーっと消えたのは、偶然か?≫などと書いていたら、朝起きてみると 『産経新聞』 1面と2面にドカンと特集記事があって≪検証 首相はなぜ給付金を選んだ「毒」に酔うか倒れるか≫と見出しを打っていた。……てっきり役所の窓口で現金をいただく制度かと思っていたら、記事を読むと基本的には銀行口座振り込みを想定しているそうだ。銀行への振り込みでは吸い取り紙に落とした水滴みたいなもので、意識には残りにくいから、消費喚起作用は哀しいほど減殺(げんさい)されると思うが。配信コラムには≪それにしても、1人あたり1万2千円をもらって、今どきどれだけの日本人が心を躍らせるか。小学生のお年玉より少ないね、というのがホンネでは?だから、白け切っている。給付金が出ても、これでは経済の景気づけにはなるまい。「ぜんぜん盛り上がらなかったから、止めにしました」と、選挙がなかったら言明すべきところだ。≫と書いた。ちょっと舌足らずだった。18歳以下と65歳以上のひとは8千円加算されて2万円もらうことになるから、夫・妻・子2人の平均的家族なら家族合計で6万4千円を受け取る。(子供2人で、2万円×2。加えて夫婦2人で、1.2万円×2。合計で6万4千円となる。)以下、配信コラムでは台湾の 「消費券」 のことを書いた。≪■ 全国民の狂想曲だ ■隣国の台湾では 「消費券」 発給で盛り上がっている。『中國時報』 (台北市) の11月25日 「社説」 は題して 「全国民の消費券狂想曲」。1人当たり3,600元の商品券が、1月18日に配られることになっている。3,600元というのは、日本円で10,400円に相当する。「なぁんだ、大したことないじゃん。日本より少ない」と思われるかもしれないが、台湾の物価水準からいけば2万5千円から3万円くらいの使い出がある。4人家族なら10万円~12万円を旧正月 (1月26日) 前にドーンともらえる感じだから、盛り上がるのもわかる。現金を支給したのではそのまま預金に回ってしまい、景気の刺激になりにくいということで 「消費券」 という名のクーポン券発行におちついた。500元券が6枚に、200元券が3枚で、3,600元の綴りになっている。消費を喚起するのが目的だから、小額の商品を買ってお釣りをもらうというのは無し。店によっては客引きのために「消費券を使って買い物をすると1割引きにします」と出血サービスのセールスを計画しているところもあるという。■ 投票所を発券所にかえる ■消費券の発給は、当初は年収120万元 (350万円) 以下の低・中所得者世帯に限ろうという案もあったが、「所得再分配が目的ではなく、消費を喚起して経済を刺激する施策なのだから、所得制限を設けるのは趣旨に反する」という意見が勝って、全国民が対象となった。悔しいが、この件に関していえば台湾人のほうがオトナという感じがする。日本では今のところ、定額給付金の配り方は市町村に丸投げされているが、台湾にはユニークな方法を考えた智慧者がいた。大統領選挙で全国1万4千ヶ所余りに投票所が設けられたが、それと全く同じ場所を来年1月18日の1日間、消費券の 「発券所」 にするのだ。選挙のとき、通知葉書と引き換えに投票用紙をもらうが、今回もそれと同じように通知葉書と引き換えに消費券をもらうことになる。これなら発券窓口が増やせるし、住民の照合も選挙のときに準じてやれるから混乱が少ない。■ ドイツでも6万円の大盤振る舞いの政府案 ■1月18日に 「発券所」 へ行けないひとは、2月中旬以降、4月末までに最寄の郵便局の窓口へ通知葉書と身分証明書を持っていけば消費券がもらえる。消費券の有効期限は9月末まで。これで来年の台湾の国内総生産 (GDP) は 0.64 % 上乗せされるというのが台湾政府の皮算用だ。いっぽうドイツでも500ユーロ (約6万円) のクーポン券を発給する案を政府が検討中だと、 Handelsblatt 紙 11月25日号 がすっぱ抜いた。クーポン券の名は Konsum-Coupons という。文字通り 「消費券」 である。たしかに、先進国では1万円ていどを配られても浮揚感はゼロ。景気の刺激にはならぬ。やるならドーンと6万円くらいの大盤振る舞いを、ということか。何れにせよ、せっかく苦労して集めた税金を、膨大な公務コストをかけて国民へばら撒き返すのは愚の骨頂、政策貧困の極みなり、というのがコラム子の独り言である。みかじめ料は高くつく (?) ≫