生産に貴重な真水を大量消費する 「バイオ燃料」 の非道さ
トウモロコシ農場経営者の票をあてにした補助金政策を下支えする 「なにが何でもCO2削減」 論だが、ものには限度というものがある。トウモロコシから燃料用のエタノール (エチルアルコール) を作るのにつかう水の量を知って、たまげた。米国エネルギー省によると、1リットルのエチルアルコールをトウモロコシから作るために2,000リットルの水が必要だ。植物を育て、得られる植物油を加工して1リットルのディーゼル油をつくるためには、5,000リットルから10,000リットルの水が必要だ。6月13日の 『ウォールストリート・ジャーナル』 紙上にネスレ社のブラベック・レトマット (Brabeck-Letmathe) 会長が寄せた Global Drying という評論 (Global Warming の もじり) で、この驚きの数字を知った。農業が いかに多くの水を使うかの表れで、朝な夕なの食べ物もものすごい量の水の産物と思うとありがたみが増す。食糧・食料を粗末にしてはならぬというのは本能に裏打ちされた思いだけど、それは食物の背後にある膨大な水の幻影を見るからだろうか。地球の危機は、温暖化ではなく真水不足にあり。温暖化で死者は増えないが、農業用水の不足、食べる糧の欠乏は人民を滅ぼす。いま行われているような、食糧・植物油からつくる 「バイオ燃料」 は、非道と言わねばならぬ。「化石燃料をだいじに使う」 という常識の健全さ。