私的アラビア書道履歴書(その1)
アラビア語に書道という芸術ジャンルがあるのを知ったのは、大学4年のそれも卒業直前に主任教授の家に就職先が決まったことを報告するために挨拶に行った時でした。主任教授は口数が少なく、余り会話も弾まなかったのですが、こんなものがありますよと言って、本棚の下の方から、和紙に書かれたものを取り出し、広げて見せてくれました。これが、東京芸術大学の吉田左源次教授の毛筆で書かれたアラビア書道でした。ただその時は単に毛筆でアラビア文字を書いただけという印象しかありませんでした。本当のアラビア書道の作品を見たのはそれから3年後でした。1979年にアルコバルというサウジアラビア東海岸にある小都市に駐在になりました。事務所では最も若かったので、経理から営業補助まで何でもかんでも担当させられていました。ある日、街の本屋でアラビア語の本を探していると、「Masterepieces of Arabic Calligraphy」という20インチ×16インチの大判の本を見つけました。中身は典型的なデザインのアラビア書道作品集でした。キャンバス地風の紙は一枚一枚を切り取ることができるようになっています。120リアル(当時では7,200円ぐらい)と結構高い本でしたが、当時、面白そうなアラビア語の本はないかと一生懸命集めていましたので、勢いで買ってしまいました。馬鹿でかく、油臭く、印刷も悪い本でしたが、何回かの引越しの後でも無くならず、ちゃんと手元に残っています。この本が初めて買ったアラビア書道に関する書籍でした。ただ、そのころは、アラビア書道を現地で習うということは全く頭にありませんでした。アラビア書道を始めたのはずっと後のことでした。(続く)Masterpieces of Arabic Calligraphy