ハルモニの字
実家がある大阪から帰ってきた母親が私にある小さな包みを手渡す。「おばあちゃんからやで。abimegにだって」とのこと。その包みを受け取ってみると、表面にはハルモニ(おばあちゃん)の字で、こう書いてあった・・・おばあちゃんから「うわぁ~、嬉しい!」と思い、包みを開けようとした私。しかし、ふと手を止める。先ほどのハルモニの字が気になったから。再度読んでみると・・・おばあちんからそう、小さい「や」を書き忘れたみたいで、「おばあちゃん」が「おばあちん」になっているではないか。ハルモニ、ごめん・・・でも・・・お腹が痛くなるほど笑ってしまった。母親も。父親なんて「そんなことで笑ったらアカン!」と言いながら、目元が思いっきり緩んでいたし。ハルモニ、ほんまにごめんなぁ・・・そんなハルモニは幼い頃、学校に通ったことがない。在日一世として韓国の済州島から大阪の地へ渡って来たのだけど、家族があまりにも貧しかったため、ずっと工場で働かなければならなかった。そしてティーンエイジャーになった時、いつもハルモニのお父さんと囲碁を打っていた青年が字を教えてくれると申し出てくれたので、その人から少しだけ読み書きを教わった。それが、ハルモニが後に結婚したハラボジ(私のおじいちゃん)だったのだ。結婚後、ハルモニは次々と赤ちゃんを産んで、子育てと家事そして内職に追われる毎日。勿論、学問どころの騒ぎではなかった。しかし、ずっと「勉強したい」という気持が心の奥底にあったのでしょう。月日がかなり経過したある日・・・なんと60歳の時に・・・夜間中学に通い始めたのだ!そこでハルモニは自分と同じような在日一世たち、また自分の孫ぐらいの年齢の茶髪の若者たちと勉強した。そして夜間中学を卒業した後、今度は夜間高校にチャレンジしたのだ!(こちらも勿論、無事に卒業しています)。ハルモニは現在、88歳。今年の秋には89歳になる。今でも毎日、日記をつけ、新聞を読んでいる。シルバーエイジになってようやく本格的に学校に通ったため、ハルモニが書く字はとてもおぼつかない。そして、よく間違えている。例えば、今回のような間違いや、他には“ポテトチップス”を“ボデドジブス”と書いたりして。笑っちゃいけないことは分かっているんだけど・・・笑っちゃうのよね。ごめんね、ハルモニ。でもバカにして笑ってるんじゃないよ。それは絶対にない。だってどんなに子供のような字でも、どんなにミスがあったとしても・・・私にとっては、これほど温かい字はこの世にないんだから!ハルモニの字: